君がいた物語   作:エヴリーヌ

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生徒1「新しく入ってきた赤土先生って昔の麻雀部のレジェンドがどうたらって人?」
生徒2「らしいね。なんでもあの変な前髪から出た光線で相手を操れるらしいよ」
生徒1「はは、確かにそりゃレジェンドだわ」
生徒3「SOA」



第3章
8話


 あの日――私が阿知賀に帰ってきて皆に再会し、麻雀部の顧問として再びインターハイに行くことを決意した日から既に数か月が経っていた。

 

 あれから私は望が通してくれた話通りに阿知賀の教師になった。いや、正確には講師の様なものだ。というのも今もプロになるのは諦めていないのと、ここ数年麻雀尽くしだったため教員試験を突破できるほどの知識がほとんど抜けて落ちていたので、とりあえず一年間の臨時職員という立場になったのだ。

 

 学校の方は当時の事もあって今でも私に目をかけてくれていたが、だからといっていつ辞めるかわからないあやふやな立場の人間を正式な職員にするのは難しいだろうし、そもそも学校側は私に勉強を教える立場でなく、麻雀を教える役目を期待しているのもあってこのような扱いとなったんだろう。

 とはいえ、こちらとしてはそちらの方がありがたいので渡りに船でもあったけどね。

 

 そんなわけで正式に阿知賀に勤めることが決まると福岡の会社も退社し、こちらへと戻ってくることとなった。

 ただ、一応向こうでの手続きや教師として準備することも多かった為、どうしても時間が取れなく、皆の指導をする暇が殆どなくて数回しか参加できなかったのは申し訳なかった。

 

 そして月日が経ち、四月上旬。麻雀部も顧問と部員五人となり、同好会からしっかりとした部活となった。

 今日から私も麻雀部顧問として正式に活動をすることとなり、今日からビシバシと鍛えていくつもりだったんだけど――

 

 

「そこで京太郎がさー『俺はそんな赤土を彼女にしたい!』って言ってきてもう……キャーッ!」

「あはは……」

「はぁ……」

「あっつぃ……」

「お、お姉ちゃんしっかり!?」

「ダメだこりゃ」

「ちょっちょ、なにさっ」

 

 

 始業式も終わり、全員が集まるのを見計らってから今後の予定を話すつもりだったんだけど、全員が揃うまで暇だったから京太郎との昔話をしていたのだけど、予想とは違ったみんなの反応が返ってきて慌てる。

 おかしいな~昔と違って皆もお年頃だし、結構食いついてくれると思ったんだけどなー。

 

 最初に聞きたいっていたのはそっちなのに……と、教え子たちの冷たい態度にいじけるが、誰に似たのか容赦のない憧がさらに追い打ちをかけてきた。

 

 

「そりゃ言ったけどこれで三回目よ! 話し終わらないから次回に持ち越してきたのに、な・ん・で! 毎回初めから繰り返すのよ!?」

「だってぇ……えへへ~」

「うがー!!!」

 

 

 前回、前々回も話している途中で時間が来てしまって解散となっていたので、それも踏まえて最初から話していたんだがどうやら駄目だったようだ。

 怒られているから少しは反省するべきなんだろうけど、昔の事を思い出すと思わず頬が緩んでしまう。だってあの時の京太郎格好良かったし。

 

 憧は怒っているけど、こっちとしても向こうじゃこんな話は出来なかったから折角だから最初から最後まで聞いてほしいし、誰かに話したくてたまらないのだ。

 望なんか『聞き飽きた』と一言バッサリ切って絶対聞いてくれないし……。

 

 

「ああ、もう玄! 色ボケ教師は放っておいて練習するわよ!」

「は、はいなのです!」

「さんせーい」

「ええ!? 今日こそ時間あるから最後まで話せるよ!」

「却下」

「ちょっときついかなーって……」

「灼と宥まで!?」

 

 

 ぷりぷりと怒り始めた憧が玄としずを連れて雀卓へ向かうとそれに連れだって灼と宥も一緒に行ってしまい、私一人がポツーンと残された。皆の容赦のない態度に「懐かしなー」とか「灼もすっかり馴染んでるなー」と考えもするが実に寂しい。

 そんな寂しさを紛らわすために携帯から京太郎の写真を取り出して眺める。デヘヘ……。

 

 

「ハルエも遊んでないで来なさい! 今日から顧問になるんだからしっかりしてよ!! 大会で優勝して須賀さんに会うんでしょ!!!」

 

