機動戦士ガンダムSEED 永遠に飛翔する螺旋の翼   作:ファルクラム

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PHASE-23「偏愛の影」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、アンブレアス・グルックは、とある客の来訪を受けていた。

 

 もっとも、プラントの代表である彼にとって、客が来る事自体は珍しくない。自身が政権首座を務めるグルック派の閣僚や、政財界の重鎮など、スケジュールは5年先まで分刻みで埋まっている。

 

 それでも敢えて印象に残せるのは、今日の客が、あまりにも「奇妙」だったせいだろう。

 

 1人は、大柄な体格をした男性。年齢は50近く見える。顔の下半分を覆う濃い髭と、その下から見える爛々と輝く双眸が特徴的である。

 

 もう1人の方は、更に奇妙である。

 

 フード付きの外套で体をすっぽり覆い、顔の上半分を銀色の仮面で覆っている為、その表情を伺う事はできない。唯一、口元だけは見えている為、それで女性だと判るくらいである。

 

 2人に共通して言えるのは、両者とも、何かしら自身の中で悟った物を持つ「聖者」の如く、泰然自若とした態度を崩そうとしない、と言う事だった。

 

 遅れて部屋に入ってきたグルックは、2人を一瞥してから切り出した。

 

「それで、本日はどのような用件ですかな? ユニウス教団の幹部であるお二人が、わざわざ、お越しいただくとは」

 

 欧州全域を事実上の支配下としているユニウス教団の事は無論、グルックも知っている。

 

 正直なところグルックとしては、欧州に対する介入に関しては出遅れた事を認めざるを得ない。

 

 カーディナル戦役後、共和連合と地球連合との間で協定が締結され、欧州は完全非武装地帯に設定されていたのだが、そのせいで双方とも、大規模な兵力を常駐する事ができなかったのだ。

 

 それでも、最低限の監視部隊を置く必要があった為、ザフト軍はジブラルタルを、地球軍はスエズとウラル要塞基地を維持し続けていたのだが、その戦力を持って欧州を武力支配する事は、双方とも禁じられていた。

 

 その間隙を突いたのがユニウス教団であった。

 

 身動きが取れない2大勢力を尻目に、ユニウス教団はここ数年、欧州で爆発的に信徒の数を増やし、一大勢力にまでなり上がっている。

 

 相手が国家や軍事組織であるなら、共和連合も地球連合もその動きを掣肘する事に躍起になっただろう。しかし、相手が個人の自由である宗教となると、如何ともしがたく、膨張するユニウス教団の様子を、ただ指を咥えてい見ているしかない。

 

 今や欧州は、事実上、ユニウス教団の支配地域と言っても過言ではなかった。

 

 今、グルックの目の前にいる2人は、そのユニウス教団において象徴とも言うべき人物たちである。

 

 男の方は、教団の信徒全てを統括する総代教主のアーガス。女は「聖女」と呼ばれ、信徒達からあがめられる存在だった。

 

「議長閣下の御活躍は、かねがね伺っております。その手腕たるや、彼のギルバート・デュランダルにも勝る物があるとか」

「お褒めにあずかり光栄ですな」

 

 アーガスの言葉に対して、グルックは微笑で応じる。しかし、その目は一切笑っていない。つまらない世辞は聞き飽きているし、何より、この時期にユニウス教団のトップ2人がわざわざ会いに来たと言う事に、グルックとしても不穏な物を感じていたのだ。

 

 目の前の2人が、何の用があってわざわざプラントまでやって来たのか、グルックはその真意を探ろうとしているのだ。

 

 それはアーガスの方でもわかっているのだろう。髭の下の目をスッと細めて、再び口を開いた。

 

「聞けば、先日、お国の軍が北米にて大敗を喫したとか?」

 

 いきなり大上段から切り出して来たものである。

 

 確かに、先の第1次フロリダ会戦において、ザフト軍を中心とした共和連合軍が大敗を喫したのは事実だったが、まさか宗教関係者からその話がいきなりであるとは思っていなかった。

 

 グルックは、内心で苦笑しながら続きを待つ。

 

「もし、宜しければ、我が教団としてもザフト軍のお手伝いをできれば、と思いまして参上した次第です」

「いや、教主殿」

 

 グルックはそこまで聞くと、アーガスの言葉を遮って口を開いた。

 

「折角ですが、布教については間に合っておりまして。我が軍としても、まだ神への信仰に縋って敵を倒そうなどと大それたことを考えてはおりません」

 

 グルックとしては、アーガスがザフト軍へのユニウス教団の教義布教を推し進めようとしている事を疑ったのだ。

 

 しかし、そんなグルックに対して、アーガスは柔らかい微笑で応じた。

 

「いや、議長閣下は、なかなかセンスの良い話術をお持ちのようだ」

 

 皮肉にも全く動じた様子はなく、アーガスは更に身を乗り出した。

 

