君がいた物語   作:エヴリーヌ

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和「過去編の続きだと思いましたか? 残念、そんなオカルトありえません。今回は清澄側の(自称)ヒロインである私がメインの現代編です」

まさに外道。


<現代編> 第1章
1話


 麻雀部を出てから一時間がたった。

 

 その間過去のこと思いだしボンヤリとしていたが、流石に春とはいえ外の風は冷たく体がすっかり冷えており、手の先も悴んできたためそろそろ戻るかと考えて立ち上がる。仕事があると言って出てきたけどこれだけ時間を潰せば大丈夫だろう。

 とっくに飲み終わって空っぽになっている空き缶を捨て、もう一度自販機まで歩く。

 

 

「さて、あいつらにも何か買ってやるとするか」

 

 

 それなりに疲れているだろう部員二人と新入生三人を労うために財布を取りだす。

 付き合いのある咲達の好みはわかるが、片岡の好みがわからない為とりあえずホットとアイスのお茶をいくつか買っていく。なんだか既知感を感じるが、別に理由のない些細なことだと流す。

 

 スーツのポケットに買った冷たい飲み物を入れて悴んだ手には温かいのを持ち、そのまま旧校舎への道を歩き始める。まあ、自分で買ったやつだしこれぐらいの役得は良いだろ。

 

 既にお昼を少し回った時間なためか、数時間前よりもさらに人の気配もほとんどしなく誰にも会わなかった。

 しかし我が麻雀部は絶賛活動中なため、近づくと騒がしい声が聞こえてくる。まあ、そのほとんどが竹井と片岡みたいだけどな……。

 

 

「まったく元気なやつらだな…………お疲れさん。しっかりと後輩達に指導してるか?」

「あ、お帰り京ちゃ……須賀先生」

「お帰りなさい須賀先生」

「おう、お帰りだじぇ」

「お疲れ様じゃ須賀先生」

「お疲れ様須賀先生。でも戻って早々の一言目がそれってどうなんです」

「おう、ただいま。今は染谷が見学してるのか」

「無視ですか」

 

 

 少々呆れつつも扉を開けて声をかけると、皆がそれに反応し銘々の挨拶を返してくれた。竹井だけは俺の言葉に反応したのかジト目で見てくるが、先ほどのこともあるし自業自得である。

 

 その場で打っているのは染谷を除いた四人であるため、同じように見学をしようと皆から少し離れて見ている染谷の隣に行く。しかし咲はいつになったら呼び方慣れるんだろうな……切り替えの早い和はすぐに呼び方が変わっていたのに……。

 

 我が幼馴染の不器用さに嘆いてしまうが、まあそこが咲の良い所でもあるからあえて指摘はしない。そんな事を考えながら染谷に近づき飲み物を渡す。

 

 

「ほら、好きなの選んでいいぞ。んで、染谷は見学……というより観察か?」

「お! すまんのう……まぁ、言い方はあれじゃが大方あっとるね。新入生に打たせるって意味もあるんじゃが、さっき須賀先生が言ぅとったように指導の為じゃな。指導しようにも三人の打ち方がわからんとどうしようもないからの。まあ三人がまだ入ってくれるかどうかは決まっとらんが」

「まぁ、確かに指導の基本だな。それで副部長から見てどんな感じだ?」

「ふーむ……簡潔にゆうと、三人とも個性ある打ち方をしとる。その上実力も全国クラスじゃ」

「ん? 片岡もか? 宮永とのど……原村の実力は知ってるけど」

「うむ、多少ムラがあるがどうやら東場で力を出す雀士らしいけぇ、東場では他の三人より勢いがあったの」

「東場でってことは、南場は?」

「察しの通りじゃ」

 

 

 詳しく説明してくれる染谷のおかげで納得する俺。なるほどね、そういうタイプのオカルトか。

 確かに集中力のなさそうな性格してるしなー、これで南場も続くようならもっと強くなれるんだろうが、簡単にはいかないだろうな。

 

 しかしオカルト遣いが五人中二人か……染谷と竹井も半分オカルトに突っ込んでるようなもんだし、和もオカルトなしで相当な強さみたいだから、こりゃまた凄い面子がそろったもんだな。

 

 

