超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
昨日はすっかり忘れていましたが、この作品が通算UA50000を突破しました!
これも皆さんのおかげです!
これからもよろしくお願いします!
それでは、 渚のクライシス はじまります


渚のクライシス

 夢人とフェル、ワンダーが女性陣の着替えを待っている浜辺の海から、黒い鋭利な角を3本生やした機械的な顔がにやりと笑って浮かび上がった。

 

「ようやくだ」

 

 機械的な顔の持ち主、鎧を着たジャッジ・ザ・ハードは夢人達に見つからないように沖合で顔だけを出して夢人達を観察していた。

 

 ジャッジはギョウカイ墓場から出た後、すぐに夢人達を探していた。

 

 そのため、まずは夢人がいるプラネテューヌに向かったのだ。

 

 しかし、そこで見たのはどこかに向かおうとする夢人達の姿であった。

 

 ジャッジは気付かれぬように夢人達を尾行し、他の女神達が合流したのを確認すると歓喜した。

 

 フィーナからの命令は、夢人を連れてくることだけ。

 

 別に夢人を傷つけてはいけないとは言われていない。

 

 つまり、ジャッジは夢人と戦う気満々である。

 

 しかし、夢人だけには手加減をしなければいけない。

 

 乱戦になってしまった時、誤って殺してしまう可能性がある。

 

 そのジレンマがあるため、ジャッジは無防備に海を眺めている夢人達を襲うことができずにいた。

 

「まずは勇者をどうにかするか」

 

 自分が満足のいく戦いをするためには、まず夢人を無力化しなければいけないと考えたジャッジは再び海中へと姿を消した。

 

 ジャッジは海底に辿り着くと、ポールアックスの刃先を海底に突き立てて高速で回転させることで穴を掘り始めた。

 

 ジャッジが考えた作戦はこうだ。

 

 まず海底から地面を掘り進め、夢人の真下に辿り着く。

 

 地面から夢人を強襲し、彼を海に放り投げる。

 

 そして、海底に沈めておいた鎧用のコンテナの中に夢人を隔離し、女神達と戦い終えるまで彼を捕獲しておく作戦だ。

 

 女神達との戦いが終われば、夢人をコンテナの中から解放し、彼に無残な女神達の姿を見せつけて、怒り狂う彼を相手に戦うつもりである。

 

 かつて夢人と対峙した経験から怒り狂っていても、ジャッジは簡単に彼を嬲り殺すことができると判断していた。

 

 むしろ、ジャッジは夢人を怒り狂わせることが目的なのである。

 

 夢人が激しく抵抗したため、やむを得ず殺してしまったとフィーナに報告するつもりなのだ。

 

 自分の欲求を満たすだけでなく、憎いフィーナの鼻を明かせると思い、ジャッジは笑みを隠せなかった。

 

「ここだな」

 

 ジャッジは夢人達がいるであろうおおよその位置まで掘り進めた。

 

 そして後は、地面から飛び出して夢人を襲うだけ。

 

 ジャッジは口の端を大きく吊り上げて身を屈めると、頭上の岩盤を物ともせずに跳び上がった。

 

 自分の鎧ならば、簡単に地面を飛び出せるという自信の現れである。

 

 頭部で地面を裂きながら、いよいよ地上に出ようとした、まさにその時であった。

 

「ヒャッ……」

 

「海だー! いやっほー!」

 

「ガッ!?」

 

 地上に出ようとした頭部を思いっきり踏まれてしまい、完全に勢いを殺されてしまった。

 

 予想外の攻撃に見舞われたジャッジは、頭部の一部を地上に露出したまま宙づり状態で意識を手放してしまった。

 

 

*     *     *

 

 

「おおっと、ちょっと跳びすぎちゃったかな?」

 

 ネプテューヌは海を見て跳びあがった際に、自分の思った以上に跳び上がったことに少しだけ驚いてしまった。

 

「なーんか変な音も聞こえたような気がするけど……まあいっか」

 

 砂浜に不自然に生えている黒い何かを気にせず、ネプテューヌは夢人達の方へと走って行った。

 

「おっまたせー!」

 

「そんな待ってないさ。あれ? 他の皆はまだなのか?」

 

「うん、わたし待ち切れなくて走ってきちゃった。それはそうと、ふふーん、どうどうゆっくん?」

 