「ご安心を、閣下。我が教団といたしましても、そのような野暮をするつもりはありません。しかし、より重要な意味で、議長閣下をお助けできるものと確信しております」

「ほう・・・・・・・・・・・・」

 

 そこでようやく、グルックは興味が湧いたようにアーガス達を改めて見直す。どうやら、何かしら有益な取引ができるかもしれない、と期待していた。

 

 グルックの気を引く事に成功したと確信したのだろう。アーガスも更に確信に入った。

 

「来たる、新たなる攻勢の折には、我が教団の戦力を戦列にお加えいただきたい。我が精鋭であるならば、必ずや閣下にもご満足いただける活躍ができるものと確信しております」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 アーガスの言葉に、グルックは沈黙を返した。

 

 ユニウス教団は宗教組織としての傍らで、聊か過剰とも思える防衛戦力を保持している事は周知の事実である。

 

 確かに、グルックは北米解放軍の支配領域に対する再度の進行を画策している。オーブ軍の北米派兵と合わせて、ザフト軍の大規模増援部隊の編成も進めていた。

 

 更に、別の作戦も同時並行で進めている。これらの作戦が成功すれば、プラントの支配体制はより強固な物となるだろう。

 

 しかし、その為には、現状の戦力だけでは不安があるのも事実である。

 

 そこに来て、教団の持つ戦力は確かに魅力である。彼等が味方してくれれば、戦力の不足を補って尚、お釣りがくると言う物だ。

 

 しかし、

 

「意外ですな。あなた達のような宗教関係者が、好んで紛争に介入するなどと」

「戦争を終わらせ、平和な世を作りたいと言う思いは誰でも共有するところです。まして、相手はテロリスト。社会の敵であり、許されざる者達です。鉄槌を下す事に躊躇いを覚えるべきではない、と言う思いは、私どものような卑賎の身であったとしても共通する思いです」

 

 断固たる信念を騙るように、アーガスは言い放つ。

 

 その根底で何を考えているかはわからない。

 

 と、そこで、それまで黙っていた聖女が、口を開いた。

 

「・・・・・・・・・・・・全ては、唯一神の導きあるがままに」

 

 グルックは、初めて口を開いた聖女を、意外な面持ちで眺めいる。

 

 良く通る、美しい声音だ。まるで耳を包み込むような心地よさが湧いてくる。

 

 その声を聞きながら、グルックは自身の頭の内で、どのような方策を取るべきか計算を進めて行った。

 

 

 

 

 

 オーブ軍による旧JOSH―A奇襲作戦は、戦略的にはオーブ軍の勝利と言う形で終わった。

 

 北米統一戦線の支配下にあった旧JOSH―A跡の拠点は、徹底的な爆撃によって破壊され、基地機能を喪失。更に駐留機動戦力も大半を破壊され、在伯艦船の多くも撃沈された。

 

 これにより、元々少なかった北米統一戦線の戦力はさらに低下。その勢力圏は、大きく北へと後退する事となった。

 

 一方、勝利したオーブ軍所属の大和隊も、無傷とはいかなかった。

 

 戦闘序盤こそ一方的な戦闘を展開した大和隊だったが、後半には北米統一戦線最強戦力である、スパイラルデスティニーとストームアーテルが戦線に介入したのだ。

 

 これにより共和連合軍はイザヨイ2機を喪失、更には隊長機であるリアディス・アインも撃墜された。

 

 モビルスーツ隊隊長が撃墜された事のショックは大きい。

 

 リィス自身は辛うじて救出され一命は取り留めたものの、重傷を負い、未だに意識が戻ってはいなかった。

 

 重苦しい空気が大和を包み込む中、ヒカルは医務室のベッドの傍らに腰掛け、姉の寝顔を眺めていた。

 

 人口呼吸器を取り付けられ、頭に包帯を巻いたリィスは静かな寝息を立てている。

 

 寝顔自体は安定した物で、特に苦しがっている様子も無い。

 

 しかし、自分のミスで姉に怪我をさせてしまった事は、ヒカルの心に重くのしかかっていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 握った拳を、ヒカルは力無い瞳で見つめている。

 

 あの時、レミリアを撃つ事を躊躇った自分。そのせいで、大切な姉、リィスが重傷を負う事態になってしまった。

 

 いわば、ヒカルが間接的に、リィスに傷を負わせたような物である。

 

 では、逆だったら良かったか? リィスを助ける為に、レミリアを殺せばよかったか?

