魔法探偵夕映 R《リターン》   作:遁甲法

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 忙しさにかまけて全然書いてなかったから、まるで上手く書けないわぁ。

基本プロットなんて書いてないから1度妄想が止まるとまったく書けなくなるのが困りもの。しかも、なんか変……でも、これ以上文章が出て来ないので投稿。


昼間っからもうっ

 

 

 

 

 買い物を済ませた夕映は、抱えた袋を落とさぬよう気をつけながらなんとなしに先ほど拾ったカードを眺めていた。

 

「んーむ………、見れば見るほどよく出来てるです。一体どうやって作ったのやら」

 

 まるで専門の業者が作ったような精巧な出来だ。単なるイタズラにしては手が混みすぎているとも思えるが、ここ麻帆良において単なる学生が下手な業者より技術を持っていると言うのは良くあることだ。もしかしたらこれ位簡単に作る事が出来るサークルや部活があるのかもしれない。しかし、問題なのは……

 

「これに見覚えがある気がするのは何故なのでしょう?」

 

 夕映は記憶の中にあるソレの詳細を探るが、イマイチちゃんと浮かんでこない事に顔をしかめる。

 

「やはり朝倉さんに聞いてみましょう。このままじゃ気持ち悪くて仕方ないです」

 

 これがどう言う物かは聞けば彼女はどう答えるだろうか。イタズラに使う前に見つかった事を悔しがるか、はたまたどうにかはぐらかそうとするか。どちらにしても彼女が犯人ならそれで解決するはずだ。

 

「そうと決まれば早速………?」

 

 夕映は和美へ電話するべく携帯を開きアドレスを呼び出そうとした時、不意に一つの単語が脳裏に浮かび上がった。

 

それは夕映が知らない単語。だが不思議としっくり来るその言葉を、夕映は無意識に呟いた。

 

「【……アデ……アット】」

 

 その瞬間、持っていたカードが眩く光り、夕映は思わず目を閉じてしまった。そして数秒経って恐る恐る目を開けてみると、今まで持っていたはずのカードが消えていた。

 

「あれ……? カードが失くなってるです。どっ、どこに!?」

 

夕映は慌てて辺りを見回すが、あの自分の絵が描かれたカードはどこにも見当たらなかった。

 

 

 

 その頃、未来からやって来た魔法探偵と言う一風変わった肩書きを持つ綾瀬(ゆえ)は、椅子にもたれて暇を持て余していた。

 

「あぁー………、何もする事がないです」

 

 組んだ足を机の上に投げ出して、魔法使いが被るような三角帽子をアイマスク代わりに乗せた彼女は、椅子をゆりかごの様に揺らしながら休日の午後の過ごし方を考えていた。先ほどまでは麻帆良のパパラッチと自称する1人でも姦しい娘が居たのだが急な呼び出しを受けて帰宅してしまっていた。おかげで何もやる事がなくなった(ゆえ)はとりあえず昼寝でもしようとしたのだが、あいにく今日は十分睡眠を取っていたのでいかにグータラしようとも眠気などやってはこなかった。

 

むりやり眠ろうと羊を数えてみたりもするのだが30分もやった所で飽きてしまい、(ゆえ)はとうとう眠る事を諦めた。

 

「こうなったら図書館島にでも行きますか。下の方に潜っていけば何かおもしろい本が見つかるかもしれないですし」

 

 そうと決まれば、と(ゆえ)は椅子から立ち上がりコートが掛けられたハンガーに向かうが、そこには何も掛かっていなかった。

 

「おっと、そう言えば和美さんに貸したんでした。ふむ……、まぁこのままでもいいですね。今日は暖かいですし」

 

 代わりのコートや上着を出すのも面倒だと思ったようで、(ゆえ)はシャツとジーンズだけと言うラフな格好のまま扉に向かっていった。その時、急に彼女の足下から光りがあふれ出し、すぐに全身を包み込まれてしまった。

 

「ぬ?……これは、パクティオーカードの? ど、どういう事で………す? って、ひぅっ!?」

 

