魔法探偵夕映 R《リターン》   作:遁甲法

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はいー、夕映を主役にする為の小説第5話でございます。

未だプロローグ的な展開で全然夕映を活躍させれないのが困りもの。もうちょっと適当に書いて、早く夕映を暴れさせたい所ですな。

では、いってみよぉ


夕映、街でストーキングされる

 

 

 

 

 

 

 予定通りひと月ほどで直す。そう言ってくれた超に別れを告げ、夕映は夕日に染まる麻帆良をぶらついていた。

 

「あー……。そりゃぁそうですね。ここは過去の世界。銀行に預けていたお金があるわけなかったです」

 

 行く当てはないので、とりあえず自分の事務所兼自宅に向かっているが、着いた所で何も出来はしない。電気ガス水道などのライフラインも、こちらに来たと同時に寸断されていて使い物にならないからだ。寝起きで顔を洗った時に水が出た方が驚きだ。大方パイプに残っていた最後の水だったのだろう。今帰って蛇口を捻ったとしても、一滴出るかどうかと言った所か。

 

「どうしましょうかねぇ……。こうなってくると探偵としての依頼など来なくてもいい、などと言ってられませんし。かと言ってここでは知名度は皆無。待てど暮らせど依頼など来ないでしょう」

 

 いつもは煩わしく思っていた依頼も、こうなってくると簡単なものでも欲しくなる。人間とはかくも身勝手なものだ。

 

 まずは仕事を探して生活費を稼ぐ事を考えなければならないだろう。財布の中身は3万ほど。普通に食費だけならひと月くらいなんとかなるが、ライフラインが切られていると言う事は、風呂やトイレに使う水なども買わなければならないのだ。まぁ、風呂などは銭湯に行けばいい訳だが、毎日行ってればすぐに所持金は底を突くだろう。

 

「ふぅむ……。コンビニのバイトにでも応募しましょうか? それとも水商売? いえ、それは私の容姿的に言っても無理ですね」

 

 身近に同性でも美人と素直に言える程に成長したのどかと言う存在が居る夕映は、自分の容姿がそれほど優れているとは思っていなかった。なので、イメージ的に美人じゃないと出来ないと思えるホステス等の商売はすぐ候補から外した。

 

「そういえば、私の戸籍すら今は無いのですよね。つまり、普通に就職は無理と」

 

 正確には、夕映の戸籍自体はあるがそれは今の時代に生きる中学生の夕映の物であり、大人になった夕映の物ではないのだ。つまり、就職する時に身分証明する事が出来ないと言う事である。いくら色々ゆるいこの麻帆良でも、最低限の法律は守らねば確実に面倒な事になるだろう。面倒事が何より嫌いな夕映は、なるべくそう言うリスクを避けたいのだった。

 

 

「………はぁ。何はともあれ、まずは後ろの鼠さんをどうにかしますか」

 

 何をするにも、誰かにつけられたままと言うのは精神衛生上良くない。夕映は自分の後をコソコソつけてくる人物に気付かれないよう視線を向けた。

 

 その視線の先には、物陰から飛び出るパイナップルヘア。

夕映が街をふらつきだしてすぐに現れたその人物は、こちらに気付かれないようにしてるつもりか時折建物の影に隠れて顔を覗かせる。しかし、そんな動作を街中でしていたら逆に目立つものだ。現に彼女の近くを歩いていた通行人がチラチラとその人物を見てはクスクス笑っている。

 

(朝倉さん……ですね。一体何故私をつけているのでしょう)

 

 夕映はその特徴的な髪型に見覚えがあった。自分のクラスメイト、白き翼(アラアルバ)の広報担当、麻帆良のパパラッチこと朝倉和美その人だ。

 

(私をわざわざ追う理由が分かりません。面識も無いはずですが………)

 

 夕映はまだこの時代のクラスメイトで言うと、超と茶々丸の2人としか会っていない。つまり、彼女が自分を追う理由が無いはずなのだ。それなのに何故彼女は自分をつけているのか。

 

