超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
何とか本編の方も出来上がりました。
ちょっと短いですが、お楽しみください。
それでは、 戸惑いのチャレンジ はじまります


戸惑いのチャレンジ

「クソッ、女神どもめ!! よくもやってくれたな!!」

 

 ジャッジは自分が掘った空洞の中で、先ほど自分が挟まっていた頭上の穴を睨んだ。

 

 最初は跳び出そうとした時、誰かに踏みつけられてしまい、無様に気絶して宙づりになってしまった。

 

 ジャッジが気絶から戻ると、顔の部分に痛みが走るのと同時に、体が下へと落下していた。

 

 ジャッジにとっての幸運は、鎧を着たジャッジの質量が落下しても掘った空洞が崩れなかったことであろう。

 

 如何に下には海水が流れ込んでいたとしても、鎧を着たジャッジの緩衝材とはなりえない。

 

 ジャッジは憎々しげに頭上から光を差し込んでくる穴を睨んでいたが、1度強く頭を振ると、空洞の出口へと足を進めた。

 

「アイツの命令なんてもうどうでもいい……全員ぶっ殺してやる!!」

 

 ジャッジは今度は海から夢人達を襲おうとしていた。

 

 その頭の中には、すでにフィーナへの言い訳など消えていた。

 

 ただ夢人達を殺すことだけを考えていたのである。

 

 海底に出たジャッジは砂浜の方を見上げて口の端を吊り上げた。

 

 ぬかるむ海底の地面を物ともせず、ジャッジは力強く海上へと跳び上がった。

 

「ヒャ……」

 

「もっと加速しますわよ!」

 

「ブグッ!?」

 

 ……海面に頭部が露出した瞬間、猛烈なスピードで後頭部にぶつかってきた何かのせいで、再び気絶をしてしまった。

 

 ジャッジは鎧の重さにより、そのままゆっくりと海底へと戻って行くのであった。

 

 

*     *     *

 

 

「ん? 今何か当たりましたか?」

 

 ベールはパワーボートを運転しながら、かけていたサングラスをずらして車体に視線を落とした。

 

「ベール! もっと加速するんじゃなかったの!」

 

「おっと、そうでしたわ。運転中の余所見は禁物ですわね」

 

 パワーボートの後ろから牽引される形で、引っ張られている黄色いチューブ型のボートに乗ったネプテューヌが不満そうにこぼした。

 

 その言葉で、ベールもサングラスをかけ直し、パワーボートのハンドルを強く握りしめた。

 

「さあ、わたくしのゲームで鍛えたドライビングテクニック、とくとご覧あれ!」

 

「いやっほー!!」

 

 ベール達がしていること、それは所謂バナナボートである。

 

 ベール達は砂浜から沖合に出た辺りで、そのレクリエーションを楽しんでいた。

 

 ネプテューヌを始め、バナナボートに乗っているラム、日本一、コンパはもちろん、パワーボートを運転しているベールも水着の上からライフジャケットを着ている。

 

「ふぇ、ふぇえええ!? そんなに速くしないでくださいです!?」

 

「ええ、何言ってるのコンパ。もっと速くしてもらわないと……ベール! コンパがもっと速くしてって!」

 

「わかりましたわ! しっかりと捕まっててください!」

 

「そんなこと言ってないです!?」

 

 コンパの叫びを無視して、バナナボートはさらに激しく揺れ加速し始めた。

 

 なぜコンパがバナナボートに乗っているのかと言うと、ネプテューヌに誘われたからである。

 

 コンパはネプテューヌに手を引かれるまま、ライフジャケットを着込み、バナナボートに乗っていたのある。

 

「イヤッホー! もっと速く速く!」

 

「もっともっと揺らしちゃって!」

 

「や、やめてくださいです!? これ以上、速くしたり揺らされた……」

 

「了解ですわ! 行きますわよ!」

 

「いやあああ!?」

 

 ラムと日本一の要望に応え、ベールはさらに加速、鋭いターンを繰り返した。

 

 ネプテューヌ達が笑顔で楽しんでいるのに対して、コンパは涙目で必死にバナナボートにしがみついていた。

 

「助けてくださいですぅぅぅ!?」

 

 

*     *     *

 

 

「コンパも何やってのかしらね。嫌なら乗るのをやめとけばいいのに……それはそうと、アンタはいつまでそうしてるつもりなのよ?」

 

「な、何のことだ?」

 

「……こんなところで浮き輪なんて使ってんじゃないわよ」

 

 アイエフはジト目で、砂浜に近い位置にいるにもかかわらずに浮き輪を付けている夢人を見た。

 

 夢人はパワーボートなどと同じように、ベールが用意していた大きめの浮き輪を使っていたのだ。

 

「ってか、泳げないならあっちでファルコムやケイブ達と一緒にビーチバレーでもしてくればいいじゃない」

 