 ネプテューヌはこれ見よがしに、夢人達の前でキュロパンの裾を掴みながら上目遣いでちらちらと夢人を見つめた。

 

「……どうって何が?」

 

「もー、わかってるくせに。わたしの水着姿を見て、何か感想はないの?」

 

「……うん、似合ってるんじゃないかな」

 

 ネプテューヌの水着はツーピース型であり、ホルターネックのトップスとキュロパンのボトム、いつもは十字キーを模した髪飾りもハイビスカスをイメージした赤い花の髪飾りを付けていた。

 

 夢人は露骨に水着の感想を求めてきたネプテューヌを、冷めた目で見つめながら適当に返事をした。

 

「あれ? なんでそんな反応が冷たいの? 男の子なら、赤面して鼻の下伸ばしながら美少女の水着姿来たー!! って感じで喜ぶところじゃないの?」

 

「いやいやいや、普通そんな反応しないからな」

 

「するよ! って言うか、どうしてそんなテンション低いの? 海だよ、海! もっとテンション上げないと楽しめないよ!」

 

 自分の予想とは違う反応を示した夢人に対して、ネプテューヌは不満そうに眉をひそめたが、すぐに両手を広げて満面の笑みを浮かべた。

 

「燦々と輝く太陽、エメラルドグリーンな海、そして美少女の水着姿、これでテンション上げなきゃ男じゃないよ!!」

 

「……どうしても水着を推すんだな」

 

「当然でしょ! わからない? この恥じらいを見せてるわたしの乙女心」

 

 わざとらしくウインクをしたり、はにかんで見せたりするネプテューヌに、夢人達は何とも言えない気持ちになった。

 

 恥じらう乙女とは、露骨に水着をアピールするものなのであろうかと内心考えていたのである。

 

「うん、可愛いね。うわー、すごいテンション上がったわー」

 

「……もー、ノリ悪いな、ゆっくんは。それじゃ、フェル君にワンちゃんはどう? わたしの水着姿似合ってる?」

 

「あ、あははは、よくお似合いですよ」

 

〔だから、ワンちゃんはやめてくれ……似合っているのではないか?〕

 

 棒読みで言われた夢人の感想に呆れたネプテューヌは、標的をフェルとワンダーへと変えた。

 

 フェルは苦笑しながら、ワンダーは疑問符浮かべながらそれぞれ応えた。

 

「なんで皆そんなテンション低いかな? せっかくの海なのに」

 

「あなたのテンションが高すぎるのが原因でしょ、まったく」

 

 遅れてやってきたノワールが、ネプテューヌの後ろから声をかけてため息をついた。

 

 やってきたのはノワールだけでなく、他の全員もそろってやってきていた。

 

「ノワール! それに皆も遅いよ! 早くこのひと夏の思い出って感じのバカンスを楽しもうよ!」

 

「少しは落ちついたらどうなのかしら。これは休息も兼ねているのよ。そんな調子じゃ疲れが……」

 

「えー、でもノワールだって、さっき水着を……」

 

「言うんじゃないわよ!!」

 

 夢人達、男性陣は急にノワールが顔を真っ赤にして怒鳴った理由がわからず、他へと視線を向けると苦笑いをこぼされてしまった。

 

 どうにも話せない事情があるらしいことを察した男性陣は、騒ぐ2人を無視することに決めた。

 

 

*     *     *

 

 

「本当、あの2人はどこに行っても変わらないわね」

 

「まあいいではありませんか。楽しみ方は人それぞれですわ」

 

 ベール姉さんとブランさんがネプテューヌさんとノワールさんを呆れながら見ている。

 

 あの2人っていつもあんな感じなんだ。

 

 でも、すごく仲良しに見えて羨ましいと感じてしまう。

 

 ……っと、そんなことよりも私達は作戦を実行しないとね。

 

「……ユニ、わかってるよね?」

 

「……ええ、わかってるわよ」

 

 私はユニに耳打ちして作戦を覚えているかどうか確認した。

 

 ユニはビキニタイプの黒の水着を着ていて、いつものリボンよりもフリルがついたリボンで髪を結んでいる。

 

 私? 私も同じライム色のビキニタイプだよ。

 

 でも、ユニがしきりに私やベール姉さん達の胸に視線が向いているような気がするんだけど……まあ、気のせいだろう。

 

 私達の作戦……それは、このバカンスを利用して夢人に女の子を知ってもらうのだ。

 

