超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

128 / 184
はい、皆さんこんばんわ!
遅くなりましたが、今回で本当にこの章も最終話です。
それでは、 貫いたその先に はじまります


貫いたその先に

 レイヴィスは黒い紐で拘束されたフィーナに向かって、渾身の力を込めて剣を振り下ろした。

 

 黒い紐、シェアエナジーを吸収する特性のある拘束具を使えば、フィーナの動きを封じて再生を阻害することができると判断したからである。

 

 元を正せば、フィーナも女神の卵から生まれた存在。

 

 シェアエナジーを内包している存在に対して、黒い紐は絶大な効果を発揮する。

 

 その効力は、3年前から救出されるまで女神を拘束していたことからも明らかだ。

 

 故に、レイヴィスに躊躇いはない。

 

 この一撃で全てが終わる……そう思っていた。

 

「なっ!?」

 

「うふふ、ざーんねんでした」

 

 レイヴィスの振り下ろした剣は、フィーナによって片手で受け止められてしまった。

 

 黒い紐に拘束されながらも、フィーナは余裕の笑みを浮かべて動いているのである。

 

 レイヴィスは焦った様子で剣を手放して、フィーナから距離をとった。

 

「なぜ動ける!?」

 

「私を誰だと思ってるの? この程度で動けなくなるほどか弱くはないの」

 

 そう言うと、フィーナは自身を縛っている黒い紐を何でもない風に簡単に解いていく。

 

 黒い紐がまるで拘束具の役割を果たしておらず、リボンのように解かれていく様に、レイヴィスは焦りを隠せず、額から冷や汗が流れ出した。

 

 レイヴィスは認めていないが、フィーナも女神。

 

 シェアエナジーを内包している存在ならば、黒い紐の拘束から逃れることができないはずだった。

 

 しかし、フィーナにはまったく効果がなかった。

 

「不思議そうね、魔王ちゃん。でも、これは必然よ」

 

 自分を恐怖にも似た表情で見つめてくるレイヴィスに対して、フィーナはゆっくりと斬られた腕を再生するところを見せつけながらほほ笑んだ。

 

「私の中には気に入らないけどアイツがいる。こんなもので私を拘束することなんてできないのよ……それに」

 

 完全に再生を終えた腕の感触を確かめていると、ふいにフィーナはレイヴィスとの距離を一気に詰めた。

 

 いきなり自分の前に現れたように距離を詰められたことに、レイヴィスは反応ができなかったわけではない。

 

 ただ純粋に腰が引けていたのだ。

 

 切り札として用意していた黒い紐が効果を発揮することができず、どうすればフィーナを倒せるのかを模索しているあまり、無意識でフィーナに恐怖していた。

 

「その目、誰の目?」

 

 レイヴィスの目の前に立ったフィーナは、目を細めて無機質にレイヴィスの赤い右目を見てつぶやいた。

 

 レイヴィスがしまったと思った瞬間には、全てが遅かった。

 

「あ、ああああああああああああ!?」

 

 フィーナの目の前で、レイヴィスは両手で右の瞼を押さえてのたうち回った。

 

 その姿をフィーナは冷ややかに見下しながら、血が滴り落ちる自身の手のひらに乗せられている物……レイヴィスの右目だったものを目線の高さまで持ち上げた。

 

「まさか、こんな形で生きているとは思わなかったわ……ねえ」

 

 ……犯罪神さん、とフィーナはつぶやいた。

 

 

*     *     *

 

 

「あぐっ!? ま、まだよ」

 

 ユニは倒れた体を起き上がらせながら、X.M.B.の銃口をネプギアに向けた。

 

 最初に吹き飛ばされてから、ユニは何度も地面に転がった。

 

 体中に青紫の痣を作り、ただでさえ薄いクレイドル型のプロセッサユニットもボロボロの状態であった。

 

 握られているX.M.B.もすでに罅がいくつも入り、このまま使用すれば自壊してしまう程の損傷を受けていた。

 

 反して、ネプギアはほぼ無傷と言ってもいい。

 

 ライラックmk2のウイングの部分が多少損傷を受けているが、それだけである。

 

 ユニが放つ砲撃の嵐を避け切れず、掠る程度のダメージしか受けていなかった。

 

 自分の状態と満身創痍のユニの状態を比べて、ネプギアは今にも泣き出しそうな顔で訴えた。

 

「もうやめようよ。私これ以上、ユニちゃんを攻撃できないよ」

 

「まだ、だって、言ってんでしょ」

 

「どうしてそんな状態になってまで戦おうとするの?」

 

 息も切れ切れになっているユニがどうしてまだ勝負を続けようとするのかが、ネプギアにはわからない。

 

 いくら負けず嫌いだと言っても、これ以上戦えばユニは体の怪我だけでなく、X.M.B.を失ってしまう可能性もある。

 

 これから犯罪組織との戦いが激化していくと言うのに、どうして自分との戦いでこんなにも傷ついて戦おうとするのか。

 

