超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

116 / 184
はい、皆さんおはようございます!
昨日はゆっくりと休ませていただきましたので、本日は2話投稿できたらさせていただきますね。
そして、今回からまた新章の始まりです。
それでは、 ラストパラダイス はじまります


狙われた勇者、修復される世界
ラストパラダイス


「があああああああああ!!」

 

 振るわれたポールアックスの一撃により、黒く積み上げられていたゴミの山が削り取られていく。

 

 武器を持つ人物、鎧を身に纏ったジャッジ・ザ・ハードはそれで満足せず、何度も何度も武器を振るっていく。

 

 最初はジャッジよりも高く積み上げられていたゴミ山も削り取られた箇所から崩れていき、無残な姿になって行った。

 

「おりゃああああああああ!!」

 

 最後に残ったすでに山とも言えないゴミの塊を砕かんとポールアックスを振り下ろすも、塊は弾かれて飛んで行くだけであった。

 

 その場には、やり場のない怒りを堪えるように歯を食いしばり武器の先端を睨むジャッジの姿と、その周りに散らばる破壊されたゴミだけが存在していた。

 

「クソッ!! クソクソクソッ!! うおおおおおおおおおおおお!!」

 

 ジャッジは手に持っていたポールアックスをへし折り、赤い空に向かって叫びをあげた。

 

 彼がこのような行動をとるのは初めてではない。

 

 フィーナに敗れて以降、彼は1度もギョウカイ墓場から外へ出ていない。

 

 それは一重にトリックがジャッジを欠片探しに参加させることに難色を示したからである。

 

 ジャッジの性格上、欠片探しと言う名目でゲイムギョウ界に解き放つと、欠片を探さず、女神達との戦いを優先すると考えたからだ。

 

 自分の保身のために少しでもリスクを減らそうと考えたトリックは、ジャッジにギョウカイ墓場での欠片探しを任せていたのである。

 

「ハア、ハア、ハア……違う」

 

 ジャッジは息を切らせながら自分の両手を見つめ始めた。

 

 その手は何かを耐えるように震えており、やがては体全体が震え始めた。

 

「違う違う違う、ちがああああああああう!!」

 

 震える両手を組み合わせ、頭上高く持ち上げると、そのまま地面に叩きつけた。

 

 その衝撃により、散らばっていたゴミは吹き飛ばされ、地面が陥没し、叩きつけた手の部分に罅が入った。

 

「オレはいったい何をしている……なんでオレはこんなところに居るんだ!!」

 

 罅が入り脆くなっていた手を強く握りしめ、指の関節が壊れようともジャッジは気にする様子もなく叫び続けた。

 

「戦いたい!! 女神達と!! 勇者と!! ぬおおおおおおおお!!」

 

「……相変わらずね、脳筋ちゃんは」

 

 空に向かって吠え続けるジャッジの後ろから、フィーナが呆れたように髪を弄りながらやってきた。

 

 ジャッジは振り返り、フィーナの姿を確認すると、激しく彼女を睨みだした。

 

「貴様は……何の用だ」

 

「あら、反抗的ね。私があなたの主なのを忘れたのかしら?」

 

「……誰が貴様など」

 

 ジャッジもマジックと同様、フィーナのことを主として認めてはいなかった。

 

 しかし、表立って反抗をする態度を見せるマジックとは違い、ジャッジのその声は小さい。

 

 そんなジャッジの様子が面白いのか、フィーナは頬を緩ませて笑みを作り上げた。

 

「うふふ、私のお願いを聞いてくれたら、外に行ってもいいわよ?」

 

「貴様の命令なんて……」

 

「女神達と戦えるわよ?」

 

「……っ!?」

 

 ジャッジはフィーナの言葉に息をのんだ。

 

 自分が渇望している戦いができるかもしれないと、知らずうちに胸を高鳴らせていた。

 

 ジャッジの変化を見てとったフィーナは笑みを深めて、胸の前で両手を合わせた。

 

「あなたには父様、勇者をここに連れて来て欲しいのよ」

 

「……それだけ、か」

 

「そうよ。勇者は女神と一緒に居るでしょうから、戦いは絶対に避けられないわよ」

 

「……勇者さえ連れてくれば、好きにしていいんだな?」

 

 フィーナの言葉を聞いていくうちに俯いてしまったジャッジは、声を震わせて確認するように尋ねた。

 

「ええ、手段も犠牲も問わないわ。あなたはただ勇者を連れてくればいいの。邪魔するものは全部好きにしていいわよ」

 

 にこりと笑って紡がれた言葉を聞いたジャッジは、返事をせずに口の端を大きく吊り上げて獰猛な笑みを浮かべながらフィーナに背を向けて歩きだした。

 

 聞きたいことを聞けた彼の頭の中には、すでにフィーナの姿などない。

 

 ようやく望んだ戦いができる喜びしかなかった。

 

