超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
本日、ようやく修正作業が終了したしました!
これで全話、今の作品形態に修正できたと思います。
それでは、 動き出すもの はじまります
「……どうしたのかしらね、ベールお姉さまとナナハは」
チカは1人食堂で頬づえをついて2人がやってくるのを待っていた。
珍しくナナハが寝坊したのかもしれないと、ルンルン気分で食堂を飛び出したベールの姿には呆れていたが、すぐに2人はやってくると思っていた。
ナナハは不仲であった頃も、時間だけは守っていたのである。
チカはその行動が、ナナハが無意識に人とのつながりを求めていたのではないかと推測している。
家族から捨てられた経験を持つナナハだからこそ、嫌われたくないと願っていたのかもしれないと思っている。
そう考えると、女神の仕事をまじめにしなかったのも1つの意思表示であったのかもしれないと思い、チカはわずかに頬を緩めた。
女神としてのナナハではなく、家族としてのナナハを見て欲しいとの意思表示。
要は、構って欲しいという彼女なりの甘え方だったのかもしれないと思うと、チカはその素直になれない甘え方が逆に可愛いと思ってしまった。
まるで自分が仮病を使ってベールの気を引こうとするのと同じで、素直に構ってと言えないナナハに自分との共通点を見出した気がして嬉しいのである。
血は繋がってはいないが、本当の姉妹のようだと思った。
「うふふ、今度ベールお姉さまに自慢してやりましょ」
自慢して悔しがるベールに、自分にも構って欲しいとアピールするつもりなのである。
チカにとってベールは大切な姉であり、ナナハは大切な妹、2人とも大切な家族なのだ。
最近はベールがナナハに構いっぱなしだったので、疎外感を感じていたため、これを機に自分の存在をアピールするつもりである。
自分もベールの妹であり、ナナハの姉であることを。
「それにしても、さっきのベールお姉さまの叫び声はなんだったのかしら?」
食堂まで響いてきたベールの叫び声に疑問を覚えるも、特に心配はしていない。
ナナハが自分と同じようにベールの行動にうんざりしていたのを知っているからだ。
差し詰め、ついにナナハが我慢の限界を迎えてベールに何かしたのだろうと考えている。
それこそ、自分がゲームに熱中しているベールに構って欲しくて怒られた時と同じように。
そう言う意味では、3人とも似ていると感じてまたもや頬が緩むが止まらなくチカであった。
そんな風にチカがささやかながら幸福感を味わっていると、食堂に慌てた様子のベールが息を切らせながら真っ青な顔でやってきた。
「ハア、ハア、チカ、大変、ですわ」
「ど、どうかしたんですか?」
いつもの様子とだいぶかけ離れているベールの姿にいったい何事かとチカは心配した。
そこでふと、ベールが呼びに行ったナナハが側に居ないことに気付いた。
「ナナハの姿も見えませんが、いったいどうしたんですか?」
「っ、ナナハが、ナナハが、ナナハが……」
チカの言葉にピクリと肩を震わせて、ベールは俯きぶつぶつと呟きだした。
「ナナハが家出してしまいましたわー!!」
次の瞬間、顔を上げたと思うと、涙を流しながら叫んだベールの言葉に、チカは頭の中が真っ白になってしまった。
「……あ、あはは、何を冗談を言っているですか、ベールお姉さま。ナナハがそんな真似するはずが……」
「これを見てもそれを言えるんですの!!」
ベールは自分の言葉を信じないチカに、涙が流れているのも気にせず、部屋に残されていた書き置きの紙を渡した。
頬を引きつらせていたチカも、書き置きの内容を理解すると、全ての感情が抜け落ちた様に無表情になり、食堂に備え付けられていた通信機を手に取った。
〔チカかしら? どうしたの、こんなに朝早くから〕
チカが連絡を取ったのは、特命課に所属しているケイブである。
パーティーの終了後、彼女と5pb.と協力してリーンボックスのシェアを回復させていたのである。
〔今日の仕事で何か問題でもあったのかしら? まだ打ち合わせの時間でもないのに連絡するなんて……〕
「……中止よ」