 ネプギアの訴えを聞きながら、ユニはわずかに頬を緩ませた。

 

「……アンタには、アタシがもう戦えないように見えるの?」

 

「何を言ってるの? そんなの当たり前だよ」

 

「……そっか」

 

 急に変なことを尋ねたユニに、ネプギアはもしかしたらもう戦いをやめるのかと期待した。

 

「だから、早く治療を……」

 

「アンタはいつだってそうね」

 

「え、ユニちゃん?」

 

 戦いが終わると思いユニの治療のために動こうとしたネプギアだったが、ユニの言葉に動きを止めてしまった。

 

 ユニは晴れやかな笑顔で言葉を続けた。

 

「いつだってアンタはアタシの前に居る。出会う前、3年前からずっと……出会ってからもこの距離は変わることはなかった」

 

 ユニはネプギアのことを知った時から生まれた感情を回顧した。

 

 3年前から始まった、敬愛する姉と共にギョウカイ墓場に行ったネプギアに対する劣等感。

 

 当時の『変身』できないコンプレックスのせいで、歪んだ憎悪を抱いた対象。

 

 出会ってから初めて感じた絶望的な実力差。

 

 常に自分の思い人に思われていることに嫉妬した。

 

 女神としての力も、恋愛にしても、ネプギアは常に自分の前にいる存在であった。

 

「心のどこかで諦めてた。アンタには絶対敵わないって。それでもいいって考えてたアタシがいた」

 

「だったら、もう……」

 

「でも、違った!! アタシは諦めない!!」

 

 ユニは言葉と同様に、ネプギアを迷いなく見つめて戦いを続けることを宣言した。

 

「迷って悩んで傷ついて、倒れて転んで躓いても、何度だって立ち上がったアイツのように、アタシは諦めない」

 

「それって……」

 

「最初は、お姉ちゃんのような完璧を目指した。次に、アイツの後ろを支えたいと願った……でも、今は違う!!」

 

 ネプギアはユニの言葉が誰を指すのかに気付いて口を挟もうとしたが、ユニの勢いは止まらなかった。

 

 ユニにとって、ノワールは今でも憧れであり、夢人を支えたいと願う気持ちにも偽りはない。

 

 でも、ユニはそのままでいたくなかった。

 

「アタシはアタシを貫く!! お姉ちゃんでも、アイツでもない!! アタシはアタシになる!!」

 

 ノワールが進む道でも、夢人が進む道でもない。

 

 ユニは自分が進む、自分だけの道を進むことを決意していた。

 

「だから、まだ終われない!! アタシはまだ全力を出してない!! 半端な力じゃ踏み出せない!!」

 

 ユニが最初から全力で戦ったのは、自分が限界まで力を使うためである。

 

 後先なんて考えない。

 

 ただ全力で前に踏み出すために、ユニは攻撃を続け、何度でも立ち上がれた。

 

 精根尽き果てるまで戦うユニの意思の表れである。

 

 しかし、ユニは自身の限界が近いことも理解していた。

 

 だからこそ、ユニはネプギアに自分の意思を伝えたのだ。

 

 自分の体を心配しながらも、わがままに付き合ってくれたネプギアに対する謝罪とお礼を織り交ぜていた。

 

「これが最後よ!! プロセッサユニット、再構成!!」

 

 最後の力を振り絞り、ユニはボロボロであったプロセッサユニットを再構成するために力を込めた。

 

 ……しかし、再構成されたプロセッサユニットは今までと違うものであった。

 

(これって……アタシの新しいプロセッサユニット)

 

 ユニは外見からはあまり変化がないように見える、黒いプロセッサユニット《ジェネレーション》から今までにない力を感じて頬を緩めた。

 

(新しいアタシの始まり……これがその第一歩!!)

 

 ユニはX.M.B.を両手でネプギアに向けて構えた。

 

「行くわよ、ネプギア!! 全力の一撃、受けてみなさい!!」

 

「だったら、私も!!」

 

 ユニの気迫を受け、ネプギアも顔を引き締めてM.P.B.L.の照準をユニへと固定した。

 

「M.P.B.L.、フルドライブ!!」

 

「X.M.B.、最大火力!!」

 

 2人とも互いの武器に全力で魔力を注ぎこみ、最大の一撃を繰り出そうとしていた。

 

「シュート!!」

 

「ファイア!!」

 

 同時に発射された2つの砲撃は、互いの中心で激しくぶつかり合った。

 

 拮抗し合う2つの光の激突、2人も互いの武器を強く握りしめて歯を食いしばりながら力を注ぎ続けた。

 

 ……しかし、ここでトラブルが発生した。

 

 X.M.B.から不快な音が聞こえてきたのだ。

 

 音の正体は、銃身に亀裂が入った音である。

 

 プロセッサユニットは再構成できても、武器であるX.M.B.の修復はできていなかったのである。

 