 フィーナはそんな自分の命令をしっかりと遂行できるかどうかも怪しいジャッジの後ろ姿を見て、目を細めて口元に小さく笑みを浮かべてつぶやいた。

 

「……できるのなら、ね」

 

 

*     *     *

 

 

「……うーん、どうしたもんかな」

 

「どうしたの、パパ?」

 

 俺は今、自室のベットに横になって考えていた。

 

 横で俺の頬をぺちぺちと叩いてくるアカリがいるが、それを気にしてなんていられない。

 

 俺はここ最近の行動を思い返していた。

 

 ネプギアとの温泉旅行から帰って来てから、俺もついにネプギア達と一緒に戦えるといきこんでいた。

 

 ワンダーはアーマーモードに制限時間があるが、強力であり、きっとネプギア達の助けになれると思っていた。

 

 なぜか発動する魔法の威力がなくなってしまった俺にとって、唯一の戦う手段だった。

 

「なのに、なんで俺は交通整理しかできていないんだよ」

 

 ここ数日の俺の活躍は、集まってきた野次馬達の相手だけだった。

 

 俺はネプギア達と一緒に女神の仕事や欠片探しに参加できるようになったのはいいが、何もできない現状にため息をつきたくなった。

 

 女神の仕事は俺が手伝う必要もなく、ネプギアとネプテューヌの2人だけで問題を解決している。

 

 最近こそこそとマジェコンを販売することしか動きを見せていない犯罪組織は不気味ではあるが、そのためにワンダーを使うのは過剰戦力だった。

 

 暴れているモンスターを退治するにしても、女神2人がそろっている現状で敵うモンスターなんていない。

 

 唯一懸念事項だった欠片を吸収したモンスターも、あれ以降発見されたという報告は聞いていない。

 

 だから、俺とアイエフとコンパの3人は、女神の活躍を聞きつけ集まってきた野次馬達を押さえることしかできなかったのである。

 

 野次馬が来ること自体はシェアの回復に繋がり喜ばしいのだが、そのせいで俺はアーマーモードで誘導灯を振っているのだ。

 

 アイエフ曰く、普段の俺よりもアーマーモードにしておいた方が集まった野次馬達に安心感を与えられ、もしもの時も対処しやすいかららしい。

 

 うん、俺もアーマーモードにしておけばいろんなことに対処しやすいよ。

 

 でもさ、安心感ってどういうことだよ?

 

 そう尋ねたら、アイエフに携帯でとある画像を見せられた。

 

 『鋼鉄巨人ハードブレイカーが、まさかの超絶変形!? 新たなる姿、その名はマシンワンダー!!』というポップがついた番組サイトだった。

 

 『鋼鉄巨人ハードブレイカー』、俺をモチーフにしていた『それゆけ! ゆうしゃくん』と同時期にオンエアされた番組だ。

 

 その番組の中で、ハードブレイカーが女神を庇って自爆した後、マシンワンダー、普段のバイクモードではなく、アーマーモードをモチーフにした自律ロボットとして復活を遂げた話しがある。

 

 主人公の名前が番組途中で変更になると言う大胆な構成により、ファンの間では賛否両論があったらしいが、アーマーモードのかっこよさと活躍にさらに人気は急上昇らしい。

 

 俺はその画像を見せられて説明をされた時、あの番組まだ続いてたのかよ!? って叫んでしまった。

 

 ちなみに、『それゆけ! ゆうしゃくん』の方もまだ放映が続けられていて、近々映画化みたいな話題が出ていた。

 

 ……切に願う、早く打ち切りになってしまえ。

 

 そう言うわけだから、俺はアーマーモードで野次馬の相手をしているのだ。

 

 野次馬の中にはワンダーのファン達もいるので、握手やサインをねだられたりもした。

 

 俺? もちろんいない人扱いですよ。

 

 俺は顔を見せないように黙って特殊なマスクを着けて、野次馬達の相手をするだけですよ。

 

 このマスク、番組内でのワンダーをモチーフに作成されたものであり、通常時はヘルメットの役割を持っている。

 

 ボタンひとつ押すだけで、あら不思議。素敵な頭部の出来上がりっと。

 

 野次馬の誘導やファンサービスもワンダーが自分でしてくれるから、俺がすることと言えばワンダーの指示に合わせて体を動かすだけ。

 

 あれ? 俺がワンダー専用勇者になってる?

 

 って、いかんいかん。それは考えないようにしておこう。

 

「パパー、むぅー」

 

「……あひゃり、にゃにしゅてりゅんでしゅか」

 

「ひーまーなーのー」

 

 暇だからって俺の頬を引っ張らないでくださいませんか。

 

 俺は真剣にこれからのことを考えているんですから。

 

 ……今の俺に何ができるんだろうか。

 

 アカリは俺が女神の卵を砕いてしまったせいで、今の姿になり本来発揮される『再誕』の力を十分に使えない。

 

 しかも、俺をゲイムギョウ界に戻すために残った少ない力を使い果たし、この世界の修復ができない状態だ。

 

 いくら欠片を集めることで力が取り戻せるからと言っても、俺が黒歴史を発動させてしまうとまた無くなってしまうだろう。

 

 欠片集めも順調と言えない状況で、俺はこのまま黒歴史を発動してもいいのか?

