エタってはないので、これからもゾウリムシレベル以下の更新速度で執筆します(白目)
Side 信孝
俺が義清の屋敷で生活し始めて10年が経った。
幼女だった幽々子も今年で14歳とこの時代では結婚適齢期を迎え、貴族のみならず皇族からも縁組の要望が来たりしていたが、幽々子はあらゆる縁組を拒否し続けていた
そのことについて本人に尋ねてみたところ、「私が好きなのはただ1人だけですわ、お兄様。 その方以外とは結婚なんてする気はありません。」と思わず魅了されそうな笑みを浮かべた。
そこまで思われる幸せ者を羨みつつ「お幸せに。」と幽々子に告げたら、何故か問答無用で沙織さん直伝リバーブローを見舞い、怒りながら去って行った。
あまりの痛みにのた打ち回っていたせいで、去り際に幽々子が「…お兄様の鈍感」と呟いたことには気づかなかった。
そのことを沙織さんに相談すると、「…孝嗣? あんた幽々子相手に光源氏さながらのこと10年間やっておいてその言葉をあの子の母である私に向かって言えるの? 死にたいの?」
と、眼光だけで人を殺せそうな目つきで凝視されてしまった。
出会った頃は幼女だったし、10年間育ての親替わりだったせいでそういった目で見てこなかったが、よくよく考えたら父親は北面の武士で有名な歌人で、本人はロリ巨乳の美少女ときたら縁談の嵐が来てもおかしくはないわな。
そして、今日もまた沙織さんが流れ作業的に幽々子の縁組要望の使者を追い返している姿を、俺と幽々子は縁側で茶を飲みながら眺めていた。
「沙織さん、今日もまたですか・・・」
「あら信孝さん、おはようございます。 流石に鬱陶しくなりましたね」
「だからってやってきた相手を思いっきり屋敷の外に蹴り飛ばさないでくださいよ・・・・・・。」
「あら、そうですか? 何か菊の紋章入りの法衣を纏った老人が「ワシの嫁に差し出せ!」何て妄言を吐いたものですから」
・・・・・・・・・!?
「ってそれ鳥羽法皇ご本人ですから!! あんた朝敵に成りたいんですか!?」
「あらそうなのですか? ですがどの道幽々子に群がる害虫を排除するのと、義清を修正するのは私の役目なので」
「やっぱ駄目だわこの人早く何とかしないと・・・」
正直時の最高権力者を問答無用で蹴り飛ばすとか、家名断絶どころか九族郎党丸ごと処刑とかされてもおかしくないのに・・・。
「それに、信孝さんも私に言いたいことがあるのでしょう? そろそろこの屋敷を出るとか?」
「!? 何時からお気づきで・・・?」
何でこの人知ってるんだ!? なるべく悟られないようにしていたのだが…
「分かりますよ。 貴方の姿が変わらなければ周りの人たちは不審に思いますからね。 ですから、私たちに迷惑がかかる前に此処を出ていこうとしているのでしょう?」
「・・・・その通りです。 明日、此処を立つつもりです」
「私は貴方が決めたことにとやかく言う資格はありません。 ですが幽々子がどう言うか・・・。
貴方も幽々子が貴方に並々ならぬ好意を抱いているのに気付いているのでしょう?」
「そこが難問ですよね・・・」
正直このことを幽々子に言ったら絶対泣きつかれて止めようとすると思う。
そして俺がその顔を見て、それでも屋敷を去ることができるか出来るかといったら、かなり厳しいと思う。
ただ、幽々子には未だ能力の発現もないので、出来ればこのまま誰か素敵な相手でも見つけて、人として幸せになってもらいたいと思う。
そうなったら東方の世界に幽々子が出てこないことになるが、それでもいいとさえ俺は思っていた。
「幽々子には私からも言っておきますよ。 泣きついて引き留めたりしたらきっと貴方は断れないでしょうし」
「・・・さっきからそうなんですが、沙織さんって俺の心読めたりします?」
「いえ? 私の勘です」
「勘でそこまで正確に読まれたら困るんですけど・・・・」
ただ、俺が言うよりも沙織さんに任せた方が大丈夫だと思うので、幽々子に関しては沙織さんに任せることにした。
~翌朝~
「さて、準備も終えたしそろそろ行くか」
荷物の確認も終わり、そろそろ行こうかと思ったら、突然幽々子が部屋に入ってきた。
「お兄様・・・、行かれるのですか?」
「すまない幽々子。 だが、不老不死である俺はこれ以上一か所に留まることは出来ないんだ」
「行っちゃだめですお兄様!」
そう言って俺に抱きつく幽々子。 周りを飛んでいる蝶もまるで同調するかのようにせわしなく飛んでいる。 って・・・!!
