超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
実は昨日からこの作品、通算UA60000を突破してました!
本当なら、昨日のうちにお礼のお言葉をするべきだったのでしょうが、昨日はこちらを投稿することができずにすいません。
改めまして、本当に皆さんありがとうございます!
それでは、 変わらないこと はじまります


変わらないこと

「……そ、そんな……マジック、様……」

 

 アタイは離れた位置に見える尊敬する上司が、憎い相手の足を舐めている姿に絶望した。

 

 少しでもマジック様の負担を減らせるように、アタイとネズミは欠片を探しに外へ出ていた。

 

 今日は3つも欠片を見つけることができたと、内心喜んでいたのに、これを渡す相手の姿がどこにも見えない。

 

 ……アタイの知ってるマジック様がどこにもいない。

 

「お、おい!? し、しっかりするっちゅ!?」

 

 目の前が真っ暗になり、足から力が抜けたアタイに焦ったようにネズミが声をかけてきていた……と思う。

 

 確信が持てないのは、その声を聞くだけの余裕なんてどこにもなかったからだ。

 

 どこか遠くで音が反響しているように、何を言っているのかもわかっていなかった。

 

 瞼に映るのは、変わってしまったマジック様とそれを足蹴にした憎い相手の姿だけ。

 

 ……アイツが……アイツがっ!!

 

「や、やめるっちゅ!? そんなもの持ってどこに行くつもりっちゅか!?」

 

「離せ!! 今すぐアイツを殺す!!」

 

 立ち上がろうとしたアタイの肩を押さえて、ネズミはこれからすることを止めようとしてきたが、そんなことでは止まらない!!

 

 アイツがマジック様をあんな風にしやがったんだ!!

 

 これが許せるはずがない!!

 

 この刀で斬り殺してやる!!

 

「落ち着けっちゅ!? 大体お前が敵うはずがないっちゅよ!? マジック様達でさえ歯が立たなかったのに、下っ端のお前が何ができるっちゅか!?」

 

「うるせぇ!! いいから離しやがれ!!」

 

「離さないっちゅ!! ここで無駄死にしても何も変わらないっちゅ!!」

 

「っ!!」

 

 無駄死になんかじゃないって反論したかった。

 

 でも、実際アタイがアイツに敵う通りなんてどこにもない。

 

 今度は目の前がぼやけてきやがった。

 

 何でアタイは何もできないんだよ。

 

 何であの人の助けにすらなれないんだよ!!

 

「……逃げるっちゅよ」

 

「テメェ、何言って……」

 

「逃げるって言ったちゅ!! ここでおいら達ができることは何もないっちゅ!!」

 

 ネズミの言葉に怒りが湧き、アタイはネズミに掴みかかった。

 

「テメェ!! マジック様を見捨てて逃げろって言うのか!!」

 

「そうっちゅ!! このままじゃ、おいら達殺されるっちゅ!! だから、逃げるっちゅ!!」

 

「ふざけんな!! 逃げるんなら、テメェだけで逃げやがれ!! この臆病ネズミが!!」

 

「臆病者でいいっちゅ!! 今は逃げて、マジック様を助ける方法を探しだした方がいいっちゅ!!」

 

 マジック様を……助ける方法……?

 

 そんなことができるのか?

 

「もうおいら達が知ってるマジェコンヌじゃないっちゅ!! こんなところ、もういたくないっちゅ!!」

 

「……テメェ」

 

「形振りなんて構ってられないっちゅ!! 女神……勇者に助けを求めるっちゅ!! おいら達にはそれしかできないっちゅ!!」

 

 ネズミはふざけたことを言ったり、変な行動をとることもあるが、犯罪組織に対する忠誠心は本物だった。

 

 それが今は、涙を流しながら居たくないって叫んでいる。

 

 その姿を見て、アタイも少しだけ頭が冷えた。

 

 ……そうだよな、ネズミだって目の前のことが信じられないんだ。

 

 なら、アタイも泥を啜ってでもマジック様を助ける方法を見つけよう。

 

 虫の好過ぎる話だが、今は勇者気取りと女神に頼ることしかできない。

 

「……悪い」

 

「わかったならいいっちゅ。さあ、逃げる……っ!?」

 

 逃げようとしたネズミの顔が驚愕に染まる。

 

 アタイも背中に冷たいものを感じながら振り向くと、アイツと目があった。

 

 何を考えているのかわからない無表情でアタイらを見ていた。

 

 逃げることもできないのかよ……

 

 マジック様を助ける方法すらわからず死ぬと思っていたが、アイツは急にアタイらを嘲笑うかのように見ていたのだ。

 

 すると、次の瞬間には興味を失くしたようにこちらには一切視線を向けない。

 

 ……馬鹿にされたのだ。

 

 アタイらなんていつでも殺せる、ここから外に出たって何もできないと言われた気がした。

 

 クソッ……チクショウッ!!

