超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
今日、マオウに連載しているのネプテューヌを読んだら、温泉の話で驚いてしまった。
なん……だと……
それでは、 癒しを求めて はじまります
「ええい、なぜ邪魔をしたトリック!!」
「少しは冷静になれ。吾輩達がいくら挑もうと、あやつには勝てなかったではないか」
「黙れ!! それでも、私はあの女を!!」
まったく、マジックも頑固なものだ。
……あの日、プラネテューヌの女神候補生によく似たデルフィナス、フィーナと名乗った少女に吾輩達4人は手も足も出ずにやれてしまった。
文字通り、吾輩達は彼女に触れることすらできなかったのだ。
いくら攻撃しようとしても彼女は涼しげに笑みを浮かべたまま、吾輩達を蹂躙した。
彼女はなぜか吾輩達を人形と呼び、その支配下に置くことを決めたおかげで、こうして生きていられる。
理由などわからん。
自分を女神と言った彼女が、なぜ犯罪組織の吾輩達を支配下に置いたのかなど、どうでもいい。
命があるだけましだと考えていたが、どうやらマジックは違うらしい。
不満があるのは吾輩も同じだが、彼女はそれ以上の感情を持っている。
……激しい憤怒、怒りを通り越した殺意をフィーナに向けている。
気持ちはわからないでもない。
何故なら、フィーナはどのような手段を使ったのだかわからないが、犯罪神様をその身に吸収しているのだ。
吾輩達の中で、特に犯罪神様を崇拝していたマジックにとってみれば、フィーナは存在自体が許されない存在なのだろう。
マジックにとって犯罪神様こそが全てだからな。
しかも、一度はその身に恐怖を与えられた人物でもある。
プライドも傷つけられたのであろう。
いつもは自分が相手に恐怖を刻む存在であったのに、逆に恐怖を刻まれてしまったのだ。
だからこそ、マジックは今でもフィーナに対して反逆の意思を失っていない。
……吾輩か? 吾輩は先ほども考えた通り、命があるだけましだ。
今まで好き勝手やってこれたのも、犯罪神様が復活していなかったためだし、欠片を集めさえすれば文句を言いそうにないフィーナに対しては今のところ不満はない。
別に犯罪神様に対する忠誠がないわけではないが、どうせ吾輩達はあの方にとっては些細な存在なのだ。
その点、今のところフィーナは吾輩達を使い潰す気はないようだし、身の安全は保障されたも同然だ。
強いて言えば、彼女が幼女であったのならばなおさらよかったのだが……
「そこをどけ!! 私は今すぐにでもあの女を殺しに行く!!」
「だから、落ちつけと言っておるだろう」
大体何で吾輩はいつもマジックだけでなく、あの2人もなだめなければいけないのだ。
この間もジャッジの奴が我慢の限界を迎えていたらしく、ギョウカイ墓場のゴミ山の一部がきれいさっぱり無くなっていた。
ブレイブは何も言わないが、その顔は不満でいっぱいだし。
奴も犯罪神様によるゲイムギョウ界の統治を望んでおったからな。
フィーナの意図がわからないため、どうしていいのか気持ちが定まらんのだろう。
そんなあやつらをなだめながら、この1週間で欠片を集めるように先導したのは吾輩だ。
下手したらこっちの身まで危うくなってしまうのに、協力的ではないあやつらに欠片を集めさせたのは骨が折れた。
まったく、刹那的な感情に流されおって。
吾輩のように未来を見ろと言うのだ。
……ああ、ストレスがたまる。
癒しが……幼女の愛が欲しい。
「退かぬというのなら、貴様から……」
「マジック様、やめてください!? 今ここで暴れても仕方ないじゃないですか!?」
「そうっちゅよ!? 今はチャンスを待つっちゅ!? 欠片ならおいら達も集めるのを手伝うっちゅから!?」
短気なジャッジのように激昂したマジックは、鎌を取り出して邪魔をする吾輩を排除しようとした時、後ろから下っ端とネズミに押さえられた。
