超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
何とか1話に収まったこの章の最終話。
それでは、 剣と盾 はじまります


剣と盾

「あたたたた……少々壁を壊し過ぎてしまったか」

 

 ルウィーの教会に、本来ならばいるはずのない人物が潜入していた。

 

「だが、吾輩の睨んだ通り、この近くにあるはずだ」

 

 潜入した人物、トリックは潜入するために壊し過ぎてしまった壁を気にせずに辺りを見渡した。

 

 そこは倉庫のようであり、いろいろな物が分別されて置かれていた。

 

 侵入した際に、壁の近くにあった物は無残に壊れてしまったのだが、トリックの探し物は別にあるらしい。

 

「しっかし、フィーナの奴も何を考えていることやら。吾輩に赤い目玉を取りに行けだの、意味がわからん」

 

 赤い目玉、犯罪神と呼ばれた物を探すようにフィーナに命令されたトリックは不満を隠せずに眉をひそめて愚痴をこぼした。

 

 ジャッジに取り押さえられて命令された内容は、これだったのである。

 

「ええっと、確か特徴としては、見ていて嫌な感じになる目玉だとか……正直、目玉なんて気持ち悪いもの見ていれば、嫌な気分の1つや2つ湧いてくるものではないだろうか?」

 

 アバウトな説明でも、トリックには命令を拒否すると言う考えはない。

 

 そんなことをした時に待つ自分の運命を知っているからだ。

 

 ジャッジのように従順な下僕にされてしまうか、マジックのように自我を失うような洗脳を施されるか、もしかすると消されるかもしれない恐怖がある。

 

 トリックはそのことを思うと、体を震わせた。

 

「いかんいかん、今は余計なことを考えている暇はないのだ。早く探さねば、異変を感じた女神どもが……ん?」

 

 そこまで考えて、トリックは動きを止めた。

 

「ま、待てよ。この国の女神と言えば……」

 

「そこで何をしているの!!」

 

 トリックが思案していると、倉庫の扉が開かれてブラン達が入って来た。

 

 しかし、倉庫の扉は全員が1度に通れるほど大きくなく、また倉庫の中も広くないため、実際に部屋の中に入ったのは、ブランとロムとユニの3人だけだった。

 

「お、おお!! やはり、女神幼女がいる国だったではないか!!」

 

「ひっ、変態(びくっ)」

 

「へ、変態だなんて……もっと罵ってください!!」

 

 部屋に入ってすぐに、ロムは自分を歓喜の表情で見つめてきたトリックに怯えてしまい、ブランの後ろに隠れてしまった。

 

 しかし、その姿にトリックはさらに喜び、恍惚とした表情で体をくねくねと動かし始めた。

 

「またテメェか変態野郎!! んな目でロムを見んじゃねぇ!!」

 

「年増女神はすっ込んでいろ!! 吾輩にもっとよく女神幼女の姿を見せるのだ!!」

 

「んだとコラァ!! 誰が年増だ!!」

 

 ロムを嫌らしい目で見つめることに加えて、自分のことを年増呼ばわりするトリックに、ブランの怒りは最初から限界を迎えていた。

 

 今にも戦闘が始まるような空気の中、ユニだけが会話の流れに取り残されてしまった。

 

「……いったい何なんですか、あの変態は」

 

「気をつけろよ、アイツはあんななりしているが犯罪組織の幹部、トリック・ザ・ハードだ。油断するんじゃねぇぞ」

 

「……アイツが?」

 

 ユニはブランの言葉を疑うわけではないが、本当に目の前のトリックが犯罪組織の幹部かどうか怪しんだ。

 

 ロムを見つめてデレデレとする姿は、他の幹部、特にユニのよく知っているブレイブとは全く違うものだったからである。

 

「うむっ!」

 

「な、何よ?」

 

 ユニはトリックが急に真剣な眼差しで自分を見つめてきたことに驚き、一歩下がるように構え直す。

 

 しかし、すぐにトリックは落胆したように肩を落として首を横に振り始めた。

 

「何だ、貴様も胸がないだけの年増女神か」

 

「うっさいわね!! ちゃんとあるわよ!!」

 

 トリックは幼い顔立ちと声から、ユニを幼女と勘違いしたが、すぐに自分の好みから外したのだ。

 

 コンプレックスである胸のこと、さらに侮辱する言葉を投げかけられて、ユニは顔を赤くしてライフルを構えた。

 

 その横では、すでにブランがハンマーを構えて、態勢を低くしてトリックを睨んでいた。

 

「わかってんな」

 

「ええ、もちろんですよ」

 

「な、何だ、急に寒気が……」

 

『死ね、この変態!!』

 

「ぐふぉっ!? ……がふっ!?」

 

 2人の怒りを買ってしまったトリックも、さすがに身の危険を感じた時には、全てが遅かった。

 

