超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
ちょっと遅くなりましたが、今日も投稿していきますね。
それでは、 邂逅 はじまります
「私と手を組まない?」
私は笑顔を浮かべながらユニに手を差し出した。
実を言うと、私が夢人がいるプラネテューヌではなく、ユニがいるラステイションにやってきたのはこれが目的である。
「どういう意味よ?」
「言葉通りの意味だよ。私はユニに協力してほしいことがあるんだ」
ユニは私の言葉を怪しんでいるようで、少しだけ顔をしかめているけど、これは彼女にとっても利点があることだ。
私のためにも、彼女のためにも、絶対に協力してもらいたい。
「ユニは、ネプギアが夢人のことを好きになったのを知ってるでしょ?」
「……うん、あんな露骨な態度取られたら、誰だってわかるわよ」
ユニは私に向けていた視線を少しだけ俯かせて、悔しそうに唇を噛んでる。
「本当、こっちがイラってくるくらい、わかりやすく惚気られて堪ったもんじゃなかったわ」
まあ、あんな幸せそうに夢人と一緒に寝たって言われたら、そう思うのも仕方ないかもしれないね。
アカリも一緒に寝たって聞いたけど、私も羨ましいって思ったし……っとと、話しがずれちゃってるね。
「それでなに? もしかして、アンタとアタシでネプギアの妨害をしようって言うの?」
「そんなことするわけないよ。私達は、夢人がネプギアのことを好きな気持ちも、ネプギアが夢人のことを好きな気持ちも否定したらダメだからね」
誰かが誰かの気持ちを否定することは、絶対にしてはいけないことだ。
自分の思い通りにならないからって、邪魔をするなんて許されることじゃないんだから。
「私はね、夢人に視野を広げて欲しいんだ」
「視野?」
「そう、夢人にネプギア以外の女の子を知ってもらわなくちゃいけないの」
夢人は今、ネプギアだけを特別な女の子として見ている。
それはきっと、告白をした私ですら、まだ到達していないステージだ。
そのステージに上がらなければ、ネプギアに恋で勝つことはできない。
つまり、夢人と恋人になれる可能性があるのは、現段階でネプギア1人だけなんだ。
私はその現状を打破するために、ユニと協力しなければいけない。
「私1人じゃ無理なんだ。だから、ユニも一緒に……」
「な、ななな、そんなこと急に言われても!?」
ユニはなぜか顔を真っ赤にさせて手をあたふたと振り始めた。
……うん、何か変な誤解してるね。
「あ、アタシ、初めては、2人っきりがいいし……」
「ユニ、あのね、話しを……」
「そ、その、夢人を満足させることができるか不安だけど、精一杯頑張りたいって言うか……」
「てやっ」
「イタッ!?」
変な妄想に入ってしまったユニを正気に戻すために、私は彼女の額にチョップを叩きこんだ。
いろいろと危ないからやめとこうね。
「何するのよ!?」
「話しを聞かないユニが悪いんでしょ? 私がユニに協力してほしいのは、夢人の意識改革だよ」
「……へ? 意識改革?」
ちょっぴり涙を浮かべて上目遣いで睨んできたユニだったが、私の言葉を聞くと意外そうに目を白黒させた。
「夢人がネプギアのことを特別に思ってるのは知ってるでしょ?」
「う、うん」
「だから、そこに私達が入れるように、夢人の意識を変えるんだよ」
女の子を知ってもらうって、決して物理的な話じゃない。精神的な話の方だよ。
「で、でも、どうやって?」
「簡単だよ。夢人にね、私達が魅力的だって思わせればいいんだよ」
夢人が私達に女の子を感じてもらえればいい。
私達の勝利条件は、ネプギア以外に魅力的な女の子がいるんだってことを夢人に知ってもらうことである。
「ユニは知ってる? 夢人が私達のことをどう思っているか」
「そんなのわかるわけないでしょうよ」
「具体的なことじゃなくてもいいよ。私も上手く言えないんだけど、夢人が私達を見る時、まるで眩しいものを見ているように思えるんだ」
抽象的なんだけど、夢人が私を見る目には何かを感じるんだ。
気のせいかもしれないけど、何か含みのある目線で見られているような気がする。
別に嫌らしい目線じゃないよ。
どちらかと言うと、憧れが近いんじゃないかな?