どうもマジックを慕っている様子の下っ端とそれに付き合うネズミは、吾輩と同じように未来を見据えているようだな。
今ここでマジックに暴れられたら、吾輩達の命も危ない。
フィーナは吾輩達を人形と言っているということは、簡単に捨てても構わないと言っていると同じことなんだぞ。
遊べなくなった玩具は捨てる、そうして集まったゴミがこのギョウカイ墓場を作り上げているのだからな。
想像しただけで背中が冷たくなってしまう。
「……ちっ」
「マジック様!? 待ってくださいよ、マジック様!?」
「し、失礼するっちゅ、トリック様!? 待って欲しいっちゅ!?」
マジックは舌打ちをすると同時に、吾輩達が元いた部屋、フィーナのいる場所とは逆の方へと歩いて行った。
下っ端とネズミがついて行ったし、もう問題も起こさないだろう。
と言うより、もう面倒見切れん。
吾輩もこんなことでストレスをため込み過ぎて、限界に近いのだ。
……ああ、この荒んだ気持ちを優しく癒してくれる幼女に会いに行きたい。
この体と心の疲れを癒してくれる幼女……そうだ!!
あるではないか、ぴったりの場所が!!
そうと決まれば、欠片探しに託けて行こうではないか!!
アククククク、待っておれよ、吾輩の癒しの幼女よ!!
* * *
ラステイションの教会に泊まった翌日、俺は1人でワンダーに乗り、プラネテューヌの教会へと帰ってきた。
ネプテューヌとアイエフは、列車で帰っているのですでに教会にいるはずだ。
最初は俺と一緒にワンダーで帰りたいと言っていたネプテューヌだったが、アイエフによって強制的に列車で帰ることになった。
なにせ、ネプテューヌにはイストワ―ルさんからのお説教が待ってるんだからな。
俺と一緒に帰ることで、お説教から逃げようと考えていたネプテューヌを無理やりアイエフが列車に乗せて帰ったのだ。
ご愁傷さま。
それで、俺は1人だけワンダーに乗って平和にプラネテューヌに帰ってきた。
ラステイションを出たのが朝だったのに、プラネテューヌに着くころには昼になっていた。
少しのんびりしすぎたかもしれないな。
「ただいま……って、お説教の真っ最中だったか」
「おかえりなさい、夢人さん。すいませんね、こんなお見苦しいものをお見せしてしまって」
「それじゃ、もう許して……」
「ネプテューヌさん?」
「な、何でもないです!?」
俺が帰ってきたことを皆に報告するために奥へ行くと、そこには正座をしたネプテューヌとお説教をするイストワ―ルさんの姿があった。
反省していない様子のネプテューヌに少し呆れてしまった。
まあ、彼女が反省してる姿を想像もできないわけだが。
俺は同じように呆れた様子でネプテューヌ達を見ていたアイエフとコンパに近づいて声をかけた。
「ずっとこの調子なのか?」
「ええ、ずっとあんな調子だから、説教も長引いているのよ」
「ねぷねぷらしいと言えば、らしいんですけど」
いつもあんな調子なのか。
イストワ―ルさんも大変だな。
「あれ? ネプギアは?」
俺はここにいるはずのもう1人の女の子の姿がどこにもないことに気付いた。
もしかして、1人で女神の仕事をしているのか?
「会わなかったんですか? てっきり、夢人さんを出迎えるために入口の方にいると思っていたんですけど」
「入り口にはいなかったぞ?」
「おかしいです。ギアちゃん、夢人さんに言わなきゃいけないことがあるのに」
俺に言わなきゃいけないこと?
それっていったい……
俺がコンパの言葉の意味がわからず、首をかしげているとネプギアが慌てた様子で部屋に入ってきた。
「お、おかえりなさい、夢人さん」
「ただいま……でも、どうしたんだ? そんなに慌てて」
「え、えっと、その……実は、夢人さんにお願いしたいことがあるんですけど……」
俺にお願いしたいこと?