 亀裂が入った箇所から魔力が漏れ、さらに傷ついていくX.M.B.にユニは悔しそうに顔を歪めた。

 

 拮抗していた光の激突も、トラブルの影響で段々とネプギアが押し始めていた。

 

「いっけええええええええ!!」

 

 ネプギアは自分が押し始めたことで、さらに力を込めた。

 

 その結果、ネプギアの砲撃は鋭さを増し、ユニの砲撃を切り裂きながら向かっていく。

 

 ユニも踏ん張るために力を込めるが、X.M.B.が限界を迎えようとしているために、押し返すことができない。

 

 やがて、M.P.B.L.から伸びる光の砲撃がX.M.B.から伸びていた光の砲撃全てをかき消し、X.M.B.に直撃した。

 

 瞬間、激しい爆発音と共にユニの体は爆煙の中に消えた。

 

「ハア、ハア、ハア」

 

 ネプギアは砲撃をやめ、肩で息をしながら目の前の黒い煙を見つめた。

 

 今度こそ、間違いようもなく戦いが終わったことを確信したネプギアは、ゆっくりと煙の中に消えたユニを探そうと歩き始めた時であった。

 

「まだよ!!」

 

「っ!?」

 

 黒煙を切り裂いてユニがネプギアに突撃してきた。

 

 体にも、新しく再構成されたプロセッサユニットも黒く焦げ付いたような痕があるが、ユニはプロセッサユニットのウイングを羽ばたかせてネプギアへと真っ直ぐに向かっていく。

 

(ごめんね、X.M.B.。今までありがとう)

 

 ユニは本来なら自分に直撃するはずだったネプギアの砲撃をX.M.B.を盾にすることで防いでいたのである。

 

 その代償として、黒煙の中にはX.M.B.が無残な姿で転がっている。

 

 突然のユニの奇襲にネプギアは体を硬直させてしまい、咄嗟にM.P.B.L.で自分の身を守ろうとした。

 

「はああ!!」

 

「あっ!?」

 

 ユニはネプギアの手首を弾き、M.P.B.L.を弾き飛ばした。

 

 M.P.B.L.を弾き飛ばさたネプギアの腹に、ユニはライフルの銃口を押し付けた。

 

 ……しかし、それだけではなかった。

 

「なっ!?」

 

 ネプギアが瞬きをしていた間に、ユニの『変身』が解けていたのだ。

 

「……このライフルは『変身』したアタシの力には耐えられない。けど、この状態なら撃てるのよ」

 

 ユニは驚愕しているネプギアに説明するように静かに告げた。

 

 不完全な『変身』しかできないユニは、全力を振り絞ったために強制的に『変身』が解けてしまったのだ。

 

 しかし、ユニは『変身』が解けて不利になったと言うのに、余裕の笑みを浮かべていた。

 

「完璧な『変身』ができない、できそこないのアタシ……でも、それがアタシよ!!」

 

 ネプギアは険しく自分を睨んでくるユニに怯えて、焦って後ろへ飛んで逃げようとした。

 

「終わりよ!!」

 

 ……しかし、ネプギアが動くよりも早く、ユニはライフルから銃弾を放った。

 

 

*     *     *

 

 

「はああああああああああ!!」

 

「うおおおおおおおおおお!!」

 

 もう何度目になろうか、夢人のアイス・エッジ・ソードとブレイブのブレイブソードがぶつかり合う音がミッドカンパニーに響いた。

 

 夢人は壊されては再度作りなおし、何度も何度もブレイブに向かってアイス・エッジ・ソードを振るった。

 

 ブレイブも何度も向かってくる夢人に対して、自身の体に近づけさせないためにブレイブソードを振るった。

 

 時には吹き飛ばされて転がったとしても夢人は諦めず立ち上がり、ブレイブへと向かっていく。

 

 その姿をネプテューヌ達は静かに見守っていた。

 

 今でも夢人を止めようとする気持ちは彼女達の中にある。

 

 しかし、止められないでいた。

 

 ネプテューヌ、ブラン、ベールの3人は、夢人のことを知ってから初めて見るその姿に……

 

 ロム、ラム、ナナハの3人は、自分達の知っている夢人の変わりないその姿に……

 

 ノワールの言葉に納得したわけではないが、彼女達は傷つきながらもブレイブと戦う夢人の姿を見て、その決意の固さを理解した。

 

 そのため、夢人のことは心配だが、戦いを止めるために動こうとはしなかった。

 

 自分達が動くのは、本当に夢人の命が危なくなった時だけと決めた。

 

 それは最初から見守っていたノワール達も同様である。

 

 夢人が立ち上がれなくなるまで戦い、負けそうになった時だけ介入すると、後でどれだけ恨まれようとも決めていたのだ。

 

 しかし、それは最悪の事態に陥った時だけ。

 

 夢人の戦いを見守る全員に共通する思いは1つ……夢人の勝利を信じていた。

 

 リゾートアイラン島で語った理想を夢人が実現させることを信じて、ブレイブに勝つことを信じることにしたのだ。

 