 

 見逃されたアタイらは、無事に外に出ることができた。

 

 アイツに絶対見逃したことを後悔させてやる!!

 

 何もできないアタイは、そう考えていなければ心が押し潰されてしまうと感じた。

 

 ……必ず、必ず助けますマジック様!!

 

 アタイはどうなったって構わない。

 

 だから、助けてくれ!!

 

 

*     *     *

 

 

 慌てた様子で教会に入って来たリンダ達の話を聞き終えても、ネプテューヌ達は黙ったままであった。

 

 その沈黙を拒否だと勘違いしたリンダは、床に額を付けながらもう1度願い出た。

 

「頼む!! テメェらに頼むのは筋違いだって、充分理解している!! でも、どうしてもマジック様を助けたいんだ!!」

 

 ネプテューヌ達がマジックを恨んでいることは知っていた。

 

 何せ、3年前に直接対峙したのはマジックなのだ。

 

 その相手を助けて欲しいと言われても、無理だとわかっている。

 

 それでも、リンダには頭を下げて願い続けることしかできない。

 

「マジック様を助けてくれるのなら、アタイは何だってやる!! 死ねと言われれば、喜んで死んでやる!! だから、頼む!! どうかマジック様を……」

 

「リンダ」

 

 懇願するリンダに、ナナハが近づき膝をついて話しかけた。

 

「頭を上げて」

 

「……バカ、女」

 

「ナナハだよ。ナナハって呼んで」

 

 頭を上げたリンダは自分と同じ目線の高さにナナハがいたことに驚くと、ナナハはリンダを安心させるように柔らかく笑いかけた。

 

「リンダはその人を助けたいんだね?」

 

「あ、ああ。マジック様を助けてもらえるのなら、何だって……」

 

「うん、いいよ。助ける」

 

 そのナナハの一言に、リンダだけでなく、その場に居た全員が目を見開いた。

 

「ほ、本当、なのか?」

 

「そうだよ。もしかして、信じられない?」

 

「……そ、それは」

 

 ほほ笑みながらマジックを助けると言うナナハの顔から、リンダは視線をそらして言い淀んだ。

 

 自分でも無理だと思っていた頼みを躊躇いもなく引き受けようとするナナハが信じられなかった。

 

「テメェらは女神で、アタイらは敵……」

 

「関係ないよ」

 

「え」

 

「敵とか味方とか、そんなの関係ないよ」

 

 ナナハはリンダの手をとりながら、優しく語りかけた。

 

「困ってる人、助けを求める人を助けるのが女神なんだ。だから、リンダ達を助けるよ」

 

「バカ女……」

 

「ナナハだよ。それに、リンダ達は私の恩人で、好きな人達だもの。断るわけがないよ」

 

「ナナ、ハ……」

 

「うん。だから、死ぬなんて言わないで、一緒に助けよう」

 

「……うんっ!!」

 

 ナナハは涙腺を崩壊させたリンダを優しく抱きしめた。

 

 その背をなでると、リンダはナナハの背中に腕を回して強く抱きしめた。

 

「……はーい!! わたしはナナハちゃんに賛成!! 泣いている人を笑顔にするのが、女神のお仕事だもんね!! マジックの1人や2人、わたし達にかかれば、簡単に助けることができるんだから!!」

 

「ちょっと、あんな奴がそう何人もいるわけないでしょ。でもいいわ。そのお願い、聞いてあげる」

 

「反対する理由がないわ。それにしても、あなたの妹は大物になるわね」

 

「当然ですわ。わたくしの自慢の妹なんですもの」

 

「……お、お前ら」

 

 次々とナナハの意見に賛成を示すネプテューヌ達をワレチューは目を丸くしながら見つめた。

 

「ほ、本当に、おいら達を助けてくれるっちゅか?」

 

「うん、困ってる人、放っておけない」

 