〔……はい? 何を言っているの?〕
「中止って言ったのよ!! 今日の仕事は全部中止よ!!」
無表情だったチカは通信機を握りつぶさんばかりに力を込め、感情を爆発させて目の前を睨むように見つめた。
通信機越しでチカの様子がわからないケイブであっても、チカの様子がおかしいことに気付いた。
〔ちょっと待ちなさい。どういうこ……〕
「いいから中止だって言ってるのよ!! 今日は全員でナナハを捜索するのよ!!」
〔ナナハを? 彼女がいったいどうし……〕
「集まる時間は変わらないわ!! 1分1秒遅れるんじゃないわよ!!」
〔だから、待ち……〕
ケイブの追及の声を無視して、チカは一方的に用件を言って通信を切った。
そして、通信機を置くと、後ろで涙目で自分を見ていたベールに向き直った。
「……チカぁ……わたくし……わたくし、いったいどうすれば……」
「安心してください、ベールお姉さま」
チカは泣いているベールを安心させるように柔らかく笑みを浮かべて彼女の両肩に手を置いた。
「アタクシ達の手で、必ずナナハを見つけ出しましょう」
「で、でも、探しても、どんな顔で会えば……」
「ベールお姉さまにとって、ナナハはどんな存在ですか?」
ベールにとってチカの質問は意外なものであった。
ベールはナナハが家出した原因は、彼女が本当の家族になりたくないと思ったからであると考えていた。
彼女は自分達と本当の家族になりたいと言っていたが、結局彼女は自分達とは家族になりたくないと思ってしまったのではないかと考えたのだ。
そんな風に考えていた時のチカの質問である。
ベールはそれが今、どんな意味を持つのかわからず、目を見開いてチカを見つめていることしかできない。
チカはそんなベールの様子に、眉根を下げて困ったように笑った。
「アタクシにとって、ナナハは妹であり、ベールお姉さまと同じように大切な家族だと思っていますわ」
「それは、わたくしも同じですわ。でも……」
「だったら、ナナハを見つけて話をしましょう。家族だからこそ、しっかりと向き合わないといけませんわ」
ナナハが何を思って家出をしたのかがわからない以上、見つけて話をしなければいけないと、チカは考えた。
かつて自分がナナハを誤解していた様に、何も話さなければ、向き合わなければ本当の家族になんてなれないと思っていた。
「ほら、いつまでも泣かないでください」
「……チカ、あなた」
「そんなみっともない顔でナナハと会うのですか? それこそ、姉としてどうかと思いますわよ」
「……顔を洗ってきますわ。ありがとう、チカ」
そう言うと、ベールは俯いたまま食堂を後にした。
チカはそんなベールの後ろ姿を見て、安心したように頬を緩めて、ナナハの捜索をどのように行うかと思考を巡らせた。
歪な3姉妹であるが、どこか似ている大切な繋がりをチカは嬉しく思った。
* * *
「……それで、なんでアンタはここに居るのよ?」
「ん? 別に友達の家に来るのはおかしなことじゃないでしょ?」
「誰がアンタと友達なのよ!」
アタシは朝一で出て行った夢人達を見送った後、お姉ちゃん達と一緒に今日も女神の仕事と欠片探しをするはずであった。
「え、私とユニは友達じゃなかったの?」
「友達じゃないわよ! アタシとアンタはライバルよ! わかってんの、ナナハ!」
……そう、目の前でアタシのベットの上でくつろいでいるナナハが現れるまでは。
夢人がワンダーで出て行った後ろ姿を名残惜しく感じていたアタシは、しばらく彼が向かっていた方を見続けていたのだ。
もう少しゆっくりしていけばよかったのに……
本当なら、もっとゆっくりとラステイションに留まってもらい、夢人ともっと一緒にいたかった。
まあ、素直にもっと一緒に居てって言えないアタシが悪いですけどね。
でも、昨晩の夕食、アタシが作った料理を美味しそうに食べてくれたのは本当に嬉しかった。
男の人が好きそうな料理って、肉料理ぐらいしか思いつかなかったアタシだったが、喜んでくれてよかった。
言葉で素直に言うことはできないけど、こう言う細かいところでアピールしていかないと、ネプギアや目の前のナナハ達に負けてしまう。
そもそも、なんで目の前のナナハは急にやってきたんだ?