ネプギアは顔を赤くし、目線が定まっていないのか、視線をあちこちにさまよわせて落ち着きがない様子でそわそわしながら、顔だけは俺に向けている。
「わ、わた、わたし、私、私と、いいい、一緒に……あうううぅぅぅ」
「ちょっ、ネプギア!?」
顔を真っ赤にしていたネプギアは、まるでついにオーバーヒートを迎えた機械みたいに頭から白い煙でも出しているのではないかと思うくらい、目を回しながら倒れそうになった。
慌ててネプギアの体を支えたから倒れずに済んだが、どうしたんだ、いったい!?
まさか!? ネプテューヌが仕事をさぼり過ぎたせいでネプギアが体調を崩したのか!?
おのれ、ネプテューヌ!!
「何やってのよ、この子は。夢人、ネプギアをこっちに連れて来て」
「とりあえず、座らせてあげるです」
俺は2人の用意した椅子にネプギアを抱えながら連れて行き座らせた。
抱えた時、体が異常に熱かったことから、やっぱり風邪を引いているのではないかと心配してしまう。
俺がネプギアを椅子に座らせている間に、コンパがコップに水を持ってきてくれ、ネプギアはゆっくりと受け取ったコップから水を飲んだ。
「大丈夫ですか、ギアちゃん?」
「……は、はい、ちょ、ちょっと、ここまで来るのに走っちゃって」
「何をそんなに急いでたのよ?」
走るほど急いで俺にお願いしたいことって何なんだ?
俺はそれよりもネプギアに自分の体のことを心配してもらいたいのだが。
「ふぅ、ようやく落ち着けました。改めて、夢人さんにお願いしたいことがあるんです」
コップの水を全て飲み干すと、ネプギアはそう言って俺にほほ笑むが、未だに頬は赤くなっていたので心配になる。
ただ今度は目線はしっかりとしているので、さっきのようなことにはならないだろう。
「わ、私と一緒に、ここに行ってくれませんか?」
「ここ……って、温泉?」
ネプギアから温泉の宿泊券と書かれた紙が手渡された。
ん? 今俺、ネプギアから一緒に温泉に行かないかと誘われてる?
俺は目の前の出来事が現実であることが認識できなかった。
え? あれ? ネプギアと一緒に温泉? 宿泊ってことはお泊り? 2人っきり?
俺はこれが夢であるかどうか確かめるため、強く頬をつねってみたが、痛みを感じた。
夢じゃない? 現実? 俺、ネプギアに誘われてるのか?
俺が夢じゃないことを確認していると、ネプギアは何かを思い出したみたいでハッとして慌てた様子で手を振りながら顔を真っ赤にさせた。
「あ、いや、アカリちゃん!? そう、アカリちゃんのためです!? 昨日福引きでこれが当たったので、アカリちゃんに温泉を体験させてあげたくてですね!? ……3人までなので、その、よかったら私と一緒にって!?」
「わ、わかった。わかったから、落ちつけって」
「は、はい……で、その……ダメ、でしょうか?」
「そんなことないさ!! うん、一緒に行こう!!」
不安そうに瞳を揺らしながら俺を見上げてくるネプギアに俺はダメと言えるのか? 言えるわけがない!! いや、むしろ、一緒に行きたいです!!
その、やっぱり、俺と一緒に、って言う理由じゃないのは残念だったけど、好きな子と一緒に旅行って考えるだけで幸せな気持ちになる。
「よかった……そ、それじゃ、その宿泊券の日付、明日からなので、私準備してきますね」
ネプギアは俺の返事を聞くとすぐに、満面の笑顔で椅子から立ち上がって部屋を飛び出した。
言葉通り、準備をしに行ったのだろう。
あ、でも、本当だ。日付が明日になってる。
福引きの景品って言ってたし、そんなものなのかな?
