超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
ついにこの話で100話目突入ですよ!
まだまだ完結への道が見えないこの作品ですが、これからもよろしくお願いしますね!
それでは、 なりきり はじまります


なりきり

「俺とネプテューヌはワンダーで先に行く。アイエフは……」

 

「私も列車ですぐに向かうわ。後、がすとにも連絡入れてみるわ」

 

 施設の外に出た夢人はヘルメットを被りながら、ワンダーのエンジンを温めた。

 

 列車とワンダー、ここからラステイションに向かうならワンダーの方が先にラステイションの教会に着く可能性がある。

 

 だからこそ、夢人は先にネプテューヌと一緒に向かおうとした。

 

 アイエフもその意見に賛成し、急ぐ夢人達に代わってB.H.C.の開発者であるがすとに連絡を入れようと考えた。

 

 Nギア越しのユニの慌てようから普通の黒歴史ではないことは明らかであったので、がすとに詳しく聞くべきであると判断したからである。

 

「頼む。ネプテューヌ、準備はいいか?」

 

「オッケー! いつでもいいよ!」

 

「よし、行くぞ、ワンダー!」

 

〔了解!〕

 

 夢人の腰に捕まるように腕を回したネプテューヌの言葉を聞いて、夢人はワンダーを発進させた。

 

 遠ざかっていく夢人達を見送ったアイエフは、自身の通信機でがすとに連絡を入れながら駅に向かって走り出した。

 

〔もしもしですの〕

 

「がすと、アンタに聞きたいことがあるんだけど」

 

 

*     *     *

 

 

 ……どうしよう、わたしのせいだよね。

 

 わたしがノワールにB.H.C.を渡したから、今ノワールがおかしくなっちゃってるんだよね。

 

 わたしはゆっくんの背中にしがみ付きながら一緒にワンダーに乗っている。

 

 本当なら颯爽と風を切る疾走感で、テンションが上がってもおかしくないはずなのに、わたしはそんな気分になれずにいた。

 

 出発した時のような空元気も出そうにない。

 

 ユニちゃんの慌てようから、わたしの素直なノワール計画は失敗したんだとわかった。

 

 わたしはノワールのためと考えながら、心の中で自分が楽しみたいためにB.H.C.を渡していたんだ。

 

 笑い話ですむはずだったことが、結果的にユニちゃん達に迷惑をかけてしまった。

 

 ゆっくんにしがみついている腕に力が入る。

 

 わたしは自分がしてしまったことに後悔している。

 

 わたしがあの時、ノワールにB.H.C.を渡さなければ……

 

「今はあんまり自分を責めるなよ」

 

「……ゆっくん、でも」

 

「後悔して変わることは自分の気持ちだけ。俺がそうだった」

 

 ゆっくんはおそらくわたしがしがみつく力が強くなったことで、心配してくれて声をかけてくれたんだと思う。

 

 ゆっくんの後悔って……

 

「俺だけがギョウカイ墓場から逃げ出してしまった時、俺は自分の行動に後悔した。あの時、どうしてパープルディスクにシェアエナジーを送ることができなかったのかって」

 

 でも、それはゆっくんが死ぬことが怖かったから。

 

 シェアエナジーを送ることで、記憶を失ってしまうことが怖かったからって映像記録で言っていた。

 

「俺は後悔することが悪いことだとは思わない。後悔したことで、大切なことに気付くことがあるからな」

 

 ……大切なこと。

 

 わたしが今後悔したことで気づいた大切なことは……

 

「……ありがとう、ゆっくん。わたし、弱気になってたよ」

 

 わたしにとってノワールは大切な友達だ。

 

 その友達がわたしのせいで困っているのに、わたしが動かないなんてありえない。

 

 わたしがしてしまったことは、わたしが責任を持って解決しなくちゃね。

 

「絶対にノワールを助けよう!」

 

「ああ、スピード上げるからしっかりつかまってろよ!」

 

「ラジャー!」

 

 ……待っててね、ノワール。

 

 必ず助けるからね!

