魔法探偵夕映 R《リターン》   作:遁甲法

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書き終わった事に安心して投稿し忘れてた。すいませんw

夕映が先生として挨拶します。そして、ようやく夕映同士が絡み始めました。
どうにかセリフだけで区別がつくように頑張ります。

では、れっつごー


ゆえっちに質問タイム。省略ずみ

 

 

 

 

 

 

 

 ガヤガヤと騒がしい朝の教室の一角に、ドンヨリとした雰囲気で机に突っ伏している女生徒が1人。

 

「うぅ……うー……」

 

「明日菜はまだ落ち込んでるの?」

 

 登校してきた和美が、机に突っ伏してうーうー唸っている明日菜に声を掛けた。

 

「あんたのせいでしょぉー……」

 

 恨めしそうに和美を睨み付ける明日菜だが、いつもの元気がまったくない。どうやら昨日の写真がよほど堪えたようだ。教室に居る半分近くの生徒が昨日の騒ぎを知っているので、仕方ないと言う視線で彼女を見ている。

 

「だから説明したじゃん。彼女じゃないって。写真もビジネスホテルのだったし」

 

「なんで一緒に入って行くのよぉ……」

 

「さぁー……? 一緒に泊まったからとか?」

 

「それじゃ同じじゃないのよっ!!」

 

 ガバッと起き上がって吼える明日菜に、どうしたものかと頭を悩ませる和美。先生になるかもなどと言ったら収まるだろうか? いや更に荒れるか? どっちにしても言わない方が面白いはず。そんな事を考えながら和美は噛み付いてくる明日菜を躱し、自分の席に向かった。

 

「朝倉ぁ、あの噂って本当なの? ほら高畑先生が彼女とホテルに入って行ったっていうの」

 

 そんな事を言って和美の席にやって来たのは、この教室の中でも1番垢抜けているチアリーディング部の1人、柿崎美砂だった。クラスでも珍しい彼氏持ちで噂話が大好物な彼女は、昨日脱衣所から発信された噂に興味津々だった。

 

「いや、入って行ったのはビジネスホテルだし、あの後写真を撮った仲間に電話したら、しばらくして高畑先生だけ出て来たって言うから、案内しただけじゃないかと思うけど」

 

「わざわざ案内するかなぁ? しかも、中まで……」

 

「うーん……そこまではわかんないわよ。まぁ、なんか仲良さそうだったけどね」

 

「え! 知ってるの!?」

 

 バンッ! と机を叩き顔を近付けてくる美砂に、和美はどうしようかと考える。普通に教えてもつまらないし、かと言ってこのまま言わないと解放されなそうだし。

 

「どんな感じだった!? あの高畑先生がデレデレしてる所、想像出来ないんだけど!」

 

「いや、デレデレはしてなかったけど……熱心に口説いてはいたね」

 

「「「「マジで!?」」」」

 

 美砂だけじゃなく、近くで聞いていた他の生徒も驚き集まって来た。

 

「どんな感じに口説いてたの!?」

 

「いやぁ、それは言えないなぁ……」

 

 単に教師にならないかと言う物だったのだが、そんな事素直に言う和美ではない。ニヤニヤしながらはぐらかす和美に、他の生徒達がブーイングしている。

 そうやってノラリクラリとはぐらかしていると、始業のチャイムが鳴り響いた。

 

「さぁ、皆。席に着いてくれ。出席を取るよ」

 

 チャイムが鳴って少ししてから噂の高畑が入って来た。その途端、教室中がざわつき出した。

 

「はいはい、静かに。まずはー……」

「はい! はいはいはい!! 先生に質問があります!」

 

 出席を取ろうとした高畑の言葉を遮り、手を上げつつ勝手に立ち上がって質問するのは、イタズラが大好きなシスター、春日美空だ。そんな彼女をチラリと見た高畑は気にせず出席を取り始めた。

 

「明石君」

「はーい」

「ちょちょちょーーっ!? 何で何事も無かったかのように続けるんすかーっ!?」

 

 スルーされた美空は大慌てでツッコむが、高畑はいつもの事と気にしない。

 

「連絡事項が多いから、後にしてくれるかい? 次は朝倉君」

「はぁーい」

「えーっ!? 生徒の質問っすよ!? 珍しい、一体なんだい?とか言って聞かないんすか!?」

 