「ふん!!」

 

「ぐっ!?」

 

 ネプテューヌ達が夢人の勝利を信じて見守る中、ブレイブは夢人を大きく弾いた。

 

 このまま何度もぶつかり合っていても状況が変わらないと判断したブレイブは、勝負に出ることにしたのだ。

 

 夢人を大きく弾くことで距離をとり、残っていた砲身で砲撃の準備をした。

 

 弾かれて吹き飛ばされた影響で、軽く浮いている夢人なら土の魔法、もしくは風の魔法を使って弾丸を避けるだろうとブレイブは予測している。

 

 しかし、弾丸を避けさせることが目的なのだ。

 

 何度もぶつかり合ううちに、ブレイブは夢人に避けることと攻撃することを両立する魔法がないことを理解していた。

 

 魔法を素早く切り替えることでブレイブの攻撃を上手く避けているが、最初の顔への一撃以外、全て氷の魔法しか攻撃に利用していない。

 

 避けるにしても、土の魔法、もしくは風の魔法を使ってから地に足がついた状態でのアイス・ローラーを利用しての避け方だ。

 

 つまり、夢人は空中での攻撃方法が皆無であると判断したのだ。

 

 軽く浮いている夢人は、避けるために必ず魔法を使って地面に足をつけようとするだろう。

 

 そこから氷の魔法を使うまでには、タイムラグが生じるはず。

 

 だから、ブレイブは夢人の着地地点を予測して弾丸を発射しようとする。

 

 魔法の切り替えと弾丸の速度、例え切り替えの方が早くても、弾丸が地面に着弾すれば爆発で夢人はただでは済まない。

 

 仮に、上空や横に逃げたとしても、夢人が足をつける前に距離を詰めてブレイブソードで叩き斬ればいい。

 

 どちらにせよ、ブレイブの勝利は揺るがない。

 

「喰らえ!!」

 

 ブレイブは必勝の策を持って、夢人に弾丸を放った。

 

(さあ、どう出る?)

 

 ブレイブはすぐに動けるように砲撃を撃ってから、前傾に体を倒して構えた。

 

 しかし、そこで予想外の事態が起こった。

 

 ……突然、胴体に何かが当たるような衝撃を受けたのである。

 

「ぐおおおおおおおおっ!?」

 

 その衝撃により、ブレイブは前傾であったため大きく仰け反りながら尻もちをついてしまった。

 

(い、いったい、何があったのだ!?)

 

 ブレイブは謎の衝撃の正体がわからず、混乱していた。

 

 夢人には遠距離での攻撃方法がないはずなのに、どうして自分が攻撃を受けたのかがわからない。

 

 今まで隠していたとも考えられるが、それならばもっと有効に活用できる場面が何度もあった。

 

「っ痛、何とか成功」

 

 夢人は胴体から黒い煙を上げ、尻もちをつくブレイブを見てにやりと笑った。

 

 夢人がしたことは実に単純である。

 

 ただ自分に向かってくる弾丸を跳ね返したのだ。

 

 風の魔法で擬似的な真空状態のボールを、体の前面に作りだしたのである。

 

 夢人はすでに間近でブレイブが放つ弾丸を見ていたので、その弾丸を受け止められるだけの巨大なボールを作りだすことが可能であった。

 

 ボールに当たった弾丸は、ボールに突き刺さると停止した。

 

 ボールの中身が真空状態であったため、弾丸が飛んできた運動エネルギーが0へと変化するためだ。

 

 しかし、如何に運動エネルギーが0へと変わると言っても、すぐには停止しない。

 

 弾丸は夢人の着弾する手前でようやく動きを止めた。

 

 後は、その弾丸を押してやるだけでいい。

 

 夢人は片手でボールを維持しながら弾丸の先端に触れて、ボールから少しだけ押し出してやった。

 

 すると、ボールに開いた穴が広がり、ボールは破裂する。

 

 その衝撃によって、弾丸はブレイブへと戻って行き、夢人は後方へと飛ばされた。

 

「ここで決める!!」

 

 飛ばされ転がった夢人は、片膝をついて立ち上がると、両手で地面を強く叩いて魔法を発動させた。

 

 夢人の手から氷が伸びていき、アーチのように上へと続く道が氷の道が作り上げられていった。

 

 夢人の居る場所から登って行く道だけが伸びているアーチ、これはケイがノワールに渡したもの、設計図を元に作りだされていた。

 

 ケイはあらかじめ、屋内で夢人が戦う際に巨大なブレイブに近づくための方法として、氷の道を作ることを考えていた。

 

 夢人の魔法が体から離れてしまうと効果を失くしてしまうため、触れてから数秒で消えてしまう氷の道だが、飛ぶためだけの発射台代わりには役に立つ。

 

 夢人は凍っていた両手だけを自由にして、両足の裏に真空状態のボールを再び作り上げた。

 

 今度は破裂させることで、自身を吹き飛ばすことを目的としている魔法だ。

 