 おあつらえ向きに海水浴で、女性らしさが浮き立つ水着姿なのだ。

 

 いくらネプギア一直線の夢人でも、私達の水着姿にドキッとするだろう。

 

 夢人だって正常な男の人だものね。

 

 ネプギアと一緒に寝た時、体を縛っていたということで夢人も人並みにそういうことに関心があることはわかってる。

 

 そう言う目線で見られるのは恥ずかしいけど、それは意識してもらえているという充分な証拠につながる。

 

 ノワールさんのアドバイスを私なりに解釈すると、男の人は自分を頼ってくれる、甘えてくる女の人に弱いんだと思う。

 

 今更わざとらしく弱弱しい雰囲気を出しても、夢人に心配されるだけだ。

 

 なら、少しだけ甘えた雰囲気で夢人に接すれば、女の子らしさをアピールすることができるはずだ。

 

 私は手に持っている日焼け止めのボトルを握りしめて、一度深く呼吸をした。

 

 いくら夢人でも、まだ直接肌に触れさせることは恥ずかしい。

 

 でも、恥ずかしがってるだけじゃ前には進めない。

 

 よし、行くよ、私!

 

「ねえ、ゆめ……」

 

「さあ、ナナハ! お姉ちゃんが日焼け止めを塗って差し上げますわ!」

 

「え、ちょっ!?」

 

 夢人に話しかけようとした時、ベール姉さんが私の腕を引っ張りだした。

 

 しかも、ご丁寧にすでに砂浜にはシートまで敷いており、早く横になってくれと言わんばかりに笑顔だった。

 

「いや、その……」

 

「遠慮なんていりませんわ! その代わり、ナナハもわたくしの背中に塗ってくださいね」

 

「……うん」

 

 私はベール姉さんの笑顔に負けて、シートに横になった。

 

 この間家出したせいで、私はベール姉さんに負い目がある。

 

 これは断れないよ。

 

 ……ごめん、ユニ。後は任せるよ。

 

 

*     *     *

 

 

 ナナハがベールさんに腕を引かれた時点で、ああなるとは予想していたけど、そんな全てを託すって感じの目線でアタシを見ないでよ。

 

 アタシは両手で背中に隠してある日焼け止めのボトルを強く握りしめた。

 

 ……アタシはこれから夢人に日焼け止めを塗ってくれと頼みに行く。

 

 言葉にすると簡単だが、実際に頼めるかどうかを考えると難しい。

 

 何より、恥ずかしいじゃない!!

 

 いくらアピールすると言っても、その、背中を触られるのよね?

 

 変な声出ちゃわないかしら……その前に、夢人に体を触られると考えるだけで顔が熱くなってくる。

 

 それにアタシなんかの体に、夢人が興味を持ってくれるかどうかもわかんないし……

 

 ネプギアにしろ、ナナハにしろ、アタシの恋敵はなんでそんな立派なもんをぶら下げてんのよ!!

 

 アタシなんて『変身』するとサイズが縮むのに比べて、アイツらは大きくなる。

 

 ロムやラムだって、ホワイトシスターなんて言うおかしな合体変身をするとナナハ張りにでかくなるし……

 

 ……そりゃ、アタシだって努力してんのよ。

 

 毎日大きくするために頑張ってるのよ。

 

 まだその努力は実っていないけど。

 

 っとと、そんなこと考えている暇はなかったわ。

 

 アタシはネプギアが動く前に、夢人にお願いしなくちゃいけないんだ。

 

 何故なら、ネプギアも頬を染めて夢人をちらちらと見ている。

 

 ネプギアも私やナナハと同じビキニタイプで、色はピンクだ。

 

 頭の髪飾りは夏をイメージしたのか、ひまわりをモチーフにしたものに変わっている。

 

 ……くっ、同じタイプの水着ってことで、余計にアタシが負けているように感じてしまう。

 

 夢人はネプギアがあんな顔でお願いすれば、必ず了承してしまうだろう。

 

 そうなると、夢人は余計にネプギアに女の子らしさを感じてしまい、もっと好きになってしまうかもしれない。

 

 これ以上、ネプギアに差をつけられるわけにはいかない。

 

 アタシだって夢人が好きなんだ!!

 

 幸い、ネプギアも恥ずかしがっていたので、まだ夢人にお願いできていない。

 

 動け、動くんだ、アタシ!!

 

 今動かなくて、いつ動くのよ!!