 すげなく躱された美空は尚も食い下がる。

 

「授業中ならそれこそ熱だって測る所だけどね」

「いや、待って欲しいっす! 熱測るのはおかしい!」

 

 普段余り熱心に授業を聞いてない美空だが、それとこれとは話が別。病気扱いされたら流石に困る。せめて後にして欲しかった高畑だが、このままでは進まないと思い、仕方なく美空の質問とやらを聞く事にした。

 

「それで、美空君は何が聞きたいんだい?」

 

「はい! それはっすね! 先生に彼女がいるって噂を聞いたんすけど、本当ですか!?」

 

 それを聞いた教室中の生徒が真剣な眼差しで高畑を見た。いや、何人かはどうでもいいと言わんばかりにボケーっとしているが。とにかく、テスト前だってこんな真剣な顔をしない彼女たちに内心驚きつつも、高畑は何の事か分からず逆に聞き返す羽目になった。

 

「あー……、それはどう言う事だい?」

 

「昨日、先生が彼女と仲睦まじく昼食デートアーンド、放課後デートしてたのを、かなりの人が見ていたんすよ! それで今や殆どの中等部生が噂してるんすよ!」

 

 そう言われても心当たりの無い高畑は、噂に詳しい和美に視線を向けて、どう言う事か尋ねてみた。

 

「あー……、春日が言ってるのは、昨日のお姉さんの事ですよ。写真も出回ってて、結構広まってますよ?」

 

「あー……なるほどね」

 

 ようやく分かった高畑は、そんな噂が広がっている事にどうしたものかと一瞬だけ思ったが、どう否定しても無駄なのが麻帆良生が流す噂の特徴だと思い出し、深く考えない事にした。

 

「じゃあ、次ー……夕映君」

「はいです」

「ちょーっ!? 何で質問に答えてくれないんすか!?」

 

「あっはっはっ。質問は聞いたじゃないか。和泉君」

「は、はい」

「ちょー!?」

 

 美空の抗議も虚しく、出席は淡々と進められて行った。机に突っ伏してスルーされた事のダメージに耐えていると、自分の名前を呼ばれて元気なく返事をする。

 

「元気がないね?」

「主に先生のせいっす」

 

「君の質問はあとで本人にでも聞いてくれ」

 

「ほ、本人!?」

 

 驚いて前を向く美空だが、高畑はそれ以上言わずに出席を取って行く。美空以外の生徒も、高畑の意味深な発言に戸惑いながら返事をしていくのだが、最後の1人が呼ばれた所で、高畑が切り出した話に全員で驚く事になる。

 

「さて、出席も取ったし、連絡事項だ。今日からこの教室で教育実習をする先生を紹介するよ」

 

「「「「へっ!?」」」」

 

 いきなり言い出された言葉に目を点にする生徒達。高畑はそんな彼女達は気にせず教室の前で待っている人物に入るよう声を掛けた。

 

 ガラッ

「普通、出席前に呼ぶものじゃ無いですか? 扉の前で虚しく待ってる身にもなって下さい」

 

 入って早々文句を言うその女性を見て、2Aの生徒達はポカンとした表情を浮かべた。そこに居るのは、昨日教室を騒がせたクラスメイトのソックリさん。ついでに今中等部生を騒がせている高畑の彼女説に出てくる女性だったからだ。あるものは呆然と、あるものは笑いを噛み殺して教卓まで進む彼女を見ている。

 

 カカカッとチョークを響かせて書かれた名前と、彼女が放った言葉に彼女達の驚きはピークに達した。

 

「私の名前は綾瀬(ゆえ)。今日からしばらく教育実習生としてこの学校で先生をする事になったです。どうぞよろしく」

 

 ぺこりと下げた頭を戻すと、生徒達がポカーンとしているのに気付いた(ゆえ)は、とりあえず耳に手を当てて騒音に備える。彼女も元2Aの生徒。この後の反応は息をするように分かるのだ。見れば高畑も同じ事をしている。そして、数瞬の間を開けた後、彼女達は大音量で驚きの声を上げた。

 

「「「「「「えぇーーーーーーっ!?」」」」」」

 