 

「・・・・・・・・・・・・いや」

 

 それも絶対に違う。

 

 自分がレミリアを撃つ、などと言う事態を、ヒカルはまだ容認できずにいた。

 

 結局、自分の中途半端な態度が、先のような悲劇を生んだのではないか、と思ってしまう。

 

 医務室の扉が開き人が入ってくる気配があったのは、その時だった。

 

「あ、ヒカル君。また来てたんだ」

 

 アラン・グラディスは部屋の中に入ると、ヒカルがいる事にもさして驚いた様子を見せず話しかけてきた。

 

 リィスが収容されて以降、アランは暇を見付けては見舞いに来てくれている。その為、ヒカルと顔を合わせる機会は多かった。

 

「ちゃんと休めてる? パイロットは体が資本なんだから、無理しちゃダメだよ」

「・・・・・・判ってます」

 

 アランの言葉に、ヒカルは低い声で応じた。

 

「けど・・・・・・・・・・・・」

 

 その瞳は、眠るリィスを苦しそうに見つめる。

 

 そんなヒカルに、アランは掛ける言葉が見つからない。

 

 姉を負傷させてしまったヒカルは、今は自分を責める事で自分を保てている状態である。

 

 そんなヒカルには、どんな言葉を掛けても慰めにはならないと感じていた。

 

「リィス姉と、俺、実は血が繋がってないんです」

「え・・・・・・・・・・・・」

 

 ヒカルがポツリと漏らした言葉に、アランは驚愕の思いに捕らわれた。

 

 そんなアランを横目に見ながら、ヒカルは続ける。

 

「リィス姉は小さい頃、うちの両親に拾われて、それで養子縁組したんだって聞かされました。だから、俺達は血のつながらない姉弟なんです」

 

 ヒカルの言葉を、アランは意外そうな面持ちで聞いていた。

 

 初めて会った時から、ちょっと歳の離れた姉弟だと思ってはいたが、まさかそのような事情があったとは露とも思わなかった。

 

「両親が事故で死んでから、リィス姉は俺を必死で育ててくれた。そのリィス姉がこんな事になってしまって・・・・・・・・・・・・」

 

 その後は、言葉が続かなかった。

 

 自分がレミリアとの戦いを躊躇ってしまったばかりに、リィスに重傷を負わせてしまった事が、ヒカルの心に重くのしかかっていた。

 

「・・・・・・確かに、ヒビキ三佐がこんな事になったのは、君にも責任があったかも知れないね」

 

 ヒカルの言葉を聞き終えると、アランは穏やかな口調で口を開いた。

 

「でも、君のお姉さんは、きっと君の事を責めたりはしないと思うよ。それどころか、安心しているんじゃないかな?」

「・・・・・・え?」

 

 アランの言葉に、ヒカルはうつむいていた顔を上げる。

 

 リィスがなぜ、今の状況で安心しているのか? それがヒカルには理解できなかった。

 

「だって、ヒビキ三佐は君を守る為に怪我をしたんでしょ。なら、彼女はちゃんと、自分の思いをかなえる事ができたんだ。満足していないはずがないよ」

 

 これがもし、リィスの救援が間に合わず、逆にヒカルが負傷していたとしたら、リィスはひどい後悔に苛まれていただろう。

 

 だからリィスはきっと今、満足しているはずだ。大切な弟を自らの手で守る事ができて。

 

 その時、医務室のドアが勢い良く開かれて、小柄な人影が飛び込んできた。

 

「あ、ヒカル、やっぱりここにいた」

「カノン?」

 

 飛び込んできた年下の幼馴染に、思わず目を丸くするヒカル。

 

 そんなヒカルに構わず、カノンは駆け寄って来た。

 

「ほら、早く来なよ。ブリーフィング始まっちゃうよ!!」

「お、おいッ!?」

 

 そう言うと、カノンは強引にヒカルの腕を取って立たせる。

 

 間もなく大和隊は、北米統一戦線に対する第2弾攻撃を開始する事になる。その為の作戦説明が行われる時間だった。

 

 カノンに引っ張られていくヒカル。

 

 そんなヒカルに対して、笑顔で手を振りながら見送るアラン。

 

 対してヒカルもまた、苦笑にも似た笑みを返すのだった。

 

 2人が出て行ったのを見送ると、アランは改めてリィスに向き直った。

 

 静かに目を閉じて寝息を立てているリィス。

 

 人工呼吸器がなければ、まるで眠り姫のような美しさがある。

 

「・・・・・・・・・・・・早く、目を覚ましてくださいね。そうじゃないと、みんなが悲しみますから・・・・・・勿論、僕も」

 

 そう囁くと、アランはリィスの前髪を、そっと撫でた。

 

 

 

 

 

 ヒカルがブリーフィングルームに入ると、既に主だったメンバーは勢ぞろいしていた。ヒカルは一番最後である。

 

「遅いぞ」

「す、すみません」

 

 壇上で説明待ちをしているミシェルから叱責され、ヒカルは慌てて謝りながら、手招きしているレオスの隣の席に座る。

 

 後から入ってきたカノンは、ヒカルの更に隣へと腰を下ろした。

 

 2人が座るのを確認してから、ミシェルは説明に入った。

 

