超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
今日の朝は初めて予約投稿機能を使ったのですが、無事に投稿できたみたいでよかったです。
それでは、 危険なブルー はじまります
「……なあ、フェル、ワンダー」
「どうしたんですか、お兄さん?」
「俺達、どうしてこんなところに居るんだろうな」
いや、今更言うのは遅いとわかってる。
でもさ、一応言っとかないといけない一種の使命感があるんだよ。
1人でいた時は、俺はこれからどうすればいいんだってシリアスな雰囲気を出していたのに、まさかイストワ―ルさんの話が終わった途端にこんなことになるとは思わなかった。
「何を言っているんですか」
〔もしや疲れているのか?〕
「……いや、そんなことないさ。ただ……」
フェルとワンダーが心配そうに俺を見てくるが、大丈夫さ。俺は正常だ。
ちゃんとここに来た理由も、どうして俺達がこんな恰好をしているのかも全部覚えているよ。
俺は目の前に広がる光景に目を細めた。
「海……綺麗だよな」
照りつける太陽、チリチリと熱を放つ砂浜、青く透き通る海。
……そう、俺達は今、海に来ていた。
* * *
「ここ最近のネプテューヌさん達の活躍により、各国のシェアもだいぶ回復してきました。そこで私達は、ここで以前より考えていた新法を公布します」
イストワ―ルは集まった夢人達に説明をした。
この場には夢人達だけでなく、通信映像ではあるが、ノワール達各国の女神やその協力者達もイストワ―ルの言葉を聞いていた。
「これにより、私達は犯罪組織に対して……」
「あ、あのー、いーすん?」
「ん? なんですかネプテューヌさん? 質問なら後で受け付けますよ?」
「そのしんぽーって何のこと?」
「……はい?」
ネプテューヌのまさかの質問にイストワ―ルは目を瞬かせて驚いてしまった。
驚いているのは彼女だけでなく、夢人達も同様であった。
そんな中一番最初に正気に戻ったノワールがネプテューヌをジト目で見始めた。
〔呆れたわ。ケイやイストワ―ル達、教祖が考えてた新法って言ったら1つしかないじゃない〕
「そ、そんなのわたし聞いてないよ?」
「いいえ!! 私はちゃんとネプテューヌさんにも説明しました!!」
イストワ―ルは自分が説明したはずの新法について、ネプテューヌが完全に忘れてしまっていたことに怒りを隠せなかった。
「いいですか!! この新法は、マジェコンの販売禁止や所持禁止などの犯罪行為を厳しく罰する法案なんですよ!! それをどうして忘れてしまうんですか!!」
「ねぷっ!? そんなこと言われても!?」
怒りの形相でネプテューヌに詰め寄るイストワ―ルを見て、ネプギアは困ったように笑いながらイストワ―ルを宥めにかかった。
「ま、まあまあ、いーすんさん落ちついてください」
「ですが……」
「ね、ネプギアは知ってたの? いーすんの言ってるしんぽーについて」
「……あ、うん、ごめんお姉ちゃん。それについてはフォローできないかも」
「ネプギア!?」
ネプギアが気まずそうに目をそらすと、ネプテューヌは大いに慌てた。
実はイストワ―ルから新法についての説明を受けた時、プラネテューヌにいる全員が同時に同じ説明を受けていたのである。
ネプテューヌはしかもネプギアの隣で、イストワ―ルの正面で説明を受けていたにも関わらず忘れてしまっていたことに、さすがにネプギアもフォローができなかった。
「どうせプリンかゲームのことばかり考えてたんでしょ? 自業自得だわ。イストワ―ル様、話しが進まないので続きをお願いします」
「ちょっ、それはさすがに酷いんじゃないの!? わたしだけ理解してないなんて……」
「それもそうですね。では、続きを話させていただきます」
「だから、いーすんも話しを進めないでよ!?」
アイエフがイストワ―ルに話しの続きを促し、話しが再開されようとした時、ネプテューヌが涙を浮かべてそれを阻止しようとした。
「わたしだけ仲間外れにしないでよ!? ほら、ちゃんとわたしだけじゃなくて、確認のためにもう一度……むぐっ」
「はいはい、後で説明するから下がってような」
「邪魔しちゃだめですよ」
騒ぐネプテューヌの後ろから夢人は口を押さえて下がらせた。