 気付いていない振りをしながら和美の様子を伺うが、建物の影でコソコソしているくらいで、得に何かをしてくる気配はない。時折カメラを構えているようだが、別に魔法を使っている訳でも無いので撮られても得に困らない。スカートではないので下着が見えている訳でも無し。

 

 しかし、いくら知っている相手とはいえ、ずっとつけられているのは気分が悪い。

 

(少し驚かしてあげますか)

 

 夕映は和美が巻かれないギリギリの速度で歩きながら、人の少ない道に誘導していく。

時折立ち止まり店を物色するフリをしながら和美が着いて来るのを確認し、また歩くを繰り返す。10分ほど歩いてみたが、パイナップルヘアは諦めずについて来ていた。

 

(では、そろそろやるとしましょう。ふふふふふ)

 

 夕映は、路地を曲がる事で和美の視界から外れる一瞬の隙を突いて建物の屋上まで登り、姿を隠して和美が曲がって来るのを待ち、自分が居なくなっている事に戸惑っている内に彼女の背後から耳元に声でも掛けてやろうと考えていた。

 しかし、それだけではつまらない。もう少し何かアクセントが欲しい所だ。

 

(胸を鷲掴みした方が驚くでしょうか? いえ、それではあの変態魔族と同じになってしまうです。ですが、声を掛けるだけでは面白くない気がするですし。……うーむ)

 

 夕映は店の前で立ち止まりウンウン唸りながら、和美をどう驚かすか考え出した。最初は声を掛けるだけのつもりだったが、どうせやるなら最高に驚いて貰おうと言う欲が出てきて、アイデアがまとまらなくなってしまったようだ。

 

 しばらくウィンドウショッピングをしている振りをしながらアイデアを練っていたが、結局オーソドックスに声を掛けるだけにした。その時ついでに息でも吹きかければ十分驚くだろう。奇を狙いすぎて失敗してはつまらない。

 

 夕映は和美との距離を測りながら作戦を実行するべく角を曲がった。2,3歩歩いた所で一気に屋上まで飛び上がり、建物の端に立ち和美が曲がって来るのを見物する。

 

「あ、あれ!? 居ない? このタイミングで巻かれた!?」

 

 ほんの数秒視界から外れただけで見失った事に戸惑う和美の背後に音もなく飛び降りる。そして……

 

「お嬢さん。私に何か御用ですか?」ふっ

「うっひゃぁああっ!!?」

 

 すすすっと近寄って耳元で声を掛けてやると和美は驚きのあまり飛び上がり、息を吹き掛けられた方の耳を抑えながら壁際まで後ずさった。

 

「な、ななな、なんで!? え? どうやって!」

 

「クフフふふ……。いやはや期待通りのリアクションですね。頑張って後ろを取った甲斐がありました」

 

 和美の驚きように、仕掛けた夕映は大満足と言った表情で笑っていた。ちょっとした出来心でやったイタズラだが、こうも上手く行くとなんだか癖になりそうだ。そんな事を思いながらクスクス笑う夕映は、目の前で戸惑いながら路地の向こうと夕映とを交互に見ている和美に再度何の用か尋ねた。

 

「それで? 何故私をつけていたですか? ナンパですか?」

 

 

 ナンパかと言われて咄嗟に違うと答えそうになった和美だが、すぐに頭を切り替え、どうやったらスムーズに取材出来るかを考えた。そう、彼女は自身のクラスメイトに高畑の彼女と目されているこの女性の事を調べてこいと、それはそれは恐ろしい表情で頼まれたからだ。その恐怖に負けた事もあるが、自分の好奇心を満たす事が出来ると言う事で、こうして街を彷徨っていたのだ。

 

 運良く見つかり、とりあえず尾行をしていたがこうもアッサリ見つかるとは思わなかった。

 

 しかし、これはチャンスだろう。尾行だけじゃ細かく分からないし、初対面でいきなり取材だと言って聞いても答えてくれないかもしれない。交際を隠したいと思っているかもしれないし、そもそも和美に話す義理はないのだし。ここは相手に調子を合わせて、仲良くなった方が色々聞けるに違いない。和美はそう考えて、夕映にこう切り出した。

