超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
今回の女神通信はアフターと予告していましたが、ほとんど裏話です。
ベールがこの章の間に何をしていたのか話になります。
それでは、 帰ってきた女神通信(ベール編) はじまります
……1つ、ご説明していただきたいことがありますわ。
なぜ本編でのわたくしの活躍がカットされているのでしょうか?
家出したナナハを探すわたくしの活躍がどうしてカットされているのですか?
章ごとに、わたくし達女神通信を担当する者の出番が短くなってきているように感じますわ。
しかも、今回はわたくしと夢人さんはまったく出会っていませんから、本当に本編の裏話ですわね。
……まあ、それも物語の醍醐味かもしれませんが。
ゲームでもルートに入った後、他のキャラクター達がどんな動きをしているのか気になりますものね。
特に恋愛系のゲームなんて、主人公を巡るライバル達がどんな風になるのか気になったりしませんか?
ルートに入ったキャラクターによっては再登場もするでしょうが、画面から居なくなったキャラクター達はいったい何をしているのでしょうか?
ゲームにリアリティを追求するのは間違っているかもしれませんが、そういう展開があるゲームも楽しいんですのよ。
愛され系の主人公が恋人を作ってからも八方美人でいると、その優しさを勘違いしたライバルキャラによって強引に……こほん、ちょっと最近プレイしたゲームに思考が毒されたようですわね。
それでは 帰ってきた女神通信 ベール編 始めますわ。
* * *
「いいこと、あなた達!! 今日はナナハの捜索に全力を懸けるのよ!!」
「……状況は理解できたわ。でも、それで今日の仕事全部を中止にするわけにはいかないわよ」
「そうですよ。それに、ナナハ様は自発的に出て行ったんですよね? だったら、わざわざ探さなくても、そのうち戻ってくるんじゃないですか?」
ナナハが家出してしまった朝、集まってもらったケイブと5pb.に事情を説明したところ、2人はナナハの捜索に難色を示していた。
ですが、わたくしには2人を説得するほどの余裕がありませんでした。
ああ、ナナハ。
何が原因で家出なんてしてしまったんですの。
わたくしはこんなにもナナハのことを愛しているというのに。
「黙りなさい!! いいから一刻も早くナナハを探すのよ!! ……でなきゃ、ベールお姉さまがずっとあのままなのよ」
「……ああ、なるほど」
「……確かに問題ですよね」
3人がこそこそと何かを話していましたが、いったい何の話しをしているのでしょう?
っと、わたくしはそれどころではありませんでしたわ。
わたくしはナナハとどう向き合えばいいんですの?
チカの言う通り、わたくしはナナハの家族として向き合って話しをするべきなのでしょうが、いったいどんな話しをするべきなのかしら?
……ちょっとシミュレートしてみましょうか。
まずはどうしてナナハが家出なんてしたのかを尋ねるべきですわよね。
わたくしが優しくナナハにどうして家出なんてしたのかを尋ねますわ。
そしたら、ナナハが決まりが悪そうにわたくしから視線を外しながら、【どうしてだと思う?】って聞き返してきますわ。
そこでわたくしがビシッとナナハが家出した原因を言い当てれば……って、わたくし家出の原因がわかりませんわ!?
選択肢!? 選択肢はどこですか!?
ここは絶対に3つ位選択肢が用意されているシーンではありませんか!?
ああ、自分のゲーマー脳が憎いっ!!
ゲーマーは想定外のシナリオに弱いんですのよ!!
クリアイベントだと思って進めていたら、それがバットエンドのフラグだった時の鬱具合なんて最悪ですわ!!
って、リアルと二次元を混同させてしまっても仕方ありませんわ。
……落ちつくんですわよ、わたくし。
ここは普段のわたくしの行動から、最良の行動を選べばいいんですわ。
女神として公の場に出る時の態度で考えてみましょう。
あなたもリーンボックスの女神候補生として自覚を持ちなさい、ってノワールのように言いますわ。
すると、ナナハは【そうだよね、ごめんなさいベール姉さん】って涙目になってわたくしを見つめて……って、我慢できませんわ!!
そんな叱られて体をぷるぷると震わせながら上目遣いで見つめてくるなんて!! わたくし思わず抱きしめてしまいますわ!!
……ハッ! 駄目ですわね、刺激が強すぎますわ。
公の場での態度ではなく、私的な場での態度ならどうでしょうか?