このままネプテューヌがしゃべっていると、話しが進みそうにないと判断した夢人は、駄々っ子を押さえるような感覚でネプテューヌを引きずって下がらせたのである。
その際、隣に居たコンパからもお叱りの言葉をいただいたネプテューヌの瞳は潤みを増していた。
「……少々取り乱してしまいましたが、話しの続きをさせていただきます」
イストワ―ルは申し訳なさそうに各国の女神達に謝罪して、当初の目的を果たすために説明を再開した。
「新法が公布されて施行されれば、私達は本格的に犯罪組織に対して攻勢に出ることができます」
今までイストワ―ル達が新法を公布しなかった理由は、各国のシェアが低下していたためである。
3年もの長い期間、女神が公の場に姿を現さなかったことで、国民は女神の存在に懐疑的になっていた。
そんな状態で新法を発表しても、効果があまり認められないと判断した教祖達は、女神達の存在を国民に積極的にアピールしたのである。
ちなみに、夢人が交通整理やファンサービスをしていたのもここに理由がある。
女神が健在であることを国民にアピールすることが優先事項であったのだ。
つまり、ネプテューヌとネプギアの活躍を国民に知らしめなければいけない状況で、夢人の活躍を表だって知らせることはマイナスになる。
ただでさえワンダーのアーマーモードは目立つことに加えて、『鋼鉄巨人ハードブレイカー』の放映によって認知度が高いのだ。
女神の活躍よりも人々の関心を集めてしまう危険性があったのである。
「この新法は最近大人しい動きしか見せていない犯罪組織を刺激してしまう危険性もあります。これにより、私達の戦いは厳しいものになってしまうでしょう」
〔上等じゃない。いずれは決着をつけなくちゃいけなかったんだから問題ないわよ〕
〔これ以上、ゲイムギョウ界を好きにさせるわけにはいかないわ〕
〔わたくし達が受けた屈辱も倍以上にして返してさしあげませんといけませんからね〕
「むぐぅ、もがもご」
「あ、悪い」
「ぷはーっ、もうゆっくん!! いつまでも口を塞がないでよ!! わたしだけ乗り遅れちゃったよ!!」
ノワール達がそれぞれ決意を語る流れに乗ろうとしたネプテューヌだったが、夢人に口を塞がれていたため上手く言葉を話せなかった。
ぷりぷりと夢人に怒りを向けていたネプテューヌの姿に、この場の空気が弛緩した。
これから起こるであろう激しい戦いを前に、いつもと変わらない様子のネプテューヌの姿に全員が勇気づけられたのである。
「もー、後で酷いんだからね!!」
「それはいいから、早く決意表明しとけって」
「っと、そうだった。うん、皆で絶対にゲイムギョウ界を平和にするよ!!」
ネプテューヌが全員の決意を代弁したことで、イストワールも頬を緩めて説明を再開させた。
「新法についての説明は以上ですが、続きまして、アカリちゃんの欠片の捜索についての方針をご説明したいと思います」
夢人はイストワールの言葉を聞いて、わずかに眉を動かした。
欠片の捜索は夢人にとって新法よりも重要なことであるからだ。
「現在までで発見した欠片が19個、そのどれもが小さいものであったことから、未だゲイムギョウ界中に欠片は数多く散らばっていると予測されます」
夢人達の欠片捜索は芳しい成果を上げていなかった。
新法のために女神の仕事を優先していたわけではなく、単純に見つからないのである。
どこにあるのかもわからない上に、見落としてしまうほど小さい欠片を探すのは困難を極めた。
「ブランさんの報告では、犯罪組織も欠片を集めていると報告がありました」
〔ええ、変態……じゃなかった。トリック・ザ・ハードって言う奴が欠片を集めているみたいなことを言っていたわ〕
ブランはトリックのことを思い出して、眉間にしわを寄せた。
トリックに目の前で欠片を奪われたことだけでなく、侮辱されたことを思い出していたのである。
「なぜ犯罪組織が欠片を集めているのか理由は分かりませんが、彼らに欠片を悪用させるわけにはいきません」
〔確かに、あれを吸収したモンスターは強くなったからね〕
〔加えて、現状ではわたくし達女神の『変身』にも関係しているかもしれませんものね〕
ノワールはラステイションで対峙した欠片を吸収したアイスフェンリルとの戦いを思い出した。
ベールの言う通り、そいつが現れた途端に『変身』が強制的に解除されたことを考えると、欠片が女神に何らかの影響を与えている可能性がある。