「そうよ。だから、安心しなさい。わたし達でちゃんとマジックを助けるんだから」

 

 それでも信じられず、瞬きを繰り返すワレチューの肩をファルコムは叩いてウインクをした。

 

「君も知ってるでしょ? 敵味方関係なく、困ってる人を助けようとする人のことを。あたし達全員同じ気持ちだよ」

 

「で、でも……」

 

「ワレチュー」

 

 ワレチューは後ろからフェルに声を掛けられたことに、ビクッと体を震わせた。

 

「……魔物使い」

 

「ボクも手伝います。一緒にマジック・ザ・ハードを助けましょう」

 

「で、でも、おいら達はお前のフェンリルを……」

 

「許します。それに、リンは生きてます。ボクがあなた達を恨む理由はないんです」

 

 ワレチューは顔を暗くしながら俯いた。

 

 かつてリンを殺したのは、紛れもなくリンダである。

 

 そのことからワレチューは、絶対にフェルが自分達を恨んでいると思っていた。

 

 しかし、フェルは口元を緩めて笑みを浮かべながら、ワレチュー達を許した。

 

「憎いと思ったことがなかったわけではありません。でも、ずっと恨んでいても何もできません。だから、許していけるんです」

 

「……信じても、本当にいいっちゅか?」

 

「信じてください。ボク達もワレチュー達の言葉を信じます。だから、顔を上げてください」

 

「……ありがとうっちゅ」

 

 顔を上げたワレチューは泣きそうな顔で笑みを作り、お礼を言った。

 

「本当に……本当に、ありがとう!!」

 

「お礼はマジックを助け終えた後に聞くよ。今は泣きやんで」

 

「うん。ありがとう、ナナハ」

 

 ナナハの肩に顔を埋めていたリンダも目を赤く腫らしていた。

 

 それでも、リンダはナナハのことを真っ直ぐに見つめてお礼を言った。

 

「さーて、話もまとまったことだし、これからどうするのか話そうか」

 

「そうね。わたしはそれぞれの国に戻ることを提案するわ」

 

 リンダ達も納得した様子であったため、ネプテューヌは明るい声を出してノワール達に尋ねた。

 

 その中で、ブランが控えめに手を挙げながら意見を述べた。

 

「犯罪組織がどう動くのかわからない以上、女神が国を離れるのは危険だわ」

 

「でも、戦力を分散したら、それこそ危険があるんじゃないかしら?」

 

「全員が1か所に集まっていると、初動が遅れてしまうわ」

 

「多少の危険を冒してでも、被害を最小限に抑えるためには、それしかありませんわね」

 

「おお! さすがブラン! すごい説得力だね!」

 

 ブランの考えは、犯罪組織がどう動くのか予想ができないために広く戦力を分散させるものである。

 

 これにより、被害を最小限に抑えることができる可能性がある。

 

 しかし、相手の戦力によっては危険が伴ってしまう。

 

「何かあれば、すぐに連絡をすればいいわ」

 

「時間稼ぎをするってわけね……現状は相手の出方待ちだし、仕方ないわね」

 

「ええ。それに、今危険なのは、単独行動をしているネプギアとユニよ」

 

「って、そうだよ!? 2人は何が起こっているのか、まったく知らないだもんね!?」

 

 今危険な状態なのは、ネプギアとユニの2人である。

 

 2人はキラーマシンが復活したことや、犯罪組織で異変が起こったことをまったく知らない。

 

 行方がわからず、連絡もつかない2人には警告することさえできないのだ。

 

 特に、ユニはX.M.B.が大破しているため、『変身』したとしても扱える武器がない。

 

 戦う手段がないのである。

 

「2人の捜索をしながら、犯罪組織に備える……そう言った理由もあって、戦力を分散するわけですのね」

 

「そう言うこと。だから、わたし達は急いでルウィーに帰るわ……そうだ」

 

 ブランはそこで少し考えて、ワレチューへと視線を向けた。

 

「あなたも一緒に来てくれる?」

 

「お、おいらっちゅか?」

 

「2人の捜索に力を貸してほしいの」

 

「なら、リンダさんはわたくし達と一緒にリーンボックスに来て下さいまし」

 

「わ、わかった」

 

 ブランがワレチューをルウィーに連れて行くのは、単純に人手が欲しいだけではない。

 

 リンダとワレチューを離れさせて、監視をすると言う目的もある。

 

