ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~ 作:誤字脱字
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〈三日月同盟〉
『円卓会議』参加ギルド、〈アキバのひまわり〉マリエールが率いる中小ギルドである
・・・訂正しよう、彼女のギルドほど『率いる』と言う言葉が似合わないギルドを私は知らない
彼女らを言葉で表すのならば『家族』と言う言葉が一番しっくりくるであろう
暖かみ溢れるギルドマスター、会計を預かりしっかり者の幹部、兄貴肌とまではいかないが頼りになる戦闘班長etc・・・
〈大災害〉後、荒れに荒れたこの世界に彼女らの様な人の暖かみを忘れていないギルドは珍しい
・・・道に迷い、目的を失い、自棄になった者が居るのであれば〈三日月同盟〉に行く事を私はオススメしよう
彼女らは貴方を暖かく迎えてくれるであろう・・・
「第12回!ドキ☆エルダー・テイル追加パック!~突撃!隣人のお宅~」著作者:くずのは
より抜粋・・・・
「今回の見出しはコレで決まりでありんすな。しかし・・・」
彼女は〈記録の地平線〉の本拠地前を何回も何回もぐるぐるぐるぐる回っていて双子ちゃんに視線を向けた・・・
「ミノリ!早く行こうぜ!」
「う、うん、わかっているわ。でも・・・心の準備が」
「昨日あんなに考えただろ!?今更、なに悩んでるんだよ!」
「私だってシロエさんに師事してほしいけど・・・私、足手まといだし」
「・・・一歩踏み出す勇気が足りないでありんすか。しかし・・・うろたえる2人は、まことに可愛ぃでありんすね~」
彼女は、かれこれ1時間以上も双子を愛でているのであった・・・
ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~
狐流・・・お☆も☆て☆な☆し☆
彼女達は自分達の恩師であるシロエのギルド〈記録の地平線〉に加入する為に北側の境界まで足を運んでいた
しかし、彼女達の一方的な思いだけでシロエと共に歩んでイイモノなのか?その思いが巡りに巡り今一歩踏み出せずに、ただ足を止めていたのだ。・・・トウヤも口では気丈に振舞っているが、心の奥では高LV尚且つ凄腕プレイヤーが集まるギルドに参加していいのか?心の奥で引っかかっていた・・・
彼女らはLV30もいかない初心者。しかも、この世界で一度酷い目にあっている。シロエに限って〈ハーメルン〉の様な扱いは受けないと断言できるが・・・・このままシロエにおんぶに抱っこでいいのか?
2人の思考は時間と共により深く沈んでいったのだ・・・しかし・・・
「ト~ヤン♪ミ~ノリン♪」
「「うわぁ!?/きゃ!?」」
いきなりのシリアスブレイカーの登場に2人は一斉に声と思考を上げた
声を上げてもなお、2人に抱き付き頬摺りを止めない彼女をどうにかしてくれ・・・
「クーさん!?くすぐったいです!」
「クーさん!?そうだよ!クーさん!実は俺達―――」
驚きはしたが、トウヤにとって彼女の登場は渡り舟であった
彼女はシロエ達とは、また違う独自の考えを持っている。そんな彼女なら今自分らが抱えている悩みを解決し導いてくれるのではないか?と思ったのだ
トウヤは拳を握り締めながら、ミノリは下を向き洋服の裾を握りながら胸の内を語り始める・・・
「―――LVも低いし足手まといかもしれないけど、兄ちゃんが色々教えてくれたから、俺達がんばれたんだ!・・・だから、俺達、兄ちゃんのギルドに入れて貰いたいと思ってるんだ。でも・・・」
「私達・・・このまま、シロエさんに頼りっきりでいいのかと思うんです。私達にシロエさん達は多くの事をしてくださいました。でも、私達には返せるモノがありません、どうすればいいんでしょう?」
2人は胸の内を全て語り、思いを告げた女性に一斉に視線を向けたのだが・・・・
「あ~!蝶でありんす~♪待ちなんし~」