 そんな大声で騒ぐのでとても近所迷惑だ。騒ぎ出した彼女達を高畑がどうにか静めたので、なんとか鬼の新田と呼ばれる生活指導員が駆け込んでくる事は無かったが、この後の展開を予想して、(ゆえ)はウンザリとした気分になるのだった。

 

「では、私麻帆良のパパラッチこと朝倉和美が代表して質問するよっ!!」

「「「「「「おーーーっ!」」」」」」

 

 この久々に見るノリに、(ゆえ)は既に白旗を上げる寸前まで追い詰められていた。流石に20代にもなると、このテンションには付いていけない。

 

「じゃあ、お姉さん。じゃなかった、綾瀬センセっ! 質問行くよ!!」

 

「はぁ、どうぞ……」

 

 ボールペンをマイクに見立てて突き付けてくる和美に、疲れた目で見返す(ゆえ)。余り喋り過ぎると面倒な事になるので、事前に設定などを考えてきた(ゆえ)は、余り突拍子もない質問が来ない事を祈りつつ、和美の質問を待った。

 

「まず最初に……彼氏は居ますかっ!?」

「最初がそれです?」

 

 普通はもっと後から聞くような質問に、思わず素で返してしまった(ゆえ)である。こう担当教科とか、どこから来たとか普通の質問が最初に来ると思っていたので、少し驚いてしまった

ようだ。

 

「へっへっ! 実は今1番みんなが興味あるのはこの質問なもんで。で、どうですか!?」

 

「居ませんよ」

 

「彼氏は居ない……っと。では次に! 高畑先生との関係はっ!?」

 

「いえ、関係も何も、これからは同僚となる人ですね」

 

「これからは……と言う事は、前は何だったんですかっ!?」

 

 (ゆえ)は和美の意図を朧げながら掴んでいた。昨日解いておけと言った高畑の恋人疑惑をここで解消するつもりなのだろうと。1人ずつ言って周るよりずっと効率的なのは認めるが、こんな見世物の様な状況でやらないで欲しいものだ。

 

「今まではお世話になった恩師です。まぁ、学生時代は出張ばっかりで、それ程指導してもらった記憶が無い気もするですが」

 

「ふむふむ……記憶の無い恩師っと……」

「その略し方でいいんですか?」

 

 そのまま聞くとおかしな存在になりそうなメモの仕方をする和美に、またもツッコむ事になる(ゆえ)だった。そして、それを聞いていた高畑は、思わず苦笑いを浮かべた。確かに出張が多く、授業も疎かになったりしているので文句も言えない。

 

「綾瀬センセー……、と、なんかうちのクラスメイトとかぶるんで、(ツキ)センセと呼んでいいですか?」

 

「まぁ、構いませんよ」

 

「では、これからは(ツキ)センセと呼びますね! みんなもいいー?」

「「「「「「はぁーーーいっ!」」」」」」

 

 ちょくちょく上がる小学生の様な返事に、そう言えばこうだったと懐かしく思う(ゆえ)であった。

 

「じゃあ、まだまだ質問行くよぉーっ!」

「「「「「「おーーーっ!!」」」」」」

 

「勘弁して下さい……」

 

 その後時間が許す限り質問し続ける和美に、虚ろな目で答えながら(ゆえ)は以前の恩師はよく頑張ったなぁと思った。あの時は明日菜が絡んで行ったおかげで中断されたが、今回はそんな事にもならなそうで、(ゆえ)の忍耐力が試される試練の時は続いて行った。

 

「そうそう、(ツキ)センセ、あの後ろに居るのが、昨日行ってたセンセにソックリなクラスメイト。名前も同じ綾瀬夕映ですっ! 直接見てどう思います?」

 

 ザッ! と言う音と共に生徒達が一斉に夕映の方を向いた。ビクっと震えて驚く過去の自分を見て、どうしたものかと考えを巡らせる。なにせ自分なのだ。自分自身をからかうのも褒めるのもおかしい気がするし、特に何も思わないなどと言うのも立場的におかしい。

 

 (ゆえ)はふむ、と呟いてとりあえず近付き挨拶する事にした。他にやる事が思い付かない事だし、挨拶して適当に質問でもするつもりだ。

 

「どうも、これからよろしく、綾瀬夕映さん?」

 

「ど、どうもです……」

 

