真剣で私にD×Dに恋しなさい!S改 完結   作:ダーク・シリウス

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九鬼揚羽×九鬼英雄

 

 

今日は休日、仕事も休みだ。なので・・・・・九鬼揚羽を朝早く、空き地に連れてきた。

(ヒュームとクラウディオもきたがな)

 

「ここが旅人の住んでいる場所か?」

 

「ああ、そうだ」

 

「旅人は外で住んでいるのか?このテントの中で寝て」

 

「そうだ」

 

「我が九鬼家で寝ないのはなぜだ?」

 

九鬼揚羽が不思議そうに訊ねてくる。九鬼家の従者が寝る場所の方が良いぞ、

と言いたいんだろうけれど・・・。

 

「俺は旅人だぞ?外で寝るのが当然だろ。たまに宿をとるけど」

 

「むう・・・それはそうだが・・・・・」

 

「それと、もう一つある」

 

と、俺が言うと背後から、オーフィスが音もなく現れた。当然、九鬼揚羽は問うた。

 

「誰だ?」

 

「我、オーフィス」

 

オーフィスが名乗る。マジマジと九鬼揚羽が見るけれど、オーフィスは俺の背中をよじ登って

肩に乗っかった。

 

「ここ、我の特等席。譲らない」

 

「・・・・・」

 

絶対に、とオーフィスは九鬼揚羽に告げた。警戒しているのかよ・・・・・。

 

「不気味なオーラを発するな。その赤子は」

 

「ですが、無害そうなので心配はないでしょう」

 

「人の家族になんてことを言う」

 

「貴様はあれか?ロリコンという奴か?」

 

「―――なあ、ヒューム。串焼きのように串刺しになりたいか?

それとも、その髪と髭をバッサリ切って丸坊主になりたいか?」

 

ロリコンじゃないと、顔は笑っているが、笑っていない目の視線で向ければ、

挑発的な笑みを浮かべるヒューム。

 

「くくく、こいつは良い事を知ったぞ。旅人はロリコンだという事をな」

 

「・・・・・無名の執事に九鬼家従者序列0位の執事が二度も破れたということを

九鬼財閥や世界中に知らせたらどうなるんだろうなぁ?」

 

俺がそう言うとヒュームは笑みを止めた。

 

「「・・・・・」」

 

バチッ!

 

「「やるのか?」」

 

臨戦態勢になって睨み合う。そんな俺達にクラウディオが呆れた顔で割り込んできた。

 

「お二人とも、睨み合わないでください。ヒュームは旅人に挑発をしないでください。

あなたは二度も旅人の勝負で破れているのですから。しかも得意の足技で」

 

「・・・・・次は負けん」

 

「二度あれば三度ある。そんな言葉がある事を忘れないでください。

旅人も怒りを治めてください。本当だからと言って怒るのはよくないですよ」

 

「ちょっと待て。俺はロリコンじゃないと分かってて言っているだろう

。俺がロリコンだったら揚羽様はどうなんだよ?射程内に入るぞ」

 

「九鬼財閥の令嬢を狙うロリコンはいないでしょう」

 

・・・・・確かにな。狙ったその日は地獄を見る。

 

「旅人、ロリコンとは何だ?」

 

九鬼揚羽がロリコンのことについて訊ねてきた。俺は・・・・・視線をヒュームに向けた。

 

「・・・・・ヒュームに訊け。年長者に訊くことは勉強になる。俺は若輩者だからな」

 

「む、確かにヒュームはこの中で年長者であったな。

ではヒューム。ロリコンとは何なのだ?」

 

「・・・・・」

 

話を自分に振られてギロリ、とヒュームは俺を睨んでくるが・・・・・、

 

「(言い出しっぺのお前が教えてやれ)」

 

口パクでそう言うと青筋を浮かべる。くくく、さっきの仕返しだ。

さて、どう答える?純粋な子供に穢れの言葉の意味を教える執事なんて、そうはいないしな。

 

「・・・・・小さい少女を楽しませて、共に遊ぶことが好きなことです」

 

「おお、そうか。つまり旅人はまだ小さい我と遊ぶことが好きな人物だったんだな?」

 

「ええ・・・・・そうです」

 