わたくしが普段どのような態度でナナハと接していたのか……最近では駄目ですわよね。
最近のナナハに対するわたくしの態度のせいで家出をしたのかもしれませんからね。
わたくしが犯罪組織に捕まる前、3年前までのナナハとの接し方……わたくし、ナナハと距離を置いていたんでしたわ。
ナナハが淡白な返事しかしなかったから、わたくしナナハとどう接していいのかわからず、遠巻きに見守ることしかできていなかったんですわ。
……あれ? 結局、わたくしはナナハとどう接していいのかわかっていない?
ど、どどどどどうしましょう!?
あまりにも最近のナナハがわたくしに甘える素振りを見せますから、一番重要なことを失念していましたわ!?
わたくし、ナナハとどうすれば本当の姉妹になれるのかわかっていませんでしたわ!?
これじゃ、わたくしがナナハに甘えていたんじゃありませんの!?
「ベールお姉さま、どうかしましたか?」
「……ハッ、な、何のことでしょうか?」
「いえ、ベールお姉さまがずっと黙ったままころころと表情を変えていましたので」
わ、わたくし表情に出ていましたの!?
「べ、別に何でもありませんわ!?」
「……そうですか。それでは、ナナハの捜索を開始しますよ」
どうやらわたくしが考えに没頭している間に話しが纏まったらしく、ナナハの捜索が開始されました。
……ですが、わたくしはまだどんな風にナナハと話していいのかわかっていませんでした。
見つかって欲しいと思う反面、ナナハと会うのが怖いと感じていました。
* * *
ナナハがいなくなって2日後、チカからもしかしてプラネテューヌの夢人さんに会いに行ったのではないかと言う推測を聞き、わたくしは急いでプラネテューヌに飛んで行きましたわ。
……ですが、そこにナナハの姿はなく、ネプテューヌからナナハの家出はわたくしのスキンシップが原因だと言われてしまいましたわ。
わ、わたくしもちょっと強引だったかと思いますが、ナナハが可愛過ぎて抑えがきかなかったんです。
思えば、チカとナナハは同じ妹と言っても全然状況が違いましたわ。
チカの場合は、彼女の方からわたくしに近づいてきましたわ。
ですから、わたくしも姉として甘えてくるチカに適度に甘えさせる、所謂大人の対応をすることができたんですの。
でも、ナナハの場合は、わたくしが彼女に近づいて行きましたわ。
それでも、ナナハはわたくしに甘えてくれなくてどうしたらいいのかわからなくなったんですの。
それがわたくしが救出されてからは、ナナハの方からわたくしに歩み寄ってきたんですわ。
その姿が嬉しすぎて、わたくしは逆にナナハに甘えてしまっていたんですわね。
……これでは姉失格ですわ。
「……え? 本当にネプギアとゆっくんって付き合ってなかったの?」
「だから、そう言ってるでしょ」
わたくしが落ち込んでいると、ネプテューヌがネプギアちゃんと夢人さんが恋人同士でないことが信じられないらしく、何度もアイエフさんに尋ねてますわ。
まあ、ネプテューヌの気持ちもわからないではありませんわね。
わたくしもワンダーに残されていた記録映像を見ていた時やパーティーの時の様子を見て、2人が恋人と言われましたら納得しましたもの。
ナナハの話を聞いていなかったら、わたくしもネプテューヌと同じように誤解していたでしょうね。
「あら? そう言えば、ネプギアちゃんと夢人さんはいらっしゃらないのですか?」
「2人はアカリちゃんと一緒に温泉旅行に行っているんですよ」
「まあ、そうだったんですか」
これは2人の関係が進展しているということでしょうか?
わたくしが見た限り、ネプギアちゃんは夢人さんに気があるように思えるのですが、夢人さんのことはよくわからなかったんですのよね。
夢人さんが皆さんのことを大切に思っているのはわかっていますわ。
その中でナナハはもちろん、特にロムちゃんにラムちゃん、ユニちゃんが夢人さんに特別な思いを向けているような気がしましたわ。
そんな好意を向けられている夢人さんですが、わたくしが話したのはパーティーの時の一回きりでしたので、どうにも人物像が上手く想像できませんわね。
もちろん、ナナハのことを大切に思ってくれていることは理解していますわよ。
それでも、夢人さんの気持ちがどこに向いているのかはわからなかったんですのよね。
ナナハから聞いた話だけでは判断できませんし……そうですわ! いいことを思いつきましたわ。
「コンパさん、よろしければ夢人さんのことをお教えいただけませんか?」
「別に構わないですが、どうしてですか?」
「恥ずかしながら、夢人さんがどうやってナナハの心を開いたのかを参考にしたいと思いまして」
今のナナハがあるのは夢人さんのおかげ。
それならば、夢人さんがどうやってナナハと接したのかがわかれば、わたくしもナナハとの接し方が見えてくるはずですわ。
それに、夢人さんのことが知ることができれば、ナナハに恋のアドバイスを送ることができるかもしれませんものね。
姉として妹の恋を応援しなくては。
「そう言うことなら任せてくださいです……と言いたいところなんですが、わたしもどうやって夢人さんがナナハちゃんの心を開いたのかわからないんです」
「それはいったいどういうことなんですか?」
「わたし達がリーンボックスで初めてナナハちゃんに会った後、ナナハちゃんが夢人さんから逃げ出しちゃって、それを追いかけた夢人さんと下っ端さん、ネズミさんの3人しか知らないんです。後を追いかけたフェル君やその場に居たユピテルの皆さんもわからないみたいで、わたし達が次に会った時には、もう今のナナハちゃんになっていました」
「……そうだったんですか」
これは直接ナナハか夢人さんに聞くしかありませんわね。
それにしても、下っ端さんってどなたのことでしょう?