 

 

*     *     *

 

 

 ……その日は、いつもと同じように綺麗な青空だった。

 

「おはよう、ユニちゃん、ケイちゃん」

 

「おはよう、お姉ちゃん。アタシも手伝うね」

 

「おはよう、今日もおいしそうだね」

 

 いつものように教会で朝食を取る、私達3人。

 

 今日の朝ごはんは、トーストと目玉焼きとベーコン、そして、おすそわけでもらったレタスを添えてみた。

 

 最近は野菜が値上げしているので、レタスを持ってきてくれたファルちゃんには本当に感謝だ。

 

 こうして野菜の栄養が取れるんだから。

 

 おっと、自己紹介が遅れちゃったわね。

 

 私の名前はノワール。

 

 ごくごく平凡な女神よ。

 

「このジャム、お姉ちゃんが作ったんだよね?」

 

「そうよ、口にあったかしら?」

 

「うん! とってもおいしいよ」

 

 私の隣でトーストにジャムを塗り、美味しそうに頬張っているいるのは妹のユニちゃん。

 

 私達は近所でも評判のとーっても仲良しな姉妹だ。

 

 私はいつだってユニちゃんのことを好きだって言えるし、ユニちゃんだっていっつも私に大好きって言ってくれる。

 

「……うーん、税金の値上がりか」

 

「ケイちゃんも食事中くらいは新聞読むのやめたら?」

 

「おっと、そうだね。せっかくノワールが作ってくれた朝食が冷めたらおいしくなくなってしまうからね」

 

 私の正面に座り、経済新聞を読みながらコーヒーを飲んでいたのは、ここラステイションの教祖のケイちゃん。

 

 彼女は初対面の相手にはとっつきにくい印象を持たれるかもしれないけど、親しくなると柔らかい笑顔と共に温かく接してくれる優しい女の子だ。

 

 私達の朝はいつも一緒に私の作った朝食を食べることから始まる。

 

 気持ちのいい1日を送ってもらえるように、私も毎朝頑張って早起きして朝食とお弁当を作ることが楽しみでもある。

 

 だって、私は2人が大好きなんだから。

 

「それじゃ、そろそろ行ってくるわね」

 

「あ、お姉ちゃん、待ってよ」

 

「いってらっしゃい、2人とも」

 

『いってきまーす』

 

 女神と言っても私達は学校に通う学生でもある。

 

 今日も勉強に運動と頑張らないとね。

 

 ……この時、私はまだ知らなかった。

 

 私がゲイムギョウ界の平和を守る、マジカルヴィーナスになるなんて……

 

 魔法女神☆ノワルン、始まり……

 

 

*     *     *

 

 

「始まんないよ!? ってか、勝手にタイトル変えないで!?」

 

 あ、危なかった。

 

 このままじゃ、別作品が始まっちゃうところだったよ。

 

 勝手にタイトルを変えるのは犯罪なんだからね!!

 

 わたしとゆっくんがラステイションの教会に辿り着いて、いきなりデンジャーな現場に出くわしたよ。

 

 ただでさえ、ノワールの恰好だけでいっぱいいっぱいなのに、これ以上の問題を起こさないで欲しい。

 

 『変身』して白髪になった髪を二つに縛って、ピンクのフリフリなんて着ちゃってるだけでも問題なのにさ。

 

 しかも……

 

「ううぅぅぅ、見ないで、夢人ぉ」

 

 部屋の隅で恥ずかしそうにうずくまっている、これまた『変身』した姿でノワールと色違いの青いフリフリを着たユニちゃんがいた。

 

 通信の最後に聞こえてきた言葉の意味はこれだったのか。

 

 ……事態はわたしが考えていたことよりも、斜め上で危険だったようだ。

 

 こ、これってどうすればいいの!?

 

 絶対に解決するって決めたのに、いざ目の前にするとどうしたらいいのかわかんないよ!?

 

「これってB.H.C.のせいだったんですか?」

 

「ああ、そうらしい。でも、5分経っても戻ってないだろ?」

 

「ええ、ボク達が来てから、とっくに5分は過ぎてます」

 

 ゆっくんが難しい顔でB.H.C.の入っていた瓶を見ていた。

 

 本当なら5分過ぎれば、効果が切れるはずらしい。

 

 それがどうして元に戻らないんだろう。

 

 やっぱり、大量摂取したからかな?