 夢人はクラウチングスタートにも似たポーズをとりながら、ブレイブへと続く発射台の先を睨んだ。

 

「バースト!!」

 

 叫んだ途端、夢人の両足にあったボールは破裂し、その衝撃によって発射台へと飛ばされて行った。

 

 発射台は夢人が触れることで崩れていくが、吹き飛ばされて行く夢人の方が崩落の早さよりも速い。

 

「いっけええええええええ!!」

 

 発射台をなぞるようにブレイブへと吹き飛んで行った夢人は、宙で回転して両足を燃やしながら突撃していく。

 

「させん!!」

 

 炎の蹴りを繰り出してくる夢人を、ブレイブはブレイブソードの刀身で受け止めた。

 

 しかし、その時ブレイブソードから嫌な音が聞こえてきた。

 

「なっ!?」

 

 夢人のけりを受けた個所に、小さな傷ができたのである。

 

 今まで夢人は、アイス・エッジ・ソードだけを使ってブレイブソードを捌いてきた。

 

 氷の刃であるアイス・エッジ・ソードは常に冷気を発している。

 

 つまり、何度も打ち合ううちにブレイブソードの刀身も冷え切っていたのである。

 

 そこに炎を纏う夢人の蹴りによる衝撃と熱が加わり、刀身の組成が崩壊し、傷がついたのである。

 

 夢人はブレイブソードに傷がついたことに驚愕しているブレイブの隙をつき、重力操作で上空に浮かび上がった。

 

 すると、巨大な岩を作り上げた。

 

 今までの夢人なら、岩や石を作りだしても動かすことができなかった。

 

 しかし、重力操作を使えるようになった夢人は、上下限定で動かすことが可能になった。

 

 夢人は作りだした岩を越える高さまで上昇すると、勢いよく岩に向かって踵を落として重力を増加させて落下させた。

 

「グラビティ・シュート!!」

 

 真上から岩が落下していくのを見て、ブレイブは咄嗟にブレイブソードで対処しようとした。

 

 落下してくる岩と、斬り裂こうとするブレイブソード。

 

 万全の状態であるブレイブソードなら、夢人が作りだした岩を簡単に斬り裂くことができただろう。

 

 しかし、ブレイブソードには小さいながらも傷があった。

 

 その小さな傷からどんどんと亀裂が入っていく様に、ブレイブは慌てるどころか、どこか気持ちが穏やかになっていくのを感じた。

 

(……そうか、ようやくわかった)

 

 やがて、ブレイブソードは亀裂が入った箇所から砕けてしまい、巨大な岩はブレイブへと直撃した。

 

 その衝撃により、地面からブレイブを覆い隠すほどの煙が巻き起こった。

 

 夢人は地面すれすれで風の魔法を使い、衝撃を抑えながらアイスローラーを使うことで、無様に落下することは避けられたが、片手で頭を押さえて膝をついてしまった。

 

 急激な移動を繰り返したことで、脳が揺れていたのである。

 

 加えて、氷の発射台を作り上げてから火の魔法、重力操作、風の魔法にアイスローラーなど、短時間で魔法を素早く切り替えて使ったことで、頭に痛みも走っていたのである。

 

「くっ、ブレイブ・ザ・ハードの奴は……」

 

「ふん!!」

 

 夢人が痛む頭を押さえながら、巻き起こっている煙を見つめていると、短い気合いの声と共に何かが砕ける音が聞こえた。

 

 するとすぐに、煙を腕でかき消しながらブレイブが姿を現した。

 

 先ほどの音は、岩を砕く音だったらしい。

 

 しかし、その姿は無残なものであった。

 

 弾丸と岩が直撃したボディは、夢人と同じでもう戦えるような状態には見えなかった。

 

「見事な一撃だった。まさかブレイブソードが砕かれるとは思わなかったぞ」

 

「……まだ続けるって言うなら、とことん相手になってやるぞ」

 

「その前に、1つ尋ねたいことがある」

 

 ブレイブは傷つき倒れそうになりながらも立ち上がり、自分に向かって今にも駆け出してきそうな夢人を制して尋ねた。

 

「貴様の正義とはいったい何だ?」

 

「俺の正義……正義って言えるほど高尚なものじゃないさ」

 

 夢人は自分の手のひらを見つめると、ブレイブへと突き出して強く握りしめた。

 

「俺は目の前で困ってる人を助けるために手を伸ばす!! ただそれだけだ!!」

 

「そんなことで本当にゲイムギョウ界を救えると思っているのか?」

 

「ああ!! 俺の手は今は遠くまで届かないけど、繋いだ手の分だけ伸びていく!! 思いは必ず繋がっていく!! だから、俺は俺の優しさをゲイムギョウ界に広げていくために手を伸ばし続ける!!」

 

(……これが勇者の本当の姿なのだな)

 

 ブレイブは夢人の宣言を聞き、ようやく悩みの答えを得たような気がした。

 