それにネズミさん? あだ名でしょうか?
「それじゃ、夢人さんのことを教えていただけますか?」
「それなら大丈夫です。わたしから見て、夢人さんは一生懸命な人です」
「一生懸命?」
「はいです。夢人さんはゲイムギョウ界に来た当初は、魔法も使えないただの男性でした。ですが、ギアちゃんやユニちゃん、ロムちゃんにラムちゃん、ナナハちゃんを助けるために一生懸命体を張って戦っていたです」
コンパさんから聞かされる夢人さんの姿は、わたくしがナナハから聞かされていた夢人さんの姿と重なりますわね。
ナナハは自分達が生き埋めになりかけた時、熱されていた岩を殴り壊したと同時に、自分の壁を砕いてくれたと言っていました。
それにナナハが洗脳された時は、肩を撫子で貫かれていてもナナハの心配をしてくれたと。
……誰かを助けるために一生懸命な人、それがコンパさんから見た夢人さんなんですのね。
「でも、わたしの説明だけじゃ、よくわかりませんよね。そうだ! あいちゃん」
「ん? なによ、どうかした?」
「あいちゃんから見て、夢人さんってどういう人ですか?」
「はあ?」
コンパさんナイスですわ!
わたくしもナナハとコンパさんだけでなく、他の方の見方も知りたかったんですわ。
今までネプテューヌと話していたアイエフさんは、わたくしとコンパさんの話を聞いていなかったらしく、目を丸くしている。
「どういうことよ? どうして私が夢人のことをどう思っているのかを知りたいの?」
「わたくしが聞きたいんですわ。夢人さんのことを知ることができれば、ナナハとどう接するべきなのかの答えが手に入りそうなんですのよ。ですから、聞かせてはいただけないでしょうか?」
「だから、あいちゃんお願いしますです」
「わたしもあいちゃんがゆっくんのことをどう思っているか知りたいな。あいちゃんいっつもゆっくんと一緒に居るもんね」
「……ネプ子まで。一緒に居るのは魔法の練習のためだって知ってるでしょうに……わかりました。あくまで私の印象なので参考になるかわかりませんけど、それでもいいですか?」
「もちろん、大丈夫ですわ」
いつの間にかネプテューヌも加わり、アイエフさんにお願いしていると、最初は渋ったように顔をしかめていましたが、話してくれるようでよかったですわ。
これで夢人さんのことも、もう少し詳しく聞けますわね。
「私は夢人のこと、馬鹿だって思ってます」
あら? 2人とは違いますわね。
ナナハにしろ、コンパさんにしろ、2人とも言葉は違いましたが、どこか嬉しそうに、いえ、誇らしく語っていたような気がしますわ。
ですが、アイエフさんはなにを思い出しているのか、眉間にしわを寄せて難しい顔ですわね。
「スライヌを見て逃げ出そうとしましたし、B.H.C.で発動する黒歴史は傍迷惑でしたし、問題ばかり起こす大馬鹿野郎って感じですね」
こ、これは随分と考えが違いますわね。
B.H.C.については詳しく知りませんから置いておくとして、スライヌから逃げ出そうとするなんて……
アイエフさんの考えを聞いて、2人の考えで固まってきた夢人さんの姿が崩れてきましたわ。
もしかして、2人は夢人さんの情けない部分を見ていないのではないでしょうか?
