超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今回から新章突入!
導入話のため、短めですが楽しんでくださいね。
それでは、 目指すもの はじまります


意地の激突、勇者の証明
目指すもの


「よし、やるか」

 

 俺は目をつぶり、イメージする。

 

 ギョウカイ墓場でレイヴィスが使っていた風の魔法の応用、プラズマを作りだす。

 

 まずは、両手の間を擬似的な真空状態にするんだよな。

 

 すると、バチッと何かが弾けるような音が聞こえてきた。

 

 目を開けてみると、両手の間で青い稲妻が発生し、ぶつかり合って火花を散らしていた。

 

 このまま稲妻を右手に集中させるイメージをする。

 

 ゆっくりと左手を離し、稲妻が発生している真空状態の空間をボールとして、右手で掴んでいるイメージに固定する。

 

 ボールを徐々に小さくしていき、指先の一点に集中!

 

 最後に頭上高く持ち上げて、相手に向かって稲妻を走らせるイメージで完成させる!

 

「必殺パワー!! サンダーブレれれれれれれれれ!?」

 

 指先から相手に向かって稲妻を走らせようとすると、稲妻が発生していた空間が弾けて、俺の右腕に稲妻が走った。

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!?」

 

 俺は地面を転がりながら、痛む右腕を慌てて押さえた。

 

 幸い魔法は全力でやっていなかったため、右腕が痺れる程度で済んでいる。

 

〔……何をやっているんだ〕

 

 近くに居たワンダーの呆れた声が聞こえてきた。

 

 ……はい、見ての通り魔法の練習で失敗したんですよ。

 

 

*     *     *

 

 

〔やはり、風の魔法は途中で息切れをしてしまうようだな〕

 

「……うん、俺もそれがよくわかったよ」

 

 バーチャフォレストで、俺は草原に転がってワンダーの言葉に頷いた。

 

 俺の魔法が失敗魔法限定で威力を発揮するとわかった今、俺は新しい魔法なら大丈夫ではないかと考えた。

 

 ギョウカイ墓場でレイヴィスが使っていた、土と風の魔法の応用だ。

 

 重力操作とプラズマ発生、どちらも強力な武器になると思っていたんだけどな……

 

〔前提として、夢人が魔法に威力を持たせようとすると、体に何らかのダメージが行くようにできているのだな〕

 

 なんですか、その要らない設定!?

 

 俺はそんなの欲しくなかったよ!?

 

〔これまで判明している夢人の魔法のデメリットは、火の魔法は自分が発火してしまう。土の魔法は自分から一定距離の間でしか発動できない。氷の魔法は自身を凍らせる以外に使い道がない。風の魔法は最後に魔力が分散してしまうのだな。見事に欠陥魔法のオンパレードだな〕

 

「悲しくなるから言うなよ!?」

 

〔だが、事実だ。それは受け止めなければならないだろう〕

 

 確かに正論だけどさ、俺の心が折れそうなんだよ!?

 

 俺には自分の体を虐める趣味なんてないのに!?

 

〔しかし、よかったではないか。レイヴィスが使っていた魔法も問題なく使えるようになって〕

 

「……失敗したけどな」

 

〔うむ、あれは見事なものだった。いきなり反り返って倒れるとは思わなかったぞ〕

 

 プラズマを発生する前に、重力操作を練習したんだ。

 

 うまく調整しようと思って弱めに魔法を発動したんだけど、何を間違ったのか頭だけ重力が倍増されてしまい、後頭部から地面に倒れてしまったのだ。

 

 未だに後頭部が痛むんだよ。

 

 コブになってないといいな。

 

〔だが、不可解だな〕

 

「何がだよ?」

 

〔お前の魔法のことだ〕

 

 失敗するってことか?

 

 それは俺のイメージが失敗で固定したからだって、がすとも言ってただろ?

 

〔お前が今使っている魔法と、黒歴史を発動していた時に使っていた魔法が違いすぎる〕

 

「それはイメージに違いが出ているからじゃないのか?」

 

 黒歴史を発動している時の俺は、俺であって俺じゃない。

 

 考え方に違いがあるんだし、イメージも違うんじゃないのか?

 

〔そうであったのなら、なぜ威力があったのだ? お前が黒歴史を発動している間は、魔法を成功させていても威力があったんだぞ〕

 

「あ、そっか。でも、それってイメージが増幅しているから……じゃないな」

 

〔当然だろう。イメージが増幅していれば、お前の受けるダメージも増幅するはずだ。しかし、お前は無傷のまま魔法を使っていた〕

 

 よくよく考えてみれば、おかしいよな。

 

 B.H.C.を使っていた時は、イメージ不足で魔法が使えないと思っていたから、黒歴史を発動すれば魔法が普通に使えるのが当たり前……って、あれ?