 彼女を包み込んだ光は、着ていた服を全てかき消して新たな服を彼女に着せていった。それは彼女にとって懐かしい麻帆良学園中等部の制服だった。もう卒業して7年もたち、年齢も23歳となった(ゆえ)は、パクティオーカードに初期登録されている制服を出す事も無かったので、まさに卒業式以来の制服だった。

 

「カードの初期衣装!? 何故勝手にカードが……て、言うか何でこんなに小さいんですかっ!?」

 

 ただ制服を着ただけなら背の低い(ゆえ)ならまだ十分通用するのだが、何故か出てきた制服はとても小さく、彼女の身体を拘束具の様に締め付けていた。

 

靴は入りきらずに踵が出ている上、ニーソックスは太ももの半分を隠すほどの長さがあったはずが膝の少し上までしかなく、しかもやたらと締め付けて来てそこから下の血流を止めている。

 

スカートは下着を隠すと言う本来の役目を果たせないほど短くなっており、しかも動いた拍子にホックが弾けてそのままストンと足下に落ちる始末。そうして出てきた本来隠されるべき下着は、彼女の趣味とある事情によりすぐ脱ぐ事が出来る紐で止めるタイプの物なのだが、こちらも小さい上に無理矢理腰で止めようとしたせいなのか、全体が紐の様になるほど引っ張られ彼女の守るべき所を逆に責め立てていた。

 

更に上がって制服のシャツとブレザーは彼女の上半身をギッチリとホールドしており、腕を動かそうとしても突っ張って思うように動けなくなっている。そして首もとにはネクタイが締められているが、こちらも締めすぎてむしろ絞めるになっていた。

 

「ぐっ! と、とりあえず気道確保です!」

 

 このままでは窒息してしまうと、(ゆえ)は動きにくい腕を無理矢理動かしてネクタイを緩める。その拍子にブレザーとシャツのボタンが弾け飛び、強制的に開いた胸元には白いブラジャーが顔を覗かせていた。小さい胸を更に押しつぶすかのように着けられたブラジャーのおかげで脂肪が押し上げられ小さな、しかししっかりとした谷間を形成している。しかし、どんなに動こうともスカートやシャツの様にホックが壊れる事はなかった。まるで、小さい胸に押されて壊れるなどプライドが許さない、とでも言っているかのようだ。

 

「ひぅっ!! く、くいこ………次はこ、こっちですね。くっ、くぬっ!んっ!」

 

 次は自身を責め立てる下をどうにかする番だ。

まだ息はしづらいが、先にこっちをどうにかしないと満足に歩く事も出来ない。ほんの少し動くだけでもある部分が擦れて腰が跳ね、その反動で更に攻められると言う悪循環を引き起こすので、早急に対処しなければちょっと昼間には相応しくない事態になりそうだ。

 

「くぅんっ! ……む、無駄に固いです。引っ張ると余計に擦れ………っ」

 

 本来解きやすいはずの蝶結びだが、相当力を入れても解けないほど固く結ばれていて、(ゆえ)が引っ張る度に更なる刺激を与えてきた。

 

「あ、足も痺れて……あっ!」

 

 重要性が低いからと後回しにしていたニーソックスにより、足の血流が滞り痺れ始めてきた。そしてそれに気を取られたせいでバランスを崩し、(ゆえ)は盛大にすっころんだ。

 

「くぉっ! ん~~~~っ!!!」

 

 尻餅をついた衝撃で身体の芯に電撃が走りしばらく身体を丸めて動く事が出来なくなる事数秒、(ゆえ)は霞む視界に転がった分厚い本を見つける。

 

「そ、そうです。これがパクティオーカードの着せ替え機能の仕業なら、カードに『戻せ』ば………」

 

 下を刺激しないようにソロソロと手を伸ばし、本に触れた所ですぐに呪文を紡ぐ。

 

「【アベアット……ッ!】」

 

 その途端、パァーっと(ゆえ)の身体が光り、それが収まるといつものシャツとジーンズと言うラフな格好の(ゆえ)が横たわっていた。

 