 謎の寒気によって委縮してしまったトリックの体に、ライフルの弾とハンマーが連続で流れるように叩きこまれた。

 

 そのどちらもが顎に直撃したため、トリックは後方にあった無事であった倉庫の棚を壊しながら吹き飛ばされてしまった。

 

「あ、頭が揺れる~。こ、これだから、年増は……」

 

「ブランさん、もう1度やって欲しいみたいですよ」

 

「そうみたいだな。リクエストには答えてやらないといけないよな」

 

「ひ、ひいいい!?」

 

 トリックは自分を温度のない目で見下ろしてくる2人に恐怖を覚え、慌てて跳ぶように後ずさった。

 

「き、貴様ら!? わ、吾輩がまだ何もしていないと言うのに、攻撃してくるとは、それでも女神か!?」

 

「うるせぇ!! 教会に侵入してきたくせに、何言ってやがる!!」

 

「それに、アタシ達を侮辱した罪、しっかり償ってもらうわよ!!」

 

「こ、これだから話を聞かな……ん? こ、これは!?」

 

 トリックが冷や汗を流しながら2人から距離を取ろうとすると、その腕に何かが当たる感触がした。

 

 トリックがそれを持ちあげると、ブラン達は驚愕の表情を浮かべた。

 

 なぜならば、それはトリックが探していた赤い目玉……が入った小瓶なのだ。

 

 ゲイムキャラが持ってきた目玉をそのままにすることに抵抗を覚えたミナが、小瓶に詰めて保管していたのだ。

 

「この見ているだけで、何となく嫌な気持ちになってくる目玉!! まさに吾輩が探し求めていたものではないか!! 吾輩ついてるぞ!! 似たようなことがあった気がするが、これも吾輩の日頃の行いのおかげか!! 後は……」

 

 トリックはにんまりとして小瓶を手にすると、驚愕しているブラン達の後方に居たロムに狙いを定めるように視線を向けた。

 

 ブラン達がトリックを吹き飛ばした様子を見て、安心したように構えもせずに棒立ちだったロムに、トリックは舌を伸ばした。

 

「ひっ!?」

 

「逃がさないぞ!!」

 

「い、いやああああああ!?」

 

「ロム!?」

 

 舌が自分たちの横を通り抜けたのに気づくのが遅れたブラン達は、慌ててロムを助けようと動いた。

 

 しかし、それよりも早く舌がロムの体に巻き付き、トリックに引き寄せられてしまった。

 

「アクククククク、油断したな、年増女神ども」

 

「い、いや!? 気持ち悪い!?」

 

「ロムを離しやがれ!!」

 

 トリックの舌が全身を舐めあげるように動くのを感じ、ロムは涙を浮かべて逃げようと体を捩るが、舌の拘束は緩みはしなかった。

 

 逆にロムの抵抗が嬉しいのか、トリックは上機嫌で笑いながらブラン達を挑発した。

 

 ブラン達は、ロムが捕まってしまったため手を出すことができず、悔しさで唇を噛みながらトリックを睨むことしかできない。

 

「さて、吾輩の用は済んだので、ここで逃げさせてもらおうか」

 

「っざっけんな!! ロムをどうするつもりだ!!」

 

「もちろん、吾輩と一緒に来てもらう。さらばだ!!」

 

「待ちなさい!!」

 

 トリックが背を向けて逃げ出そうとした時、ユニがその背中に跳び付いた。

 

「は、離せ!?」

 

「離さない!! ロムを……アタシの友達を返しなさい!!」

 

 トリックが背中に取りついて離れないユニを剥がそうと暴れるが、ユニは必死にしがみついていた。

 

「ええい!! それならば、貴様も一緒に連れて行ってやる!!」

 

「ロム!? ユニ!?」

 

 このままではブランにまで何かされると察し、焦ったトリックは背中にユニをつけたまま走り出した。

 

 ブランは自分もトリックに取りつこうととした時に逃げられた背中を見て、悔しさで顔を歪めながら2人の名前を叫んだ。

 

「クソッ!! 待ってろ、今行く!!」

 

 トリックの逃げ足は速く、ブランが壊れた壁から外に出ると、すでにその背中は遠くにあった。

 

 悪態をつきながら、ブランは『変身』してトリックを追跡するために飛び上がった。

 

「ブラン様!! 先に行っててくださいですの!!」

 

「後から絶対に追いつくから、絶対にユニとロムを助けて!!」

 

「おう!! 任せろ!!」

 

 飛び出そうとするブランに、部屋にようやく入れた日本一とがすとが2人のことを頼み込んだ。

 

 現状でトリックに最も早く追いつく可能性があるのは、飛ぶことができるブランだけなのである。

 

 頼むことしかできないことを悔しく思うと同時に、すぐにでもブランに追いつくために走り出そうとした。

 

 その言葉を受けて、ブランは振り返りもせずに一直線にトリックの逃げた方向へと全速力で飛んだ。

 

