マスターは犬?...狼?......いいえ大神です 作:シャーロックペン
「はっ!」
戦闘が始まってから数十分が経った。初手のエクスカリバーブッパをマシュの宝具発動により、セイバーの不意をつけたが致命傷には至らず、今の小次郎の攻撃も防がれた。
キャスターの方から援護を期待したいところだが、こちらに向かう連絡すら来ない。しかし、パスはつながっているため生きているのはわかる。
-そぉら!!大仕掛けだ-
そして現在、こちらの状況は佐々木、ほぼ無傷で戦闘続行可能。マシュ、致命傷はないが、宝具発動によりスタミナ切れ間近。俺、右腕損傷、霊力不足に伴うアマテラス化解除。つまりただの犬っころ。
「マシュ、大丈夫?」
「先輩...はい、私は大丈夫です。少し疲れただけですから。それより大神さんが」
「俺も問題ない。霊力切れだ。」
「でもその腕じゃ」
「大丈夫だ。後でどうとでもなる」
合間合間を縫って『一閃』を使うも、セイバーの未来予知に等しい直感で防がれた、全てが。
「そら!!」
「無駄だ」
つまり現状、やつと戦えているのは小次郎のみ。しかも力、速度、魔力量全てで劣っているのに、技術のみであの騎士王とやりあっている。本当にアサシンなのかあいつは?しかし、他が桁違いすぎる、押し切れない。
「む、流石に魔力放出とやらは厄介。これはちとまずいか?」
一旦体制を立て直しこちら戻る小次郎。
そして小次郎にも疲労が溜まり始める。ここに来て魔力量の差が出て来はじめた。俺の回復まではもう少し時間がかかる。チビテラスは所長からなかなか離れてくれないし、守っているのだろうけど。
まだか、キャスター
「小次郎、あとどれくらい保つ?」
「ふむ、いつまでも、と言いたいところではあるが事実あと数分が限度だろう。」
十分だ。
「わかった。なら俺の回復は間に合うはずだ。」
そろそろ、霊力が戻る頃合いだ。次は決める。
「嫌味を言うつもりはないが、今更何ができるのだ?」
「とっておきってやつだよ。最高の不意打ち。小次郎...お前博打は好きか?」
俺の問いに、一瞬目を丸くして、続いて大きく口を開けて笑い出す。
「ははは!!おうとも、何をやるかは知らぬが面白いものを期待させてもらおう!...だが、貴様の信念が通ずる前に私が先にあの壁を...力ずくでこじ開けよう...」
「頼んだ」
「おうさ」
もう一度セイバーへと向かう小次郎。やっぱり英霊ってやつはどいつもこいつもカッコいいやつだ。
「また懲りずに来たのか。アサシン」
距離で言えば五メートルもない。その距離でセイバーは殺気を放ちつつ問いかける。それに対して小次郎は、飄々とした態度のまま殺気を正面から受け止める。
剣士と騎士。
「当然、いつぞやあったかもしれぬ決闘の決着を今度は完璧な状態で迎えようぞ!」
あの夜の決着を。
先に仕掛けたのは小次郎。物干し竿と呼ばれるほど長い剣で、セイバーの間合いの外から攻撃する。あの時との違いは地の利の有無。しかし、それでも小次郎の技量はセイバーを上回る
「知らん、なっ!!」
弾く
「そう、照れるな。その首次こそ落とさせてもらうぞ」
「粋がるなよ!アサシン風情が!!...卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め! 『約束された勝利の剣』!」
「なに?!」
唐突な宝具発動。流石の小次郎もそこまでは予想していなかったようで、回避が一歩遅れた。左腕が吹き飛ぶ。
「くっ!腕を一本持っていかれたか」
「佐々木さん?!」
マシュが驚きの声をあげる。
「ここまでだな、少しは、期待したが残念だ。私を倒せぬようではこの先もはや進む価値もない。」
セイバーが落胆の顔をカルデアの一行へ向ける。藤丸は自分が戦えない不甲斐なさに震え、マシュは大神と小次郎をもってしても届かないことに絶望していた。
しかし
「いやいや、勝手に終わるでない。片腕がなくとも剣は振れる。では続きといこうか」
小次郎が淡々と剣を構える。気迫は先程と一切変わらない。むしろ増している。そしてその言葉に偽りはない。
「何を言っている。そこまでやられれば差は歴然」
セイバーが侮蔑の言葉を述べる。
「ははは!片腕では勝てぬと?......その勘違い命取りとなるぞ?」
セイバーの反応が遅れる速度で間合いまで近づく。あまりの一瞬のことで、セイバーは反撃できない。手負いの獣がいきなり、走り出したのだ。しかし、手負いの獣ほど怖いものはない。
「なっっ?!」
驚愕に顔を染める。
「秘剣...燕返し」
宝具発動。全くの同時に放たれた二つの斬撃がセイバーへと襲う。
「ぐっ!!」
二つの斬撃が肩と脇腹を切り裂く。ここに来て初めてセイバーがよろめく。
「ふむ、片腕ではふた振りが限界か。いやはや、私もまだ甘い。だが、これくらいでよかろう?大神殿」
そして絶好のタイミング。文字通りのラストチャンス
「あぁ、十分だ!」
大神が、渾身の一振りをよろめいていたセイバーの死角から浴びせる。が、セイバーの直感はそれに気づく。
「無駄だ!」
振り向いたセイバーの聖剣が大神の心臓を貫く。
人が心臓を貫かれて動けるのは数十秒と言われる。つまり、それが彼が意識を保てる限界。
「がはっ?!」
痛みに顔を歪める。心臓を貫かれる痛みなど誰が想像できよう、痛みでショック死するのが普通だ。
「大神さん?!」
マシュが泣き出しそうな声で叫ぶ。
「キャス...タァァー!!」
最後の頼みに託す為に叫ぶ。自身の最初の契約者。
「あいよ!!またこの感じかよ」
洞窟の入り口に立つはキャスターのサーヴァント。準備は万端。ならば彼の攻撃は必中するのが当然。当たランサー、ではない。彼は今キャスターである!!もう一度言おう彼はキャスターである!!
「キャスターだと?!貴様、アーチャーはどうした!!」
「それならもう終わってるよ!!喰らいなっ!」
施されたルーンの魔術が起動する。つまり彼の宝具の開帳。キャスターの最高の攻撃。
が、セイバーも迎撃しようと動き出す。しかし、貫いた聖剣が抜けない。さらに四肢が動かない。
「ぐっ、なんだこれは、墨?」
見ると墨で全身が四肢が覆われていた。まるで描かれたように細かく鮮やかに。
「もう一発!!」
刺されたはずの大神が、もう一度現れる。たしかに剣には何かが刺さっていた感触があった。...さっきまでは
「何?!貴様は心臓をつらぬいたはず?!」
死んだと思った奴からの奇襲。それは防げるはずもなく。
「届けぇ!!」
セイバーを斬り伏せた。
胃袋すげー(棒)
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