 

 ……ハッ!そうだった!?思い出の中の京太郎に現を抜かしている場合じゃないんだ。

 そう思いつつも携帯から目を離せなかったが、なんとか気合を入れて誘惑を断ち切りポケットへとしまって憧たちの元へと向かう。

 

 

「さて……それじゃあ阿知賀麻雀部の記念すべき第一回目のブリーフィングを始めるか!」

「「おー!」」

「お、おー……」

「はぁ……」

「わずらわし……」

 

 

 元気よく号令をかける私に対し乗ってくれるしずと玄だが、後の三人は微妙な反応だ。

 ぐすん……近頃の若い子ってノリが悪いよ。

 

 

 

 この数か月、麻雀に関してはあまりできなかったが、一応皆とのコミュニケーションはある程度取れていた。

 昔からの繋がりがある四人はともかく、一度会っただけの灼とも仲良くなりたいと思ってこちらから名前呼びをし、向こうからも昔呼ばれた「ハルちゃん」という渾名で呼ばせてみたりもしたからか、灼も付き合いの短さの割に随分懐いてくれていると思う。

 

 しかしそれなりに仲良くはなれたつもりだけど、微妙に棘があるというか、呆れているというか、容赦ないというか、なんとなく望や京太郎が私を相手する時の反応近いものがあるなーと考える。もしかして私って駄目な大人とか思われてたりするのかな……。

 

 

「ハルちゃん、考え事してないで手を動かす」

「お、おお……オッケーオッケー!」

 

 

 黒板に向かってこれからの予定を書いていたんだけど、考えに集中していたらいつの間にか手が止まっていたみたいで、手伝ってくれていた灼に怒られてしまった。

 一応懐いてくれてるんだよね……これ?

 

 

「……よし、出来た。皆集まってー」

「「「「はーい」」」」

 

 

 最後まで書き終えて抜けている項目がないか確認し、向こうで牌譜を見ながら色々討論を交わしていた残りの四人を呼ぶ。うーん、なんかこの感じ懐かしいなー。

 かつてここで教えていた大学生時代を思い出す。

 

 

「さて、改めて今日から阿知賀麻雀部の顧問を務めることとなった赤土晴絵だ。これからよろしく!」

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」

「よし、それじゃあこれからの事だけど、まず大会までのスケジュールを考えたいと思う。本当だったらもっと早く決めたかったんだけど、私の日程が合わなくてごめんね」

「しょうないですよ。それに色々と宿題を出してもらってたからその分練習してきました!」

「そうかそれなら安心だね」

 

 

 私を励ますように元気づけてくれる玄に色んな意味でホッとする。

 人の事を言える立場ではないが、当時どこか脆い感じがした玄が部長と聞いて少し心配だったけどこれなら大丈夫そうだ。

 

 

「じゃあ、まず日程だけど県予選は六月上旬――今から二ヶ月後。まだ時間はあるように見えるけど前に話したからわかってると思うが、奈良には晩成があるから今の皆じゃ無理だね」

「そりゃそうね……だから私達もハルエを頼ったんだし」

「40年地区大会優勝を続けてきた晩成が一度だけ負けた相手……」

「ま、そこは任せときな」

 

 

 今一度目の前に存在する壁の高さを思い知ったのか緊張で顔を強張らせる皆を奮い立たせるように胸を叩いて力強く言う。

 

 正直な所、参考までに昨年の晩成の大会での牌譜を見させてもらったが、相手はかなりの物だった。10年前と変わらず奈良で最強と言っていい高校なだけあって、恐らく今年も去年と同レベル、もしくはそれ以上の相手が来ると考えればキツイものがあるだろう。

 

 だけど――少しの間だけど、ここにいる皆の今の実力を見せてもらった結果から言えば勝つのは不可能ではないと思う。

 全員今はまだ普通の雀士だ。しかし未だ磨かれてない原石でもあり、磨けば必ず光るだろう。だから私に出来ることはそれを輝かせるために力を注ぐことだ。

 

 

「ま、そんなわけでこれから二か月死にもの狂いで相手をしてあげるつもりだけど異論は?」

「ないです!」

 

 

 先ほどまでビビっていた様子はどこかに行ったのか元気よく答えるしずと同じように頷く四人。思った通り心配はないみたいだね。

 

 