 だからこそ、ブレイブは拳を夢人へと向けて構えだした。

 

「ならば、聞け!! 我が名はブレイブ・ザ・ハード!! 犯罪組織マジェコンヌの幹部であり、己が正義を信じる者なり!!」

 

 ブレイブの宣言を聞き、夢人も腰を低く落とし、腰に刺さっていた剣を抜いて構えだした。

 

 夢人にはもう魔法を使うだけの気力がなかったのである。

 

 飾りと言ってもいい錆びている剣しか戦う手段がないのであった。

 

「俺は御波夢人!! 女神と共にこのゲイムギョウ界を救う、勇者だ!!」

 

「いくぞ!!」

 

「おう!!」

 

 互いに名乗りを上げると、同時に走り出して互いの名を叫びながら駆け出した。

 

「ブレイブゥゥゥ!!」

 

「勇者ァァァ!!」

 

 そして、ぶつかり合った末……

 

 

*     *     *

 

 

「まったくあなたもしぶといわね。こんな形になっても生き延びたいってわけ?」

 

 フィーナは手のひらに乗せられている赤い瞳をころころと転がしながらつぶやいた。

 

 赤い瞳は不気味に光っており、まるで何かを伝えようとしているようにも見える。

 

「何をしようとしているのかわからないけど、あなたはもういらな……っ!?」

 

 フィーナが赤い瞳を握りつぶそうとした時、その腕が斬り飛ばされてしまった。

 

「ぐっ!?」

 

 斬り飛ばした張本人、レイヴィスは手に光る剣のようなものを持っていたのだが、フィーナの腕を斬り飛ばすと爆発したようにレイヴィスの腕を傷つけて消滅してしまった。

 

 宙を飛んだ腕は、隠れていたルウィーのゲイムキャラの前に落ちると、レイヴィスは顔の痛みを堪えて叫んだ。

 

「早くそれを持って逃げろ!!」

 

〔で、ですが!?〕

 

「早く!!」

 

 ゲイムキャラは逃げることを躊躇ったが、レイヴィスの危機迫る叫びを聞き、赤い瞳を持って逃げ出すことを決めた。

 

 ゲイムキャラが赤い瞳に触れると、瞳は妖しく光だし、ゲイムキャラと共に煙のように消えてしまった。

 

「た……のむ……」

 

 レイヴィスはそれを見届けてから、痛みの影響で気絶してしまった。

 

 そんなことが目の前で起こっていると言うのに、フィーナは何も行動することができなかった。

 

 否、行動に移せない理由があったのである。

 

「痛い!? 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!? 痛いよ!?」

 

 フィーナは涙を浮かべながら、斬り飛ばされた腕のあった部分を押さえて痛みを訴えていた。

 

 今まで腕を斬られたり、傷つけられても表情一つ変えなかったフィーナが痛みに涙していたのである。

 

「どうして!? どうして再生しないの!? 痛い!? 痛いよ!? 助けて!? 助けて父様!?」

 

 フィーナは痛みのあまり、どうしたらいいのかわからなくなり半狂乱に陥った。

 

 そのため、フィーナは無意識のうちに自分の肩口から自分の腕を斬り飛ばしたのだ。

 

 無くなった腕がある部分から痛みを感じるのなら、その部分が体から無くなれば痛みを感じなくなる。

 

 そんな暴力的な考えであったが、フィーナは嘘のように痛みが消えて肩から腕が再生したことに驚いた。

 

 息を整えながら、再生した腕を何度も確かめるように手を動かす。

 

「はあ、はあ、はあ、何ともないわね」

 

 フィーナは自分がどうして痛みを感じたのか考えようとしたが、すぐさまそれよりもしなければいけないことを思い出して、顔を憤怒の表情へと変えた。

 

「このっ!! このっ!! このこのこのっ!!」

 

 フィーナは気絶しているレイヴィスをこれでもかって言うくらい何度も踏みつけている。

 

 しかし、気絶しているレイヴィスが何の反応も示さないことを知ると、諦めたように険しい顔のままでレイヴィスの頭へと手を伸ばした。

 

「いいわ、私をこんな風にした罰を与えてあげる」

 

 フィーナはレイヴィスの頭を鷲掴みにして力を込めた。

 

「あなたには思い知らせてあげる。あなたがいったいどんな人間なのかをね」

 

 

*     *     *

 

 

「ハア、ハア、ハア」

 

 ユニは目の前で倒れて『変身』が解けているネプギアを見て、息を整えながら手に持つライフルを手放した。

 

 立っているのは自分で、倒れているのはネプギア。

 

 ユニは言い知れぬ高揚感と共に、自分が勝ったことを自覚した。

 

(勝った……アタシ、勝ったよ。これで、アタシは……)

 

 ユはが自分が全力でネプギアに挑み、これで自分の道が歩けると頬を緩めていた。

 

 ……しかし、そこに水をさすように声が掛けられた。

 

「……あ、アハハ、負けちゃった。ユニちゃんは強いね」

 

「……え」

 

 ユニはネプギアの姿と言葉が信じられなかった。

 

 ネプギアは倒れたまま、疲れたように笑っていたのだ。

 

 それを理解した瞬間、勝利の喜びに歓喜していたユニの体から熱が一気に引いていった。

 

(……何で)

 

「……私も負けたくなかったんだけどな」

 

(……どうして)

 

「……今回は負けちゃったけど、次は絶対に負けないよ」

 

(……この女はっ!!)