そう言うことでしたら、姉としてもう一度夢人さんを見極めなければ……
「……でも、それがアイツのいいところなんです」
わたくしが夢人さんの人物像を修正していると、アイエフさんが柔らかく顔を崩し始めましたわ。
「誰かを助けるために、自分が傷つくことを厭わずに何度だって立ち上がるんです。見てるこっちが呆れちゃうくらい間抜けな姿で魔法を失敗するのに、腐らずに諦めないで挑戦するんですよ。本当、アイツは馬鹿です。大馬鹿野郎ですよ」
アイエフさんは言葉では夢人さんを貶していますが、その顔は2人と同じで嬉しそうにはにかんでいました。
「皆のことは助けるのに、自分のことは助けないで。勝手に1人で悩んで消えちゃって、もっと私達を頼れっての。そしたら、何食わぬ顔で帰って来たんですから、やってられませんよ。本当に馬鹿なんですよ」
「……ねえ、あいちゃん」
「なによ、別におかしなこと言ってないでしょ?」
「もしかして、あいちゃんってゆっくんのこと好きだったりする?」
「ブッ!? きゅ、急になに言ってるのよ!?」
珍しくネプテューヌと意見が合いましたわね。
わたくしもアイエフさんの口から出てくる馬鹿って単語に夢人さんへの愛を感じました。
「私はあんな奴のことなんて好きでも何でもないわよ!!」
「ええー? 本当? あいちゃんすっごく優しい顔してるよ。ねえ、コンパ」
「はいです。あいちゃんって夢人さんのこと好きだったんですね」
「コンパまで勘違いしないで!!」
アイエフさんはネプテューヌ達の言葉を否定していますが、顔を真っ赤にしたままじゃ説得力がありませんよ。
「あいちゃんのあいは、愛してるの愛。今度からラブちゃんって呼べば、素直になるのかな?」
「そんな変な呼び方お断りよ!!」
「ええー、ダメかな、ラブちゃん」
「ラブちゃん言うな!!」
「まあまあ落ち着いてくださいませ、あいちゃん」
「ですが……って、ベール様まであいちゃんって!?」
アイエフさん、あいちゃんは驚いていますが、いいではありませんか。
わたくし、ちょっとした疎外感を感じておりましたのよ。
ここはわたくしも仲間に入るためにあいちゃんって呼ばせて頂きますわ。
「いいではありませんか。あいちゃんって可愛いですし」
「ベールもそう思うよね! よーし、ゆっくんにもあいちゃんって呼ばせて……」
「いい加減にしろ!!」
「ねぷっ!?」
悪ふざけが過ぎたネプテューヌの脳天にあいちゃんのチョップが振り下ろされましたわ。
……なるほど、過度のスキンシップが相手を怒らせてしまうとはこういうことでしたのね。
まさかネプテューヌに教えてもらうだなんて思っておりませんでしたわ。
傍目からは、わたくしもナナハに構い過ぎたのですね。
当初の予定とは違いましたが、ナナハとの接し方が見えた気がしましたわ。
* * *
その後、わたくしがネプテューヌ達と楽しくお話して、そろそろリーンボックスに帰ろうとした時でした。
「すいませーん、ベール姉さんいますか?」
「な、ナナハ!?」
わたくしは突然のナナハの登場に、驚いて椅子ごと倒れそうになりましたわ。
で、でも、どうしてナナハがここに? しかも、わたくしを探して?
「チカ姉さんからの連絡の通り、プラネテューヌに居たんだね」
「ち、チカの?」
「うん、メールで連絡が来たんだ」
め、メール!? どうしてそんな簡単な連絡手段を今まで思いつかなかったんですの!?
その前にチカ!! あなた連絡が取れていたのなら、教えてくださればよかったのに!!
「ネプテューヌさん達にも、ご迷惑をおかけしました」
「ううん、気にしなくていいよ。それより、ベールを迎えに来たってことは家出はお終いなの?」
「はい、これ以上迷惑をかけるわけにはいきませんから」
そ、そんなわたくしを子どもみたいに扱わないでください!?
これじゃ、本当にナナハの姉として失格ですわ!?
「さあ、ベール姉さん帰るよ」
「な、ナナハ!? そ、その引っ張らないで!?」
「それじゃ、お邪魔しました」
「バイバーイ! 今度はちゃんと2人で来てね!」
わたくしはナナハに手を引かれながら、プラネテューヌの教会を後にしました。
ナナハとネプテューヌはのんきに手を振っていますが、わたくしはそれどころじゃありませんわ!?
な、何を話せばいいんですの!?
急にナナハが現れたので、考えていたことが全て消えちゃいましたわ!?
ナナハの柔らかい手で引っ張られながら歩いているわたくしはどうすればいいんですの!?
ナナハの手はすべすべで気持ち良くて、いつまでもこうして……って、思考が違うところに向かってしまいましたわ!?