「……いや、あそこに混ざるのは無理だろ」

 

 アイエフは砂浜でビーチバレーをしているファルコム達を指さして夢人に勧めた。

 

 しかし、夢人はため息をつきながらアイエフの提案を断った。

 

 何故なら……

 

「そこ!!」

 

「任せて!!」

 

 ケイブのスパイクをファルコムが片腕を伸ばして跳んだことでレシーブに成功する。

 

 腕に当たり宙に上がったビーチボールの真下にユニが移動し、両手で柔らかくトスを上げた。

 

「ファルコム! 決めて!!」

 

「了解!! これで!!」

 

 上げられたトスに反応して、ファルコムが素早く起き上がり、体をそらしながら強烈なスパイクをケイブ達のコートへと叩きこんだ。

 

 ナナハがファルコムのように跳び上がってレシーブをしようとしたが、拳1つ分足りずボールはコートに突き刺さった。

 

「アドバンテージ、ユニ&ファルコム」

 

 審判役をしていたブランがコールすると、ナナハは悔しそうに顔に付いている砂を腕で拭って立ち上がった。

 

「ごめん、ケイブ」

 

「問題ないわ。次は絶対にとるわよ」

 

「もちろん!」

 

 2人は拳をつき合わせると笑みを浮かべて、腰を低くして構え始めた。

 

「そうはさせないよ。ユニ、頼んだよ」

 

「任せなさい。アタシのサーブ、返せるものなら返してみなさいよね!」

 

 余裕そうににやりと笑みを浮かべて、ユニは片手に乗せてあるボールにそっと手を添えた。

 

 ファルコムもいつでもネット際に走れるように前傾の姿勢で構えている。

 

「ユニお姉さんにファルコム! 頑張ってください!」

 

「ナナハとケイブも! 負けるなですの!」

 

 ブランの両隣でフェルとがすとがそれぞれのサイドに居るメンバーを応援している。

 

 ……そう、ビーチバレーは白熱の試合の真っ最中だった。

 

「いきなりあそこに行って、混ぜてくれって言っても迷惑になるだけだろ?」

 

「……そうね。さっきから決着もついてないみたいだし」

 

 ユニ達VSナナハ達の試合だが、先ほどから取ったら取られ、取られたら取り返すの繰り返しをしていた。

 

 一向に試合が終わらないでいたのである。

 

「それに、俺もアカリと遊んでやらないとな」

 

「パパとおそろい!」

 

「ああ、おそろいだな」

 

 夢人は自分と同じように浮き輪をつけて波打ち際を歩いていたアカリを抱き上げた。

 

 アカリは嬉しそうに自分がしている浮き輪と、夢人が付けている浮き輪を叩いて笑っている。

 

「泳げなくても浮き輪があれば溺れる心配がないし、少しだけでも遊ばないとな」

 

「……いいパパしてるわね、アンタも」

 

「うひひっ、パパは、いいパパ」

 

 アイエフの苦笑交じりの言葉を褒め言葉と受け取り、アカリはくしゃりと笑った。

 

「それじゃ、せっかくですし、少しだけ泳ぎませんか?」

 

「夢人お兄ちゃんも、一緒に泳ご?」

 

 ネプギアとロムは、夢人に少しだけ深いところに行くことを提案した。

 

「おう、この相棒があれば海なんてもう怖くないぜ。よし、アカリも一緒にぷかぷかと浮こうぜ」

 

「ぷかぷか! ぷかぷか!」

 

 そう言って、夢人達4人は海へと歩いていった。

 

 アイエフは、そんな4人を見ながら口元を柔らかく崩した。

 

「なーにが相棒なのよ。ただの浮き輪じゃないの」

 

「あなたは一緒に行かないの?」

 

 ノワールがアイエフに後ろから声をかけたが、アイエフは驚くことはせず振り返った。

 

「いいんですよ。アイツらに付き合ったらこっちが疲れちゃいます」

 

「それもそうね。せっかくの休息なんだし、ゆっくりしないと……それにしても」

 

 ノワールは言葉の途中でアイエフから視線を外し、目を細めて離れた位置で泳ぐ夢人達を見つめた。

 

「ああしてると、夢人とネプギアって恋人を通り越して夫婦に見えるわよね。アカリもいることだし……そして、ロムは夢人の妹かしら? 夢人のことをお兄ちゃんって呼んでるみたいだし」

 

「……そうですね」

 

「うん? どうかしたの?」

 

 ノワールは冗談のつもりで言ったことに、アイエフが俯いて暗い声を出したことを不審に思った。

 

「あ、いえ、何でもありませ……ん?」

 

「どうかし……え?」

 

 アイエフは何でもないと笑みを作ろうとしたが、夢人達の方を見て固まってしまった。

 

 ノワールも同じものを見て言葉を失くしてしまった。

 