うーん、羨ましがってる? 嫉妬って感じじゃないんだよね。
とにかく、夢人の視線には、そう言う感情がごちゃごちゃしているように感じる時がある。
私の感覚で言えば、夢人は私達のことをキラキラしているものとして見ているように感じるんだ。
「ユニも経験ない? 夢人の視線が温かくなる感じかな? そんな風になったことない?」
「……うーん、ちょっと待って」
ユニは目を閉じて、額に手を置きながら考え出した。
突然こんな変な質問されたのなら仕方ないよね。
これですぐに思いだすって方が変だと思うし。
「……うん、アタシもあるわ。アタシも上手く言えないんだけど、ただ視線が優しくなるのとは違って、なんか見つめられたら体がむず痒くなるような視線の時があった気がする」
「うん、私もそんな感じ」
それがいったいどんな感情なのかはわからないけど、少なくとも夢人が私達のことを好意的に見ているということの証拠にはなってる。
嫌われていないのなら、好きになってもらえる可能性は充分にある。
「私はネプギアに向ける視線にも、それがあるような気がするんだ。だったら、私達にも可能性があるって考えられない?」
「確かにそうだけど、それでどうしてアタシと手を組むって話しになるのよ? 別にアンタ1人でも……」
「違うよ。私はユニと一緒に変えたいんだよ」
私は真っ直ぐにユニの瞳を見つめた。
瞳は揺れていて、戸惑っているようだ。
「私は夢人のことも好きだけど、ユニのことも好きだよ」
「きゅ、急に何言ってんのよ!?」
「別におかしなことは言ってないよ。私はユニのことも好きだから、一緒に頑張りたいんだよ」
私は、ナナハとして関わった人達、全員が好きだって言える。
夢人やネプギア達、アイエフ達やベール姉さん達、もちろん、リンダやワレチューだって、私は好きだって言える。
皆、私にとって大切で大好きな人達だ。
私は皆に幸せになってもらいたい。
だからこそ、ユニにも同じステージに上がってもらいたい。
「恋が平等ではないってことはわかってるよ。でもね、一歩も踏み出せない悲しさを私は知ってるんだ」
「……ナナハ」
「ユニも夢人のこと、諦めたくないでしょ? だったら、一緒に頑張ろう。夢人に自分がどれだけ愛されているのかを自覚してもらわないとね」
「……ロムとラムはどうするのよ? 2人は除け者なのかしら?」
「2人には悪いけど、もう少し大きくなってからかな? もしかして夢人が何かに目覚めちゃうかもしれないからね」
「プッ、何よ、それ」
私の言い回しがおかしかったのか、ユニは小さく噴出すと口元を柔らかく緩めた。
……実は、ロムとラムのことはそんなに心配してないんだよね。
あの2人、特にロムが意外と積極的に動くような気がするんだよ。
そのロムに引っ張られる形で、ラムも動いてくれると思うんだ。
だから、心配だったのはユニだけ。
好きって気持ちを隠すことは、本当に悲しいことだから。
彼女は意地っ張りだし、素直になれない性格をしているから、夢人の前では好きと言う気持ちを隠してしまうんじゃないかと思う。
何て言ったけ? 確か、ユニみたいな性格の子をツンデレって言うんだっけ?