 リィスの負傷、戦線離脱により、モビルスーツ隊の指揮は次席指揮官のミシェルが継承する事になっていた。今回は、その初となるブリーフィングである。

 

「では、これより作戦の説明をする。俺達は先の戦いで北米統一戦線に対して、一定以上の打撃を与え、連中を大きく後退させる事に成功した。しかし、今さら言うまでも無く、我々の任務は本隊が北米に上陸するまで時間を稼ぐ事にある。その為、更なる攻勢が必要であると言う結論に達した」

 

 そう言うとミシェルは、傍らに座っているシュウジをチラッと見た。

 

 対してシュウジは、特に口を挟む事無く頷いて見せる。この場にあっては、全てミシェルに任せると言う事だった。

 

 現在、大和隊の他にも、オーブ軍所属の小規模機動部隊が複数、北米周辺に展開して活動を行っている。その目的は、本国で出撃の時を待っている、オーブ軍主力の動きを察知させないための攪乱行動に遭った。

 

「敵は現在、ここ」

 

 ミシェルは言いながら、指示棒でパネル状に投影された地図の一点を指す。場所的には丁度、旧JOSH-A跡の真北に位置している。距離的にもさほど離れていない事から、旧JOSH-Aは、この拠点を守る意味合いもあったのだろう。

 

「この場所にある拠点を防衛する為に、戦力を集中している」

「そこには何があるんですか?」

 

 イザヨイパイロットの1人が挙手して質問する。

 

 そこまでして北米統一戦線が守ろうとしているのだ。何か重要な拠点であると見て間違いは無い。

 

 ミシェルも、頷いて説明する。

 

「良い質問だ。ここには連中が保有する唯一のシャトル発着場がある。つまり、連中が持っている、唯一の宇宙への脱出経路だな。統一戦線は、この拠点を使用して宇宙にいる協力勢力と連絡を取り合っていたと思われる」

 

 確かに、それなら北米統一戦線が死力を尽くして守ろうとしている事も頷ける。言わば、彼等にとっての最重要拠点なのだから。

 

 では、今回の攻撃目標は、その拠点と言う事になるのだろうか?

 

「と、思うだろうが、ちょっと違うんだな」

 

 少しおどけたように言うミシェルの後を引き継ぐように、今まで黙っていたシュウジが口を開いた。

 

「今回、我々は敵の拠点に対して直接の攻撃は行わない。その代わり、連中が持つ後方支援能力を徹底的に破壊しようと思う」

 

 シュウジはそう言うと、地図の一点を指した。

 

「我々が目指すのは、この地点だ。ここを攻撃する事で、敵の継戦能力を破壊すると同時に、動揺を誘う。この場所には、敵拠点への物資補給の中継拠点があると言われている。ここを叩けば、北米統一戦線の継戦能力は一気に瓦解する事になる」

 

 現状、大和隊の戦力は、決して充実しているとは言い難い。

 

 だからこそ、シュウジは正面決戦を避けて、機動戦術で敵をかく乱する作戦に出たのだ。

 

「ヒビキ三尉」

「は、はいッ」

 

 突然、シュウジから声を掛けられ、ヒカルは上ずった返事を返す。

 

「敵はまた、スパイラルデスティニーを繰り出してくる可能性が高い。その相手を君に託したいが、できるか?」

 

 正直、今のヒカルではレミリアの相手は荷が重い。実力的にも、メンタル的にも。

 

 しかしリィスが倒れ、ミシェルが部隊の指揮を行わなくてはならない関係上、レミリアの相手を出来るのはヒカル以外にはありえなかった。

 

 今度こそ、躊躇う事は許されない。たとえ、レミリアを討つ事になったとしても。

 

「・・・・・・・・・・・・やります」

 

 決意を込めた眦で、ヒカルは頷きを返す。

 

 その横顔を、隣に座ったカノンは、心配そうな眼差しで眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 JOSH-A跡の戦いにおける痛手、という意味では、北米統一戦線の受けた傷は、大和隊のそれよりも大きかったと言える。

 

 ただでさえ少ない戦力と、貴重な人材の喪失。

 

 特に、主力機であるジェガンと、それを自在に操るパイロットを多数失った事は大きかった。

 

 今回の敗北により、北米統一戦線は全戦力の実に2割に当たる戦力を喪失。更に重要拠点であるJOSH-A跡を失った事で、南部に対する警戒ラインが大きく北側に後退する事となった。

 

 北米解放軍と違い、潤沢な後方支援システムを持たない北米統一戦線にとって、今回の敗北は壊滅的と言っても良かった。

 

 戦力の補充は、すぐには叶わない。

 

 しかし、敵はすぐにもやってきそうな状況である。

 

 北米統一戦線は、なけなしの戦力をかき集めて防衛戦の再構築を行わなくてはならない状況であった。

 

 そのような中、統一戦線における象徴とも言うべき少女は、暗く沈みこんでいた。

 