 リンダ達に協力をすることを決めたからと言って、全ての話を鵜呑みにしたわけではない。

 

 嘘をついている可能性もあるからだ。

 

 そのことを察したベールも、自分達と一緒に来るようにリンダに勧めた。

 

「そう緊張なさらずに、ナナハのご友人を無碍に扱うわけがありませんわ」

 

「だ、誰が友達だ!?」

 

「え、私達友達じゃなかったの?」

 

「ち、違うだろ!? アタイらはそんな仲じゃ……」

 

「だったら、今から友達ね。はい、決定」

 

「って、おい!? 何勝手に決めてやがる!?」

 

「まあまあ、仲のよろしいことで」

 

「違うって言ってんだろ!?」

 

 ベールは、ナナハに振り回されるリンダの姿を見て、口元を緩めた。

 

 口ではなんと言おうと、2人の様子は友人同士のじゃれ合いに見えたのだ。

 

「それじゃ、確認するわね。私達はそれぞれの国に戻って、ユニとネプギアの捜索をしつつ、犯罪組織の動きに備える。これで問題ないわね?」

 

「あ、ラムは夢人のことをよろしくね」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!? それ本気で言ってたの!?」

 

 話をまとめたノワールに付け加えるように、ナナハがラムに夢人のことを頼んだ。

 

「ラステイションに居るんだから、ノワールさんやファルコム、フェルに任せればいいじゃない!? どうして、わたしなの!?」

 

「ラムに頼みたいんだよ」

 

「だから、わたしもネプギアとユニちゃんを探すって言ってるのよ!?」

 

「ラムちゃん」

 

 自分も皆の役に立ちたいと考えるラムは、留守番のような役割に不満があった。

 

 夢人がネプギアとユニがいないことを知れば、傷ついてしまうことを理解しているからである。

 

 ただでさえ、ブレイブとの一騎打ちで体がボロボロなのだ。

 

 夢人のことだ、怪我が完治しなくても、無理をして2人を探すはずだとラムは予想している。

 

 そのために、いなくなった2人だけでなく、夢人のためにも早く探し出す必要があるとラムは考えていた。

 

 そんなラムにロムは頭を下げながらお願いした。

 

「ラムちゃんにしか頼めないの(ぺこ)」

 

「ロムちゃん……じゃあ、理由を教えてよ? どうしてわたしが夢人の側にいなくちゃいけないの?」

 

「ラムは夢人に言いたいことがあるんでしょ? それを素直に言ってあげて欲しいんだ」

 

「……わたしが……言いたいこと」

 

 理由を尋ねたラムだったが、逆にナナハに問われてしまい、目を閉じて胸に手を当てた。

 

「それを正直に夢人に言ってあげて」

 

「……それなら、別にわたしじゃなくても」

 

「ラムだから頼むんだよ。私達だと、夢人を甘やかしちゃいそうだから」

 

「……わかった。夢人のことは任せて」

 

 ラムは難しい顔のまま、俯いて了承した。

 

 

*     *     *

 

 

 その日の夜、ネプテューヌ達がそれぞれの国に帰っていく中で、ラステイションの病院の一室で寝ている夢人の体から、突然アカリが現れた。

 

「……パパ」

 

 アカリは心配そうに、規則正しい寝息を立てている夢人の顔に触れた。

 

 その顔は今にも泣きそうに歪められており、普段のにこにことしている面影はどこにもなかった。

 

「……どうして……どうしてなの?」

 

 疑問の声をあげるも、アカリの問いに答える者はこの場に居なかった。

 

 ただ静かに夢人の寝息と、アカリの小さな声が病室に響いていた。

 

 

*     *     *

 

 

 ラステイションを去って1夜、アタシはホテルから出ると当てもなく街を歩き始めた。

 

 見つからないようにするためには、1か所に留まることは避けるべきだ。

 

 すぐに次の目的地を決めないといけない。

 

「……その前に、お腹空いたな」

 

 お腹から音が漏れだしたことに、少しだけ頬が熱くなった。

 

 ホテルでは……いや、昨日から碌に何も食べていない。

 

 食欲が湧かずに、そのままベットで眠ってしまったのだ。

 

 それが今では空腹を感じている。

 

 ……それが少し悲しいな。

 

 体が正直なのか、アタシの悩みは一晩で消えてしまうほど軽いものであったのか。

 

 どちらにせよ、腹が減っては気力が湧いてこない。

 

 どこかで何かを食べないと……

 

「ああ!! 居た!!」

 

「本当ですの!!」

 

「っ!?」

 

 突然大きな声が聞こえたと思って振り向くと、そこには会いたくない顔ぶれがいた。

 

 もう、見つかっちゃったの!?