そ、そうじゃなくて、会話、会話ですわ!?
え、えーと、まずは……
「ベール姉さん」
「は、はい!? な、なんですか!?」
急にナナハが話しかけてきたので、声が裏返ってしまいましたわ。
は、恥ずかしい……
わたくしは赤面してしまいましたが、ナナハは頬を緩ませて優しく笑みを浮かべました。
「ごめんね、家出なんてしちゃって。いっぱい迷惑をかけたよね」
「そ、それは……」
「ごめんなさい」
ナナハが困ったように眉根を下げて悲しそうな顔で頭を下げてきた。
……何をやっていますか、わたくしは。
「ナナハ」
……わたくしは言わなければいけませんわ。
「ごめんなさい、ナナハ」
「……え」
「わたくしがナナハに構い過ぎたのが原因で家出をしたのでしょう?」
「……うん」
ナナハは決まりが悪そうに俯いたままで応えた。
「そんな顔しないでくださいまし。ほら、顔を上げて」
「べ、ベール姉さん?」
ナナハはわたくしが頬をに触れて顔を上げさせると、戸惑った表情でわたくしを見つめてきた。
「ナナハはもう、わたくしと姉妹になることが嫌ですか?」
「そ、そんなことないよ」
「……よかった」
不安だったこと、ナナハがもうわたくしと家族になりたくないと思っていたらどうしようと思っていました。
「わたくし、まだナナハとどう接していけばいいかわからないんですわ」
……自分の心を全部打ち明けなければいけない。
「ですから、少しずつ教えてくれませんか? ナナハのことを」
わたくしは急ぎ過ぎたんですわね。
ナナハが家族になりたいと言ってくれたことで、気持ちが先走りし過ぎたのですわ。
家族になるためには、まず互いをよく知らなければいけません。
「あなたと出会ってから今まで何もしなかった情けない姉ですが、どうかわたくしに時間を……」
「私も!」
わたくしの言葉を遮ったナナハは瞳を潤ませて、まっすぐにわたくしの瞳を見つめていましたわ。
「私もベール姉さんのこと、教えて欲しい。今まで何もできなかった妹だけど、本当に家族になりたいんだ」
「ナナハ!!」
わたくしは我慢できずにナナハに抱きついてしまいましたわ。
ナナハもそれを受け入れて、わたくしの背中にしっかりと腕を回して抱き合いました。
……少しずつ、少しずつ本物の家族になりましょうね。
* * *
その後、2人で仲良くリーンボックスに帰りましたわ。
途中でナナハに夢人さんに会わなくていいのですかと聞いたら、いつでも会えるから大丈夫と答えられてしまいましたわ。
それに、今はチカに2人でただいまと言いたいとも。
……本当、わたくしの方が甘えっぱなしですわね。
これからはお互いに少しずつ知り合いながら、本物の家族を目指していきます。
もちろんチカも一緒ですわよ。
わたくし達は3人とも不器用ですが、それでいいんです。
これがわたくし達、家族の形なのですから。
…………
本当に裏話で終わってしまいましたわね。
そう言えば、夢人さんはネプギアちゃんとの温泉旅行楽しかったんですか?
……そうですか、楽しかったようでよかったですわ。
わたくし達も家族で旅行をしてみるって言うのもいいかもしれませんわね。
犯罪組織を倒した暁には、夢人さんも一緒に来ませんか?
……家族の邪魔になる?
それなら、ナナハと恋人になれば問題ありませんわね。
わたくし、あいちゃんとコンパさんから夢人さんの人柄についてもばっちりと聞かせていただきましたから。
ふふふ、そんなに身構えなくても大丈夫ですわ。
全ては夢人さんが決めることですもの。
わたくしがナナハと付き合ってくれと言っても意味がありませんわ。
ただあなたのことを思っている人達にはちゃんと答えてあげないといけませんわよ。
頑張ってくださいまし、夢人さん。
という訳で、今回は以上!
これで一通り女神達全員の視点での女神通信が終わったわけですが、次章以降も女神通信は続いていきますよ。
そして、明日の投稿なのですが、ちょっと休ませていただきます。
理由としましては、最近執筆中の集中力が低下しているのではないかと考えたからです。
最近は確認作業をしていても明らかな誤字や脱字に気付かないことがありましたので、一日だけ休憩をさせていただきます。
そしてできれば、明後日の11日が祝日なので、連続投稿をして遅れを取り戻すつもりです。
こういう時、いいタイミングで章が終わり、休日があることが幸いしました。
それでは、 次回 「ラストパラダイス」 をお楽しみに!