「おいらも一緒に行くっちゅ!!」

 

「わかったよ!! がすとと一緒にアタシの背中に乗って!!」

 

「頼むですの!! 超特急でお願いするですの!!」

 

「今こそ女神様を助けるヒーローの腕、いや、足の見せ所……うおおおおおお!!」

 

 日本一は足が遅いがすとと小柄なワレチューを背中に背負い、勢いよく駆けだした。

 

「……皆さん、よろしく頼みます」

 

 ミナはブラン達が向かって行った方向を祈るように見つめるしかできない自分に無力感を覚えたが、無事に戻ってくれることを両手を組んで祈っていた。

 

 

*     *     *

 

 

「ハア、ハア、ハア、ここまでくれば一安心だな……いいからさっさと離れろ!!」

 

「きゃっ!?」

 

 吾輩は街を抜け、街道の途中で一息つくために立ち止まった。

 

 いい加減走り疲れたこともあるが、背中にいつまでもくっついている年増女神が鬱陶しかったのだ。

 

 足を止めた吾輩は、体を大きく揺らすことで年増女神を引き剥がすことに成功した。

 

 いつまでも休んでいれば、すぐに追いつかれてしまう。

 

 1度大きな息を吐いて、吾輩は再び走り出そうとした。

 

「待ちなさいって、言ってんでしょ!!」

 

「ぬおっ!?」

 

「ロムを返しなさいよ!!」

 

 走り出そうとした吾輩の足に、振り落とした年増女神が組みついてきた。

 

「ええい、離せと言っておろうが!?」

 

「離さない!! アタシの友達は、絶対に連れて行かせない!!」

 

「……ユニちゃん」

 

 足を振り回して引き剥がそうとするのだが、年増女神はどうしても剥がれない。

 

 足を振り上げて地面に叩きつけても、横に振って吹き飛ばそうとしても、何をやっても吾輩の足から離れないのだ。

 

 こ、このままではマズイ!?

 

 こんなことに時間をかけていたら、もう1人の年増女神に追いつかれてしまう!?

 

 早くギョウカイ墓場に帰らなければ……あれ、吾輩帰っても危なくない?

 

 ここにいれば、年増女神にぼこぼこにされてしまう。

 

 かと言って、ギョウカイ墓場に帰れば、フィーナの元で地獄のような日々を過ごさなければいけない。

 

 ……うん、吾輩詰んでる。

 

 仮に、フィーナにこの目玉を素直に渡したところで、吾輩の安全が確保できるわけではない。

 

 しかし、持って帰らなければ、マジックのように……それだけは嫌だ!?

 

 吾輩にはまだやりたいことがたくさんあるのに!?

 

 こ、こうなれば、吾輩も覚悟を決めなければなるまい。

 

「わかった。貴様の言う通り、女神幼女を解放しよう」

 

「え、本当?」

 

「嘘は言わん。ほれ」

 

「あっ」

 

 吾輩は信じられないと言った風に見上げてくる年増女神の横に、女神幼女を降ろした。

 

 女神幼女は、解放されるとすぐに年増女神の後ろに隠れてしまった。

 

「……どう言うつもりなのよ」

 

「吾輩とて男として覚悟を決めなければいけない時があるのだ。まずは、そのけじめとして女神幼女を解放したまでのことよ」

 

「けじめ?」

 

 不審げにこちらを睨んでくる年増女神には、決してわからんだろう。

 

 吾輩の男の覚悟が……

 

「恥を忍んで頼む」

 

「な、何よ?」

 

 これが吾輩の生き様よ!!

 

 吾輩はプライドをかなぐり捨て、地面に額がついてしまうくらいに頭を下げながら願い出た。

 

「どうかそのお身体をペロペロと舐めまわさせてください!!」

 

「は、はいいいい!?」

 

「ふ、ふぇえええ!?」

 

 2人から驚いたような声が聞こえてきたが、吾輩は至極真面目に頼んでいるのだ。

 

 そう、どの道吾輩に待っているのは地獄だけ。

 

 ならば、吾輩は自分の手で天国を勝ち取ってみせる!!

 

「だ、誰がそんなことさせるもんですか!?」

 

「貴様じゃない!! 貴様の後ろにいる女神幼女の体をペロペロしたいんだ!!」

 

「い、いや!?」

 

「駄目に決まってるでしょ!! ロムには指一本触れさせないわ!!」

 

「舌だから大丈夫だ!!」

 

「そう言う問題じゃない!!」

 

 今もびくびくと年増女神の後ろに隠れてこちらを見てくる女神幼女の姿に、吾輩は辛抱堪らんのだ!!