 

「あ、えっと……そ、そう! お姉さん、私とデートして下さい」

 

「……はい?」

 

 からかうつもりで言ったナンパかと言う言葉に、まさかの肯定が来て夕映は目を丸くして驚くのだった。

 

 

 

 夕映が元クラスメイトにデートを申し込まれていた頃、学園長室では数人の教師が近右衛門に詰め寄っていた。

 

「学園長! 手出し無用とはどう言う事ですか!?」

 

「じゃから彼女は敵対勢力ではないし、むしろ被害者なのじゃ。そんな彼女を責めるのは筋違いじゃろぅ?」

 

「そんなのデタラメかもしれないでしょう!」

 

「ちゃんと確認もしたし、連絡先も分かっておる。その上彼女は高畑君の知り合いじゃ。身元の保証は十分じゃろ」

 

 学園長に詰め寄っている教師の1人、ガンドルフィーニは近右衛門が正体不明の魔法使いを簡単に帰した事が信じられないようだ。

 

「知り合いだから大丈夫などと、どうして言えるのですか! せめて、身柄を預かるくらいするべきではないのですか?」

 

 ガンドルフィーニはそう憤りを隠さず怒鳴るが、そこに高畑が口を挟んだ。

 

「彼女が麻帆良や生徒達に何か悪さをしたのなら、その時は責任を取って僕が出ます。それで許して下さいますか?」

 

「高畑先生。……貴方がそこまで言うのなら、今は大人しくしておきましょう。しかし、何かあった時には……」

 

「えぇ。僕が彼女を討伐します」

 

 高畑とガンドルフィーニの間で奇妙な緊張感が流れる。誰もが身じろぎも出来ないそんな状況の中で、幼い子供の笑い声が響いた。

 

「クフフッ! アハハハハハッ!!」

「何がおかしいエヴァンジェリン!」

 

「クククッ! タカミチはいやに自信があるようじゃないか。そんなにその侵入者が信じられるのか?」

 

 声の主は、部屋の片隅にある接待用のソファーに陣取り、緑茶をすすっていた金髪も眩しい少女、その名もエヴァンジェリン・A・K・マグダウェル。この麻帆良に住まう真祖の吸血鬼だ。見た目10歳ほどの少女だが、その実すでに600年は生きている世界でもっとも高齢な幼女である。

 

「あぁ。少なくともこの麻帆良に危害を加える事はないだろう」

 

「どうしてそう言い切れるのだ? 人なんてものは幾らでも変わるものだぞ?」

 

 ニヤニヤしながら高畑を問い詰めるエヴァンジェリン。いつもはどんな議題でも賛成反対どちらにもつかないどころか、こう言う会議にも出ない彼女だが、今日は何故か出て来て高畑を責めている。なんとも珍しい光景だ。

 

「それでもだ。僕の知る彼女はそんな事はしない」

 

「彼女、か。なんだタカミチ坊や。そいつは女なのか。惚れてるのか? ん?」

 

「………そんなんじゃないよ」

 

 エヴァンジェリンの台詞に少し驚いた様子を見せた高畑だが、すぐにいつもの薄い笑みを取り戻して否定の言葉を発した。エヴァンジェリンはそんな彼の様子に眉を少し上げて訝しんだが、やがてニヤリと笑って緑茶を一口すすったのち、こう言った。

 

「面白い……。タカミチ、その女を連れて来い。ここにいる連中も直接見れば少しは安心するだろう」

 

 学園長室に集まっていた教師達はその言葉に驚いた。エヴァンジェリンが他人の事を考えたような発言をするなど今まで1度も無かった事だ。にも関わらず、今回麻帆良を心配する教師達の心情を考えたかのような提案したのだ。もしや偽物か? はたまた何か裏でもあるのか? 等と教師陣は考え、エヴァンジェリンにキツイ視線を送った。

 

「エヴァンジェリン、貴様何を考えている?」

 