俺が宿泊券を改めてよく見ていると、お説教をしていたはずのイストワ―ルさんがにこにこしながら近づいてきた。
「夢人さん、ネプギアさんのこと、よろしくお願いしますね」
「あ、はい……でも、いいんですか? 急に出かけちゃったりして」
「大丈夫ですよ。ネプギアさんはいつも真面目に仕事をしてくれるので、少しは休んでもらいたいと思っていたんです。温泉でゆっくりとしてきてくださいね」
イストワ―ルさん的には問題ないみたいですけど、後ろの人はそうでもないみたいですよ?
「いいなー、ネプギアとゆっくん、アカリちゃんの3人だけで温泉に行くなんて」
後ろの人、ネプテューヌは唇を尖らせながら羨ましがってるんですけど。
さっきまでのお説教が堪えていない様子なのがわかり、イストワ―ルさんは思わずお腹を押さえてしまっている。
彼女から何かが軋むような音が聞こえてくるような気がするが、彼女はそれでも笑顔を崩さずにいた。
「……こちらの心配はしないで結構ですよ。今からネプテューヌさんにネプギアさんがしてくれた倍以上の仕事をさせますから」
「ねぷっ!? 今から!? わたし、お昼まだ食べてないんだけど!? 食後のプリンだって!?」
「そんなの後です!! さあ、行きますよ!!」
「痛い痛い痛い!? いーすん、耳引っ張らないで!? わかった、わかったから!? 自分で歩かせて!?」
イストワ―ルさんはまるで鬼の形相のように怒りをあらわにして、ネプテューヌの耳を引っ張りながら部屋を出て行った。
あの様子だと、ネプテューヌはしばらく許してもらえそうにないな。
自業自得だろうけど、少しだけ同情してしまう。
無事でいろよ、ネプテューヌ。
「よし、それじゃ、俺も準備してくるよ」
「まあ、魔法の方も行き詰ってたし、いい気分転換になるんじゃない? ゆっくりしてきなさいよ」
「3人で楽しんで来てくださいね」
俺はアイエフとコンパの温かい言葉に頬を緩めながら、手を振って自分が使っている部屋へと向かった。
準備と言っても、下着ぐらいで充分かな?
温泉ってことは浴衣もあるだろうし、そんなに荷物はいらないはずだ。
……だが、俺はここで宿泊券にある文字が入っていることに気付いた。
「……ファミリー?」
いや、別におかしなことはない。
元々3名まで大丈夫ってことは、子どもがいる夫婦までを対象とした宿泊券なのだろう。
別に人数が減ることは旅館にとっても不利益にならないので、カップルや友人と一緒に行くことも可能だ。
でも、これって同じ部屋に泊まるってことじゃないのか?
……縛ってもらう用の縄を用意しておかないとな。
* * *
「……ふぅ、これで全部見終わったわね」
わたしは執務室で、わたしが捕まっている間にルウィーで起こった事件、ここ1週間で上がった報告書の全てに目を通し終えた。
ノワールから連絡があった欠片を吸収したモンスター、ラステイションに現れたルウィーのモンスターについてはなにもわからなかったが。
まず、欠片を吸収したモンスターなんて、今まで報告に上がっていない。
つまり、わたし達が知らなかっただけなのか、それとも、ノワール達が最初に発見したのかわからないが、厄介な問題が増えたことを意味している。
ノワールの報告では、そのモンスターが現れたと同時に『変身』が解除されたようだ。
もし、そんなモンスターとロムとラムが対峙してしまったと考えると、思わず背中が冷たくなってしまう。
あの子達は『変身』できるからこそ、わたし達と一緒に戦えるレベルになるのだ。
本当ならわたしが帰って来たと同時に、再び『変身』を制限するつもりだった。