 

 すぐにでもペロペロしてしまいたい衝動を抑えるのに必死になっていると言うのに、この年増女神はそれに気付こうともしない。

 

 まったく嘆かわしい。

 

「大体さっきまでロムのこと舐めまわしてたくせに、何を言ってるのよ!!」

 

「何を言う!! あれはペロペロとは言わん!! ペロペロとはな、もっとこう胸が熱くなるような、それでいて幸せになることを言うのだ!!」

 

「知らないわよ!! この恥知らずな変態!!」

 

 年増女神にいくら罵られようとも、全然気持ちよくならない。

 

 やはり、この心を満たしてくれるのは幼女のみ。

 

 吾輩は頭を下げ続けて懇願した。

 

「頼む!! 一生のお願いだ!! 頼むから、ペロペロさせてくれ!!」

 

「駄目だって言ってんでしょ!!」

 

「それでも頼む!! 最後に幸せな思い出を残させてくれ!!」

 

「……どう言う意味?」

 

 女神幼女が恐る恐る年増女神の陰から出て、吾輩に尋ねてきた。

 

「これを持ち帰ったところで、吾輩に未来はない。それならば、せめて幼女をペロペロしたと言う思いを抱いて死にたいのだ」

 

「……死にたいの?」

 

「そんなことはない!! だが、ギョウカイ墓場に帰れば、吾輩を待つのは地獄のような日々だ。だから、最後に至福の一時を味あわせてくれ!!」

 

 どんな惨めで憐れな死に方をしようとも、ペロペロした幸せが胸にあれば、きっと吾輩は笑って死ねるはずだ。

 

 もうフィーナやマジック達のことなんてどうでも……

 

「だったら、帰らないでここにいればいい」

 

「……え?」

 

 今、吾輩の耳に幻聴が聞こえたような気がしたぞ。

 

 信じられず、瞬きが速くなってしまったではないか。

 

「ちょ、ちょっとロム!? コイツを助けるって言うの!?」

 

「うん。この……えっと、トリックちゃん? も助けを求めてる」

 

「と、トリックちゃん!?」

 

「下っ端さんやネズミさんと一緒、だから助ける」

 

 吾輩が呆然としていると、2人が口喧嘩をし始め、やがて女神幼女がほほ笑みながら手を差し伸べてきた。

 

「死なないで、ここにいよう、ね?」

 

「だ、だが、吾輩にも犯罪組織の幹部としての面子と言うものが……」

 

 差し出された手に戸惑いながら、吾輩は脳内で緊急の作戦会議を開始した。

 

 このまま残って女神どもの所にいるべきか、大人しくギョウカイ墓場に帰るべきか。

 

 敵である吾輩を女神どもが受け入れてくれるとは到底思えない。

 

 仮に受け入れられたとしても、フィーナと敵対してしまう。

 

 しかし、ギョウカイ墓場に帰れば、常にフィーナの恐怖に縛られて……どちらもフィーナの恐怖は変わらんではないか!?

 

「しっかり謝れば、皆許してくれるよ」

 

「そ、そうは言うが……」

 

「わたしも一緒に手伝うよ」

 

「吾輩ここに残る!!」

 

 にこやかに言われた一言で、吾輩の心の天秤は完全に傾いた。

 

 よく考えれば、答えなど最初から決まっていた。

 

 フィーナは幼女じゃない。

 

 ならば、吾輩は幼女といるために女神側につく!

 

 犯罪神様もいなくなってしまったことだし、吾輩も自由に生きるのだ!!

 

「テンツェリントロンべ!!」

 

「ぐはぁ!?」

 

『あっ』

 

 吾輩が喜んで女神幼女の手を握ろうとした時、突然顔に衝撃が走った。

 

 地面を何度もバウンドしながら転がり、止まった時にようやく自分が殴られたような衝撃を受けたことに気付いた。

 

「それ以上、ロムに近づくんじゃねぇ!! この変態野郎!!」

 

「お、お姉ちゃん(あせあせ)」

 

「もう大丈夫だ、2人とも。後は、わたしに任せ……」

 

「ち、違うんです、ブランさん。ロムはあの変態を……」

 

「ふ、フフフフフフフフフフ」

 

 自然と笑いがこみあげてきた。

 

 やはり、吾輩達と女神は相容れない。

 

 年増女神がいる限り、吾輩は女神幼女の優しさに甘えることができない!!

 

 愛は力で勝ち取るものなのだ!!

 

「出でよ、キラーマシン!!」

 

 吾輩は起き上がると、モンスターディスクを3枚取り出して、フィーナから預かったキラーマシンを3体出現させた。

 

 フッ、以前は憎き相手だと勘違いしたが、一緒に戦うのにこれ以上頼もしいものはない。

 

「年増女神どもを八つ裂きにしろ!!」

 

「ま、待って!? 話を聞いて、トリックちゃん!?」

 

「あ、女神幼女を傷つけるなよ!! 待っててくれ、女神幼女よ。今すぐに君をペロペロしてあげるからね!!」

 

 キラーマシンが年増女神を殺した後、残った女神幼女と吾輩で幸せになるのだ。

 

「ブランさんのせいですからね!? どうしてくれるんですか!?」

 