「幽々子、この蝶は一体何だ?」
「これですか? 先日、突然私の目の前に現れたんです。 一体どうしてここにいるのかは全く分からないのですが・・・。」
ちょwww 何で幽々子能力発現してるの!?
これじゃあ幽々子自害ルートフラグ思いっきり立っちゃったじゃんか!?
こうなった以上、優しい幽々子のことだから、この蝶の正体を知って、「鬱だ、氏のう。」とかになる可能性が高い。
だから俺は幽々子に、将来自殺なんてしないように言い含めておいた。
「幽々子、俺からの最後の伝言だ。 これから色々と嫌なこととかもあるだろう。 だからって自分で命を断つなんて馬鹿な真似だけはしないでくれよ。」
「・・・分かりました。 ですが、またここに来てくださいね?」
「・・・努力しよう」
「努力じゃ駄目です! 絶対ですよお兄様!?」
「分かった! 分かったから関節技をきわめようとするのやめてくれ!!」
なんでだろう・・・。 幽々子が妹紅と行動が似てきた。
特に、俺に対して手を出すときとか・・・。
「では、またな幽々子」
「お兄様、最後に忘れ物ですよ?」
「へ?」
《チュッ》
「これは再会の約束です!」
「な!?」
「ではお兄様、また会いましょう!」
そう言って幽々子は屋敷の中へ消えていった。
まさか人生2人目のキスが幽々子とはね・・・。
~2時間後~
俺はあれからしばらく都をぶらついていたんだが、ふとどこかで見たことがある後ろ姿を見つけ、そのあとを追ってみた。 するとそこには、
「さて義清、いや今は西行と名乗っていたか? 覚悟はいいか?」
俺をこの状況に追いやった西行(怨敵)がいた。
「・・・・・・どちらさまでしょう?」
「ほぉ~~? あくまで白を切るか? ならばお前の骨、頭蓋骨から一つずつ丁寧に上から折ってこうじゃないか?」
「ちょっと待て! それ最初の時点で俺が死ぬだろ!? 悪かったからそれだけはやめろ信孝っ!!」
「やっと白状したか。 なら、その心意気に免じて、お前の下半身の関節全部はずすだけで許してやる」
「ちょっと待てそれも確実に死刑ものだぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
こうして俺の西行(怨敵)は天へと還って逝った。
「いきなりひどいじゃないか信孝」
「テメェのせいだろ西行!! それにお前何であっさり復活してるんだよ!?」
「…日ごろから沙織の折檻を受けていた俺の体を舐めないでもらいたい(キリリッ)」
「…自慢できることじゃないが激しく納得した。 つまり慣れか貴様」
「Exactly」
「待て貴様、なぜ英語が発音できる?」
「知り合いに教えてもらった」
…ちょっと待て、何でこいつに英語圏の知り合いがいる?
この時代西洋人が日本には来る気配どころかその存在すら知ってるかどうかの状態だぞ?
「待て、誰だその知り合いは?」
「俺も名前はよく分からんが、以前夢の中で出会った、頭にいばらの冠をして、白い布を纏った男からだ。」
「いいのかキー○ん!? あんた最高指導者だろ!? しかも版権作品から勝手に出張すんな!!」
《いいのですよ。 私が楽しめれば》
《そうやで信孝。 それにこれは神産巣日神の知り合いのあのお方からも許可をもらってるから心配いらへんわ》
「やっぱテメェの仕業かあの駄神ぃぃぃぃぃ!!!」
どうして神にはダメな奴ばっか集まるんだろう・・・。
さり気にサッ○ゃんまでいたことはもうスルーしておこう。 これ以上は俺も持たない…
閑話休題
「さて西行、お前はとりあえず自分の屋敷に戻れ。 そして沙織さんから制裁を受けてこい」
「嫌だっ! 確実に死ぬと分かっているところに行く気はない!!」
「その気持ちはよく分かるがいいのかそんなこと言って? 日頃から受けていると先ほど言ったばかりだろう?」
「だからこそだ!! 何であんな『冥府佐藤邸支部』みたいなところに行かなきゃならないんだよ!?」
自分の妻に対してひどい言いようをする西行だが、後ろにいるどう見ても○王色の○気を纏ってそうな沙織さんと怯えながら西行を包囲しつつある西行家の家人郎党の存在に気づかないのは幸せなのか不幸なのか……不幸だな間違いなく。
「あらあなた? 冥府とは人聞き悪いわね」
「さっ、ささささささささささ沙織ぃ!? 何でここに!?」
「私の勘が告げたのよ。 『貴方近くにいる』ってね」
「くそっ!! だが俺は此処で捕まるわけにはいk《ズンッ!》ぐべらっ!?」
「とりあえず屋敷に逝くわよあなた? 積もる話はそこで・・・ね?」
恐えぇ・・・。 まさか踵落としで震度3レベルの揺れを発生させるとは・・・。
「では信孝さん、また会いましょう」
そう言って、沙織さんは西行を引きずって屋敷へ帰って行った。
俺は何も見なかった・・・!!