あの子達に危ないことをさせたくない。
あの子達はわたしに代わって女神の仕事をしていたのだ。
なら、わたしが帰ってきた以上、あの子達にはもう戦わせないつもりでいた。
あの子達はネプギアやユニ、ナナハのように女神として戦うには幼すぎる。
あの子達が安心してルウィーで過ごせるようにするために、あの子達の分もわたしが日本一やがすとと一緒に戦うつもりだった。
でも、あの子達はわたし達と一緒に戦うことを選んだ。
最初は渋ったけど、わたしはあの子達の意思を尊重したいと思った。
女神の仕事に積極的に関わろうとするあの子達の気持ちを大切にしたい。
わたしが捕まる前のあの子達だったら、そんなこと言わなかったと思う。
わたしが甘やかし過ぎたせいかもしれないけど、あの子達はわたしやミナを困らせるイタズラをよくする。
楽しいことが大好きで、遊びたいという気持ちが強かったあの子達が自分から積極的に女神の仕事をしたいと言いだした時、わたしはこれをいい機会だと思った。
わたしはこれを機に、『変身』の制限を解除してもいいかもしれないと考えている。
あの子達が女神の力におぼれないようなら、今後自由に『変身』することを許可しようと思ったのだ。
女神の力は強力だ。
そのため、幼いあの子達が力におぼれて、誰かを傷つけても平気になってしまわないように、『変身』を制限していた。
力を振るうことを当たり前だと思ってしまわないようにするための制限だった。
でも、それももう必要ないと思う。
あの子達は出会いや経験を重ねたことで、心を成長させてくれた。
誰かのために力を使うことを覚えたあの子達なら、間違った力の使い方はしないとわかった。
……そう思った矢先に『変身』を解除してしまうモンスターの登場である。
確かに、あの子達は心を成長させたが、体はまだまだ発達途上だ。
『変身』ができなくなってしまったら、あの子達はただの魔法を上手く扱えるだけの子どもと一緒だ。
そのモンスターも強力だと聞いているし、ただ魔法が上手く扱えるだけのあの子達じゃ対処できないだろう。
ここは心を鬼にして、あの子達の『変身』を制限して、無理やりにでも戦わせないようにするべきかしら?
そして、もう1つの報告、欠片を吸収したモンスターと共に現れたルウィーのモンスター、こちらについてもまったくわからない。
警備隊からの報告書を読む限り、ルウィーからラステイションへ移動したモンスターは一匹もいない。
そもそも、欠片を吸収したアイスフェンリルは危険なモンスターでもあるため、その生態をしっかりと調査している。
あのモンスターがラステイションのような温暖な気候の場所へ行くことなど今まで報告されたことがない。
これは単に新しい発見なのか、それとも、何かの前触れなのか、どちらにせよ、謎は尽きないということだ。
わたしが報告書を読み終え、椅子に座りながらゆっくりと硬くなってしまった体を伸ばしていると、部屋の扉が控えめにノックされた。
「お姉ちゃん、今いい?」
「ロム? ええ、入っていいわよ?」
ロムが1人でこの部屋に来るなんて珍しいわね。
いつもはラムと一緒にいるのに。
部屋に入ってきたロムはわたしのすぐ側にまで来て、にこにこと笑いながらわたしの袖を引っ張ってきた。
「お仕事、終わった?」
「ええ、ちょうど今終わったところよ」
「なら、一緒に遊ぼう(にこにこ)」
遊びの誘い、か。
わたしもずっと仕事が忙しかったし、寂しく思っていたのかもしれないわね。
でも、それならどうしてロム1人だけで来たのかしら?