 

 不可抗力と言っても、俺は2度もアカリの力を使って黒歴史を発動させてしまった。

 

 俺がこの世界に帰って来たのは、ただの迷惑だったのか?

 

 俺はただ皆と、ネプギアと一緒に居たいと思っただけなのに。

 

 ……せめて、せめて魔法が使えればこんな思いを抱かずにすんだのかもしれない。

 

 ワンダーの力を借りず、アカリの『再誕』の力も頼らない、俺だけの力があれば……

 

「……なあ、アカリ」

 

「うみゅ、なに?」

 

「俺はどうして魔法がちゃんと使えないんだ?」

 

 以前アイエフが言っていた、アカリが原因で魔法が使えないのなら、アカリなら何かがわかるかもしれない。

 

「うーんとね、うーんとね……うにゅぅ」

 

 アカリは眉間にしわを寄せながら考え込んでしまった。

 

 ……はあ、俺はいったい何をやってんだろうな。

 

 いくらアカリが『再誕』の女神だと言っても、今のアカリはただの赤ちゃんと同じなんだ。

 

 俺の体の中に居るという時点で普通じゃないかもしれないが、それ以外は俺とネプギア、パパとママに甘える子どもでしかないのにな。

 

 まともな答えなんて返ってくるわけ……

 

「ちがうの」

 

「え?」

 

「パパのまほう、いつもちがうの」

 

 違う? 俺の魔法が間違ってるってことなのか?

 

「まほうつかうとき、いつもパパおかしいの」

 

「それってどういう……」

 

 俺がアカリに詳しく尋ねようとした時、扉がノックされる音が聞こえてきた。

 

「夢人さん、今大丈夫ですか?」

 

「お、おう。ちょっと待ってくれ」

 

 俺が扉を開くと、そこにはネプギアがいた。

 

「どうしたんだいったい?」

 

「いーすんさんが皆さんにお話があるそうなので呼びに来ました」

 

 イストワ―ルさんが? 何の話だろう?

 

 

*     *     *

 

 

 裏路地で2人の男が話しをしていた。

 

「……情報は確かなのだろう?」

 

「おうよ……でも、兄ちゃんやめときな」

 

 片方の男、明らかに冒険者風であり腰に帯剣している男が目の前の男を心配するように目を細めた。

 

「なんで兄ちゃんがあんなもんを探してるのか知らないが、本当にあるかどうかもわからん代物なんだぞ?」

 

 冒険者風の男は、とある情報を目の前の男に渡していたのである。

 

 その情報は眉唾ものであり、冒険者風の男もその情報を信じてはいなかった。

 

「兄ちゃんがどうしてもって言うから話したんだが、正直時間の無駄だぞ」

 

 冒険者風の男と目の前の男が出会ったのは、ほんの少し前であった。

 

 酒場で酒を煽っていた冒険者風の男に、どこからか情報を仕入れてきた目の前の男が話しかけてきたのだ。

 

 貴様が知ってる情報を教えて欲しい、と。

 

 冒険者風の男は酔っていたので、酒の肴に話しを聞きたがっているだけだと思って気前よく話したのだが、それを聞き終えた目の前の男が情報代替わりとして、冒険者風の男の酒代を払って出ていってしまった姿を見て、慌てて後を追ってきたのである。

 

 その時には酔いがきれいさっぱり抜けきっており、目の前の男を連れて裏路地に入ったのであった。

 

「俺が言うのもなんだがよ。酔っ払いの戯言をマジに受け取んじゃねえぞ。仮に情報通りにあったとしても、そんなもんどうしようって……」

 

「俺にはあれが必要なんだ」

 

 冒険者風の男がいくら説得しようとしても、目の前の男は考えを変えなかった。

 

「貴様の話を聞いて俺は確信した。礼を言う、ありがとう」

 

「だから、兄ちゃんよ。あんなのあるわけ……」

 

「すまないが、先を急がせてもらう」

 

「って、おい兄ちゃん!?」

 

 目の前の男が冒険者風の男の制止を振り切り、裏路地から出ていった。

 

 冒険者風の男も急いで後を追ったが、その後ろ姿をもう確認することはできなかった。

 

「……はあ、なんであんなもんを探してんのかねえ」

 

 冒険者風の男は自分の伝えた情報を信じて行ってしまった男のことを考えてため息をついてしまった。

 

「呪われた剣……魔剣なんてあるわけないだろうによ」




という訳で、今回はここまで!
1日休むと言いましたが、本当に何をしていいのかわからなかったですよ。
久しぶりにゆっくりと動画を見たりすることしかできなかった自分はおかしいのでしょうか?
まあ、今日からまた心機一転、投稿頑張りますね。
それでは、 次回 「危険なブルー」 をお楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。