マスターは犬?...狼?......いいえ大神です   作:シャーロックペン

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視点を変えて書くのって難しいですね


マシュは可愛い 立花談

特異点、所長はそう言った。かつて違う時空で聖杯戦争が行われた地らしい。炎に包まれえぐれた大地がカルデアの惨劇をわたしに思い出させる。

 

今は、デミサーヴァントとなった、可愛いカワイイ後輩のマシュと所長とともに生存中だよ。

 

今は、安全に会話ができる場所を探しながら、どこかにいるかもしれない大神くんを探している。私たち3人、マシュ、所長は合流できたが、未だに大神くんだけ見当たらない。マシュの提案で彼を探しながら歩いている。

 

これまでは、マシュのお陰で戦闘せずに難を逃れてきたけど

 

「先輩、所長、敵性反応です!応戦します。」

 

今回はそうは行かないみたいだった。所長も立ち直っていないのに...

 

「うん、頼んだよ!がんばって」

 

マシュに声援を送る。けど、わたしにはそれ以外出来ることがない。魔術師でもない一般的な家庭に生まれマスター適正のみでカルデアにやってきたのがわたし。だけど、両親から、そして先生から教えられたことを胸に今まで生きてきた。それはこれからも変わらない。

 

突然のワープ、知らない世界、通信の取れない状況。全てがうまく行っていない。大神くんもきっとこっちにいるかもしれないけれど、とても心配だ。マシュが私たちの方ににいるってことは、彼は一人なのだから。

 

「なんで?!なんで?!こんなことに!」

 

未だに立ち直ることの出来ていない所長が叫ぶ。何も知らないわたしよりも知っている所長の方が状況の深刻さがわかってしまい、失うものも多くて絶望してしまうのだろう。わたしはスケールがでかすぎて未だにしっかりと理解できていないから一周回ってある意味冷静でいられる。それは、わたしがバカだからなのかな?

 

そんなことはないと信じたい、そしてみんなで生きてカルデアへ戻りたい。今はただそれだけを考えていたい。やめてしまえばきっとわたしも絶望に負けてしまうかもしれないから、私は耐える。

 

「所長!しっかりしてください!」

 

わたしは叫んだ。こんな柄だっただろうか?人に叫ぶなんて久しぶりだ。

 

「だって?!こんなはずじゃなかったのよ!みんな死んじゃったし、レフだって!?あぁレフ!どこにいるの?」

 

他力本願、それができたら何と楽なことだろうか。けどそれは自分のものじゃない。私はそれを知っている。

 

「ハァァァァ!」

 

マシュもまた、なにか必死になっていた。きっと彼のことが心配なのだろう。見たらわかる彼女の心を許せる人。カルデアの燃える炎の中で遠くに少し見えた、乙女の横顔。自覚はないかもしれない。マシュを色に例えたなら、無色、けどこれから染められる無色。誰に染められるのか、何に染められるのか、はたまた誰かに染まるのか。きっとそれは彼女が決めること。

 

マシュが近づいてきた骸骨兵を持っている巨大な盾で押しのけて下がらせていく。敵は彼女に任せて大丈夫。今にも怖くて自分の手が少し震えているけど

 

私は私のすべきことを

 

「でも、今そんなこと言ったって何も変わらないじゃないですか!今、マシュが戦ってくれています。マスターとして私も戦います。でも私じゃ何もできません。でも、でもあなたなら、魔術師と言われるあなたならこの状況を解決することができるかもしれない。」

 

何でだろう?何で私はこんなにも叫んでいるんだろう。怖いから、助かりたいから、所長に苛立っているから?

 

きっとどれも違う。同情でもない。重なるのだ。

 

「でも?!何も思いつかないのよ!わたしには何もないの。誰でもいいから助けてよ!」

 

あぁ、きっと彼女は救われなかったわたしだ。先生と出会えなかった私だ。彼女はきっと誰かに依存している。昔の私のように。誰かがきっと手を差し伸べてくれる。自分がやらなくても他がしてくれる。けれど自分も関わりたい。そんな昔

 

「ふざけないでください!自分で助かろうとしない人が人に救いを求めないでください!自ら生きようとしない人は誰も拾ってくれない。そして、あなたにはここで立ち上がって生きる力がある!」

 

ー 自分で助かろうとしない人間がほかの人間に救って貰えると思うなよ。お前が生きようともがかない限り誰も手なんか差し伸べちゃくれねぇ、強くありたいなら這い上がれ。勝った奴が強いんじゃない。負けてもそこから這い上がる奴が強くなるんだ。嬢ちゃんお前はどうするんだ? ー

 

先生に言われた言葉。私にとっての原点であり今の私である言葉

 

届いて欲しい、

 

「........................死んでも知らないからね」

 

もちろんっ!!

 

「はい!いくよ。マシュ!」

 

「はい先輩!」

 

「とりあえず、撤退するわよ。雑魚が相手だとしてもこちらは戦闘要員が一人、圧倒的に数で負けてるわ。包囲を突破して逃げるのが得策よ。やれるわね!」

 

私たちの可愛い後輩を信じてくださいよ!!この世の正義は可愛さにありっ!つまりマシュが一部のマニアにしか受けない骨なんかに負けるはずはないんだよ!