2人の言葉などまったく耳に届いていないとばかりに蝶を追いかけていた
「・・・私、クーさんが何を考えているのか、判らないわ」
「・・・俺も。」
その光景を目の辺りにして二人は揃ってため息をついたのであった・・・
日差しが真上から差しあたる時間になっても3人は、その場にずっと留まっていた。ただ時間ばかりが過ぎていく中、蝶を追いかけ回す彼女を茫然と眺めているとーーーふっとある事にトウヤは気づいた
「お、おい!ミノリ!あの蝶ってシロエ兄ちゃんが言っていた・・・『アレ』に似てないか?」
「『アレ』?・・・ハピネスバタフライの事?でもアレは〈ナインテイル自治領〉にしか出現しないって言っていたわよ?」
「で、でも!体は淡いピンク色だし!鱗粉は金色だぜ!?まるっきり同じだろ!?」
「・・・確かにそうだけど」
ハピネスバタフライ・・・・〈エルダー・テイル〉中期に名作拡張パック〈炎の贈り物〉の副産物として出現した捕獲するとギルド全体に幸福が訪れると伝えられている出現率が極稀な高難度なイベントだ
実際にどのような効果があるのかは不明な点が多いが、遭遇率の低さからギルド資金が増大、ギルドルーム無料配布など噂を囁かれている・・・
「そうだよ、ミノリ!あの蝶を捕まえようぜ!そしたらシロエ兄ちゃんも認めてくれるさ!」
「で、でもトウヤ!このイベントは難易度が高いから危ないってシロエさんが!」
「ただ蝶を捕まえるだけだろ!?早くしないとクーさんに先を越されちまうよ!」
「ちょっと待ってよ、トウヤ!」
ミノリはトウヤにせかされ、〈アキバの町〉の外―――ダンジョンへと踏み出したのであった・・・・
◆
2人は蝶を追いかけ、森の中を進んでいた。
ヒラヒラと舞う蝶は〈冒険者〉が走れば簡単に捕まえられそうな速度で、時には急上昇し〈冒険者〉の手に届かない場所まで高度を上げたりしているが・・・・決して見失う事のない距離で〈冒険者〉を
その蝶の有り方を不自然に思ったのはミノリであった・・・
「ねぇ、トウヤ。可笑しくない?シロエさんが難しいって言っていたわりには簡単すぎる様な気がするし、一緒に追っ駆けていたクーさんもいつの間にか居ないし・・・」
「好都合だろ?それよりあそこを見てみろよ!」
トウヤの指差す先には彼女らを誘っていた蝶が一輪の花で羽を休めていたのだ・・・
トウヤは声を上げようとしたミノリの口を人差し指で押さえ後、ゆっくりと蝶に近づき・・・両手で囲み・・・
「よっしゃ!捕ま、えッ!?」
「トウヤッ!!!」
捕まえた事に歓喜の声を上げようとしたトウヤを大きな影が迫ってきたのだ
ミノリは、いち早くトウヤに迫る危機に気づき押し倒す様にトウヤと一緒に倒れこんだ
そして、タイミングよくして2人の頭上でブォンっと荒々しく空を切る音が鳴り響いたのであった・・・
2人は一斉に音の発生源を見上げた・・・長い腕には巨大な棍棒、湾曲した黒い脚、そしてこの四肢を持つ者の顔は・・・凶悪にして鬼の様な顔をしていたのだ
「・・・オーク」
ミノリなのかトウヤなのか、はたまた2人一緒にだったのか判らないが・・・発した言葉からトウヤを襲った正体が判明したのだ
「っ!ミノリ!!!」
「え!?きゃ!!!」
トウヤはミノリの手を引いて立ち上がった。―――巨大な棍棒はミノリのいた場所に叩きつけられ砂煙が舞う・・・
「くそッ!なんで忘れてたんだよ!あの蝶は罠って言う事を!」
「罠?・・・ッ!
イベント名:「幸せを喰らう鬼」
拡張パック〈炎の贈り物〉では各種ダンジョンを巡り、オーク族との激しい攻防戦が繰り広げられた
〈冒険者〉の活躍に苛立ちを感じたオーク族の一派は〈冒険者〉を餌で誘いだし奇襲を仕掛ける事にした
〈冒険者〉は見事、奇襲を打ち倒し報酬を手に入れる事が出来るのであろうか・・・・
[討伐対象] :
[イベント条件] :
: 遭遇から10分後、敵側に増援
: 逃走不能
: ファーストアタック不能
[報酬] : ???