私にはよくわからないんだけど、それがぐっと来る場合もあるってベール姉さんが言ってたな。
まあ、ゲームの話はあまり関係ないか。
とにかく、素直になれない彼女はどうしても受け身になりがちになってしまうってこと。
だから、誰かが背中を押してあげた方がいいと思う。
「だからさ、私達2人で夢人に教えてあげようよ。ここにも夢人のことが好きな女の子がいるんだってことをさ」
「……仕方ないわね、協力してあげるわよ。もちろん、最後に笑うのはアタシだけどね」
「私だって負けないよ」
私達はお互いに笑いながら手を握り合った。
夢人はきっと困っちゃうだろうけど、仕方ないよね。
好きになった私達が悪いのかもしれないけど、好きにさせた夢人も充分悪いんだから。
責任とってもらうからね。
……女の子を本気にさせた責任をね。
「でも、アンタって本当、恥ずかしいことを簡単に言ってくれるわね」
「そんなに恥ずかしいかな? 私は言えない方がずっと嫌なんだけど」
「それはアンタが素直すぎるのよ。少しはアタシのように恥ずかしがりなさいよね」
「だったら、ユニは私のように素直にならないとね」
「言ったわね、ふふふ」
ユニはライバルだって言うけど、こんな風に軽口を叩ける友達ができたことは本当に嬉しい。
彼女の笑う顔を見ていると、自然とこっちも頬が緩んできた。
「それじゃ、早速頑張ろうか」
「……うん? 何をする気よ? まさか、これから夢人に会いに行く気なの?」
確かにそれも非常に魅力的な提案だけど……
「違うよ。まずは、私達に足りないものを手に入れないとね」
* * *
「……すいません、夢人さん。私が昨日怪我なんかしたせいで」
「気にする必要ないさ。あれは俺にも原因があったんだし」
夢人とネプギアは、現在ルウィーからプラネテューヌに帰るための列車の中で並んで座っている。
どうして列車なのかと言うと、ネプギアの体調を考慮したからである。
いくら傷がなくなったからと言っても、長時間バイクでの移動は体に響くと考えたのである。
乗車のピークが過ぎていたため、車両はガラガラであり、2人の姿しかなかった。
「ワンダーには悪いけど、後で日本一がプラネテューヌに連れて来てくれるって言ってたよ」
夢人は日本一にワンダーを預けたことを思い出しながら苦笑いした。
彼女は目を輝かせながら、自分がワンダーに乗るって言いだしたのである。
彼女いわく、ヒーローはやっぱりバイクだよね! らしい。
「日本一もワンダーに乗れることを喜んでたし、そんなに気にする必要ないよ」
「そうじゃないです。夢人さん、ロムちゃん達に一緒に居てって誘われてたじゃないですか?」
夢人達が列車に乗る前、夢人はロムとラムにルウィーにもう少しだけ滞在することをお願いされていたのである。
しかし、夢人はそれを断り、ネプギアと一緒にプラネテューヌに帰る選択をした。
「無理して私に付き合う必要なんて……」
「ていっ」
「イタッ!? 何するんですか!?」
夢人は、顔を俯かせながらうじうじとするネプギアの額を指で弾いた。
ネプギアは両手で弾かれた額を押さえ、若干潤みを増した瞳で夢人を睨みだすが、夢人はただ笑みを浮かべて言った。
「なんか久しぶりにピンってやったよな。初めてルウィーに行く時にしたのが最後だったかな?」
「そんなことは思いださなくていいです。なんで急にしたんですか」
「だって、ネプギアが全然俺の言ったことを信じてくれないからさ」
夢人は難しい顔で眉間にしわを寄せながら、ネプギアのことを不満そうに見つめた。
「昨日も言ったけど、俺はネプギアと一緒にいたいから、一緒に居るんだよ。別に無理なんてしてないさ」
「……でも、私と一緒に居たって楽しくなんてなかったですよね? 結局、今回の旅行も私のせいで台無しになってしまいましたし」
ネプギアは自分が想像していた楽しい旅行が、自分のせいで台無しになってしまったと思っていた。
夢人と一緒に楽しく過ごすはずだった温泉旅行が、自分の勘違いで大変なことになってしまったことを後悔していたのである。
「こんな私なんかといるよりも、ロムちゃん達と一緒に居る方が……」
「もう一発っと」
「んにゃっ!? なんで2度もするんですか!?」
再び俯きだそうとしたネプギアの額に、夢人はもう一度デコピンをして無理やり顔を上げさせた。