 レミリアはベッドに座ったまま、床をじっと眺めている。

 

 壁際のプレイヤーからは、お気に入りのラクス・クラインの曲が流れてきている。

 

 しかし大好きな曲なのに、レミリアは今、それを聞く余裕すら無かった。

 

 何をするでもなく、ただ落ち込んでいくだけの気分は、男装の少女を絡め取って引きずり込んでいた。

 

 思い出すのは、先の戦いの終盤。

 

 ヒカルの駆るセレスティにとどめを刺そうとした瞬間、彼を守るようにして立ちふさがった機体。

 

 敵の隊長機と思われる青い機体は、流石と言うべきか、レミリアに迫るほどの実力を発揮して追いこんできた。

 

 スパイラルデスティニーに乗って以来だろう。1対1であそこまで追い込まれたのは。

 

 しかし、レミリアの最後の一撃が、機体を切り裂いた直後だった。

 

 ヒカルの悲痛な叫びが叩きつけられたのは。

 

『リィス姉!!』

 

 その叫びに反応し、レミリアは腕を止めたが、その時にはもう手遅れだった。

 

 敵の隊長機はレミリアが見ている目の前で爆散してしまった。

 

 中のパイロットが、生きているとは思えなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・あれが・・・・・・ヒカルのお姉さん」

 

 何度か写真で見た事がある女性。

 

 美人で、とても優しそうな雰囲気を持っている人物だったのを覚えている。

 

 そんな人物を、レミリアはその手に掛けてしまった。

 

「ボクが・・・・・・ヒカルのお姉さんを・・・・・・殺した・・・・・・・・・・・・」

 

 事実は、否応なく少女に圧し掛かる。

 

 それはもう、自分とヒカルがかつての関係には戻れない事を意味していた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 分かっていた。

 

 初めから分かっていたのだ。

 

 自分とヒカルは、住む世界が違いすぎる。

 

 ヒカルは、その名が示す通り光り輝く道を行く存在。それに対して自分が進むべきは、暗く重い、闇の道だ。

 

 互いに交わる時は、思いではなく剣で交わらなくてはならない。

 

 だと言うに・・・・・・

 

「・・・・・・何で、こんな事になっちゃったんだろう?」

 

 問いかけは、答える者がないまま虚空へと消えて行く。

 

 もはや後戻りは許されない。

 

 レミリアとヒカルは、対決を避けられないところまで、とうとう来てしまったのだ。

 

 その時、部屋のドアが開く気配を感じ、顔を上げた。

 

「まだ、落ち込んでいるのね」

 

 優しく声を掛けてきたのは、姉のイリアだった。

 

 イリアはレミリアの傍らに腰を下ろすと、そっと妹の頭を胸に抱く。

 

「可哀そうに。とっても悲しい思いをしてしまったのね」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 自分には無限とも思える優しさを向けてくれる姉。

 

 時に、過保護すぎると非難を浴びながらも、イリアはレミリアを守る行為をやめようとはしなかった。その様はまるで、たとえ自分の命が失われようとも、レミリアだけは守り通そうとしているかのようだった。

 

 北米という過酷な大地で、今日までレミリアが過ごしてこれたのは、間違いなくイリアのおかげと言って良かった。

 

「でも、安心して。あなたには私が付いていてあげるから。私は決して、あなたを裏切ったりはしないから」

「お姉ちゃん・・・・・・・・・・・・」

「あなたは、私の傍にいれば良いの。私があなたを守ってあげる。どんな邪悪な存在からも」

 

 そう言うと、イリアはレミリアを抱く腕を強くする。

 

 まるで、そうしていないと妹が、どこか遠くへ行ってしまう。そう思っているかのようだ。

 

「・・・・・・ありがとう、お姉ちゃん」

 

 まどろみに満ちた声で呟くと、レミリアは急速に自分の意識が遠のいていくのが分かる。

 

 プレイヤーからは、相変わらずラクスの歌声が聞こえてくる。

 

 その柔らかく澄んだ歌声にくるまれながら、傷心の少女は眠りへと落ちて行った。

 

 

 

 

 

 レミリアを寝かしつけたイリアは、そっと扉を閉じて部屋を出た。

 

 傷ついた妹を見るのは、イリアとしても辛かった。

 

 レミリアはイリアにとっての全てであり、絶対に失ってはならない至宝と言っても良い。

 

 そのレミリアを傷付けた存在。

 

 オーブ軍の、セレスティという機体を操るパイロット。

 

 許せなかった。絶対に。

 

 暗い炎が、イリアの双眸に宿る。

 

「あの娘を傷付ける者は、例え誰であろうと、私が殺す・・・・・・・・・・・・」

 

 それこそがイリアの使命であり、存在理由だった。

 

 自分にはレミリア1人がいてくれればそれで良いし、レミリアにも自分だけがいれば他は何もいらないのだから。

 