「それじゃあ決意を新たにしたところで、今度は出場について決めようか」

「出場について?」

「個人戦と団体戦のこと。前に聞いた話だと団体戦は出るんだよね? だからそっちは良いとして、個人戦はどうする?」

「あー、そっかぁ」

「京太郎の事だけじゃなく和とも会うんだろ? それなら行ける確率は高い方がいいと思うけど」

「うーん……」

 

 

 なんだかんだでこちらの話も後回しにしてきたから今更だけど聞いてみるが、パッと見皆の反応はあまりよくない。どうやらそっちに考えがあまりいってなかったようだ。

 

 

「誰か出たい?」

「「「……」」」

「んー」

 

 

 皆を代表してしずが尋ねるけど玄と宥は無言で首を横に振り拒否し、灼は無反応だが多分出ないっぽいかな。ただ、憧だけ少し興味があるのか思案顔だ。

 宥は引っ込み思案だからみんなと一緒の団体戦ならともかく目立つ個人戦は出にくいだろう。玄はどちらかというと皆と一緒に行くことを大前提って感じがするし、灼もそこまで興味なさそうだ。

 

 

「憧はどうする? 出る?」

「ん…………いいや。今回は団体戦の方に集中したいし」

「なるね」

 

 

 なんだかんだ皆の事を考えているのが憧らしいね。

 どちらもルールは同じだけど、相手より点を稼を稼ぐ事だけを考える個人戦と違って団体戦は後の試合の事を考えて守りに入ったり、他も考えなければいけない点などで異なってくるから練習や目標を団体戦だけに集中できるならそれに越したことはない。

 

 あの時の私はそんなことも分かっていなかったけど、憧はしっかりとチームの事を考えて動いてくれているからある意味私よりもいい選手だろうね。

 

 

「おっけ! じゃあこのメンバーでインターハイの団体戦でエントリーする! 異論は?」

「ないです!」

「あ、出る順番はどうなるんですか……?」

 

 

 とりあえず決める内容はこんなもんかと思い締めに入ると、おずおずと手を挙げた宥から質問があった。

 そういえばそれについては話していなかったね。

 

 

「そこらへんは一応未定。まだ今の皆のスタイルを全部は見れてないしね」

「あ、そうですよね……わかりました」

「なんだったら宥が大将やってみる?」

「へうぇぇ~……」

 

 

 情けない声を上げる宥だが、私としては一応ありなんじゃないかと思っている。

 気弱に見えるが最上級生らしく宥はこれでも芯がしっかりしてるし、いざという時は踏ん張ってくれるはずだ。

 そしてオカルトも特定の牌を集めるという性質上それなりの打点が出せ、かつ、たとえ詳細が分かってもその特徴ゆえに対戦相手からすれば対策をしにくいし、逆に逆手にとって翻弄することも出来るだろう。

 

 とはいえ未だ確定ではないし、今からの二か月で他にわかることもあるかもしれないから保留かな。

 

 

「それじゃあ決めることも決めたし、これからはとにかく練習のデスマーチだ! しっかりついてくるんだよ!」

「よっしゃ! やるぞー!!!」

「おもち! ファイトー!!!」

「なにそれ?」

「ふふ」

「やかまし……」

 

 

 気合を入れる私とシズと玄に対し、楽しげに見てる宥と冷めた目で見ている憧と灼。

 うう……やっぱり乗り悪い。これがジェネレーションギャップか……。

 

 

 

 

 

「そういえばハルエの今の実力ってどうなの?」

「私の?」

 

 

 それからしばらく指導をして途中少しの休憩となった時、唐突に憧が疑問に思ったのか首をかしげながら聞いてきた。今の実力って言ってもなー。

 

 

「打っててわかんない?」

「そりゃあたし達よりも凄く強いってのはわかるわよ。だけどさっきからハルエってば所々こっちの実力図ろうとしてるのか手抜いてるし、上限がわからないのよ」

「へぇ、そこらへんはわかるんだー。しっかり成長してるじゃない」

「もう、子供じゃないんだから頭撫でないでよ」

 

 

 口では嫌がる憧だけどなんだかんだで振り払わない辺りやっぱ子供だなー。

 だけどうまく隠していたつもりなのにそこを見抜くなんて、中学も一人だけ本格的にやってただけあってそういったのは頭一つ抜けてるね。

 

 

「確か赤土さんって実業団ではエース張ってましたし、プロからのスカウトもあるんですよね?」

「一応ね」

「おお、という事はプロレベル」

 