「しかしあの二人は中学から大会で実績をあげとったけぇええとして、宮永さんがあれほど強いのは驚きじゃったな。須賀先生も知っておったらな教えてくれりゃあよかったのにのう」

「いや、あいつだって中学行ってたし、教えても麻雀部には入れなかっただろ」

「別にうちに通っていなくとも休日なんか都合が合えば一緒に打てたじゃろ。うちらいつも人数足らんかったしのう」

「そこらへんは勘弁してやってくれ。あいつ見ての通り人見知りだから、知らない所で知らない人間と打つのはキツイんだよ」

「カカカ、冗談じゃよ。流石にそこまで顔の面は厚くないわい」

 

 

 一年間の付き合いもあり、新入部員が入って嬉しい染谷の軽口だとわかってはいたのでこちらもそれに乗っておいたが、本当に嬉しそうだなこいつ。

 

 うちの麻雀部は顧問である俺を含め三人しかいないから、出来たとしても三麻だけだ。その三麻すらも俺は教師の仕事があり、染谷や竹井もそれぞれ家の手伝いや学生会の仕事がある為、あまり出来てはいなかったのが現状だった。

 

 だから先ほどの染谷の気持ちも痛いほどわかるので、軽口だとわかっていても咎める気にはなれなかった。

 そんな感じで染谷と話しているとどうやら向こうも終わったみたいだ。

 

 

「あー負けたじぇ! のどちゃんを押さえて一位とかほんと宮永さんは強いなー!」

「そ、そんなことないよ……片岡さんも東場ではすごい強かったよ」

「確かに本当に強かったですね……今まで無名だったのが驚きなぐらいです」

「あれー? おっかしいなー部長なのに四位に近い三位ー? あれれー?」

 

 

 どうやら咲が一位で和が二位、その後ろに竹井と片岡が続くといったみたいだな。

 対局が終わると一位を取った咲を褒める片岡と照れる咲や、二位になり負けたことよりもこれだけ強い相手が身近にいたことにより驚く和達が和気藹々と話している。

 

 一方部長でそれなりに自分の実力に自信があった竹井が凹んでいる。イキロ。

 

 

「四人ともお疲れさん。ほら、俺の奢りだから好きなの飲んでいいぞ」

「ありがとう、きょ……須賀先生」

「ありがとうございます」

「おー先生気がきくじぇ!」

「ありがとう……」

 

 

 切りが良いと思い、先ほど買った飲み物を渡しに行くと元気よく受け取る三人としょぼくれてる一人。

 まったく……しょうがないな。

 

 

「ほら、麻雀は運も絡むんだからそういうこともあるだろ。元気出せって」

「でも部長がいきなり負けるってどうなのかしらね……うふふ」

 

 

 そう言うと部室にあるベットまで歩いたと思ったら寝っころがる竹井。

 駄目だこりゃ、せめて二位なら良かったんだろうが相手も悪かったししょうがないと思うんだけどな。

 

 まあ咲達ほどではないが、こいつとも二年近い付き合いだしこういった時の対象法は心得ている。

 このまま相手をしていたらキリがないし、放置しておくことにした。冷たいって?親しい相手ならこんなもんだろ。

 

 そんな不貞腐れる竹井をよそに話こんでいる新入生二人組はなかなか胆が据わっているように見える。

 しかしこうやって見ると和(大)、咲(中)、片岡(小)とバランスが良いな。いや、咲も(小)か。何がとは言わんが。

 

 

「しかしこれだけ強いということは、宮永さんは何処かで麻雀を習っていたんですか?」

「何処かって言うと……えーと……家族で麻雀してただけなんですけど」

「マジでかッ! それでこんなに強くなるとか宮永家は化け物だらけなのか!?」

「まったく……化け物は失礼じゃろ優希。そうじゃ宮永さん、その家族のことで思うたんじゃが……もしかしてチャンピオンの宮永照はわれの親戚かなにかか?」

「あ、はい……私の…………お姉ちゃんです」

「「「「お姉ちゃんッ!?」」」」

 

 

 咲の強さの理由に驚き、失礼な発言をした片岡を諌めるために近寄ってきた染谷がいい機会とばかりにこの界隈では有名人である照との関係を思い切って聞き出した。多分咲の名前を聞いた時から気にはなっていたんだろうな。

 