 そんな事を考えながら歩いていると、廊下の向こう側で誰かが立っているのが見えた。

 

「・・・・・・アステル?」

 

 妹の幼馴染で、レミリアと並んでエースパイロットを務める少年は、何故か鋭い瞳をイリアに投げかけてきていた。

 

 そんなアステルの様子を不審に思ったイリアが、何事か語りかけようとした時、アステルの方から口を開いてきた。

 

「お前の過保護は今に始まった訳じゃない事は知っていたが、流石に度が過ぎると思うんだが?」

 

 誰に対して不遜な態度を崩さないアステルの態度には、もはや慣れた物である為、その件に関して咎める気はない。

 

 だが、発言の内容に関して言えば、イリアとしても看過しかねる物があった。

 

「・・・・・・別に、姉がいも・・・・・・弟の心配をするのが、何か悪い事なの?」

 

 対外的には、レミリアはイリアの弟と言う事になっている為、慌てて言い直す。アステルはレミリアの秘密を知っているが、どこでだれが効いているか判らない以上、油断はできなかった。

 

 確かに、その主張の筋は通っているように思える。が、しかし、

 

「悪いとは言わん。だが、少々目に余るのも事実だ」

 

 言ってから、アステルはスッと目を細めてイリアを見る。

 

「イリア、お前は何を恐れている?」

「恐れるって・・・・・・別に・・・・・・」

 

 否定しようとするイリアだが、その声にかぶせるようにアステルは続けた。

 

「お前の態度は、何かに怯えて逃げているように、俺には見えるんだが?」

 

 鋭い眼差しが、イリアを射抜くように向けられる。

 

 それに対して、イリアは逃げるように目を逸らす。

 

「あなたの勘違いよ。変なこと言わないでくれる」

 

 そう言って、足早に去って行くイリア。

 

 その背中を、アステルは無言のまま睨みつける。

 

 その時だった。

 

 けたたましい警報が、基地中に鳴り響いた。

 

 

 

 

 

3

 

 

 

 

 

 先のJOSH-A跡での戦いに比べて、抵抗は非常に散発的であった。

 

 ミシェルのリアディス・ツヴァイに率いられたオーブ軍大和隊は、アンカレッジ郊外にある基地に攻撃を仕掛けていた。

 

 深紅の装甲を持つリアディスを先頭に、複数のイザヨイが基地上空へと突入すると、翼を翻しながら次々とミサイルや爆弾を投下、基地施設を破壊していく。

 

 その間にも、数期のジェガンが現れて、イザヨイに対して砲火を撃ち上げてくる。

 

 しかし、統一戦線側の反撃は如何にも散発的であり心細い。

 

 シャトル発着基地に戦力の大半を終結させてしまった統一戦線は、その他の基地には必要最低限の戦力しか配備できなくなっているのだ。

 

 大和隊は、その隙を突いた形である。

 

「今さら出て来たって!!」

 

 ミシェルはジェガン1機をビームライフルで撃ち抜くと、更に1機を対艦刀で斬り捨てた。

 

 ジェガンは確かに、北米統一戦線の主力機であり、量産型としては最高クラスの水準を誇っているが、しかし、オーブ軍でも有数の実力を持つミシェルが相手では分が悪すぎた。

 

 ジェガン2機が上げる爆炎によって、基地を覆う炎は更に大きさを増すのが分かる。

 

 この大和隊の攻撃を、北米統一戦線は完全に予想していなかった。

 

 攻撃開始から僅か10分後。アンカレジ基地に、稼働可能な統一戦線側の戦力は残されていなかった。

 

 そのまま攻撃を終了し、帰投に移ろうとした時だった。

 

《隊長ッ 東より急速接近する熱紋を感知ッ 恐らくデスティニーとストームと思われます!! その後方からも熱源複数!!》

 

 部下からの報告で、緊張が走る。

 

 予想はしていた事だ。

 

 こちらが基地を攻撃すれば、敵は救援の為に部隊を差し向けてくる。その為に部隊を迅速に移動させる事は必要だが、それ以外にも手は打ってある。

 

「ヒカル、カノン、頼むぞ!!」

《《了解!!》》

 

 ミシェルの声に、年少組2人は鋭く元気な声で返事を返した。

 

 

 

 

 

「してやられたか」

 

 エールストライカー装備のジェガンを駆りながら、クルトは臍を噛んでいた。

 

 シャトル発着基地の防衛を目指して戦力を集中させていた北米統一戦線だったが、その事が完全に裏目に出ていた。

 

 オーブ軍は持ち前の機動力を活かして遊撃戦を展開、もっとも防備が薄くなっているアンカレッジへと強襲を掛けてきたのだ。

 

 慌てて救援に駆けつけて見たものの、既に基地は壊滅。守備隊とも連絡が取れない有様である。

 

 ここに来て、小規模組織の弱点が露呈した感じである。

 