 

 手を上げなから質問をしてくる玄に対し素直に答える。

 昔の付き合いではやりさんから誘いは来てるけど、流石のあの人でも公私はわけるはずだからちゃんと実力を買ってくれたんだと思う……多分。

 

 

「それで赤土先生はプロに行っても楽勝な感じですか?」

「楽勝は……うーん……」

 

 

 しずに言われて考えるが、多分大体のプロには勝てるんじゃないかと思う。

 途中五年近くのブランクはあるけど、京太郎が近くにいないという身を粉にして手に入れた実業団時代の経験もあるからね。

 ただ――

 

 

「小鍛治プロにも勝てる?」

「ほぐぅう!?」

「あ、赤土先生の顔が……」

 

 

 灼の鋭い指摘に座っていた椅子からずり落ち、頭の中にかつてのトラウマが色々と蘇る。

 そして宥、そういうことは言わないの。私だって女なんだから言われたくないこともあるの。

 

 

「ま、まぁ、多分今は勝てないかもしれないけどいずれは超えてみせるよ!」

「おおー!」

「赤土先生かっこいいのです!」

 

 

 教え子にかっこ悪い所は見せられないと無駄に虚勢を張ってみせる。

 別にあの人は悪くないんだけど、今もあの時のことで上手く打てないし、どうしても苦手意識があるんだよね……。

 

 

「まぁ、そっちは置いといて他のプロはどうなの? 今話題のルーキーの戒能プロとか」

「ん、まぁ勝てるかな」

 

 

 知り合いの名を出されて考えるが、まあ戒能プロもかなりのものだけどまだ若い子には負けないつもりだ…………自分で言ってて凹んできた。

 ただしそんな気分もそれも次の宥が出した人物の名前で吹き飛んだが。

 

 

「あ、それじゃあ横浜の三尋木プロはどうですか?」

「………………」

 

 

 なんとなしに宥の挙げた人物を思い浮かべる。あの人は……。

 

 

「ハルちゃん?」

「え……? ああ、いや……ちょっときついかな」

 

 

 ボーっとしていたのか心配げな顔をして灼がこちらを見ていたので、手を振りながらなんでもないよと言いながら素直に答える。

 私と違ってブランクもないし、日本代表も務めている人だから正直勝つのは難しいだろう。しかしそんな事よりも私の心の内には別の事がある。

 

 

「…………ハルエなんか隠してるでしょ?」

「え? いや、なんも隠してないし」

「うそね。さっきまでと全然反応が違ったわよ」

 

 

 長い付き合いの為、憧にはバレたみたいだけど平静を装い近くに置いてあったペットボトルへ手を伸ばす。

 流石に当時のあれを話すのは中々恥ずかしいしね。

 

 

「…………須賀さんがらみ?」

「!!? ごふっごはぁ…!?」

「うわぁ!?」

「タ、タオルタオル!」

 

 

 予想だにしなかった一言で咽て、口に含んできたお茶を正面に座っていたしずへとぶちまける。

 慌てた玄からタオルを受け取り、咽ながらも顔を拭う。

 

 

「ご、ごめんしず……」

「だ、大丈夫です……それよりも憧~!」

「い、いや、まさか冗談で言ったのに本当だとは思わなくて……ごめん」

 

 

 憧は片手で後頭部を掻きながら謝り、もう片方の手でタオルを持ちながら器用にシズの顔を拭く。いや、まさか当ててくるとは思わなかった。

 そして――こうまでわかりやすい反応をしてしまうと言い逃れは出来なくなってしまった。現に全員の「早く教えろ」という視線はこちらに向いてるし。

 

 

「はぁ……ぶっちゃけ三尋木プロとは昔ちょっとあってね、といっても何回か会っただけなんだけど」

「そ、そのちょっとと師匠になにか関係が!?」

「そこはもう確定なのか……というかなんか興味津々だね玄」

「き、気のせいです!」

 

 

 誤魔化すように顔をブルンブルン横に振る玄。他の皆も同じようにそっぽを向いたりして『興味ないですよー』的な態度を見せているがバレバレだ。

 まあ京太郎が絡んでいるなら聞きたくもなるか……。

 

 

「ふぅ……簡単に言うとね、三尋木プロは京太郎の中学時代の後輩なんだよ」

「「「「「…………ええぇーーー!?」」」」」

 

 