 

「黒歴史限定で魔法が成功するイメージになっていたってことは考えられないか?」

 

〔その可能性は低いだろう。そもそも魔法が違いすぎるのだ〕

 

「威力のあるなしじゃなかったのか?」

 

〔もっと根本的な問題だ。魔法が異質すぎるのだ〕

 

 い、異質?

 

 ここにきて、さらに俺の魔法にとんでも設定を追加する気か?

 

〔簡単に言ってしまえば、お前が黒歴史を発動している時の魔法は再現が不可能なのだ。これはラムにも確認をとったので間違いはない〕

 

「再現不可能……って、そんなことあるわけないだろ? 俺よりも魔法にくわしいラムだぞ。俺が使う魔法くらい簡単に……」

 

〔それができないのだ〕

 

 冗談だと思ったら、ワンダーは本気らしい。

 

〔私も上手く言葉にできなくて困惑している。事実として、先ほど見せてもらった失敗魔法は解析できたのに、黒歴史を発動している時の魔法は失敗してしまったのだ。しかも、魔法を解析することに特化しているミラーモードでだ〕

 

「……解析ミスはないってことか」

 

〔その通りだ。そこで、私はアカリに原因があるのではないかと考えた〕

 

 アカリに?

 

 確かに俺達はB.H.C.で勇者の力、アカリの力を引き出すことができると思っていた。

 

「じゃあ、黒歴史の時の魔法は『再誕』の力が発動しているってことなのか?」

 

〔そこまではわからん。私にも『再誕』の力がどのようなものなのかわからないのだからな〕

 

 それは俺達全員が思っていることだろ。

 

 俺は青空を見上げて、海でのことを思い出した。

 

 荒れた砂浜を元通りにしたアカリの力。

 

 あれがきっと世界を修復する『再誕』の力なんだ。

 

 ……でも、あれと俺の魔法、どう関係しているんだ?

 

「まあ、考えていても仕方ないか。ワンダー、もうちょっと魔法の練習に付き合ってくれ」

 

〔了解した。それに、ラム達からも新しい魔法のアイディアをもらっている。試してみるといい〕

 

「おう!」

 

 このくらいで躓いてちゃ、いつまで経ってもアイエフに言った理想に届きはしない。

 

 俺も皆を助けられるように、強くならなくちゃな!

 

 

*     *     *

 

 

「貴様が……伝説の勇者、だと」

 

 レイヴィスには目の前の存在が伝説の勇者であることを信じられなかった。

 

 人を馬鹿にしたような話し方に加えて、いきなりのブイサインである。

 

 ふざけているとしか思えなかった。

 

『あ、あれ~? おっかしいな、これで最初の掴みはいただきだぜって思ってたのによ』

 

 半透明な存在でしかない伝説の勇者は、困った雰囲気を出しながら後頭部を掻きだした。

 

『ん~、そっか! 親しみが足りなかったんだな。それじゃ、俺のことは“シン”って呼べよ。俺もお前のことをレイきゅんって呼ぶからさ』

 

「……ふざけているのか、貴様は」

 

『ふざけてないさ。俺はいつだって真面目だぜ』

 

 シンと名乗った伝説の勇者の言葉に、レイヴィスは苛立ちが募ってきた。

 

 会話が成立せず、いつまで経っても自分がここに来た目的が果たせないからだ。

 

「貴様のことなどどうでもいい。俺はそこの剣に用がある」

 

『おろ? レイきゅん話聞いてた? お前さんじゃゲハバーンは扱えないぞ』

 

「レイきゅん言うな……それに、俺に扱えないとはどういうことだ」

 

 レイヴィスには台座に突き刺さっている剣、ゲハバーンを扱えない理由がわからなかった。

 

『レイき……レイビスはゲハバーンがどんな剣だかわかる?』

 

「貴様、今言い直したな。それに、俺はレイヴィスだ……女神の命を吸い、犯罪神すら殺すことができる魔剣だ」

 

『ブッブー! 大ハズレ!』

 

 レイヴィスは自分の知っているゲハバーンについて話したが、シンは腕をクロスさせて否定した。

 

『そいつは、お前さんの知ってる世界のゲハバーンだろ? それに、この世界がお前さんの知ってる世界と違うってことはもう知ってるだろうによ』

 

「だったら、その剣はいったい何なんだ? この世界の奴らもゲハバーンは魔剣だと言うことくらいしか知らなかったんだぞ」

 

 レイヴィスがゲハバーンの情報を集めていたのは、この世界に本当にあるかどうかを確認するためだ。

 

 自身の知っている世界と違うこの世界では、もしかしたらないかもしれないと考えていた。

 

 ゲームではイベントを進めることで手に入るものだが、すでにこの世界を現実と考えているレイヴィスには確信するための根拠が欲しかったのである。

 