 

 志半ばに散ってしまったナナハの分まで、アタシが夢人の視野を広げてみせるんだから!!

 

「ゆ……」

 

「ほら、こっち来なさいよ、ユニ」

 

「お、お姉ちゃん?」

 

 アタシが覚悟を決めて、夢人に日焼け止めを塗ってもらうようにお願いしようとした時、お姉ちゃんがアタシの腕を引っ張った。

 

 こ、このパターンは……まさか!?

 

「早くその日焼け止めを貸しなさい。私が塗ってあげるから」

 

 や、やっぱりそうだ!?

 

 アタシもお姉ちゃんに捕まっちゃった!?

 

 で、でも、どうして!? さっきまでお姉ちゃんはネプテューヌさんと言い争いをしてたじゃない!?

 

 それが急にどうして!?

 

「ほ、ほら、私も仕事ばかりでユニに構ってあげる時間がとれなかったじゃない? せ、せっかく海に来たんだし、今日は私に甘えてもいいのよ?」

 

 お姉ちゃんは、ちらちらとベールさんとナナハの方を羨ましそうに見ながら、アタシをシートに横にさせようとする。

 

 も、もしかして、ナナハ達のことを羨ましがってる?

 

 そりゃ、アタシもお姉ちゃんに甘えられるのは嬉しいよ。

 

 お姉ちゃんも言った通り、仕事ばかりであまり甘えることができなかったから、嬉しいんだけど……今だけはやめて欲しかったよ!?

 

 お姉ちゃんが嫌なわけじゃないよ!?

 

 で、でも、これはアタシの恋の駆け引きでもあるんだよ!?

 

 こ、このままじゃ、ネプギアに……

 

「あ、あの、夢人さん!」

 

「うん? どうしたネプギア?」

 

「そ、その……日焼け止め、塗ってくれませんか?」

 

 ネプギアが顔を真っ赤にして、日焼け止めのボトルを夢人に差し出している。

 

 夢人も顔を真っ赤にしながら、驚いた表情で自分を指さした。

 

「お、俺で、その、いいのか?」

 

「……は、はい、お願いします」

 

「わ、わかった」

 

 ……ああ、終わっちゃった。

 

 夢人が恐る恐ると言った感じでボトルを受け取った瞬間、作戦の失敗が確定した。

 

「ほら、ユニも突っ立てないで早く横になりなさいよ」

 

「……うん、お願いね、お姉ちゃん」

 

 ……どうしてだろう。

 

 嬉しいはずなのに、なぜか少し悲しくなってきたよ。

 

 

*     *     *

 

 

 どこかの廃墟となった城の中、1人の男がとある部屋を探索していた。

 

 男は冒険者風の男から情報を聞いていた男であり、しきりに部屋の壁を確かめている。

 

 壁はレンガ造りであり、男は1つ1つそれを確かめながら横に移動している。

 

「ここか」

 

 男が壁を触っていた手の感触が変わったのを確認すると、その1つのレンガを強く押した。

 

 すると、押したレンガが壁にどんどんと埋まって行き、少し離れた同じ壁のレンガも動き始めた。

 

 壁は天井に収納されるように移動し、そこには下に続く階段が現れた。

 

 灯りがないせいで、暗くどこまで続いているのかがわからない階段を男は見つめ始めた。

 

「この下に……あれがあるのか」

 

 つぶやいたと同時に、男の右目が一瞬赤い光を放った。

 

 男は階段の先を見つめながら、右目を押さえて、誰かに聞かせるようにつぶやいた。

 

「ああ、わかっている。それでも、俺は……」

 

 男はゆっくりと階段を下って行った。

 

 男が階段を下りていくと、天井に収納されていた壁が降りてきて、再び階段を隠してしまった。

 

 男はそれでも歩みを止めずに、ただ階段を下っていく。

 

 ……自分の望むものを手に入れるために。




という訳で、今回はここまで!
本格的な海での話は次回に持ち越しです。
それはそうと、皆さんは明日が何の日だかわかりますか?
そう、明日はバレンタイン前日です。
実は番外編で投稿予定のバレンタイン記念ですが、準備編と当日編の2話構成になりそうです。
そのため、明日は本編を投稿したのち、準備編の方を番外編に投稿させていただきますね。
そちらの方もお楽しみに。
それでは、 次回 「輝くノスタルジア」 をお楽しみに!

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