 

 と、とりあえず、話しかけてみよう。

 

「……え、えっと、ノワール?」

 

「私は愛と正義を守るマジカルヴィーナス、ノワルンよ、ネプちゃん。決して、あなたの友達のノワールって言う女の子じゃないわ」

 

「ネプちゃん!?」

 

「マジカルヴィーナスは正体不明の謎の美少女、例え友達と言っても正体を明かすわけにはいかないの」

 

 そ、それって正体言ってるようなものなんじゃ……

 

 ってか、変わり過ぎ!?

 

 B.H.C.って、こんなに変わるものなの!?

 

 こんなのノワールじゃない!?

 

「ユリンもいつまでもそうしていないで、しゃんとしなさい」

 

「あ、アタシはユリンじゃなくて、ゆ……」

 

「ダメよ! 正体を知られたら、マジカルパワーがなくなってしまって『変身』できなくなっちゃうわよ!?」

 

「……できなくていいよぉ」

 

 ユニちゃんはユリンって言うんだ。

 

 ノワールは恥ずかしがっているユニちゃんを立たせようとしているけど、無理だよね。

 

 ユニちゃん、顔真っ赤にして恥ずかしがってるもん。

 

「そんなこと言わないで。私達はギョウカイ墓場からやってくるマジェコンヌ達からゲイムギョウ界を守るマジカルヴィーナスなんだから」

 

「……それは別に女神でいいんじゃ……」

 

「それは違うわ。奴らが使う闇のネガティブパワーには、私達が使う光のマジカルパワーじゃないと太刀打ちできないじゃない」

 

 なにそのネガティブとかマジカルとかって言うパワーは!?

 

 そんなもの知らないよ!?

 

 大体、何でそんなにすらすらと設定が出てくるの!?

 

 もしかしたら、ノワールっていつもそんなこと考えながら女神の仕事してたの!?

 

「お、落ちつけって……えっと、ノワルン?」

 

「あ、ごめんなさい。恥ずかしいところ、見られちゃいましたね」

 

 ノワールが恥ずかしそうにほんのりと頬を赤く染めて指をもじもじさせながら上目遣いにゆっくんを見ている。

 

 あ、あれ? これはどういうことなんだ?

 

 なんでそんなに恥ずかしそうにしているんだろう?

 

「本当、見ず知らずの人の前で恥ずかしいことしちゃったな、てへ」

 

「俺は初対面設定!? ネプテューヌは友達設定なのに!?」

 

 あ、アハハ、ゆっくんは見ず知らずの人なんだ。

 

 ま、まあ、ゆっくんとノワールは知り合ったばっかりだし、仕方ないんじゃないかな?

 

「……俺って傍目から見たら、いつもこんな風だったのかな」

 

 そう言えば、ゆっくんもB.H.C.使ったらこんな風になってたのかな?

 

 それはそれで怖いもの見たさで見たいと思っちゃうんだけど……

 

 って、考えがまた横にそれた。

 

 いけないいけない、ちゃんとノワールを元に戻す方法を考えなくちゃ。

 

 ……うーん、でも、どうすればいいのか全然わからないよ。

 

 でも、いつまでもこんなノワールにしていられないし……

 

 わたし達がどうすればいいのか考えていると、ゆっくんのNギアに着信がきた。

 

 このタイミングでの着信は、きっとあいちゃんだ!

 

 あいちゃんはがすとから何か解決法を伝授されているはず!

 

「アイエフか? がすとは何だって言っていた?」

 

〔……その前に確認させて、1瓶全部飲んじゃったのよね?〕

 

「ああ。それで5分経っても黒歴史が解除されないだ」

 

 あいちゃんは通信機越しからでも、深刻さが伝わってくるくらい真剣な声で言葉を続けた。

 

〔……最悪の事態よ。このままじゃ、ノワール様の本当の人格が消えてしまうかもしれないわ〕

 

 あいちゃんが告げた言葉は、この場にいる全員に絶望を与えた。

 

 ……ノワールが、消えちゃう?