 北米統一戦線の戦力は少数であり、守りに入った場合、全部の拠点に充分な戦力を回す事ができない。

 

 更に航空航行が可能な戦艦を保有していない為、陸上での移動はトラックか、もしくは機動兵器が自ら飛んでいく以外に無い。

 

 必然的に、戦力の迅速な移動には無理がある。

 

 対してオーブ軍は戦艦大和を有している為、迅速な部隊移動が可能となる。その差が完全に表れた戦いだった。

 

「とにかく急ぐぞ。たとえ僅かでも、生き残ってる連中を救うんだ!!」

 

 クルトはそう言って、ジェガンのスラスターを全開まで吹かした。

 

 次の瞬間、

 

 突如、飛来した複数のビームとミサイルが、後続するジェガンの内、3機が吹き飛ばされた。

 

「何ッ!?」

 

 目を剥くクルト。

 

 向けた視線の先には、全火力を展開しているリアディス・ドライの姿があった。

 

 更に1機のジェガンが、砲撃を浴びて損傷するのが見える。

 

「クソッ」

 

 味方がやられる光景を見て舌を打つクルト。

 

 迂闊だった。オーブ軍は統一戦線がアンカレッジ救援に動く事を見越して網を張っていたのだ。その罠の中に、クルト達はまんまと飛び込んでしまった形である。

 

 更に、クルト達の上空に8枚の蒼翼が舞った。

 

 セレスティである。ヒカルもミシェルの命令を受け、接近する北米統一戦線を迎え撃つべく待ち構えていたのだ。

 

「喰らえ!!」

 

 ヒカルはS装備のセレスティを急降下させると、両手で把持したティルフィング対艦刀を一閃、退避に移ろうとしていたジェガンを斬り捨てる。

 

「こいつッ!!」

 

 大剣を構えるセレスティに対し、とっさにビームライフルを構えて放つ、クルトのジェガン。

 

 対してヒカルは、ティルフィングを右手で構えながら、機体を地表すれすれまで急降下、向かってくる火線を回避する。

 

 それを追って、距離を詰めるクルト。

 

 しかし、ジェガンが放つビームはセレスティを捉える事は無い。

 

 パイロットとしてはまだ未熟なヒカルだが、それでも成長速度は凄まじく、既にエース級相手でもある程度戦う事ができるようになっている。

 

 クルトの砲撃は、高機動を発揮するセレスティを全く捉えられなかった。

 

「このッ ならば!!」

 

 ビームサーベルを抜き放って斬り掛かるクルト。

 

 対抗するように、ヒカルもティルフィングを振り翳す。

 

「させるかよ!!」

 

 交差する互いの剣閃。

 

 斬り込む速度は、

 

 ヒカルの方が早かった。

 

 振り下ろされた大剣の一閃が、ジェガンの右腕を斬り飛ばす。

 

「なッ!?」

 

 目を剥くクルト。

 

 その一瞬の隙に、ヒカルはシールドを投げ捨て、セレスティの左手でビームサーベルを抜刀、逆手に持って斬り上げる。

 

 その一撃が、ジェガンの左腕を斬り飛ばした。

 

 更にトドメの一撃を。

 

 そう思った次の瞬間、

 

 強烈な閃光が、セレスティに襲い掛かって来た。

 

「チィッ!?」

 

 舌打ちするヒカル。

 

 同時に攻撃を諦めて、回避行動を選択した。

 

 何が来たかは、考えるまでも無い。

 

 蒼穹をバックに、深紅の翼を広げた美しい機体が向かってくるのが見える。

 

「来たか、レミリア!!」

 

 言い放つと、腕を失って戦闘力を喪失したクルトのジェガンを蹴り飛ばし、ヒカルはスパイラルデスティニーへと向き直る。

 

 レミリアが強敵なのは今さら語るまでも無い。彼女が来たのなら、他の敵に構っている暇はなかった。

 

 一方のレミリアも、自分に向き直るセレスティの姿を睨みつけていた。

 

「・・・・・・・・・・・・ヒカル!!」

 

 既に、互いに引けない場所にいる事は判っている。

 

 故に、少年と少女は、剣を向け合う事を、もはや躊躇う事は無かった。

 

「ウオォォォォォォ!!」

 

 セレスティの持ったティルフィングを振り翳すヒカル。

 

 対抗するように、レミリアはスパイラルデスティニーの腰からビームサーベル2本を抜いて構える。

 

 ミストルティンは先の戦闘で喪失し、補充もままならない状況である為、今回は装備しない状態での出撃となっていた。

 

 剣閃が交錯する。

 

 スパイラルデスティニーの双剣が軌跡を描き、セレスティの大剣が豪風を撒いて打ち下ろされる。

 

 両者の剣は、しかし互いを捉える事無く吹き抜ける。

 

 すれ違う両者。

 

 カメラ越しに、ヒカルとレミリアは視線を交錯させる。

 