グレーゾーンの答えを言った!って、俺がロリコンと呼ばれていることを知っているから

九鬼揚羽は、俺に対してそんな印象に残るんじゃ?と、

その時。空き地にやってくる複数の気が近づいてくる。

 

「旅人さーん!」

 

「お、来たな」

 

赤いバンダナを頭に巻いた少年と、普通の少年、サイドに茶髪を結んだ少女、

黒い髪に赤い瞳の少女が駆けてやってきた。

 

「あれ?知らないお爺ちゃん達がいるわ。旅人さんの知り合い?」

 

「ああ、この子の家に仕えている執事さんだ」

 

「へえ、お金持なの?」

 

「うむ。九鬼財閥は世界を誇る企業であるからな」

 

「九鬼財閥ぅ?大和、知ってるか?」

 

「テレビで何回か聞いた事がある。確かに世界最大の企業の社会だったな」

 

直江大和は風間翔一の問いに答えると九鬼揚羽は満足気に頷いた。

 

「我の名は九鬼揚羽だ。今日はお前達と遊びに混ざりたく、弟共に来たのだ」

 

ああ、そうそう。弟の九鬼英雄もいるんだったな。で、当の本人は。

 

「フハハハハ!この城は良いではないか!我が九鬼英雄の城に相応しい!

名前は世界を照らす、天照城と名付けよう!」

 

風間城二号の城のバルコニーにいた。子供らしくはしゃいじゃってまぁ・・・。

 

「あっ!その城は俺と旅人さんとオーフィスが作ったんだぞ!

で、城の名前は風間城二号だ!降りてきやがれ!」

 

「愚か者め!いずれ世界を統べるこの九鬼英雄が、下々の輩の言葉に従う道理はない!」

 

「なんだと!偉そうに!」

 

怒った風間翔一は段ボール製の城の中に入っていった。

そしてすぐに九鬼英雄がいるバルコニーに現れては、押し倒した。

 

「ぬお!何をする!?」

 

「うるせ!ここから出ていけ!」

 

「断わる!この城は我の物にするのだ!」

 

「これは俺達の城だ!一緒に作っていない奴が偉そうに言うな!」

 

ドッタンバッタン!ドッタンバッタン!

 

二階から一階へ、物音がする。転げ落ちて来ているのか?

念のために落ちても怪我しないようにクッションを敷いてあるから傷とか打撲は

しないだろうが・・・・・。あ、出てきた。

 

「おのれ!だったら勝負だ!男と男の一対一の勝負!負けた方は素直に全てを認める!」

 

「ぜってぇーに負けねぇ!この城は何がなんでも守るんだ!」

 

そう言って殴り合い、蹴り合って子供の喧嘩が始まった。

 

「おやおや、英雄様が誰かとケンカをするとは初めてですね」

 

「そうだったんだ?」

 

「ええ、ですが・・・これはこれで良いかもしれませんね」

 

「ふむ・・・・・確かに同年代の者と付き合うという事はなかったな。

周りが英雄様の出世と性格に尊敬と畏怖の念を抱いていた。

その結果、心から英雄様と接する者はいなかった」

 

「この!いい加減に倒れやがれ!」

 

「我は英雄、ヒーロ!負けるなどと言語道断!我はどんなことでも、

何事でも全て勝利し、常にトップに立ってきたのだ!」

 

「何言っているんだが分からねえけど!俺は負けたくないときは絶対に負けたくはないんだ!

今はその時なんだよ!」

 

服が土や砂で汚れても、二人はケンカを止めなかった。

 

「さて、最後に勝つのは思いの力だ。どっちの思いが強いんだろうかね?」

 

「ふん・・・・・」

 

「私達は見守りましょう。子供のケンカは子供が付けるべきです」

 

ん、そうだな。その場で腰を下ろして、

オーフィスを胡坐掻いた足の上に乗せてしばらく様子を見守ることにした。

 

 

―――十数分後。

 

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

両者、満身創痍。全身ボロボロで立つのがやっとという感じで対峙していた。

 

「お前・・・・・強いな」

 

「貴様こそ・・・・・」

 

「だけど、次で決めようぜ・・・・・」

 

「よかろう・・・・・だが、勝つのは我だ・・・・・」

 