もしも犯罪組織が欠片の力を使って女神の力を削ごうとしているのであれば、深刻な問題となる。
「欠片を捜索するために有効な手段がない現状では、捜索する人員を増やして探すことしかできません。ですが、可能な限り迅速に欠片を集めなければいけないというのも事実です」
「条件がハードモード通り越して、上級者モードだけどやるしかないよね」
「はい、これに関しましては有効な捜索方法が判明するまで、地道に捜索していただくしかありません。欠片を吸収したモンスターについても報告があり次第対処していただきます」
夢人は欠片捜索が後手に回ってしまう状況に、拳を強く握りしめた。
「……さて、私からの説明は以上です。何かご意見がある方はいらっしゃいますか?」
〔それでは、わたくしから提案があるのですが、よろしいでしょうか?〕
イストワ―ルが全員に意見を求めると、ベールが意見を述べ始めた。
〔新法の公布前に、1度全員で集まって休息をとりませんか?〕
〔全員で集まるってのはいいけど、休息ってどういうことよ?〕
〔言葉通りですわ。今後激化する戦いを前に、心と体をリフレッシュさせるんです。皆さんをリーンボックスのリゾート地に招待したいと思いますわ〕
ベールの休息を取るという提案に、ノワールとブランは顔をしかめた。
〔私は賛成できないわね。確かに、休息を取ることは大事だろうけど、あまり休んではいられないわ〕
〔わたしもこの間温泉でゆっくりした手前、あまり強くは言えないけど休んでいる暇はないと思うわ〕
2人が休息を取ることに難色を示したことで、ネプテューヌは不満そうに唇を尖らせた。
「ええー、そんなこと言わないでゆっくり休もうよ」
「……アンタは少しは真面目になってもらいたいけどね」
アイエフは明らかに遊びたいと言ってるように見えるネプテューヌの姿に額を押さえてため息をついた。
〔これで賛成と反対で2対2ですわね。困りましたわね、これではどうしようもありませんわ……そうですわ! アカリちゃんに決めてもらいましょう!〕
「アカリに?」
ベールは名案とばかりに手を叩いて目を輝かせた。
〔そうですわ。他の方に尋ねてしまうと、尋ねる人によってはもう決まったも同然になってしまいますわ。その点、アカリちゃんなら公平に決めてもらえますわ〕
「……まあ、無邪気って公平ってことなのかもしれないけどな。おーい、アカリ」
夢人は苦笑しながらアカリを呼ぶと、夢人の腕の中に明かりが現れた。
「うにゅ、なにパパ?」
「用があるのは俺じゃなくてベールだ」
〔アカリちゃんはリゾートに興味はありませんか? 海の綺麗なところなんですわよ〕
「うみ? うみってなに?」
アカリはベールの言葉の意味がわからず、首をかしげながら夢人に尋ねてきた。
「うーん、なんて言えばいいのかな。海って言うのは、泳いだり、砂浜でお城を作って遊んだり、綺麗な貝殻を見つけることができる場所なんだ」
「そうなの? いってみたい!!」
〔決まりですわね!〕
アカリの賛成の言葉を聞いた瞬間、ベールは満面の笑みを浮かべた。
〔それでは皆さんにはリーンボックスの教会に集合していただき、そこからリゾート地に向かいますわよ〕
* * *
……てなことがあったんだよな。
俺もブランと一緒でネプギアと温泉に行った手前、休息ばかりとっている気がしてならないが、決まってしまったものは仕方ない。
俺達はベールの案内で、リゾートアイラン島って言うリーンボックスの街とは少し離れた小島に来ていた。
その名前に相応しく、この島はリゾート開発を目的として開発されているので、レストランに映画館、ゲームセンターにプールなどのいろいろな施設がある。
しかも、今回は俺達だけで貸し切り状態なのだ。
理由としては未だ開発途中らしく、何でも新型ゲームの開発をしている区画があるらしい。
……まあ、今回は海がメインだから他の施設に行くことなんてないだろうな。
俺は若干現実逃避ぎみになっていた思考を戻して、開き直ることにした。
せっかくタダでリゾートを楽しめるのなら、思いっきり楽しんでおこう。
……この時、俺はまだ知らなかった。
この海であんなことが起こるなんて……
という訳で、今回は以上!
久しぶりに連続投稿することができました。
それよりも今日も寒くて大変でしたね。
早く暖かくならないかな。
それでは、 次回 「渚のクライシス」 をお楽しみに!