アタシがボーっと夢人が出て行った方向を眺めていると、キャリーバックを引きながら笑顔でこっちに向かってきている彼女を見つけた。
しかも、開口一番【来ちゃった、てへ】って笑顔で言ってのけたのである。
アタシとアンタは遠距離恋愛中の恋人か!?
アタシの返しが意外だったのか、ナナハは意味ありげに目を細めて笑みを浮かべた。
「うん、そうだよね。私とユニは恋のライバルなんだもんね」
「ち、ち、違うわよ!? アタシが言っているのは、同じ女神候補生としてのライバルってことで……」
「じゃあ、私が夢人と恋人になっても平気?」
「そんなわけないでしょ!! ……あっ」
や、やっちゃった。
思わず自分の本音を漏らしてしまったことを自覚すると、顔が熱くなってきた。
た、確かに、夢人とナナハが恋人同士になるのは嫌よ。
夢人と恋人になるのはアタシ……って、ナナハのペースに乗せられたせいで、変なこと考えちゃったじゃない!?
そんなアタシが面白いのか、ナナハは笑みを深めた。
「素直じゃないよね、ユニって」
「……アンタらが素直過ぎんのよ」
「あれ、素直になっちゃうの?」
「……ふーんだ、どうせアタシは捻くれてますよーだ」
どうせアタシはアンタのように直接好きだって言えない捻くれ者ですよーだ。
皆のように夢人が帰ってきたことを素直に喜べないへそ曲がりですよーだ。
アタシが拗ねてそっぽを向いたら、ナナハは困ったように笑みを浮かべた。
「ごめんごめん。からかいすぎちゃったね」
「……別にいいわよ。本当のことだし」
「拗ねないでよ」
「……拗ねてなんかないわよ」
本当、ナナハとは相性が悪いかもしれない。
初対面の時は、こちらの怒声など知ったことかって言うくらい無表情で受け流していた彼女。
一緒に居てみると、ネプギア以上に素直な上、恥ずかしげもなく、逆にこっちが恥ずかしくなることを平然と言う素直すぎる彼女。
意地っ張りで素直になれないアタシとは本当に相性が悪い。
今もこうやって簡単に手玉に取られてしまった。
いつか絶対にぎゃふんと言わせてやる。
……っと、随分と話がずれちゃったわね。
まずはナナハがラステイションに来た目的を聞かなくちゃ。
もしかしたら、通信で言えないような重要な話があるのかもしれない。
「それで、結局なんでアンタはここに来たのよ?」
「家出してきちゃった」
「……ごめんなさい、急に耳が遠くなったみたいなのよ。もう一度言ってくれないかしら?」
アタシはナナハの言葉が信じられなかった。
彼女に限って、今聞こえたような行動を取るはずが……
「だから、家出してきたんだよ、家出」
「はああああああ!? 何やってんのよ、アンタは!?」
アタシは思わず叫んでしまうほどの衝撃を受けた。
ナナハが家出?
彼女に限ってそんな行動に出るとは信じられなかった。
彼女の姉であるベールさんや、教祖であるチカさんも彼女のことを大切に思っている。
そんな2人に囲まれて、素直なナナハが不満を感じるなんて考えられない。
「ど、どうしてよ? ベールさんと喧嘩でもしたの?」
「喧嘩はしてないよ。でも、原因はベール姉さんかな」
眉間にしわを寄せながら、ナナハは何かを思い出しながら言葉を続ける。
「ベール姉さんったら、何かにつけてスキンシップ取りたがるんだよ? 毎日毎日理由をつけて一緒に居ようとするんだもん。窮屈過ぎてうんざりしてたんだ」
「……アンタね」
「あ、呆れてるでしょ、ユニ。考えてもみなよ、毎日一緒にお風呂に入ろうって言われたり、一緒に寝ようって言われたり、挙句の果てには徹夜でゲームしようって言うんだよ?」
……これはベールさんのせいなのか、ナナハの感性が素直すぎたことが原因なのかわからなくなってしまった。
確かに、毎日同じようにスキンシップを取りたがるベールさんにも原因はあるだろう。
そこで急にアグレッシブな行動、家出をしたナナハにも問題があるように思える。
「だから、しばらく距離を置こうと思うんだ。ベール姉さんには反省してもらわなくちゃ」
それって、逆効果になるんじゃないかしら?