「はっ、はっ、はっ………はぁ~~、酷い目にあったです」

 

 本に手を置いた姿勢のまま、(ゆえ)は深くふかーくため息をついた。

 

「あふっ………ふぅ……。なん……だったのでしょう? カードが勝手に発動するなんて、本来あり得ない事のはず………」

 

 (ゆえ)は軽く顔を上げて手に取ったカードを睨むが、そこにはかつての自分が魔法使いの出で立ちで佇んでいるだけで何か変わったものがある訳でもなかった。

 

「これもここに来た影響でしょうか……? もしそうならマズイです。次があるのか分かりませんが、もしあってそれが教室でとかだったりしたら………いろんな意味でアウトです」

 

 カードが暴走した理由は分からないが、これが過去に来たせいで起こった事ならこれからも起こる可能性は十分ある。魔法の秘匿云々にも関わるが、それより何より先ほどの様な痴態を不特定多数に見られる事になってしまう。今回は自室だったし、どうにかスイッチが入る前に解決出来たから良いものを、もし外でそんな事になってしまったら………

 

「……人生終わりじゃないですか」

 

 今まで不可抗力ながらも散々人前で素肌を晒して来たし、変態魔族に後れを取って以来、戦闘中に全裸にされても動きが鈍らないように訓練をして来たから見られるくらいならまだ我慢出来る。しかし、もし人前でそんな痴態を晒そうものなら一生外を歩けなくなってしまうだろう。

 

「そんな事になる前に原因を突き止めなければ……。そんな所のどか以外に見せる気はないですよ」

 

 (ゆえ)は早速原因を探ろうとカードの解析を始めた。だが、いつものマジックアイテムを解析する為の魔法では、パクティオーカードであると言う見れば分かる様な結果しか出てこない。カード自体を調べるなど今まで1度もやった事が無いので、解析の取っ掛かりも見付けられなかった。

 

「むぅ………これは原因の前にパクティオーカードとは何かと言う所から調べないといけないですね」

 

 使用頻度も高く、(ゆえ)にとっては魔法使いの象徴のとも言える物なのだが、付き合いの長さに比べて知っている事は驚くほど少ない。先ほど酷い目に合わされた着せ替え機能の他に、一方通行な通信、アーティファクトの召喚、マスターのみ使用出来る従者の召喚、と片手で足りる程度だ。

 

「そう言えば委員長(エミリィー)がアーティファクトカードは選ばれた者のみに与えられる云々とか言ってたような……」

 

 (ゆえ)はアリアドネーに留学した時、以前から気になっていたと言ってどうやったらアーティファクトが手に入るのだと問い詰められた事を思い出す。アーティファクトは選ばれた者にしか与えられないのに、何で貴女達は揃いも揃って持っているんですかと詰め寄られたのだ。あまりにしつこく言うのでならば試しにシテ見るかと聞くと、顔を真っ赤にして怒り出しいつも以上に説教をされた。しばらく怒鳴り散らしていた委員長(エミリィー)だが、結局皆で取り押さえて仮契約してみるとアッサリアーティファクトカードが出たので彼女は1時間ほどカードを見つめたまま呆然としていた。

 

そして、そこまで思い返してある事に気が付いた。アリアドネー騎士団の候補生を育成する学校においてトップの成績を収めていた委員長(エミリィー)でさえそうであったように、魔法の本場である魔法世界(ムンドゥス・マギクス)でもパクティオーカードの詳細は知られていないのだ。

 

「………むふっ。これはいい暇潰しが出来たです。実益も兼ね揃っている所が特にいいです」

 

 暇な休日の過ごし方が分からなかった(ゆえ)にとってこれ以上無い暇潰しだった。

 

「そうと決まれば早速………………って、どう調べましょう?」

 

 普段なら自身のアーティファクトを使うか数多くの魔道書を開くのだが、現在魔道書は他の書類などと一緒に預けてしまっているし、そもそも覚えている限りではパクティオーカードに関する何かが書いてあるか本は無かったはずだ。アーティファクトを使うにしても、先程の事もあり無防備にカードを使うのは少し躊躇われる。