やはり、涙目で抗議してくるネプギアに対して、夢人は柔らかく笑みを浮かべた。
「だから、言ってるだろ? 俺はネプギアと一緒に居たいんだって。今回の旅行も楽しかったよ」
「……そんな嘘つかないでください」
「本当だって、俺はネプギアと一緒に居られて楽しかったんだ」
ネプギアはわずかに頬を染めて夢人から視線を横にそらした。
ネプギアは夢人の言葉が嬉しかったが、それを認められなかったのである。
「確かにロム達と会ったり、誤解されたりとかあったけどさ、俺はネプギアと一緒に居られて嬉しかったんだよ」
夢人も恥ずかしそうに天井に視線をさまよわせ、頬を指で掻きだした。
「ロム達とはまた会おうと思えば、いつでも会えるんだし、その、やっぱり、旅行は帰るまでが旅行だろ?」
ネプギアはチラリと視線を夢人に戻すと、夢人も顔が赤いことに気付き、自分の頬もさらに熱を上げたように感じた。
「今回はこんな感じになったけどさ、また一緒に旅行に行こう。今度は、その、2人っきりでさ」
「……そ、それって」
「な、なんってな!? 今回はたまたま3人だったけど、今度は皆との方がいいよな!?」
夢人は思わずもれてしまった本音を隠すように、わざと少し大きな声を上げて誤魔化そうと笑いながら言った。
内心では、こんなことを言ってしまい、ネプギアに変に思われていないか心配で仕方なかった。
温泉では、これ以上、ネプギアに変に思われたくないと考えていたのに、いきなりやってしまったと後悔していると、ネプギアは夢人の服をつまみながら上目遣いで見つめだした。
「わ、私も……2人っきりの方がいいです」
「お、おう……その、うん……また一緒に旅行に行こう。2人でさ」
「……はい」
夢人は突然、頬を上気させて自分を見つめてくるネプギアの言葉に驚いたが、嬉しそうにはにかんで見せた。
ネプギアも俯いてしまったが、嬉しそうに口元を綻ばせ、夢人に体をもたれかからせていった。
夢人もネプギアが自分にもたれかかって来ているということはわかっていたが、ただそれを受け入れていた。
そのまま2人が静かに幸せを感じていると、駅に着いた列車内にアナウンスが流れ始めた。
〔お客様にご連絡します。ただいま走行中に異音を感知したため、当列車はただいま停車中の駅にてしばらく停車いたします。お客様にはご迷惑をおかけいたしますが、なにとぞご理解をお願い申し上げます。繰り返します……〕
「車両トラブルか?」
「大丈夫なんでしょうか?」
2人も突然のアナウンスに心配を隠せずに、アナウンスが流れてきたスピーカーを見た。
そんな時、夢人の膝元が光だし、アカリが眠そうに瞼をこすりながら現れた。
「うみゅぅ、もうついた?」
「まだ着いてないよ。どうしたんだ、アカリ?」
夢人は現れたアカリが膝から滑って落ちないようにしっかりと抱き上げながら尋ねた。
アカリは元気のない顔で、お腹を鳴らしながらよだれを垂らした。
「おなかすいた」
「そう言えば、もういい時間ですからね」
ネプギアがNギアの画面を見て、時間を確認すると、すでにお昼を食べてもいい時間になっていたのである。
夢人は抱きしめていたアカリをネプギアに預けると、財布を確認して立ちあがった。
「それじゃ、何か買ってくるよ。それまで、アカリのことよろしく頼む」
「はい、よろしくお願いします」
「パパ~、はやくね」
夢人はアカリのふやけたような顔での見送りに苦笑しながら、列車から出て売店を探しだした。
「売店、売店っと……あっちか」
夢人は自分達がいた車両よりも前方の方に売店があることに気付くと、少しだけ足を速めて歩きだした。
彼も何か食べたいと思っていたのである。
「さーて、何が売ってんのかなっと」
「……ちょっとよろしいですか?」
「うん、俺のこと…………え?」
店先に並べられた駅弁を品定めしていると、夢人は自分を呼ぶ声に振り返った。
そして、自分を呼んだ人物の姿に驚いてしまった。
……そこには、ネプギアそっくりの黒い服装の女の子がいたのである。
女の子、フィーナは柔らかく夢人にほほ笑んで頬に手を当てた。
「少し、お話しませんか?」
という訳で、今回はここまで!
急にまた寒くなった影響なのか、瞼が重く感じる。
今回は最近に比べると少し文量が少なく感じましたが、次回はまた増えるかも。
それでは、 次回 「不幸の中の幸福」 をお楽しみに!