「た、助けてくれえ!?」

 

「ゆ、夢人さーん!?」

 

「夢人お兄ちゃん!?」

 

「パパ、ドンブラコ! ドンブラコ!」

 

 夢人が1人だけネプギア達から離れてどんどんと沖の方へと流れて行ったのである。

 

 理由は、アカリと一緒にのんびりと浮かんでいた夢人の浮き輪をアカリが軽く押したからである。

 

 軽い力であっても、浮き輪はそのまま波の動きに乗り、どんどんと流されて行った。

 

 ネプギアとロムは、夢人が流されていることに気付いた時には、すでにどんどんと遠くへ行ってしまい、アカリがいるため夢人を追うことができないでいた。

 

「誰か助け……」

 

「危ないですわよ、夢人さん!?」

 

「へっ……ええええええ!?」

 

 流されてしまい涙目で砂浜を見つめてじたばたとしていた夢人の後ろから、ベールの切羽詰まった声が聞こえてきた。

 

 夢人が振り向くと、そこには自分に向かってくるパワーボートの姿があった。

 

「ちょっ、危な……ガボッ!?」

 

 ベールは夢人を引かないように慌ててターンをしたが、そのターンによって起こった波で夢人は浮き輪ごと反転してしまった。

 

「ボゴガボボ……」

 

 夢人は何とかして元の態勢に戻ろうと暴れたが、途中で力尽き沈黙してしまった。

 

 そして、残ったのは裏返った浮き輪と海面に出ている下半身だけだった。

 

「……何やってのかしらね、あれ」

 

「……まったく、馬鹿なんだから」

 

 アイエフとノワールの2人は、慌てて夢人を救出しているネプギア達を見て、そろってため息をこぼした。

 

 

*     *     *

 

 

「ううぅ、さっきは酷い目あった」

 

 夢人は救出された後、1人で海岸沿いを歩いていた。

 

 先ほど溺れた手前、再び海水浴を楽しむという気持ちが湧いて来なかった。

 

 かと言って、砂浜でじっとしているのも嫌だった夢人は、1人で近くを散策していたのだ。

 

「ネプギアやアカリ達には悪いことしたよな」

 

 夢人は自分を助けてくれた時に、申し訳ない顔で謝ってきたネプギア達の顔を思い浮かべて項垂れた。

 

「はあ、俺が泳げればすんだ話なのになあ」

 

「まったくよ」

 

「……アイエフ?」

 

 夢人は自分の独り言に反応した相手がいることに驚き振り返った。

 

 そこには、アイエフが缶ジュースを2本持って呆れた目で夢人を見ていた。

 

「ほら、水分補給もしときなさいよ」

 

「おっと、サンキュー」

 

 夢人は投げられたジュースを受け取り、プルタブを開けてひと口飲んだ。

 

 その間に夢人の隣まで歩いてきたアイエフは、斜め下に視線を向けながら夢人に言った。

 

「ちょっと歩きながら話さない?」

 

「うん? わかった」

 

 そのまま2人はゆっくりと海岸沿いをゆっくりと歩き始めた。

 

 しかし、2人の間に会話はなく、夢人が時折ジュースを飲む音だけが響いていた。

 

 夢人はちらちらとアイエフの方を見てそわそわとしているのだが、アイエフはただ海を見ているだけで何も話しだそうとしなかった。

 

 夢人は自分から話し出した方がいいのだろうかと思い、口を開こうとした時、ようやくアイエフが話し始めた。

 

「アンタは海、楽しんでる?」

 

「え、ああ」

 

「そう」

 

 それだけ聞くと、アイエフは黙ったまま足を止めて俯いてしまった。

 

 夢人も自分の隣を歩いていたアイエフが急にとまったことを不思議に思い、立ち止まって振り返った。

 

「アイエフ? いったいどうし……」

 

「ねえ、夢人」

 

 夢人は様子のおかしいアイエフに声をかけようとしたが、それはアイエフによって遮られてしまった。

 

「アンタは今、どうして頑張るの?」

 

「……え?」

 

 夢人は、かつてルウィーで尋ねられたことを再び尋ねられたことに驚き目を見開いてしまった。

 

 それは、再び尋ねられたことに対する驚愕ではない。

 

 かつて尋ねられた時は、アイエフは苛立ちの表情を浮かべていたが、今は違う。

 

 今アイエフが浮かべている顔に言葉を失くして驚いていたのである。

 

 ……その今にも泣きだしそうで、悲しげに歪められていた顔に。

 

 そのあまりにも脆くて、弱く見える姿に……




という訳で、今回はここまで!
よし、これでこの章も本編は後1話です。
この章は細かく区切ってしまいましたが、次章からは元通りに戻せると思います。
それでは、 次回 「チェンジ・イン・クオリティ」 をお楽しみに!

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