 

「…………いえ、女は度胸と言いますし、一つやってみますか。もしさっきの様な事になっても部屋の中なら誰が見てる訳でも無いですし…………ちょっと、良かったですし……って、何言ってるですか私は」

 

 何やら言い訳がましい事を呟きつつ(ゆえ)はカードを構える。顔の前まで持ち上げて数秒見つめて覚悟を決めたのち、初めて発動させるかのような緊張感を見せながらゆっくりと呪文を唱えた。

 

「【アデアット】」

 

 呪文と共にカードが光り、溢れた光が(ゆえ)の服装を変換していく。そして光が収まると、分厚い本と魔法の箒を持ち、魔女風の三角帽子に黒いローブ、そして女子中等部の制服を今度はしっかり成長した彼女の体格に合わせたサイズで纏った(ゆえ)が現れた。変身が終わると、(ゆえ)は自分の姿を見回してちゃんと発動した事を確認し終えると、ゆっくりと安堵のため息を漏らした。

 

「ふむ、今度はちゃんとリサイズされた様ですね」

 

 久しく着ていなかった制服の感触を懐かしく思いながら一応それなりに育ってくれていた事を再確認出来た(ゆえ)は、姿見に映る自分を見て別に服まで変える必要は無かった事に気付いた。

 

「ま、まぁ、小さいサイズで発動しないと確認出来たことですし」

 

 23にもなって中等部の制服を着ている自分がどうにも恥ずかしく、言い訳がましい独り言が増えていく(ゆえ)であった。しかし、成人女性としては背が低い事もあり彼女の制服姿はそれほど違和感を感じなかった。多少大人びた雰囲気はあるが、このまま教室に居てもおそらく気付かれないだろう。特に彼女が在籍していたあのクラスなら、彼女よりよっぽど違和感のある少女達がいくらか居たので十分紛れられるに違いない。

 

一頻りブツブツ言っていた彼女は、気を取り直して早速調べ始めようと[世界図絵](オルビス・センスアリウム・ビクトウス)を開く。

 

「……あーー……、その前に食料を調達して来ますか。きっと長丁場になってくれるはずですし、途中で買い物に出るなんて萎える事したくないですし」

 

 何かを調べている時や魔法の勉強をしている時は、極力それだけに集中したい主義の彼女は、一旦全てをカードに戻して買い物に出掛ける事にした。財布を手に取り、カードをポケットにしまった彼女は、何を買おうか考えながら扉を開けると、そこには段ボールが3つ程積み上げられていた。

 

「んむ? なんです、これ?」

 

 伝票などが貼られていない所を見ると宅配便などではないだろう。そもそもここに来たばかりなので何かを送って来る事はないはずである。不信に思った(ゆえ)が段ボールを見回すと、小さなメモ用紙が貼ってあるのを見付け、そこに書かれた文字を見てビシリと動きを止める事になった。

 

『チョト実験をする事にナタから危ないのデ預かてイタ本や書類を返しに来たヨ。お楽しみ中邪魔スルのも悪いと思たカラ声は掛けないでおくネ。   PS、チョト昼間カラ激し過ぎると思うガ、マァ、ホドホドにナ』

 

「お、おぉぅ……」

 

 いつ来たか分からないが、文面的に1番見られたらマズイ所を見られてしまったようだ。彼女は面白がって言い触らす性格では無いが、それが誤解でも知り合いにアレな事をしてたと思われるのはキツイ。

 

「本当にしてたのなら開き直るのも手ですが………。いえ、それもそれで嫌ですね。はぁ………」

 

 テンションがガタ落ちした(ゆえ)はノソノソと段ボールを部屋に仕舞い、重い足取りのまま近くのコンビニまで歩いていった。

 

 

 







さぁ、どう夕映に魔法を気付かせようかしらぁ。

脱ぎ女に出て来て貰おうか、謎シスターにドジ踏んで貰おうか………普通に(ゆえ)がバラすか。むふぅー

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