 スっと手を出して握手をしようとした(ゆえ)に、夕映はおずおずと手を差し出した。そして、手が触れた時、ビリッ! と言う音と共に静電気が走って2人共手を離す事になった。

 

「あたた……。乾燥してるとこれだからイヤですね?」

 

「そ、そうですね。っと、よろしくです」

 

 今度は静電気も走らず握手をした2人を、和美が素早く写真に納めた。パシャリと言う音を立ててフラッシュが焚かれると、カメラを向けられた2人はまったく同じ仕草で眩しがった。

 

「おぉー……。そんな仕草までソックリですねぇ」

 

「何を感心してるですか」

 

「まったく朝倉さんは……」

 

 ブフッ! と聞いていた生徒達が一斉に吹き出した。

表情や仕草、そして文句の言い方がソックリだったのだ。正に背丈以外自分達のクラスメイトそのままの彼女に笑いが止まらなくなった。

 

 クスクスと堪えきれず笑うクラスメイト達をジトっとした目で見る夕映と、それと同じ目で見る(ゆえ)。そんな彼女達のおかげで更に笑いが込み上げてくると言う悪循環が起こっていた。

 

「はっはっはっ。君たち、楽しそうだがそろそろ時間だよ」

 

「「「「「「はぁーーいっ」」」」」」

 

 席を立ってみたり、近くの生徒と笑いあっていた者たちも笑顔で返事をして自分の席に戻っていった。

 

「さって、皆。(ゆえ)君への質問は終わったかな?」

 

「はい、だいたいは」

 

「じゃあ、質問タイムは終わりかな。………どうしたんだい? 2人共」

 

 高畑は自分の手をじっと見て動かない(ゆえ)と夕映に声を掛けた。生徒達もそんな2人に目を向けるのだが、その時にはもう(ゆえ)は教卓に向かって歩き出していて、夕映も椅子に座り直していた。

 

「大丈夫かい?」

 

「えぇ。なんか妙な感じがしたもので」

 

「妙な……?」

 

 (ゆえ)の答えに疑問を持った高畑はそれが何か聞き返すが、本人も明確な答えが出せないでいた。(ゆえ)は自分の手をじっと見て、んー……と首を捻っていたが、やはり理由が分からなかったらしく、手を振ってその変な感触を払った。

 

「……まぁ、気のせいでしょう」

 

「……? まぁ、いいか。じゃあ(ゆえ)君。あと半分くらいしか時間はないが、授業を始めようか」

 

「はいです」

 

 受け答えも似てるせいで生徒達の笑い声が止まらない。そんな中で(ゆえ)と同じように夕映は自分の手をじっと見つめていた。夕映も同じように静電気が走った時、妙な感触があったのだ。ビリッ! と来た時に、一瞬気が遠くなる感覚に落ち入り、夢の途中で急に目が覚めた時のように視界がボヤけ、夢と現実の光景が重なって見えたのだ。

 

(なん……だったのでしょう……?)

 

 夕映は、意外と流暢に教科書を読む(ゆえ)を見ながら、視界がボヤけた時に見えた幻を思い出していた。麻帆良ではない教室で、耳が長い人や、明らかに人ではない見た目の人と一緒に勉強している自分。制服も白と黒を基調とした見た事のない物を着ていて、隣に座るメガネを掛けて犬の様な耳を頭につけた誰かと笑い合っていた。

 

 思わず隣を見ると、同じ位置にはメガネを掛けた親友の1人がニヤニヤしながら授業を聞いていた。

 

「……ん? どしたの夕映?」

 

「いえ……」

 

 首を横に振って何でも無いと言ってからまた前を向く。幻にはあった愛嬌が一切ない親友の顔を見たせいか、幻の中で見えた少女の顔がどんなだったか思い出せなくなっていた。

 

 

(本当に……一体何だったのでしょうか?)

 

 夢がすぐに思い出せなくなる様に、一瞬見えた幻は印象だけを残して記憶からすり抜けてしまった。しかし、しっかり意識に刺さったソレが気になり、夕映はいつも以上に授業に集中出来なくなっていた。

 

 

 

 







ふぅ……、こっちはすぐに文章が浮かんで来てくれるから楽だなぁ。クオリティーが低いのはどっちも同じだけど。

もうすぐクリスマスか。仕事だから一切関係ないけどねっ!

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