 先に体勢を立て直したのは、レミリアだった。

 

「反撃の隙は与えない!!」

 

 8基のアサルトドラグーンを射出。ティルフィングを構え直そうとしているセレスティを包囲するように機動させる。

 

 対して、

 

「流石に、読めるっての!!」

 

 ヒカルは包囲網が完成する前に、セレスティのスラスターを吹かして強引に接近を図る。

 

 慌てたようにドラグーンが砲撃を仕掛けるが、セレスティの動きの前に目算が外れ、明後日の方向にビームを吐き出すにとどまる。

 

 しかし、

 

「それくらいなら!!」

 

 レミリアも負けていない。

 

 ビームライフル、3連装バラエーナ・プラズマ収束砲、クスィフィアス改連装レールガンを展開、12連装フルバーストを、正面から接近するセレスティに叩き付ける。

 

 対してヒカルは、空中で跳ね上がるようにして機体を上昇させ、頭上から斬り込める位置にセレスティを誘導した。

 

「これでッ!!」

「まだ!!」

 

 上空からティルフィングを振り翳して迫るセレスティに対し、レミリアも再びビームサーベルを抜いて応じる。

 

 今度は、上空を押さえている分、セレスティの方が斬り込むのは早かった。

 

 振り下ろされる大剣の刃を見据え、レミリアは舌打ちする。

 

 とっさに回避は不可能と判断し、スパイラルデスティニーのビームシールドを展開。セレスティの刃を受け止める。

 

 一瞬の拮抗。

 

 飛び散る火花の中、

 

 衝撃を殺しきれなかったスパイラルデスティニーは、大きく吹き飛ばされた。

 

「クゥッ!?」

 

 体勢を崩したスパイラルデスティニー。

 

 その姿を見て、ヒカルは勝負を掛ける好機だと悟る。

 

「これで、とどめだ!!」

 

 レミリアは機体の制御で手一杯であり、反撃の余裕はないはず。

 

 スラスターを破壊して、スパイラルデスティニーの機動力を封じる。そうすれば、被害は最小限にとどめられるかもしれない。

 

 このタイミングで、今の自分ならそれができるとヒカルは確信していた。

 

 レミリアを殺さずに制圧できるかもしれない、千載一遇のチャンス。

 

 そこに全てを賭けるべく、ヒカルはティルフィングを振り上げた。

 

 次の瞬間、

 

 横合いから射かけられた閃光を前に、ヒカルはとっさに蒼翼を羽ばたかせて回避せざるを得なかった。

 

「レミリアは、やらせない!!」

 

 今にもスパイラルデスティニーに斬り掛かろうとしていたセレスティに攻撃を仕掛けたのは、イリアのジェガンだった。

 

 構えたアグニを、上空のセレスティに向けて放たれる。

 

 しかし、当たらない。

 

 高速機動を発揮して回避したヒカルは、千載一遇の好機を不意にした存在を、鋭く睨みつける。

 

「こいつ、よくも!!」

 

 言い放つと、ウィンドエッジ・ビームブーメランを抜き放ち、ブーメランモードで投擲する。

 

 刃を発振し、旋回しながら飛翔するブーメラン。

 

 その姿を見て、とっさに回避しようとするイリア。

 

 しかし、その前に迫ってきたブーメランが、ジェガンの右足を付け根付近から切断してしまった。

 

「キャアァァァァァァ!?」

 

 イリアの悲鳴が、スピーカー越しに響き渡る。

 

 轟音を上げて、大地に倒れ伏すジェガン。

 

 その姿を見て、ヒカルは戻ってきたブーメランを受け取るとサーベルモードへと変更、ティルフィングと合わせて変則的な二刀流を構える。

 

 レミリアを制する事ができるチャンスをフイにされ、ヒカルとしても憤懣を覚えずにはいられない思いである。

 

 両手の剣を構え、倒れ伏したジェガンを睨み据えるヒカル。

 

 だが、ヒカルはレミリア機に対して、それ以上斬り込む事はできなかった。

 

 急降下しようとしたセレスティの前に、スパイラルデスティニーが立ちはだかったのだ。

 

「お姉ちゃんは、やらせない!!」

 

 周囲にドラグーンを展開したスパイラルデスティニーは、全火力を叩き付けるようにして、52連装フルバーストを展開、セレスティの接近を阻む。

 

「クソッ!?」

 

 対してヒカルは、とっさに8枚の蒼翼を翻し、機体を旋回させる。

 

 強烈なスパイラルデスティニーの全力攻撃が相手では、さしものヒカルも敵わず、後退する以外に無い。

 

 その隙に、レミリアは翼を翻して、イリアのジェガンを回収。追撃が来ないうちに撤退を開始する。

 

 その背中を、ヒカルはただ見送る事しかできなかった。

 

 

 

 

 

PHASE-23「偏愛の影」      終わり

 


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