信孝 side out
Side 紫
「ホント信孝どこにいるのかしら?」
私はあれ以来、信孝の足取りを追って各地を回っている。
だが、私がつく少し前にその地を離れたり、私が去ってからほんの数日後にその地に訪れたりと何故か機会に恵まれない。
少し前に、信孝は「藤原兼定」という偽名を使って生活しているという情報を手に入れ、稗田家の娘にも協力してもらって探しているのだけど、それでも足取りが掴めない。
特にここ10年ほどは、全くと言っていいほど音沙汰が途絶えているのだ。
そんな状況の中、私は信孝が最近和歌で有名な西行の屋敷にかなりの長期で滞在しているという情報を手に入れ、早速京へ向かった。
(西行邸に長期滞在ということは、そろそろ信孝の見た目の変化がないことに疑いの目を持っている人物が出てきてもおかしくはないわね。 そこをうまくついて、さらに文珠の存在を匂わせて引きずり込めないかしら…?)
文珠の存在があれば近いうちに実施する月面侵攻でより効率的な間引きができるから出来れば引き込みたいのよね。
いざとなれば色仕掛けでもして籠絡してみようかしら・・・?
そう考えつつ、私は西行邸へと向かった。
~西行邸前~
「さてと、ここね」
私はスキマを使って移動し、京の西行邸に着いた。
だが、不思議なことに屋敷の中には西行やその家族どころか使用人の気配すらなかった。
……一族郎党揃って出払うって怪しいわね。 何か事件かしら?
でも、いないものは仕方ないわね。
今日は一旦引き揚げて、明日また来ようかしらと考えていると、
「あら? お客様ですか?」
突然後ろから声をかけられ驚いて振り返ると、15歳ほどと思われる少女が郎党と思われる武士を二人連れて立っていた。
「えっ、ええ。 私は八雲紫と言うわ。 ここに藤原兼定という人がいると聞いてやってきたのよ。」
「兼定・・・、信孝お兄様のこと・・・ですか?」
そう言って彼女は表情は暗くなった。 お兄様って・・・?
それに今この子、兼定ではなく「信孝」と言ったわね。 ということはこの子信孝の正体を知っている・・・?
少し探りを入れてみる必要があるわね…。
「ええ。 信孝がこの屋敷にいると聞いたのだけれど、今は出払っているのかしら?」
「……お兄様は昨日この屋敷を出ていきました」
「……………えぇぇぇぇぇ!?」
またすれ違い!? 運命の神はそんなに私のことが嫌いなの!?
《いやむしろ好きやであんたのこと》
《だけど何故かあなたはもっといぢめてみたいのですよ》
《そうじゃ。 じゃからもうちょい頑張ってワシたちのことを楽しませてくれぃ》
《私の神の加護によって(私が面白く感じるような展開をしてから)必ずあなたは彼と再会できますから頑張ってください》
…何だろう、神よりも魔王の方が私のことをしっかり見守ってくれてる気が・・・。
それに今の気配、私が足元にも及ばないほど強大な力を持っていたような…。
……気にしたら負けね。
「所で紫さんはお兄様の何なのですか?」
「そうねぇ・・・、古い友人よ(ホントは顔見知りかどうかってところだけど、それじゃこの子は口を割ってくれないわね)」
「そうですか。 申し遅れましたが、私佐藤幽々子と申します。 何もないところですが、どうぞ上がってください(この女性は何か油断してはいけないです! 私の勘がそう告げています! 何だかだらしない贅肉でお兄様を籠絡しようとしている雰囲気…!)」
「ええ、ありがとう(この子は油断できないわね。 それに何か聞き捨てならないこと考えてた気が・・・)」
これが、後に私と親友となる西行寺幽々子との最初の出会いだったわ。
最も、最初はお互い醜い心を隠し続けていたけどね。
次回?
近いうちに上げたいです(震え声)