トウヤは自身の犯した失敗に唇を噛んだ
シロエ兄ちゃんに教わった事を忘れ、それどころかミノリまで危険な目に会わせてしまった事を悔しく思った・・・
自身の震えた手で持つ刀が、あの巨大なモンスターの前では小枝の様に感じてしまう・・・
ツーっと頬を垂れる汗が不快に感じるが、ジリジリと距離を詰めて来るオークでそれどころではなかった
「どうするのトウヤ!?私達じゃ・・・」
「諦めるな!諦めたらそこで終わりだ!」
「そうざんす!そうでありんしょう!安西先生!!!」
目に涙を浮かべるミノリを奮い立たせようと声を掛けるトウヤ・・・一匹増えている事に気づかない二人
「ミノリ、援護してくれ。俺が仕掛ける!」
「で、でもトウヤ!」
「・・・ダメージが与えられるんだ。倒せないことはない」
「見せてもらいんしょう!オーク族の性能の高さを!」
刀を構えオークと対峙するトウヤと林檎を齧り扇子を構える狐・・・・シャクシャク・・・・シャクシャク・・・ミノリは気づき目を丸くさせた
「クーさん!?」
「え!?クーさん!?ぐはっ!」
「余所見は危ないでありんすよ、トーヤン?」
振るわれた棍棒をトウヤに蹴りを入れることで回避させた彼女は悪くはない・・・決して林檎で手が塞がっていたと言う理由からではない・・・・と思う
いつの間にか現れた頼もしい援軍にミノリの顔には笑みが戻ったが・・・直ぐに驚きの顔へと変化したのであった
「LV20!?どうして!?」
「え!?」
ミノリの言葉に驚き、トウヤ自身も彼女のステータスを確認してみる・・・LVが20になっており、ステータスの下にはある言葉、シロエが自分達に指示する時に使っていたシステム名が表示されていたのだ
「・・・師範システム」
「そうざんす~♪みんなでフルボッコにしんしょう?」
明るく2人に話しかける彼女とは対照的に2人の表情は暗くなっており、心なしか発する声も生気を感じることが出来なかった・・・
「・・・クーさんは、LVが低くなってもシロエ兄ちゃんみたいに上手く戦えるよ。でも・・・」
「私達だとクーさんの足手になってしまいます。だがら 『いい加減になさい!』 っ!?」
何時のもダラケタ特長的な話し方ではなく、リンッとし透き通った声が2人の顔を上げさせる
「・・・貴方達はもう少し自信を持ちなさい。LVが低いから、足手まといになるから、そんな自身が付けた評価なんて全く意味のなさない事を感じなさい?」
顔を上げた先には、オークに背を向けているのにも拘らず、優雅に、そして気品に満ちた彼女が自分達を真っ直ぐに見つめていたのだ
「あ、あの時の姉ちゃんなのか?でもクーさんは?」
「私の事はどうでもいいの・・・私はあまりにも愚図で聞き分けの出来ない子供にいてもいられなくなっただけよ?」
「・・・愚図、ですか」
「あら、お気に召さなかったかしら?でもね・・・貴方達の評価は、シロエの評価でもあると私は捉えているのよ?」
「「・・・え?」」
『くずのは』の言葉に2人は目を開いて驚き、『くずのは』を見つめ返した・・・
「貴方達はシロエを『LVが低い』『実力がない』と言う理由でギルドの加入を拒否する程の器の小さな男だと思っているのよね?」
「「ッ!!!」」
2人は息を飲んだ
言われなければ気づかなかったとは言え、知らぬ間に自分達は、尊敬する人を勝手に不評していたのだ。シロエはそんな人ではないとは分かっているが・・・シロエにそんな評価をつけていた自分が悔しくなり、トウヤは刀を握る手に力が篭った・・・そしてミノリはあまりにも衝撃的な告白に涙を零しながら『くずのは』に更に胸の内を問うように伝えたのであった・・・
「・・・確かに私達はシロエさんに否定されるのを恐れて不評していました。でも・・・でも!自分の力!思いを!・・・信じられない私は何を信じて進めばいいんでしょうか!」
悲痛であった。
ミノリにとってシロエは恩師であり尊敬する人である。共に歩みたい、共に進みたい・・・そう思っている。でも、そんな自分がシロエの元にいていいのか、シロエの役にたっていけるのか?