 

「日本一、がすと」

 

 アタシを指さす日本一と、険しい視線で見つめるがすと。

 

 アタシが今いる国、ルウィーにいる元仲間であった。

 

「ユニ、お願いだから話を……」

 

「っ!?」

 

「ま、待って欲しいですの!?」

 

 アタシは何かを言っていた2人の反対の方向へと走り出した。

 

 ……ごめんなさい。でも、アタシはここで捕まるわけにはいかないの。

 

 捕まってしまえば、嫌が応にも夢人に会うしかなくなってしまう。

 

 だから、アタシは2人から逃げ出した。

 

 見つかってしまったら、もうルウィーにもいられない。

 

 早く他の国に逃げないと……っ!?

 

「ユニちゃん」

 

 アタシの進路を塞ぐように、1人の女の子が立ちはだかった。

 

「……ロム」

 

「お話、聞かせて」

 

 

*     *     *

 

 

「……う、ううん……ここは?」

 

 夢人は窓から差し込んできた光の眩しさに目を細めながら、見知らぬ天井を見上げた。

 

 上半身を起こして回りを見ることで、自分がどこに居るのだか予測することができた。

 

「……ここは、病院、かな?」

 

 寝ぼけて頭が回らないのか、完全に自分が置かれている現状を理解することができない。

 

 目をこすりながら重たかった瞼を開くと、1度大きく背を伸ばした。

 

「う、ううーん。結構体が硬くなってるな。どれくらい寝てたんだ?」

 

 体中の骨が鳴る音を聞きながら、夢人は体を動かし続けた。

 

 ふと、ベットの近くの机に置かれた時計を見つけた夢人は、自分が半日以上寝ていたことに気付いた。

 

「……今が夜なわけないもんな」

 

 窓の外を見て、夢人はため息をついた。

 

 確かに、ブレイブとの戦いは激しいものであったが、1度も目覚めずに眠ったままだったことに、自分のことながら呆れてしまった。

 

「ユニは……」

 

「パパ」

 

 ブレイブとの対決前に自分達と別れたユニがどうしているのか気になり、ベットから降りようとした夢人を突然現れたアカリが止めた。

 

「アカリ? そうだ、ユニがどうなったの……」

 

「いなくなっちゃった」

 

「……え」

 

 夢人はアカリの言葉が理解できなかった。

 

「それだけじゃない。ママも、いなくなっちゃったよぉ……」

 

「ネプギアも!? どうしてだ!?」

 

「わからないよ!! いなくなっちゃったの!!」

 

 泣きながら自分にしがみつくアカリの様子に、夢人はネプギアとユニに何かがあったことを察した。

 

(2人がいなくなったって……いったい何があったんだよ)

 

「どうして……どうしていなくなっちゃうの……どうしてなの……」

 

「落ち着け、アカリ。すぐに2人とも見つけてやるから」

 

「いや!! いなくなっちゃ、いや!!」

 

 夢人は泣きじゃくるアカリを宥めようと背中をなでるが、一向に泣きやまない。

 

 それどころか、さらにしがみつく力が強くなった。

 

「パパもいなくなっちゃ、いや!! いなくならないで!!」

 

「大丈夫だって、俺はここに……」

 

「ちがう!! このままじゃ、パパもいなくなっちゃう!!」

 

 アカリは泣きながら夢人を見上げた。

 

「わたし、パパとママ、ずっといっしょにいたい!! でも、わたしはパパのこと、けしちゃう!! いやなの!!」

 

「アカリ、それは……」

 

「……どう言う、こと?」

 

 夢人が真剣な顔でアカリに言葉の意味を尋ねようとした時、突然病室の扉が開いた。

 

 ……そこには、体を震わせているラムの姿があった。




という訳で、今回はここまで!
昨日は突発的に雛祭り記念を投稿してしまったので、こちらは1日ぶりですね。
ようやく次回からこの章で重要な部分に入れますので、楽しみにしておいてください。
それでは、 次回 「繋いだ手」 をお楽しみに!

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