 そして咲としては隠す理由もないため素直に答えると、その事実に俺と咲以外の全員が思わず大声を上げていた。

 あ、不貞寝していた竹井も流石に起きたか。

 

 

「ちょ!? え? 本当に宮永さんってあのチャンピオンの妹なの?」

「ははははい……」

「落ち着けって竹井。宮永が怖がってるぞ」

 

 

 本人にその気はないだろうがネズミを追い詰める猫のごとく迫る竹井に完全に萎縮してしまっている咲。

 このままじゃビビって二度と麻雀部に来なくなりそうな勢いなので止めに入る。

 

 まあ自分達が青春を捧げている麻雀のチャンピオンの妹が現れたらそりゃこうなるのもしょうがないな。

 

 

「ハッ! ……あ……ご、ごめんなさい宮永さん! 大丈夫だった?」

「うう……は、はい……」

 

 

 窘められて我に返った竹井が掴んでいた肩を離すと急いで俺の後ろに隠れる咲。

 先ほどの非礼を謝る竹井だが、ビビっちまった咲にはあまり効いてないみたいだ。

 

 

「まったく……気持ちはわかるが、怖がらせてどうすんじゃ」

「だってぇ……」

「でも、確かにあの宮永照と姉妹なら宮永さんの強さにも納得いくじょ」

「そうですね」

 

 

 皆も咲の強さがチャンピオンである照と姉妹ということで納得したみたいだな。

 それに竹井も染谷に怒られて反省しているみたいだしこっちでもフォローしとくか。

 

 

「咲、竹井も反省してるみたいだし許してやってくれ」

「え、えっと別に……怒ってるわけじゃないよ。ただちょっと驚いただけで」

「ほんとか? 咲って怒ると麻雀やってる時と同じで魔王みたいに怖くなるからな勘弁してくれよ」

「ちょ!? 魔王ってなにさっ! 失礼だよ京ちゃん! それに麻雀の時だって普通だし!」

「えーーー……人のことトばしといて『麻雀って楽しいよね!』って言う咲さんは魔王だと思いますー」

「確かに言ったけど意味が違うでしょ! もう!」

 

 

 大声で否定する咲をさらにからかうとプンスカ怒りながらこちらをポカポカと叩いてくる。

 ふう……さっきまでの強張った表情も直ってるし、からかっているうちにいつもの調子を取り戻したみたいだな。

 

 しっかしいくら本気で叩いてないとはいえ全然痛くない。ほんとこいつ腕力ないなー。

 

 

「あー……いちゃついてる所悪いんじゃがちょっといいかのう?」

「ん? どうした染谷?」

 

 

 ジャレついてく咲の相手をしている俺に申し訳なさそうに声をかけてくる染谷。

 というかどうみたらこれがいちゃついてる様に見えるのか。

 

 

「いやのう……宮永さんと須賀先生は幼馴染じゃろ?」

「ああ、ただ正確には歳がかなり離れてるから兄妹みたいな感じだが」

「まあそこらへんは置いといて、その宮永さんと兄弟みたいな感じとゆうこたあ、その姉である宮永照ともそういう関係なんか?」

「あー、そういうことになるな。一応照の方が二歳年上だから咲よりも長い付き合いになるな」

「ぶー……でもお姉ちゃんは東京の高校に行ってるから一緒にいた時間は私の方が上だよ」

「いや、張り合うところじゃないだろそこは」

 

 

 思わず口に出した言葉に咲がどことなく機嫌悪く口を挟んで来たのでツッコミを入れる。

 

 しかし咲を連れて来た時点で覚悟していたとはいえ、やっぱばれたか……。面倒なことになるから言ってなかったツケが回ったかね。

 聞いてきた染谷や横で聞いていた和と片岡もそれなりに驚いていていたが、その俺の台詞に一番反応したのはやはり部長である竹井だった。

 

 

「えぇー……なんでチャンピオンと深い関係って教えてくれなかったんですかー」

「深い関係って人聞きの悪い言い方するな。それにもし教えてたらどうしてた?」

「え?それはほら、個人的に打ってみたり話してみたいじゃない?」

「ふー……残念だけど照はチャンピオンで向こうのエースだからな。忙しくてあんまりこっちに帰ってくる時間もないから例え言われてたとしても無理だったぞ」

「うぐぅ……残念……」

 