離れていた反動で、余計にスキンシップを取りたがるのではないかと考えたが、言葉にするのはやめた。
これはナナハとベールさん、姉妹の問題だし、傍から考えて呆れてしまったからである。
「だから、ちょっとの間だけ泊めてもらえないかな? もちろん、女神の仕事や欠片集めは手伝うからさ」
「……アンタがそれでいいなら、別に構わないわよ」
まったく、そこで何でアタシを頼るのよ?
アタシなんて頼らなくても……ん? おかしい。どうしてアタシを頼ったんだ?
「それはそうと、なんでアタシを頼ったのよ?」
ナナハのことだから、頼るとしたら夢人がいるプラネテューヌに行くのが普通ではないのか?
彼女は夢人のことが好きだと公言しているし、夢人と一緒にいられる時間が増えるプラネテューヌに行く方が自然な流れではないだろうか?
それをわざわざ、アタシがいるラステイションまで来て頼み込む理由がない。
「……そうだね。正直に言うよ、ユニ」
「な、なによ?」
「私と手を組まない?」
そう言ってナナハは、にやりと笑ってアタシに手を差し出した。
* * *
トリックは上機嫌で、ギョウカイ墓場にある黒い塔の中を歩いていた。
「アクククククク、温泉は最高だったし、幼女達も見れたことで吾輩の紳士メーターも回復した。さらに、欠片まで手に入れることができるだなんて、最高の休日であった」
トリックは手に持つ欠片を弄りながら、廊下を歩いて行く。
目的はフィーナのいる部屋……ではなく、自室である。
「これを素直に渡すのはもったいないしのう、もしも今度探しに行く時に見つからなかった場合の予備として……」
「何が予備なのかしら?」
トリックは突然、背後から聞こえてきた声に背筋を凍らせてしまった。
緩んでいた頬も瞬時に硬くなってしまい、ぎこちない動きで後ろを振り向くと、満面の笑顔でいる黒ロリファッションの少女、フィーナの姿があった。
「ふぃ、ふぃ、ふぃふぃフィーナ様!? な、な、ななななぜこのような場所に!?」
「あら? 私の城で自由に動いていて何か不都合でもあるのかしら?」
「そ、そそそそんなことはございません!?」
内心では、貴様の城ではないだろうとトリックは考えていたが、面と向かって言えるほど彼に余裕はない。
2人の関係は、まるで蛇に睨まれた蛙のようであり、トリックはフィーナに見つめられて身動き一つ取れないでいたのである。
「それって、私の欠片よね? 早速とって来てくれたのね」
「そそそそそうです!? どうぞ、お納めくださいませ!?」
トリックはその場で正座をして、深く頭を下げながら両手で欠片をフィーナへと差し出した。
彼女は欠片を受け取ると、にこりと笑った。
「ありがとう、ぺろぺろちゃん。さあ、次の欠片を探してきなさい」
「で、ですが、少し休憩を……」
「温泉、気持ちよかったでしょ?」
満面の笑みで自分が温泉に行ったことを当然のように知っていたフィーナに、トリックは顔から流れる汗を止めることができなかった。
「な、なぜそれを……じゃなくて、そ、それはですね……」
「最高の休日、だったのよね?」
「……はい、いってきます」
「いってらっしゃーい、次はもっと多くの欠片を持ってきてね」
フィーナの目が笑っていない笑顔の圧力に負けて、トリックは肩を落としながら再び黒い塔の出口へと歩いて行った。
その後ろ姿を見送ると、フィーナは先ほどまで浮かべていた笑みを全て消し去り、欠片を見つめだした。
「……これでまた1つ、欠片が戻ってきたわね」
フィーナが欠片を軽く指で擦ると、欠片は淡く紫色に輝きだした。
その輝きに照らされながら、フィーナはエヴァとの会話を思い出したのである。
* * *