「いいけど、ラムはどうしたの?」
「ラムちゃんは、今日本一ちゃんとがすとちゃんと一緒にゲームしてる。わたし達も行こう」
あの2人にも迷惑をかけてばかりね。
仕事を手伝ってもらうだけじゃなくて、この子達の世話までしてもらってたなんて。
わたしはロムに案内されてラム達がゲームをしている部屋にまで案内された。
「いえーい! またわたしの勝ちー!」
「あー、もうちょっとだったんだけどな」
「日本一は大きく振り過ぎですの。もっとコンパクトに振るべきですの」
ラム達が白い棒状のコントローラーを振り回しながらゲームをしていた。
なるほど、あれなら外で遊ぶのが好きなラムや難しいことが苦手な日本一でも簡単に遊べるわね。
「あ、ロムちゃん、ちゃんとお姉ちゃんを連れてきてくれたんだ! お姉ちゃんも一緒に遊ぼうよ!」
「ええ、そのつもりよ。日本一、悪いんだけど、コントローラーを貸してくれるかしら?」
「いいよ。はい」
わたしは日本一から手渡されたコントローラーに付いている紐をしっかりと自分の手から離れてしまわないように腕に通して準備をした。
「お姉ちゃんが相手でも、手加減しないんだから」
「2人とも、頑張って」
ロムがにこにことわたしとラムの両方を応援していると、ゲームの準備ができたようだ。
どうやらテニスゲームらしい。
ボールがキャラクターに近づいてきたら、コントローラーを振って球を打ち返す、シンプルなゲームだ。
「よーし、一球入魂!」
ラムが勢いよくコントローラーを振ると、ラムのキャラクターがなかなかのスピードのサーブを放った。
……でも、悪いわね、ラム。
いくら妹が相手でも、わたしもわざと負けてあげるほど、ゲームに手抜きはできないのよ。
わたしは少し大人げないと思ったが、ここは勝つつもりで相手をしようと、コントローラーをコンパクトに振った。
完全にボールを捕らえたと思ったわたしだったが、画面のキャラクターはただ棒立ちのまま動かないでサービスエースを取られてしまった。
あ、あれ? おかしいわね? コンパクトにし過ぎたかしら?
「やったー! サービスエース!」
「ラムちゃん、すごい(ぱちぱち)」
「い、今のは練習よ、練習」
そう、今のは練習よ。
どのくらいの振りでコントローラーが反応しないか試しただけなのよ。
次は必ず返してみせるわ。
「よーし、もう一発、行っちゃうよ!」
よし、今度はラムのように思いっきり振ってみましょう。
わたしはボールをキャラクターが捉える直前で思いっきりコントローラーを振った。
これなら!
……しかし、今度はキャラクターは反応したのはいいが、見事に空振りしてしまった。
だああああああああああ!? 何でなんだよ!?
「やりぃ! 二本先取!」
「くそっ!? 次だ! 早く次打ってこい!!」
絶対今度こそ打ち返してやらぁ!!
しかし、わたしの気合いもむなしく、今度はボールを打ち返せたが、ネットに当たってしまった。
「ふふーん! 後、1ポイントでゲーム先取だね!」
「させっかよ!! こっから逆転してやらぁ!!」
ボールには当たるようになったんだ。
それならここから逆転してやる!!
ラムのキャラクターが打ったサーブを、今度は完璧にとらえた手ごたえがあった。
今度はネットに引っ掛からず、ラムのコートにボールは突き刺さった。
姉として妹にゲームとはいえ、負けるわけにはいかねえんだよ!!
「ええい!」
わたしが上手くリターンできたことに頬を緩めている隙に、ラムはキャラクターのいない逆サイドにボールが行くようにコントローラーを振った。
当然、わたしはリターンができたことに満足していたため、ラムの球を返すことができるはずもなく、ボールは何度もバウンドしてコートの後ろの壁にぶつかった。
「やったー! ゲーム先取!」
「くそおおおぉぉぉ!? 次だ!! まだ終わってねぇぞ!!」
「わたしだって負けないもん!」
「2人とも、楽しそうで嬉しい(にこにこ)」
「どっちも頑張れ―!」
「ブラン様、そんなに思いっきり振る必要は……」
外野が何かを言っていたような気がするが、わたしはそれどころじゃない。
今度は絶対にゲームを取る!!
負けたまんまで終われるか!!
という訳で、今回はここまで!
いや、でも本当に驚きました。
これを書いてからマオウを読んだので、まさか温泉回が連載されているとは思わなかった。
まあでも、ネタかぶりはしないので安心ですけどね。
それでは、 次回 「オリジナル」 をお楽しみに!