 予想していた通り五人ともかなり驚いていた……って、そりゃそうか。当時でもすごかったけど、今じゃ時の人だし。

 

 

「ちょ! な、なんで!?」

「なんでって……偶々?」

「……身も蓋もないわね」

 

 

 詰め寄るぐらいに驚いていたが憧だったが、私の答えに一応は納得したのか引き下がる。

 正直言って実際なんで二人が知り合いなのかって言われたら、それこそ偶々学校が一緒だったからとしか答えようがないだろう。一応当時何があって仲良くなったとかは聞いているけど、そこはそんなに関係ないしね。

 

 

「ほへぇー」

「なるほど~」

「……つまるところハルちゃんと三尋木プロは須賀さんを巡って修羅場を繰り広げたと……」

「修羅場……なのかな?」

 

 

 納得したり目を輝かせる皆には悪いが、あれは修羅場とは言えもしそうだが逆に言えない気もする。

 あの時はこっちが勝手に騒いでいて、向こうは……どうだったんだろう?結局良くわからなかったな。ただ一つ言えることは、当時の私は三尋木プロにそれなりに対抗心を持っていたという事だ。

 私より京太郎と過ごしてきた時間は長かったし、私が知らないことも知っていたから…………って!?

 

 

「そうか……そうなっててもおかしくないのかぁ……」

「あ、赤土さん……?」

「ど、どうしたの赤土先生?」

 

 

 頭を抱えて椅子に座り込む私に宥達が気遣った視線を向けて来るが、今はそちらを気にしている余裕がなかった。何故なら大変なことに気が付いてしまったから。

 そう――京太郎が三尋木プロと付き合っているという可能性だ。

 

 以前、望から京太郎が付き合っている人がいないという情報を貰っていたが、もし三尋木プロと付き合っているならスキャンダル的にも隠すのが当たり前で、誰にも教えてないだろう…………だから……。

 

 

「うぅ……ぐすっ……」

「今度は泣き出した!?」

「ああ、もう……めんどくさい教師ね……」

「めんどいっていうなぁ……」

 

 

 こっちに帰ってきてから落ち込むことは多かったから、周りからすれば確かに面倒かもしれないよね……。とりあえず気持ちを落ち着かせてから先ほど考えた説を皆に話すことにした。

 

 

「京兄が三尋木プロとかー……うーん、よくわからないや」

「まさかの須賀さんロリコン説」

「し、師匠はそんな人じゃないよ!? 絶対今でも大きなおもちが大好きだよ!」

「いや、フォローになってないから」

「おもち……」

 

 

 言われてみれば京太郎は大きい胸が好きだった…………私も一応ある方だし。だからまな板の三尋木プロは恋愛対象にならないはず!……ならないといいなぁ……。

 額に手を当てて考えつつ、あーだこーだを議論する皆を横目でチラッと皆を見る。

 

 ――昔から片鱗は見せてたけど玄と宥は本当に大きくなった。出来れば5cmずつでいいから分けてほしいぐらいだ。

 ――しずと灼は……うん、頑張りましょう。

 ――憧は……姉と一緒で中途半端だ。

 

 

「なにか言った?」

「う、ううん、なんでもないよ」

 

 

 感の良さも姉そっくりだ。できればこんな所じゃなく麻雀で活かしてほしいと思う。

 

 

「ふぅ……それじゃあ休憩も済んだし続きやろうか」

 

 

 注目を集めるため手をたたきながら立ち上がる。いつまでも落ち込んでいてもしょうがないし、時間は限られているからね。

 

 五人ともまだ話したそうにしていたが、私が言いたいことはわかっているのか雀卓の方へと急いで向かう。正直思わぬダメージを負ったし、気がつきたくない事にも気づいてしまった休憩時間だったけど皆が少しでもやる気になってくれたならよしとしようか。

 

 それから下校時刻ギリギリになるまで皆は特訓に精を出した。

 ただ……私は皆の指導に専念をしていたが、それでもやはり胸の中心にあるのは別の事だった。

 

 京太郎――――今、何してるのかな?

 




 そんなわけで現代編八話はレジェンドサイドの話でした。
 ちなみに教師や講師、大会の事については突っ込みつつも半分なんとなくで書いております。京太郎もそうだけど話の主軸が教師二人なので顧問らしいとこは適度に書いていかないとね。

 それでは今回はここまで、次回もよろしくお願いします。
 また次の話は女の子が出ず、野郎だけの誰得回の予定です


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