「はあ!? 意味わかんねぇよ!?」

 

 年増同士は、仲違して焦っている。

 

 これだから、年増は醜いのだ。

 

 もっと女神幼女の清水のような心を見習ってもらいたい。

 

「やれ、キラーマシンども!!」

 

〔……ジ……ジ……リョウ……カイ……〕

 

 吾輩の命令で、キラーマシンどもは持っている武器を振りかぶりながら、年増女神に近づいていく。

 

 いくら女神と言えども、1人でキラーマシン3体を相手になど……

 

「トルネレイドソード!!」

 

「エクスバスター!!」

 

〔!?!?!?!?!?〕

 

 突然、吾輩の後ろから飛んできた人物と魔法で、キラーマシンが吹き飛ばされてしまった。

 

 しかも、攻撃を受けた2体が重なり合うように倒れることで、攻撃を受けていないもう1体も激しい音と共に地面に崩れ落ちてしまった。

 

「ふぅ、何やってるのよ、ブラン」

 

「の、ノワール? どうしてここに?」

 

 飛んできた人物、ラステイションの年増女神は呆れたよな目でルウィーの年増女神を見るとため息をついていた。

 

「ユニの迎えに来たと思ったら、変な奴と戦ってるじゃない。しかも、コイツらってキラーマシンじゃなかったかしら?」

 

「ああ、そうだ。後、そこにいる変態は、犯罪組織の幹部の1人だ」

 

「……嘘でしょ?」

 

 ラステイションの年増女神は目をパチクリさせて、吾輩を見つめると、肩をすくめた。

 

「犯罪組織の幹部って、意外とバリエーションに富んでいるのね。差し詰め、お笑い担当ってところかしら?」

 

「し、失礼な!? 吾輩は癒し系だ!!」

 

 この吾輩の体から発せられる癒しオーラが見えんと言うのか!?

 

 年増は目も悪いので仕方ないかもしれないが、お笑い担当とはいったいどう言う解釈だ!!

 

「ええい、年増女神が2人に増えたところで、こちらの方が……」

 

「ノワールさん1人じゃないわよ」

 

「俺達もいるぜ」

 

 吾輩が振り向くと、そこにはもう1人の女神幼女とバイクに乗った勇者の姿があった。

 

 

*     *     *

 

 

「夢人!!」

 

「ラムちゃん!!」

 

 ユニとロムは、2人の姿を見て喜びの声を上げた。

 

 しかし、ユニはすぐに顔を暗くして俯いてしまった。

 

「よし、突っ切るぞ、ラム」

 

「ラジャー!」

 

 夢人は『変身』した状態で横にいるラムに声をかけると、キラーマシン達の横を突っ切り、ユニ達に近づいた。

 

 キラーマシン達はノワールとラムの攻撃で倒れた際に、体が絡まったようで身動きが取れずにいた。

 

 そのため、夢人達は無事にユニ達に近づけた。

 

「……夢人」

 

「どうした、ユニ」

 

 ユニは意を決して俯いたまま夢人に話しかけた。

 

 夢人はユニの様子を見て、トリック達を警戒しながらユニの声に耳を傾けた。

 

「……アタシ、約束破っちゃった」

 

「負けたのか?」

 

「うん、アタシ負けちゃったの」

 

 ユニは悲しそうに涙を堪えて、夢人に報告していく。

 

「信じてくれたのに、アンタに信じてもらえたのに、アタシは負けちゃったの。ごめんな……」

 

「俺も負けたよ」

 

「え?」

 

 ユニが信じられず顔を上げると、そこには快活に笑う夢人の顔があった。

 

「俺もブレイブに負けた。救おうとしたのに、逆に救われたんだ」

 

「それって、どう言う……」

 

「だから、2人でまたここから始めるぞ」

 

 ユニが追求しようとする声を遮り、夢人は不敵に笑いながらトリック達に視線を向けた。

 

「1度や2度負けたからって、諦めんじゃないぞ。何度だって前向いて進むんだ」

 

「……うん、そうだよね。何度だって挑むのがアタシ達なんだから」

 

 ユニは吹っ切れたように柔らかく表情を崩すと、瞳に力を込めて夢人の隣に立った。

 

「足引っ張るんじゃないわよ、夢人」

 

「そっちこそ、間違って俺を撃たないでくれよ、ユニ」

 

 ユニが大丈夫な様子を見て、ノワールは苦笑しながら話しかけた。

 

「まったく、心配かけたと思ったら、私には一言もないわけ?」

 

「ごめんね、お姉ちゃん。全部終わったら、ちゃんと話すよ。だから、今はアイツらを倒そう!」

 

「そうね。それじゃ、ワンダー」

 

〔わかっている〕

 

 ワンダーがユニの横に移動すると、その横に付けられていた物を取り外した。

 

 ユニは目を見開いて、それを手に取った。

 