自分の力を信じられずにずっと・・・この思いが心に引っかかっているのだ
『くずのは』は、ミノリの悲痛を聞いている間、ずっと目を閉じていたが聞き終えた後、クスっと笑い優しく語り始めた・・・
「シロエは損得で人を選ばないわよ?でもそうね・・・なら」
『くずのは』はミノリに近づき、そっと指で涙を拭きトウヤには聞こえないように耳元で囁いた・・・
「シロエを信じる貴女を信じなさい」
「・・・え?」
「
「クーさん///」
「どうしたんだ、ミノリ?」
「なんでもないわ!」
ミノリは恥ずかしくなって『くずのは』から勢いよく離れた、姉の奇行を不思議がったトウヤに言葉を掛けられるが触れられたくない話題なので素っ気なく返してしまったのだが、その行動が余計に羞恥心を生んでしまい、顔に熱が篭ってしまった。心を落ち着けながら手で顔を仰いでいく。・・・・そんな彼女を眺めて『くずのは』は笑みを深めた
「ふふふ、2人とも悩みは解決されたかしら?」
「はい!・・・俺が今までがんばれたのはシロエ兄ちゃんのおかげだ、今はまだ弱くて頼りないかもしれないけど強くなってシロエ兄ちゃんを助けていくんだ!」
「excellent ・・・強くなりなさい、トウヤ」
「はい!」
「・・・ミノリはどうかしら?」
「私はシロエさんについて行きます。・・・足手まといかも知れませんが、私はシロエさんを信じていますから」
「brilliant・・・いい女ね、ミノリ?」
「・・・はい」
トウヤは胸を張って、ミノリは少し恥ずかしそうにしながらもハッキリと『くずのは』に言葉として伝えたのだ
「成長、素晴らしい事だわ。・・・さて、大人しく待っていた、いえ、仲間をまっていたのかしら?・・・まぁいいわ、今日は機嫌も良いから私自ら
「「はい!」」
幼い2つの声が狐に答えるーーー
その声は、〈アキバの町〉に戻った時も加わり、異世界になってしまったかつての〈エルダー・テイル〉に、新しいギルドが誕生した。
――その名は〈記録の地平線〉。
アキバの街の外れの、古木に貫かれた廃ビルが、この小さな仲間達の産声を上げる住処だった。
◆
トウヤにミノリ。新しくメンバーを2人加わった〈記録の地平線〉-----
この夜は彼らにとって忘れられない『思い出』になるであろうーーー
そして、今回の黒幕である彼女は・・・・
「湯浴みでありんす~♪・・・ってなんでいるんでありんすか?」
メンバーが寝静まった頃合いを見計らい彼女自慢の檜風呂で入浴を楽しもうとしていた・・・・が、先客がいたのだ
「いやはや、今の時間帯は男性の入浴時間ですにゃ?くーち」
「そんな事、関係ありんせん!わっちはわっちが入りたい時にはいりんす!」
先客・・・にゃん太が居るのにも拘らず湯に果実酒と二つのグラスを乗せたお盆を浮かべ入浴しようとする彼女
流石のにゃん太も彼女の行動は予想外であった・・・
「・・・くーち、恥じらいと言うものは知っていますかにゃ?」
「当たり前でありんすぇ。でもわっちには見られて恥ずかしい場所なんてありんせん!」
にゃん太.にドヤっと顔と身体を見せ付ける彼女に、にゃん太は苦笑いを零すしかなかっった・・・
2人並んで黙って湯に湯に浸かるのも可笑しいと彼女は自前した果実酒をにゃん太に注ぐ・・・
にゃん太も黙って受け取り、一口、口に含んだ後、彼女の髪留めに目が止まった
「おやおや、『帰蝶の髪留め』ですかにゃ?」
「今日、双子ちゃんとクエストに行った時に『お礼』でもらいんした。・・・わっちの宝でありんす♪」
大事そうに撫でながら笑みを浮かべる彼女の顔はとても優しく・・・そして、楽しそうであった
「にゃにゃにゃ、良かったですにゃ・・・しかし、くーち。今回の件の発案は『くずのは』ですかにゃ?」
「・・・それが聞きたかったから残っていたんでありすね?・・・発案はわっちで説得とかメンドクサイ事は『くずのは』でありんす」
「そうですかにゃ・・・些か強引だった気がしますにゃ」
苦笑いを零しながらも彼女は空になったグラスに果実酒を注ぎ直し言葉を紡ぐ・・・
「あの2人は見ていて楽しぃでありんすぇ。 あの2人だけじゃない・・・セラララもマリーも見ていて一緒に居て楽しぃと思いんす 。・・・こなたの世界でしか生きらりんせん
「生きられないとは物騒ですにゃ~・・・しかし、今は楽しい筈ですにゃ?」
「・・・わっち は今も昔も楽しんでいんすよ?でもまぁ~不謹慎だとは思いんすが・・・」
伸ばしていた足を組み、優雅にグラスを持ち上げる彼女・・・
「〈大災害〉後、
「にゃにゃにゃ、それはそうですかにゃ」
にゃん太と軽くグラスを当て2人揃って軽く笑みを零した・・・
「猫の言葉を借りるなら私達は老い耄れ・・・シロエもそうだけど若者の成長は
「おや?お認めになりましたかにゃ?」
「借りるって言ったわよ?・・・私はまだ老い耄れていないわ」
先程まで笑みを浮かべていた顔は反転し不機嫌そうな顔へと変化した
その後、『くずのは』を宥めながらも3人で果実酒一本分、ゆっくりと入浴を楽しんだのであった・・・
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~風呂場で~
「それはそうと、猫?」
「はいですにゃ」
「クーは混浴を許したけど、私は許した覚えはないわよ?」
「・・・なにがお望みですかにゃ」
「そうね・・・林檎パイを一週間ね」
「・・・・・はいにゃ」
~風呂場でパート2~NG
「・・・うちの風呂は何時から混浴になったんだ?」
何も知らずに用を足しにきたギルドマスターに目撃される
ミノリとの入浴だと思った方は感想に『げせぬ!』とw