 

 きっぱり告げると肩を落とし残念がる竹井。まあ、さっきのは嘘なんだけどな。

 確かに照が忙しいのはほんとだけど、それなりにこっちには帰ってきてるからこいつらと合わせる事もできたし。

 

 前に麻雀部の顧問をしている話をしたら顔を出そうかと照自身に言われたこともあったが、向こうで毎日エースとして働き、なれない取材などを受けたりしてストレスが溜まっているだろう照にはせめてこっちでは家族とのんびり過ごして欲しいと思い断ったんだよな。

 

 咲達の前ではあまり顔に出さないが、疲れた表情を見たことや愚痴を聞いたこともあるし、普段のんびりしてるように見えるが溜めこみやすいタイプなのはわかっているからだ。

 麻雀部の顧問なら少しぐらい自分の部活のために融通するべきなんだろうが、これぐらいは許してほしい。

 

 こっちを見る咲には目線でなにも言わなくていいぞと合図をすると軽く頷いていた。普段はポンコツだが、長年の付き合いらしく察してくれたようだ。

 

 

「まあ、その話は置いといて……原村と片岡は部活についてどうするんだ? 入学式の日にわざわざ見に来たぐらいだし結構興味あるみたいだが」

「もちろんこのまま麻雀部に入るじぇ」

「はい、出来るなら入部させてもらえませんか」

「おう、もちろん歓迎するぞ、これからよろしくな」

「よろしくだじょ!」

「よろしくお願いします」

 

 

 手を挙げて元気よく返事をする片岡と礼儀正しくお辞儀をして返す和。改めて見ると実に対照的な二人だが、それでも親友と言っていいぐらいの仲なのは見るだけでもわかる。

 まあ、向こうでも万年元気娘の穏乃達と仲良くしてた和だし不思議ではないな。

 

 

「それじゃあ入部自体は新学期が始まってからになるからとりあえず仮入部って形になるな……と、それで宮永はどうする?」

 

 

 一応部活活動期間ではない為仮入部という扱いになることを告げ、それに納得した二人を見た後咲にも尋ねる。

 

 最初から入部すると決めていた感じの二人と違い、部活の雰囲気を体験させるために連れて来たからな。別にこのまま入ってもこのメンバーなら直ぐに馴染んで問題なさそうだけど、他の部活に入るのも自由だから一応聞いておく。

 

 

「んー……もうちょっと考えたいかな……長ければこれから三年間続けるわけだし」

「えー、宮永さん入らないのかー?」

「残念ですね……先ほどのリベンジもしたかったのですが」

「ごめんなさい……でも色々見てみたいから」

「いやいや、謝らなくてもいいんだじぇ。高校生活は一生に一回だからな、ゆっくり考えるべきなんだし」

 

 

 入部するかどうかを保留する咲に対し残念そうな声を上げる片岡と和。

 俺としてもこいつ等なら咲の良い友人になってくれると思ったんだが仕方ないよな、そこらへんは本人の自由意志だし。

 

 そして三人が話しているのを後ろで指をくわえながら見ている竹井といつでも抑えられるように控えている染谷。

 確かに咲が入れば部員も五人になって正式に部活になって大会にも出れるようになるし、ミドルチャンプの和より強いとなれば喉から手が出るほど入ってほしいだろう。

 

 しかし無理やり入れても意味がないし、もしそれで入れたとしてもそのことで部活内がギクシャクしてひどい状況になる可能性があるのもわかっているから竹井も無理はしないはずだ。

 それにまだ部活勧誘すら始まってないし、他の新入生が入るかもしれないから焦ることもないだろう。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、新たに新入部員が二人増え心機一転部活動したいところだが、お昼を過ぎて本来ならとっくに下校しているはずの新入生をこれ以上拘束するわけにもいかないということで解散することになった。

 本来なら部活のない日だし、上級生の二人も帰った方がいいしな。

 

 

「それじゃあとりあえずしばらく部活はないから、次に集まるのは二、三年生が登校して新学期が始まる日だな。詳しい時間や連絡は部長の竹井に任せたぞ」

「おっけー」

「うし、それじゃあお疲れ様でした」

「「「「「お疲れ様でした!」」」」」

 

 