 

 ユニは頭の中で何かが切れる音が聞こえた気がした。

 

 ユニは俯いたまま倒れているネプギアに近づくと、強引にその胸ぐらをつかみ上げた。

 

「ユニ、ちゃん?」

 

「……アンタ、それ本気で言ってんの」

 

 突然胸ぐらを掴まれたネプギアはユニがどうしてそんなことをするのかがわからず驚き首を傾げた。

 

 ユニはネプギアに視線を向けず、俯きながら低い声で尋ねた。

 

「……本気で言ってんのかって聞いてんのよ!!」

 

「い、痛い!?」

 

「何とか言いなさいよ!!」

 

 ユニは痛みを訴えるネプギアに構わず、胸ぐらを掴む腕に力を込め続けた。

 

 このままでは返答が返ってこないことを悟り、ユニはネプギアを突き放すように掴んでいた胸ぐらを手放した。

 

「はあ、はあ」

 

「……答えないなら質問を変えるわ」

 

「ま、待って、どうして……」

 

「アンタは夢人が好きなの?」

 

「……え」

 

 ネプギアはどうしてユニがそんなに怒っているのかを尋ねようとしたが、続けられた質問に言葉を失くしてしまった。

 

「アンタは、夢人が好き?」

 

「そ、それは……」

 

「どうなの? 答えなさいよ」

 

「え、えっと……」

 

 ネプギアは突然の問いに頭の中が真っ白になってしまっていた。

 

 理解できないことが連続で起こってしまい、冷静に考えられないでいた。

 

(そ、それは、夢人さんのことは好きだけど……)

 

 わずかに冷静な部分は、どう答えればいいのかわかっているのだが、どうして今ユニからこんなことを尋ねられているのかがわからず、答えられないでいた。

 

「……そう、それが答えなのね」

 

 今まで俯いていたユニは顔を上げて悔しそうに歪めた。

 

「なら、アタシが先に答えるわ……アタシは夢人のことが好きよ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ネプギアは目を見開き傷ついた表情で固まってしまった。

 

 初めてユニが夢人のことを好きだと言うことを知ったからである。

 

(ユニちゃんも夢人さんのことが好き、だったの?)

 

「ほら、次はアンタの番よ。アンタは夢人のことが好きなの?」

 

「え、あ……」

 

 ネプギアは混乱していたため、何を口にしていいのかわからず、ユニから目をそらしてしまった。

 

 それを見て、ユニは悔しそうに唇を噛んで再び俯いてしまった。

 

「……もういい。充分わかったわ」

 

(何が……)

 

「ねえ、ネプギア。お願いがあるの…………………………夢人の前から消えてちょうだい」

 

 ネプギアは息をするのも忘れて、ユニの言葉に驚愕した。

 

「え、な、何言って……」

 

「アタシは本気よ。お願いだから、夢人の前から消えて」

 

「ど、どうして!?」

 

 固まっていたネプギアだったが、これには反応することができた。

 

 ネプギアにとって、夢人は恩人であり、好きな相手なのだ。

 

 その相手の前から消えてと言われて、素直に頷けるわけがない。

 

「どうしてそんなことを……」

 

「アンタが夢人を殺すからよ」

 

 その勢いも、ユニの信じられない言葉によって削がれてしまった。

 

「……わ、私が、夢人さんを、殺す?」

 

「ええ、アンタは必ず夢人を殺すわ……だから、お願い。夢人の前から消えて」

 

 ネプギアは信じたくないと思いながらも、泣きそうな顔で自分にお願いしてくるユニの姿に冗談だと思うことができなかった。

 

(え、え、え……どうして、どうしてなの)

 

 無意識のうちに、ネプギアはユニから距離を取ろうと倒れていた体を引きずって後ろへと下がろうとしていた。

 

「お願い、アタシから好きな人を奪わないでよ……お願い、お願いよ!!」

 

「え、あ、え……うわあああああああああああ!?」

 

 精神的に追い詰められたネプギアは、涙を流しながらユニに背を向けて走り出してしまった。

 

 ユニは逃げ出したネプギアの後ろ姿を見て、涙を流しながらつぶやいた。

 

「……負け、ちゃった……もう、会えないよ……ごめん、夢人」

 

 ……そうつぶやくと、ユニもネプギアとは違う方へとふらふらと歩き去ってしまった。

 

 

*     *     *

 

 

「見事、だ」

 

「……何で、だよ」

 