「これって……X.M.B.?」

 

「その改良版よ。あなた、壊れてそのままにしてたでしょ?」

 

「う、うん」

 

「それをケイが直してくれたついでに強化してくれたのよ。思う存分使いなさい」

 

「お姉ちゃん、ケイ……ありがとう」

 

 ユニは目を閉じて両手でX.M.B.を抱きしめながら『変身』した。

 

「本当のアタシの力、見せてあげるわ!!」

 

 不敵に笑いながらX.M.B.を構えるユニを横目に見て、夢人はとあることに気付いた。

 

「ユニ、お前のプロセッサユニット、少し変わったか?」

 

「え、わかるの?」

 

「いや、何となくだけど、ちょっと変わったかなって思ってさ」

 

「……そうなんだ、うん」

 

 ユニは自分のプロセッサユニットがジェネレーションになったことに気付いてくれたことが嬉しかった。

 

 夢人は急に目を閉じて口元を緩ませたユニの様子に首を傾げたが、自分も魔法を使うため集中し始めようとした。

 

「夢人お兄ちゃん」

 

「ロム? どうした?」

 

 アイス・エッジ・ソードを使おうとした時、後ろからロムに話しかけられた夢人は、目を丸くして振り向いた。

 

 そこにはロムだけでなく、隣にラムの姿もあった。

 

「わたし、トリックちゃんを助けてあげたいの」

 

「トリック・ザ・ハードを?」

 

「うん、手伝って欲しいの」

 

 一瞬顔をしかめた夢人だったが、ロムが真剣にお願いしていることを悟り、柔らかく笑みを浮かべて頷いた。

 

「わかった。トリック・ザ・ハードを助けよう」

 

「うん!」

 

「もちろん、わたしも手伝うわよ!」

 

「ラムちゃん!」

 

 夢人だけでなく、ラムも協力してくれると聞き、ロムは目を輝かせて喜んだ。

 

「あの変態にはちょっと思うところがあるけど、ロムちゃんにも助けたい理由があるんでしょ?」

 

「うん、トリックちゃん、助けて欲しいって思ってる」

 

「なら、答えは決まってるじゃない。あの変態を助けるわよ、ロムちゃん、夢人」

 

「ああ!」

 

「うん!」

 

 ロムが頷き『変身』の光に包まれると共に、ラムを中心にもう1つの光が発生した。

 

 やがて、光が完全に収まると、そこにはプロセッサユニットを新しくさせた2人の姿があった。

 

 《ディーエ・スライト》から、《ディーエ・スィル》に変わった2人のプロセッサユニットを見て、夢人は驚いた。

 

「2人のプロセッサユニットも変わった」

 

「うん、わたし達も、皆を守る!」

 

「わたし達も、いつまでも守られたり、助けられてばかりじゃないわよ!」

 

「……お前ら」

 

 2人の決意を聞いていたブランは嬉しそうに頬を緩めた。

 

「よし、それなら、しっかりついて来いよ!!」

 

「頑張る!!」

 

「任せてよ!!」

 

 言葉を交わすと、3人は態勢を立て直したキラーマシンの1体に向かって飛んで行った。

 

 すでに、ノワールとユニもキラーマシンと対峙している。

 

 残されているのは、夢人とワンダー、それとトリックともう1体のキラーマシンだけである。

 

「俺もアーマーモードで……」

 

『パパ!!』

 

 夢人がアーマーモードを使おうとした時、頭の中にアカリの声が響いてきた。

 

 

*     *     *

 

 

 頭の中に響いてきたアカリの声に、俺は立ち止まって尋ねた。

 

 ……どうした、アカリ?

 

『わたしも、いっしょにたたかう!!』

 

 はい? アカリも一緒に戦う?

 

 俺は一瞬、アカリがキラーマシン相手に素手で戦う光景を思い浮かべたけど……さすがにそれは無理だろうな。

 

『わたしのちから、つかって!!』

 

 ……アカリの力?

 

 それって、もしかして黒歴史モードのことか?

 

『ちがうよ!! わたしのちから、パパがつかっていっしょにたたかうの!!』

 

 俺がアカリの言葉の意味がわからず困惑していると、腰に妙な熱を感じた。

 

 見てみると、腰に携えていた剣がわずかに光っているように見えた。

 

 光は弱いけど、俺はアカリの力で物が光るような光景を見たことがある。

 

 ゲイムキャラ達からもらったディスクも、アカリの力が注ぎ込まれると同じように光っていたんだよな。

 

 ……ってか、アカリは本当に何をしているんだ!?