「ゲイムギョウ界に散らばる私の欠片の場所を特定しなさい。それくらい、簡単にできるわよね?」
フィーナには確信があった。
エヴァならば、ゲイムギョウ界中に散らばっているはずの欠片を全て捕捉することができることを。
〔ええ、できますよ〕
「なら、早速……」
〔ただ3年はかかりますよ〕
「……はい?」
フィーナはできるとエヴァの言葉を聞き、にやりと笑ってすぐにでも欠片の場所を探すように命令をしようとした時、エヴァの予想外の言葉に固まってしまった。
〔私の中に存在しているデータを最新のものにしなければいけません。加えて、気候、風土、文明など、あらゆるデータを新しくしなければ、欠片が散らばった場所を特定することができません。加えて、人為的に欠片が持ち去られた場所を特定するためにも、ゲイムギョウ界に住んでいる全ての人物の情報を入力していただき、その人物の思考パターンを予測し、欠片がどこに持ち去られたのかをトレースしなければなりません。加えて、想定外の事態を推測するためにも、ありとあらゆるデータが必要不可欠になってくるため、少なくとも3年間の時間を要することになるでしょう。もちろん、簡易的な座標を割り出すことも可能ですが、そちらの方も1年は時間を……〕
「あー、はいはい、わかった。わかったわよ、もういいわ」
フィーナはエヴァの言葉にうんざりといった表情で、額を押さえた。
「そんなに時間をかけてられないのよ。欠片は自力で探すからいいわ」
〔そうですか。お役に立てないようで申し訳ないです〕
エヴァの言葉が全然申し訳なさそうに聞こえなかったフィーナは、ひくひくと眉を動かし、無理やり口元に笑みを作った。
「気にする必要はないわ。それじゃ、しばらくあなたに用は……」
〔ですが、私はあなたが聞きたがっている答えを与えることができます〕
エヴァの言葉を聞くと、フィーナは全ての動きを止めた。
そして、ゆっくりと額から手を離していくと、そこには無表情にエヴァを睨むフィーナの顔があった。
「私が聞きたい答え? いったい何のことかしら」
〔誤魔化しは必要ありません。あなたがもっとも私に聞きたがっていた答え。それこそ、欠片集めよりも重要な答えを私は知っています〕
エヴァは1人の人物の画像をフィーナの目の前に表示した。
そこには、夢人の姿が映されていた。
〔この人物、勇者に会って来てください。彼に会えば、あなたがもっとも欲しかったものが手に入るはずです〕
「こいつが……」
〔信じる信じないもあなた次第ですが、あなたが前に進みたいと思うのであれば、彼と出会わなければ前には進めません〕
フィーナはただ夢人の画像を見つめるだけで答えない。
しかし、無表情であるにもかかわらず、彼女の手は強く握りしめられており、血が滴っていた。
* * *
「アイツが、私の欲しいものを持っている、か」
しばらく、淡く紫に光る欠片を無表情に眺めていたフィーナであったが、それを口に放ると、頬を緩ませて笑みを作った。
「なら、会いに行かなくちゃね……うふふ」
そう言って、フィーナはゆっくりと歩き出した。
その顔には笑みが貼り付けられていたが、瞳は激情を表すように妖しい光が灯っていた。
という訳で、今回は以上!
修正作業は本当に遅くなってしまい、申し訳ございません。
これで、今の作品形態で話が統一できたわけですが、今後も誤字脱字などを発見し次第修正をしていきます。
というよりも、これで番外編が書けます!
バレンタイン前に修正作業が終わって本当に良かった。
今回はアンケートを募集しませんが、バレンタインの話は作りたかったので楽しみにしておいてください。
それでは、 次回 「邂逅」 をお楽しみに!