 

「わっかりました。やっちゃてマシュ!」

 

「セイッヤァァァ!!」

 

円状に囲んでいる骸骨兵たちの一点にマシュが突っ込む。分かっているのだろうか、彼らが相手にしているのは《この世全ての可愛さ》であると

 

本当に分かっているのか?あの声で「先輩」と言われてみろ、きっと何でも聞いてしまいそうになるから!!「先輩?」「先輩!」「先輩...」「...先輩」「先...輩」「せーんーぱーい!」「せーんぱい」...わかるか?全部四文字しか言ってないのにこの素晴らしさが。種d...マシュの声の素晴らしさが

 

閑話休題

 

円の一角をぶち破ったマシュは、道を切り開くようにして進んで行く。盾だけど、

 

円の一角っていったいどこだろう?まぁいっか

 

「今よ、走って!」

 

マシュに続くように私と所長も走り出した。所長は強化の魔術なるものを使用しているらしく、かなり走るのが早い。マシュは敵を倒してなければもっと速く走れるのだろう。私?地力ですよ。火事場の馬鹿力ってすごいね!今なら100m10秒台が出せそうだよ

 

 

 

 

 

 

「はぁ...はぁ...ん、はぁ」

 

息も絶え絶えとはこのことだろう。いや、一般人に全力ダッシュの維持はきついって、しかもこんな悪路で、無理があるよ。

 

「やりましたね。逃走成功です。今のところ近くにあの骸骨兵はいません。」

 

マシュが周囲の索敵を行う。本当に彼女が一緒にいてくれてよかった。私だけだったらどうなっていただろうか?考えたくもないけど、きっともがく。死にたくないから。諦めたくないから、私は生きることに、辛いことに我慢する。我慢の対義語はやっぱり諦めだろう。

 

「...ふぅ。所長、なんとかなったでしょ?」

 

振り返って笑顔を向けて言う。少女たるもの常に笑顔笑顔!!

 

「...そう、ね。良かった。わたしでもちゃんと..............いえ!当然です。わたしを誰だと思っているの!アニムスフィア家の現当主よ。」

 

そうそう、それでこそ所長だよ。会って全然まもないけど。所長のことは全然知らないけど!

 

「そうですね。当然です。ね、マシュ」

 

「はい、当然でsガッ?!................そんな、何も敵性反応はなかったのに?!」

 

瞬間、マシュに足が鎖によって貫かれる。そこから巻きつくかのようにマシュの右足に絡みつく。

 

索敵では何も反応してなかったのに!?しかもサーヴァント?!

 

「甘いですね。見たところデミサーヴァントのようですが、戦闘経験が足りていません。獲物を狩るものとして気配を殺すのはアサシンでなくとも当然です。」

 

そんなことまでできるなんて!これが、サーヴァント。見ればわかる今までの骸骨兵たちとの違いが、私でもわかるオーラ。そして何よりも黒く、くらい。

 

「そん、な、サーヴァント!」

 

だめだ。私たちじゃ勝てない。例えマシュの援護を私たちがしたとしても十分も持たない。本能が言っているこれが死だと。でもここで私は下がれない。私が私であるのなら

 

「マシュ、頑張って振りほどいて!」

 

まずは、マシュを脱出さしてから。

 

「んっ!!...ダメです。この鎖びくともしません!」

 

そんな?!マシュがちぎれないなんて

 

「当たり前でしょう?まずはデミサーヴァントのあなたから、優しく殺してあげましょう。」

 

「................先輩、逃げてください。数分なら持ちこたえてみせます。」

 

そんなことできるわけがない。ここで私は引けない。逃げたらいなくなってしまう。一度消えたものは太陽のようには登ってこない。

 

「逃すと思っているのですか?」

 

逃げると思ったのだろう。マシュの鎖を持ったまま私の後ろに移動していた。なんて速さ!

 

「後ろ?!」

 

所長が驚きの声を上げる。私も速すぎてほとんど見えない。

 

「行かせません!くっ」

 

マシュが盾となって攻撃を防いでくれる。しかし、彼女は下がれない。鎖で繋がれているら、はたしていつまでもつのか。でも、そんなことはやらせられない。彼女は死なせられない。どうにか方法が

 

「マシュ...」

 

「お願いです。先輩今のうちに。もう誰かが目の前から消えるのは嫌なんです。だから、絶対に...」

 

マシュが懇願する。

 

いやだ。逃げたくない。私だって誰も失いたくない。

 

「では、さようなら」

 

サーヴァントが手に持つもう一つの武器を振り上げる。

 

「マシュ!」

 

私が叫んだと同時にサーヴァントの頭上から影がさす。

 

「よく頑張ったキリエライト。だが、相変わらずのその頑固さは直した方がいいぞ.........はっ!!」

 

上空から飛び降りてきた狼がその白い全身を使って、口にくわえた剣をサーヴァントへと振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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