「黙れガキ。私はこの朴念仁が興味を持った女とやらを見てみたいだけだ。今までどれだけ女が寄ってきたかわからんというのに、私の知る限り1度も手を出してない。その手の店にも行かないし、生徒を食う訳でもない。実は男色なのかと疑った事もあった程だ。そんな奴が自分で責任を取ると言って庇う女。見てみたいじゃないか」

 

 愉快そうにクスクス笑いながら言うエヴァンジェリンの言葉に、ガキ呼ばわりされたガンドルフィーニは納得しつつも、今一つ素直になれなかった。一方男色の気を疑われた高畑は、少し頬を引き攣らせながらエヴァンジェリンを見ていた。

 

「タカミチ、その女はどこにいる?」

 

「……もう帰したよ。今頃は家に居るんじゃないか?」

 

「今から連れて来い。早い方がいいだろう? ガキ共」

 

 エヴァンジェリンの暴言に色めき立つ教師達だが、そんな彼らの目を無視してマイペースに茶をすするエヴァンジェリン。そんな彼らを見て溜息をつきつつ、近右衛門はとりあえずのまとめに入った。

 

「仕方ない。高畑君、彼女を呼んできてくれ。このままじゃ誰も納得してくれんじゃろう」

 

「しかし、学園長……」

 

「彼女も分かってくれるじゃろうて」

 

「………分かりました」

 

 そう言い残し、高畑は学園長室を後にした。

その後、他の教師達も一旦帰って行き、室内には近右衛門とエヴァンジェリンの2人だけとなった。

 

「……ジジイ。貴様、その女がどう言った人物か知っているな?」

 

「……ふぅ。勿論じゃ」

 

「言え。何者だ?」

 

「ただの魔法使いじゃよ。ここに来たのも、マジックアイテムの暴走事故じゃ。帰れるならすぐ帰ると言っておったし、しばらくそっとしておくのも手だと思ったのじゃがなぁ……」

 

 暢気とも言える言動に眉を寄せるエヴァンジェリン。麻帆良の守護に細心の注意を払う近右衛門が、これほど楽観的な態度を取るのは珍しい。エヴァンジェリンはこれから来るその侵入者に更なる興味が湧いた。

 

「貴様もその女の色香に迷った口か?」

 

「いや、儂はもっとボリュームがないとの」

 

「………殴られるんじゃないか?」

 

「フォッフォッフォッ!」

 

 同じ女として、スタイルの事をどうこう言われるのは好きではないエヴァンジェリンは、ジトっとした目で近右衛門を睨むが、そんな事はお構いなしに近右衛門は笑っていた。

 

「ふん! ったく、このスケベジジイが。……それで、そいつの名はなんという?」

 

「名前か………。本人に聞いとくれ。答えてくれるかは分からんが」

 

「……どう言う事だ?」

 

 不可解な近右衛門の答えにエヴァンジェリンは眉をひそめた。

 

「名前を明かせない理由があるんじゃよ。本人が良いと言うならいいんじゃが、儂が勝手に教えるのはダメじゃろう?」

 

「なんだそれは。まぁいい。来たら聞き出してやるか」

 

「……聞いて驚くがいいわぃ」

 

ボソっと近右衛門が呟いた言葉は、お茶請けとして置いてあった煎餅を食べる音にかき消されてエヴァンジェリンには聞こえなかった。

 

「むぐむぐ……。何か言ったかジジイ?」

 

「いんや、何にも。そうじゃ、いい羊羹があるんじゃが食べるかの?」

 

「うむ、当然だ」

 

 やれやれと席を立ち、しまってあった羊羹を戸棚まで取りにいく近右衛門は、この後1時間もしない内に来るだろう夕映に、面倒な事態になった事を心の中で謝った。

 

(1番上等な羊羹は、夕映君に出してやるとするかの。それで許しておくれ)

 

 

 

「ジジイ、まだか?」

 

「少しは待てんのか、600歳児」

「誰が600歳児だっ!!」

 

 

 







ふぅ………、なんか文章が繋がってない気がする。
けど、もう気にしないでおこう。色々考えすぎて書く事が分からなくなったし。
次からは妄想全開で、常識とか考えないで書いて行こう。

では、次回をお楽しみにぃー。

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