最後の力を込めて、強く拳を握りしめる。

風間翔一と九鬼英雄という幼い男の対決は・・・・・。

 

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」

 

互いの拳に思いを込めて相手の顔面に突き刺した。

 

「クラウディオ」

 

「勝者は・・・・・」

 

「「・・・・・」」

 

倒れた。殴った姿勢を保ったまま佇んでいる少年は・・・・・

 

「ドロー、引き分けですな」

 

いなかった。二人は同時に倒れたのだから。

 

「・・・・・くっ!引き分けか・・・・・!」

 

「ははは、でも・・・・・俺達の城は守れたぜ・・・・・この野郎」

 

「おのれ・・・・・我は、引き分けなど曖昧な決着は好かん・・・・・」

 

全身で息をする。重傷の傷ではないが、かすり傷や打撲の傷が多いな・・・・・。

 

「だが・・・・・この清々しい気分は・・・・・・悪くはない」

 

「ああ、俺もだぜ・・・・・」

 

「・・・・・我が名は九鬼英雄だ。貴様の名は・・・・・?」

 

「風間・・・翔一だ」

 

「風間翔一・・・・・覚えておこう。その名を・・・・・我を唯一、

引き分けという結果に持ち込んだ男の名を・・・・・」

 

「次は絶対に勝ってやる」

 

「それは我のセリフだ」

 

何時しか、二人は笑いあった。そんな様子を見ていた俺達は呟く。

 

「いやー、あの光景は男の友情って奴だよな?」

 

「そうですな。まるで、旅人とヒュームのようですな」

 

「「こいつと友情なんてごめんだ」」

 

「おや、ピッタリと揃って言いましたね」

 

無言でヒュームを見ればあいつも俺に視線を送ってきた。同時に顔を逸らした。

 

「旅人さん!こいつも仲間に入れようぜ!こいつ、根性あるからよ!」

 

「な、何勝手に言っておるのだ!我は一度もそのようなことは・・・・・!」

 

「良いじゃねぇか!この城を掛けた決闘をした仲なんだ、

この際だ。一緒に使って遊ぼうぜ!」

 

「む、むぅ・・・・・」

 

「それ、決まりー!旅人さん、野球をやろうぜー!」

 

野球と聞いて、英雄がハイテンションになった。

 

「フハハハ!野球か、良いだろう!野球は我の得意のスポーツである!

我の球を打ってみせよ!」

 

「おおいいぜ!やってやろうじゃんか!絶対に打ってやるよ!」

 

ここでも闘争の火が燃えだしたか。

 

「弟め、嬉しそうに笑うではないか」

 

「まあ、良いんじゃないか?楽しくすれば」

 

「ところで、川神百代とはこの中で誰だ?」

 

「私だ」

 

「そうか・・・・・お前か・・・・・ふっ!」

 

九鬼揚羽が川神百代に正拳突きをした。思わぬ攻撃に川神百代は目を丸くしたが、

拳の軌道を手の平で反らして殴り返そうと拳を突き出してきた。

 

ガシッ!

 

川神百代の拳は九鬼揚羽の手の平によって受け止められ、掴まれた。

 

「いきなり良い正拳突きをするじゃないか」

 

「なるほど・・・・・強いな。」

 

「なんだ?お前の弟のように私達もケンカをして友情を深めたいのか?」

 

「フハハハ、試したまでだ。我が執事は我の事より、川神百代に優先するほどのものだから

知る必要があると思ったのだ」

 

そうなのか?と川神百代が俺に視線で聞いてきた。俺は九鬼揚羽に問うた。

 

「揚羽様よ。それは嫉妬という奴か?自分より違う子供を優先した俺に対するそれは

嫉妬という気持ちか?」

 

「・・・・・」

 

俺の問いに九鬼揚羽は沈黙した。その沈黙に微笑ましく思う。

 

「はは、可愛いところあるんだな」

 

「な・・・・・っ」

 

「平日はずっと傍にいてやるから良いだろう?」

 

ポンポンと九鬼揚羽の頭を軽く撫でた。九鬼揚羽は顔を赤く染めて、小さくコクリと頷いた。

 

「(旅人の手・・・・・温かい。父上とは違う温もりであるな・・・・・)」

 

何時の間にか瞑目して、撫でられる感触を楽しんでいるように

九鬼揚羽は俺に撫でられている。

 

「ほう・・・・・」

 

「・・・・・んだよ」

 

「貴様、やはり・・・ロ―――」

 

刹那―――。

 

「飛んでいきやがれ!」

 

ドゴンッ!