 だからこそ、情報を集め終えたレイヴィスは、ここに来たのだ。

 

 情報では、自身が知っていることと変化はなかったはずなのである。

 

『魔剣なのは間違ってねえですよ。でもな、この剣にはすでに担い手がいるんだよ』

 

「担い手……それはいったい誰なんだ?」

 

『それは、ひ・み・つ。お前さんじゃないことは確かだよ』

 

 シンの言葉を聞き、レイヴィスは眉間にしわを寄せた。

 

 レイヴィスが知っている世界でなら、ゲハバーンを手にする人物は1人しかいない。

 

 しかし、シンが秘密と言っていると言うことは違う人物なのかもしれないと考えた。

 

 当てはまる人物は、レイヴィスの中で4人。

 

 もしかしたら、もっといるかもしれない。

 

「それを教える気は……」

 

『まったくもってないさ。それに、お前さんの目的はゲハバーンを持って帰ることじゃないだろ?』

 

「っ、どうしてそれを知っている!?」

 

 目を見開き驚くレイヴィスを見て、シンは顔が見えれば笑っているだろう雰囲気を出した。

 

『言ったろ? 俺は知ってることは知っていて、知らないことは知らないだぜ。レイヴィスがここに来た目的ぐらい、まるっとするっとお見通しさ』

 

「……本当に貴様はいったい何なんだ」

 

『うっふっふ、先のことを知り英知を授けると言われた伝説の勇者なんすよ? これくらい朝飯前……って、この体になってから食事したことないんだけどな』

 

 シンの不気味さにレイヴィスは冷や汗をかき始めた。

 

 ふざけているにも関わらず、鎌をかけているわけでもないのに自身の本当の目的を知っている様子に恐怖した。

 

 まるで自分の心の中を覗かれているように感じたのである。

 

『まあそんなことは置いといて、お前さんの目的を邪魔しようとは思ってないさ。俺はただ懐かしい感じがしたから来ただけだよ。だから、警戒するなっての』

 

「……だったら、これだけは答えろ」

 

『うん? なんだいなんだい? どんな質問にもバシッと答えちゃうよ』

 

「貴様は『転生者』なのか?」

 

 レイヴィスはずっと疑問に思っていたことを尋ねた。

 

 伝説の勇者は『転生者』じゃないのか、と。

 

 だからこそ、この世界のことを知っているのではないかと。

 

『答えは、ノーだよ!! 俺は『転生者』じゃない』

 

「だったら、いったい……」

 

『そんなことよりも、こんなことで時間を使ってていいのかい? そろそろお前さんが警戒している相手が動き出すぞ』

 

「っ!?」

 

 自分が警戒している相手が動き出す、レイヴィスはその相手を止めるためにここに来たのだ。

 

 シンの言葉を信じられるかはともかく、レイヴィスはここで立ち止まっているわけにはいかなかった。

 

『ほーら、早くしちゃいなよ。アイツが行く場所もついでに教えてやるからよ』

 

「貴様は何が目的……」

 

『皆まで言うな皆まで言うな。俺はあれだ。RPGで言うところの村人みたいなもんだ。武器は装備しないといけないぞって繰り返すだけなのさ』

 

「……答える気はないと言うことか」

 

『ザッツライ! 今起こっている事件は、全部若人にお任せするわ』

 

 答える気のないシンの横を通り過ぎ、レイヴィスは台座に突き刺さっているゲハバーンへと手を伸ばした。

 

 刀身だけでなく柄の部分まで青錆で覆われており、台座の一部と言われても違和感がない状態であった。

 

 レイヴィスは迷いなく青錆で覆われている柄の部分を握ると、目を閉じた。

 

 次の瞬間、柄を握っている逆の手から光が溢れだし、何かの形へと変化していった。

 

 そこにあったのは……

 

 

*     *     *

 

 

 ギョウカイ墓場、ブレイブ・ザ・ハードは1人立ち尽くしていた。

 

 動こうと思えば動けるのだが、ブレイブは動く気がなかったのである。

 

「……俺は」

 

 ブレイブは手のひらに乗せられていた自身が集めた女神の卵の欠片を見つめた。

 

 フィーナの命令通り、ブレイブも欠片を集めていたのである。

 

 本来であれば、すぐにフィーナに欠片を渡すべきだとわかっているにも関わらず、ブレイブはそれを躊躇っていた。

 

「……確かめなければならない」

 

 ブレイブは欠片を握りしめ、歩き始めた。

 

 フィーナのいる黒い塔ではなく、ギョウカイ墓場の外へと向かって……




という訳で、今回はここまで!
この章から再びシリアス多めになって行きますよ。
いろいろと謎にしていた部分も明かしていかなくてはなりませんので、今から続きを書くのが楽しみです。
それでは、 次回 「機械の顔」 をお楽しみに!

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