 

『おもいうかべて、あのひとのたましいを』

 

 ……魂。

 

 アカリが誰のことを言っているのかは考えるまでもなくわかった。

 

 そいつの魂は、今もゲイムギョウ界の平和のために生き続けているんだから。

 

『消えない魂の輝き、今新しく光輝く』

 

 俺がイメージに集中していると、アカリとは違う声が聞こえてきた。

 

 その声は、俺が以前ディスクに力を注ぎ込んだ時に聞いたものであった。

 

 ……これが本来のアカリの声なのかもしれない。

 

 赤ちゃんじゃなくて、立派な『再誕』の女神としてのアカリの声なのかもしれないと思うと、俺は嬉しくなる。

 

 アカリも俺達と同じ、ゲイムギョウ界を平和にするために戦うことを決めてくれたんだから。

 

 だったら、俺はアカリのパパとして、娘の信頼を受け取ってみせる。

 

 俺はゆっくりと腰の剣に手を伸ばした。

 

 アイツの魂、その名は……

 

「ブレイブソード!!」

 

 俺が鞘から剣を引き抜くと、剣は光と共に姿を変えた。

 

 その形状はサイズは異なるが、ブレイブの魂、ブレイブソードそのものである。

 

 これがアカリなりの答えなのだろう。

 

 大好きな物を消さずに守る覚悟、ブレイブを忘れないようにするために力を使った結果だ。

 

〔……ユウ……シャ……ユル……サナ……イ……!〕

 

 ブレイブソードの光に気付いたのか、俺に向かって残り1体のキラーマシンが向かってくる。

 

 前までの俺なら慌てただろうけど、今の俺は違う。

 

 俺の手にはアカリだけじゃなく、ブレイブの思いと力も託されている。

 

 そんな俺がここで負けるわけにはいかない!!

 

「はあああああああああああ!!」

 

 俺は向かってくるキラーマシンに駆けだした。

 

 キラーマシンは向かってくる俺を叩き斬ろうと、持っていた剣を振り下ろしてきた。

 

 しかし、ただの剣が俺達の剣を砕けるわけがない!!

 

「うおおおおおおおおおおお!! はっ!!」

 

〔!?!?!?〕

 

 俺は振り下ろされた剣に向かって、ブレイブソードを振り上げた。

 

 ブレイブソードはまるで豆腐を斬るかのように、キラーマシンの剣を斬り裂いた。

 

 剣が砕かれて動きを止めたキラーマシンの胴体に、俺はブレイブソードを突き刺した。

 

「っ、せいやあああああああ!!」

 

〔!?!?!?!?!?!?〕

 

 突き刺したブレイブソードを滑らせるように動かし、キラーマシンを両断した。

 

 ブレイブソードの力は凄まじかったようで、滑らせた方向とは逆の方向も綺麗に斬れており、キラーマシンは上半身と下半身が別れて地面に崩れ落ちた。

 

 キラーマシンを斬り伏せた俺は、慌てて見ていたトリック・ザ・ハードに向かってブレイブソードの剣先を向けた。

 

「さあ、大人しくしろ、トリック・ザ・ハード」

 

「き、キラーマシンが!? それに、なぜ貴様がブレイブの剣を使っているのだ!?」

 

 キラーマシンが俺に倒されたこととブレイブソードを使っていることに驚いていたトリック・ザ・ハードに、俺は柔らかく笑いかけた。

 

「これは俺とブレイブの絆の証だ」

 

 俺はアイツの正義をゲイムギョウ界の悪を倒す剣の正義だと思っている。

 

 俺にない力で、ゲイムギョウ界を脅かすあらゆる脅威から平和を守る力の正義。

 

 そう考えると、俺の絆の正義は盾だ。

 

 ブレイブになかった思いで、ゲイムギョウ界を優しく包み込んで守る思いの正義。

 

 ぶつかり合うことで、互いを認めた俺達の正義が1つになった証なんだ。

 

 剣と盾、2つの正義でゲイムギョウ界を守る。

 

 このブレイブソードはその証なんだ。

 

「トリック・ザ・ハード、もう戦いは止めよう。俺はお前を助ける」

 

「な、何を言っている!? 吾輩は貴様らの敵なんだ……」

 

「敵も味方も関係ない。助けを求める者を助けるのが、俺達の誓いであり、願いだ」

 

 ロムにお願いされたからではなく、俺もトリック・ザ・ハードを助けたい。

 

 俺達の正義は、ゲイムギョウ界に生きる全ての命の幸せを守る正義なんだから。

 

 俺はゆっくりとブレイブソードの剣先を下げて、手を伸ばした。

 

「ほら、掴まれよ」

 

「だ、だが、吾輩は貴様にも酷いことを……」

 

「お前が謝ってくれれば、すぐにでも許してやるさ。傷跡とかも残ってないんだから」

 

「あ、ああ。すまなかっ……!?」

 

 トリックが謝りながら俺の手に手を伸ばそうとした時、急に動きを止めた。

 

「トリック?」

 

「あ、ああ、あああ……」

 

「任務完了」

 

「トリック!? それに、お前はマジック・ザ・ハード!?」

 

 トリックが急に前のめりに倒れたと思ったら、背後にはマジック・ザ・ハードの姿があった。

 