 夢人はブレイブがしたことを信じたくなかった。

 

「どうして……どうしてわざと負けるような真似をしたんだよ!!」

 

 ぶつかり合う2人だったが、ブレイブの拳は夢人には当たらず、地面に突き刺さった。

 

 その腕を伝って、夢人はブレイブの胸に剣を押し付けようとした。

 

 ……そう、刺すつもりなどなかったのだ。

 

「どうして、どうして自分から刺されに来たんだよ!!」

 

 寸前で止めるつもりだった剣は、ブレイブが自ら前に倒れることで、胸へと深々と突き刺さっていたのだ。

 

「ブレイブソードが折れた時点で、俺の負けは確定していた。曇った剣では、ゲイムギョウ界を救うことなどできない」

 

「だけど!! だけど、お前は言ったじゃないか!! 自分の正義を信じる者だって!!」

 

「言葉に偽りはない。俺は今でも自分の正義に誇りを持っている」

 

 ブレイブはゆっくりと夢人を自分の腕から降ろして、語り続けた。

 

「俺は貴様が羨ましい。俺の正義は孤独だった。この思いを分かち合う者が誰もいなかった」

 

 ブレイブは改めて自分の正義が勇者の正義と比べて、孤独であったのかを思い知った。

 

 同じ犯罪組織に所属する仲間だと言っても、他の幹部は自分とは考えが合わない。

 

 どこまでも1人であったことから、周りに仲間がいる夢人が羨ましいと感じてしまった。

 

「絆の正義、とでも言うか。貴様の正義が眩しく見える。俺も、できることなら、誰かとこの正義を分かち合いたかった」

 

「今からでも遅くないだろ。同じゲイムギョウ界を救いたいと願う仲間じゃないのかよ。だったら、俺達と一緒に……」

 

「それはできない」

 

 泣きそうな顔で手を伸ばす夢人の手を、ブレイブは拒絶した。

 

「俺の力と体は、すでに犯罪神様に捧げたものだ。貴様らと、女神と共にいることなどできはしない」

 

「……どうしても、なのかよ」

 

「ああ、俺は女神の正義を認めない。その思いは変わらない」

 

 1人でも、弱くても自分に立ち向かった夢人のことは認めたが、ブレイブは女神のことを認めたわけではない。

 

 ブレイブはあくまで犯罪組織の一員であり、その正義は犯罪神に対する忠誠心でもあった。

 

「自分の正義に殉じる……いや、違うな。これはけじめだ」

 

「けじめ?」

 

「志した思いは、何が何でも貫くと言う俺の意地だ」

 

 夢人はブレイブの言葉に何も言うことができない。

 

 その言葉を理解することができるからだ。

 

 自分も意地を貫いていた結果、この場に立っているのだから。

 

「……それで、お前は満足なのか」

 

「そう聞かれると困る。俺とて、平和になったゲイムギョウ界をこの目で見てみたかった。できれば、それを俺の手で成し遂げたかった」

 

「……それでも、変わらないんだろ」

 

「変わらん。変わってしまえば、俺の正義は消えてなくなってしまう。俺は最後までこの胸の正義を貫く」

 

 2人が言葉を交わしている間に、ブレイブの体が段々と光となって消えていく。

 

「だが、消えゆく俺だからこそ、残せるものがある」

 

 ブレイブはもうすぐ自分が完全に消えてしまうことを理解し、夢人に言葉を伝えようとした。

 

「この正義の魂……ゲイムギョウ界を平和にしようと願った魂だけは、ずっとこの地で生き続ける」

 

「……魂」

 

「自由となった魂は、ゲイムギョウ界で生きる全ての存在の幸せを願える……だから、受け取ってくれ」

 

 ブレイブは胸に突き刺さっていた錆びた剣を引き抜き、夢人の前へと落とした。

 

 落とされた剣を夢人は拾い上げ、血がにじむほど強く握りしめた。

 

「これは証だ。貴様が俺を破った……絆の正義を貫いた証だ」

 

「……ああ」

 

「敢えて言わせてもらうぞ……さらばだ、同じゲイムギョウ界を救う正義を持った友よ」

 

 その言葉を最後に、ブレイブは完全に光となり消え去ってしまった。

 

「……馬鹿野郎」

 

 ブレイブが消えた場所を見ながらつぶやくと、夢人は上を向いて壊れた天井から覗く青空を見上げた。

 

 ……空は気持ちの悪いほどの青空であった。




という訳で、今回は以上!
いや、久しぶりにシリアスでしたね。
それと、まさか最終話の予定がこんな風に崩れるとは思いませんでした。
この話がこの章で最も長い話なので、予定していた文量がだいぶ増えてしまいました。
もう少し計画的に書かないといけませんね。
次章からはもっと頑張ります。
まあ、次回はノワール視点の女神通信になるんですけどね。
本編でカットしたシーンとか、この後の一幕をお届します。
それでは、 次回 「きりひらけ! 女神通信(ノワール編)」 をお楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。