 

ヒュームが反応する前に一誠が思いっきり空の彼方へと蹴り飛ばした。

 

「おお、ヒュームが飛んでいったぞ」

 

「旅人はやはりすごいな。足技だけならばヒュームを超えている」

 

九鬼兄弟が感心の声を上げる。クラウディオは飛んでいったヒュームに溜息を一つ。

 

「今のはヒュームが悪かったでしょう。まあ、すぐに戻ってくるかと思いますので

放っておきましょう」

 

「お前、良い性格しているな。まあ、良いか。おい、翔一と英雄様。こっちに来い」

 

二人を呼び寄せる。ケンカした痕が肌や服で分かる。二人の頭を掴んで、あの能力を使う。

すると、二人の体が光り輝き、見る見るうちに傷と汚れた服がまるで時間を

巻き戻したかのように治っていく。

 

「これは・・・・・」

 

「検索はするなよ?働く際に出した条件の一つだからな」

 

傷と服が元に戻れば二人の頭を離す。

 

「すげぇ、傷が治った!」

 

「我が服も新品のように綺麗になった・・・・・旅人よ。お前は一体・・・・・」

 

「俺は旅人。それだけさ」

 

「ああ、そうさ!旅人さんは旅人さんだ!それより、今日もやってくれよ!」

 

「はいはい、分かった分かった」

 

強請られて、風間翔一の腹部を持ち上げる。

 

「そらよ!」

 

「うっひゃあああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

空へ飛んでいく風間翔一。次は川神百代だ。

 

「来い」

 

「ああ!」

 

嬉々として俺に飛び掛かってくる。川神百代も空へ思いっきり放り投げた。

 

「旅人・・・・・どうして二人を空へ?」

 

「ん?投げた時と落ちる時の風が気持ちいいからって遊ぶ度にこうしてやっているんだ」

 

しばらくすれば、先に風間翔一が落ちてきて受け止めればすぐに川神百代が落ちてきた。

受け止めて地面に降ろせば満面の笑みを浮かべていた。

 

「はぁー、今日も風になったな」

 

「空から見下ろせる街は何時見ても絶景だな」

 

満足してくれたようで良かった。

 

「さてと、野球の道具でも用意しようか」

 

「すでにご用意しておりますよ」

 

と、クラウディオの腕にはグローブやバット、野球ボールを抱えていた。

 

「早いな、流石だ」

 

「簡単なことでございます。因みに私はギャグが得意ですがお聞きなさいますか?」

 

「あー、それは後で良いか?英雄様が待ちきれなさそうにしているし」

 

見れば、こっちに顔を見上げて待っていた。

 

「おや、これは失礼。では、遊びましょうか」

 

「そうだな。オーフィス、遊ぶぞ」

 

「ん、楽しみ」

 

コクリと頷く。それからはと言うと、九鬼揚羽と九鬼英雄と共に野球を楽しんだ。

ピッチャーの九鬼英雄が物凄いボールを投げ放てば、

 

「えい」

 

カキーンッ!

 

簡単にホームランを打ち続けたオーフィス。九鬼英雄もオーフィスに対してライバル心を抱くほどに。川神百代と九鬼揚羽も何度かするが、数ではオーフィスが上だ。

 

「むむむ、我のボールをいともたやすく打つとは・・・・・!」

 

「我は見える。お前、遅い」

 

「良いだろう!全力で絶対に三振を取ってくれようではないか!」

 

くくく・・・・・この機に九鬼英雄は遊びにやってくるかもしれないな。

九鬼揚羽と一緒にな。

 

「今日は二人にとって良い日になるんじゃないか?」

 

「私もそう思います。あんなに活き活きと動くお二人は家以外では初めてのことです」

 

「なら、これからも交流をさせ続けるか。それも将来のために繋がる」

 

クラウディオは微笑みながら頷く。それからしばらく、夕方になるまで俺達は遊び続ける

風間翔一達を見守ったり遊びに参加したりして過ごした。

 

 

 


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