 皆で手分けをして使っていた雀卓を片付け部室の中を軽く掃除をし、後日の予定を決めてから挨拶を交わして解散する。

 竹井と染谷はこの後用事があるということで挨拶も早々に帰宅した。

 

 既に仕事もないから俺も帰る為に部室に施錠をしたいので、残っている皆に声を駆けようとしたら鞄を持った咲が近寄って来た。

 

 

「京ちゃん一緒に帰ろう」

「こらこら、学校を出るまでは須賀先生な。まあ、帰るのは別にいいぞ」

「やった! それじゃあどっか寄ってご飯食べて帰ろうよ」

「いいけど……おじさんはいいのか? 家で待ってるんじゃないか?」

 

 

 この前『休みを取ったぜー!』って嬉しそうに叫んでいたぐらいだし、むしろ俺に会いに来るまで一緒に帰っていたもんだと思ってたんだけどな。

 

 

「お父さん、お母さん達に送る為のビデオを編集しなくちゃいけないって言ってたよ」

「あー……元々東京と長野じゃ遠いうえに、おばさん今仕事がそうとう忙しいらしいしな……照も合宿があるからこれなかったし」

「うん、二人ともすごく残念がってたからその分お父さんが張り切っちゃって」

 

 

 苦笑しながら詳しく話す咲に納得する。現在別居状態にある宮永家だが、別に仲が悪いというわけでなく仕事の都合だ。

 まあ、実際に別居の時に親父さん達が揉めた事もあったみたいだが今ではそれも問題なく仲がいい。

 

 

「うし、それじゃあどこに 「すみません須賀先生」 ……ん?どうした原村?」

 

 

 それなら問題ないと言うことで、どこで食事をするか相談しようとしたら、片岡と話していた和が躊躇いがちに声をかけてきた。

 

 なんか忘れ物か?……ってそうだ、さっきの話が中途半端だったんだな……。

 咲と話していたから控えめな和としては困っていただろうに、向こうから声をかけさせちまった。

 

 

「ああ、そうだな話の途中だったもんな……すまん」

「いえ、お忙しいんでしたらまた後日にでも……」

「あー……でも 「いいよ、行ってきなよ京ちゃん」 ……咲?」

 

 

 困っている俺たちの背中を押すように声をかけてくる咲。

 一緒に昼飯を食べるのを了承したのに悩んでいることに怒っているのかと思ったが、特にそんな空気ではない。

 

 

「三年ぶりにあったんだよね? だったら色々話したいこともあるだろうし行ってきなよ」

「でも……良いのか咲?」

「大丈夫だって、だからその分夜ご飯一緒に食べようね」

「そっか……ありがとうな咲」

「どういたしまして、それじゃあ先に帰ってるからね」

 

 

 そういうと鞄を持って部室を出ていこうとしたが、途中で片岡に一緒に帰ろうと言われ戸惑いながらも返事をして一緒に部室を出て行った。

 そうこうして皆帰ってしまった為、残されたのは俺と和だけだ。

 

 

「……気をつかわせちゃいましたね」

「ああ……咲達には色々話してるから、このことになるとちょっとな……」

 

 

 これが和との個人的な食事だったら機嫌が下落していただろうが、そういうのじゃないしな。晴絵のことになるとあいつらは気をつかいすぎだってのまったく……。

 

 

「うし、それじゃあ腹も減ったしどっかで飯でも食いながら話すとするか……どこ行きたい?」

「えーと……あまりこちら側に詳しくないので特に希望はないですけど、あまり重い感じでないものが良いです。それと教師と生徒が一緒に食事しても大丈夫なんですか?」

「あー……うちはそこらへん軽いし、実際やましいこともないしな。それに部活の顧問と生徒だし問題ないだろ。それじゃあ近くにそれなり良い喫茶店があるからそこ行くか」

「はい、わかりました」

 

 

 俺の言葉に安心し納得した和を連れて部室の施錠をする。

 そして一度職員室まで鞄を取りに行き、その後歩いて俺たちは喫茶店へ向かうこととなった。

 




の、はずが書いてたら長くなってしまったので分割しました。またきてのどっち。

こんな感じでキリがよくなったり、書きたくなったら現代編の方も書くのであしからず。

あ~皆~オラにもっと書くための時間をわけてくれ~。

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