 

 

*     *     *

 

 

〔……非常にまずい状態ですの〕

 

 私はがすとに事のあらましを全て話して、どうすれば事態を解決できるのかを尋ねた。

 

 どうしてネプ子にB.H.C.なんて渡したのなんて聞かない。

 

 今はノワール様を助けることが先決だ。

 

〔そもそもB.H.C.は1度に大量に摂取してはいけないクスリですの。それを大量に摂取するなんて〕

 

「今ノワール様がどんな状態なんだか、わかるの?」

 

 今は少しでも情報が欲しい。

 

 私達はノワール様がどんな状態なんだかもまったくわからない。

 

 開発者のがすとの推測なら、限りなく正解に近い推測になるはず。

 

〔簡単に言ってしまえば、黒歴史そのものになってしまっているですの〕

 

 黒歴史そのもの?

 

 それって、夢人が使っていた状態とどう違うのだろうか?

 

〔B.H.C.が5分間しか効果を発揮できないのは、服用した人物を守るためですの。長時間、本来の人格でない人格が表に出ることは非常に危険な状態ですの〕

 

 ……つまり、ノワール様はB.H.C.を大量に摂取してしまい、安全に利用できる効果時間を過ぎてしまった状態なのね。

 

〔このままでは本来の人格が消えてしまうかのせいがあるですの〕

 

「どういうことよ!?」

 

 確かに危ない状態だってことは理解できたけど、どうしてそれでノワール様の本来の人格が消えてしまうことになるのよ!?

 

〔脳と言うものは意外と単純なんですの。長時間同じ行動をとっていると、それが当たり前のように認識されてしまうですの。このままじゃ、黒歴史が当たり前のように認識され、本来の人格が隠れてしまうですの〕

 

「表と裏がひっくり返るってことね」

 

〔その通りですの。だからこそ、B.H.C.は5分と言う制約があったんですの〕

 

 なるほど、そう言うことか。

 

 恥ずかしながらB.H.C.を利用したことがある私も、あのクスリのすごさは理解している。

 

 まるでリミッターが解除されたみたいに、自分の頭の中から隠していた何かが弾けるような感覚を覚えた。

 

 きっと、それががすとの言う強いイメージ、黒歴史なのだろう。

 

 実際、飲んですぐに夢人に放った魔界粧・轟炎は、普段とは考えられないくらい上手く魔力を練れた。

 

 普段よりイメージしやすかったのだ。

 

 ……まあ、2度と利用しようとは思わないだけどね。

 

 でも、本当に今の状況はマズイ。

 

 今のノワール様は頭のリミッターが常時外れた状態なんだ。

 

 そんな状態を続けていたら、本当に黒歴史が本当の人格にとって代わってしまう。

 

「何とかする方法はないの?」

 

 本来の人格が消えてしまったら、それはノワール様じゃなくなってしまう。

 

 それは死んでしまったのと同じだ。

 

 早く元に戻さないと……

 

〔ありますの。それは……〕

 

 

*     *     *

 

 

 ラステイションの街の近くの森、そこには落ちていた女神の卵の欠片に近づく一匹のモンスターの姿があった。

 

 モンスターがその珍しい欠片に興味を引かれ、それに触れようと指を伸ばした時だった。

 

 突然、モンスターを欠片から放たれた白い光が包み込んだ。

 

 やがて、光が収まると、そこには先ほどまでいたモンスターの姿はなく、代わりに……

 

「ガルルルル」

 

 額に白く光る欠片を宿したアイスフェンリルが存在し、空に向かって吠え始めた。

 

「ワオオオオオオオオン!!」

 

 瞬間、アイスフェンリルを中心に白い光が四方へと広がっていった。

 

 すると、周りの木々が白く凍りついていき、ラステイションではありえない光景が広がり始めた。

 

 ……そこはまるで雪国、ルウィーのようであった。




という訳で、今回はここまで!
しばらくは1章につき本編5話ずつの構成にしようと思っていますので、ようやく折り返し地点にたどり着けました。
その割には話が進んでいないように見えてしまう。
それでは、 次回 「混ざり合う色」 をお楽しみに!

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