 その手には黒い玉のようなものが握られていた。

 

「帰還する」

 

「ま、待て!?」

 

 俺が慌てて叫ぶが、マジック・ザ・ハードはこちらに見向きもせずに、黒い球を持ったまま飛んで行ってしまった。

 

 追いかけたい気持ちもあるが、それよりもしなければいけないことがある。

 

「おい、トリック!? しっかりしろ!?」

 

「……あ、アクククク、い、今までの、悪さのつけが、来たようだ」

 

「何言ってやがる!?」

 

 体を抱き上げながら呼びかけると、トリックは弱弱しい声で笑みを浮かべながら話だした。

 

「わ、吾輩は、もう助からん。吾輩の体にとって、1番大切なものを、抜きだされてしまったのだから」

 

「大切なもの……あの黒い玉か!」

 

「そうだ。あれは、吾輩達、幹部にとっての、生命線と言えるものだった」

 

「おい、もういいからしゃべるな!?」

 

「いいから聞け!!」

 

 トリックは有無を言わせずに、力強く叫んだ。

 

 その姿が消える前のろうそくの火のように見えてしまい、俺は不安を隠せない。

 

「あれこそ、犯罪神様、復活のために、必要な鍵、であった」

 

「犯罪神復活の鍵?」

 

「そうだ。今となっては、何の役にも立たないはずなのに、フィーナは、あれを何のために使おうとしているのか、わからんがな」

 

「フィーナ、フィーナだって!?」

 

 俺は以前ネプギアとの温泉旅行の帰りに会ったフィーナの名前が出て驚いてしまった。

 

 もしかしたら別人かもしれないけど、俺の中では彼女の姿しか思い浮かべることができなかった。

 

「……こ、ここまでのようだな」

 

「何言ってやがる!? 諦めんなよ!? すぐに治療すればなんとかなるかもしれないじゃないか!?」

 

「無理なのは、さっき説明したはずだ。あれを、失くしてしまった、吾輩は、もう消えるしかない」

 

 俺は悔しさで涙が流れてきた。

 

 また助けたい人を守れないのか、どうして俺は肝心な時に無力なんだよ!!

 

「フッ、最後は、幼女に抱かれて、死にた……」

 

「トリック……トリック!!」

 

 俺は目を閉じて黙ってしまったトリックに向かって呼びかけるが、一向に反応がない。

 

 このまま本当に……

 

『大丈夫だ』

 

 絶望を感じていると、俺の頭の中にアカリとは違う声が響いてきた。

 

 聞いたことがない女性の声だった。

 

 ……お前はいったい誰なんだ?

 

『時間がない。コイツを救いたいのなら、強く救いたいと思え』

 

 俺は素直にその声に従った。

 

 なぜかその声を聞いていると、妙な安心感が湧いてきた。

 

 声の通りにすれば、トリックを助けることができると思えたのだ。

 

 目を閉じて、俺はトリックの無事な姿をイメージする。

 

 要は、治療魔法と同じだ。

 

 トリックを救いたいと強く思うだけ。

 

 すると、目を閉じていてもわかるくらいの光がトリックの体から発生した。

 

『これでひとまずは大丈夫だ』

 

 俺はその声を聞いて、安心して頬を緩めながら目を開けた。

 

 ……しかし、すぐに目の前は暗くなっていった。

 

「あ、あれ……力が……」

 

『わたしも……めが……まわる……』

 

 瞼を開けていられないほどの脱力感を感じ、俺は目を閉じてしまった。

 

 遠くから誰かが呼ぶような声が聞こえてきたが、俺の意識はどんどん遠のいていく。

 

『よくやったな』

 

 最後に、俺の瞼に流れるような銀髪の女性がほほ笑む姿が見えた気がした。

 

 

*     *     *

 

 

 リーンボックスの教会、ナナハはトレーに食事を乗せながらとある部屋へと向かっていた。

 

 その部屋の前まで来ると、ナナハは扉をノックした。

 

 しかし、中からは何の反応もない。

 

 ナナハはため息をつきながら、ドアノブに手をかけて部屋へと入って行った。

 

 部屋の中は電気がつけられておらず真っ暗であった。

 

「……いつまでそうしているつもりなの?」

 

 ナナハは呆れながら、暗い部屋で1人でいる人物に話しかけた。

 

 だけど、やはりその人物は何の反応も示さず、膝を抱えて座ったままであった。

 

「食事持ってきたよ。一緒に食べよ、ネプギア」

 

「……うん」

 

 ……暗い顔をしたネプギアは、ナナハの言葉に小さく頷いて応えた。




という訳で、今回は以上!
ようやく長引いたこの章も終わりました。
後は、次話のブラン視点での女神通信でようやく次の章に移れます。
……多分、次章も予定よりも長引くんだろうな。
それでは、 次回 「きりひらけ! 女神通信(ブラン編)」 をお楽しみに!

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