真剣で私にD×Dに恋しなさい!S改 完結   作:ダーク・シリウス

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Episode20

常闇のような真っ暗な空間の最奥にポツンと体育座りをしていて、顔を俯かせている子供がいた。

完全に殻に閉じ籠っていて、子供の傍にいる二人の女性の言葉に耳を傾けないでいた。

やがて、二人の女性は子供を抱き締め、涙を流すことしかできなかった。

今までずっと傍にいて、自分達しか知らない子供を見てきた。

子供の性格を熟知しているからこそ、子供の精神崩壊に心から痛んだ。

 

「一誠」

 

「「・・・・・っ」」

 

二人の女性が顔を上げた。そして、目を見開いた。

真紅の女性を筆頭に多人数の男女達が常闇の空間に現れたからだ。

 

「そなたら・・・・・!」

 

「久しいな。だが、感動の再会とは言えないようだ」

 

「そうか・・・・・この世界に来たのか。

これで、この子も幸せになれる。仮初の幸せから本当の幸せに―――」

 

子供の頭を撫でて静かに離れた。真紅の女性、ガイアが子供に近づく。

 

「何時までそうしているつもりだ。一誠」

 

ガイアは子供にそう呼びかけた。だが、反応はない。ガイアはさらに近づいて声を掛けた。

 

「お前は全てを失ったと思っているだろうが、全てじゃなかったぞ。

宇宙に蒼天の人間達の生き残りはいた」

 

ピクッ。

 

僅かだが、一誠の体が震えた。その様子にガイアはさらに畳みかけた。

 

「それにお前は我らという家族がいるだろう。なに落ち込んでいる?」

 

「・・・・・」

 

沈黙する一誠。

 

「一誠・・・・・」

 

ガイアが微笑んだ。拳を振り上げて―――。

 

「いつまでも落ち込んでいるんじゃない!」

 

ガッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

とても殴ったような音ではなかった。一誠の頭にガイアの拳が直撃して、

一誠は激しくその場でくるくると回った。

 

「ちょっ、ガイアさん!?いくらなんでも回るぐらいの力で殴らなくても!」

 

「ふん、元々我は一誠の母親代わりでもあり、姉でもあり、師でもあるんだ。

何時までも失ったものにこだわり続けるならば、叱って殴るのは当然だろう」

 

「あなたにとっての『殴る』は山一つ崩す程なんですけど」

 

「なんか、言ったか?」

 

握り拳を作って呟けば、この場にいる全員が思わず首を横に振った。

 

「・・・・ぃたぃ」

 

子供の一誠の頭に大きなタンコブができた。一誠はようやく顔を上げた。

涙目でガイアの姿を視界に入れれば、

 

「・・・・・あれ・・・・・ガイア?」

 

「・・・・・お前、気付いていなかったのか・・・・・?」

 

今さら気付いたような反応にガイアは当惑した。

そこまで一誠の精神が崩壊していたのだろうか?と。思わずにはいられなかった。

 

「・・・・・皆もいる・・・・・どうしてここに?僕に何か用?」

 

「・・・・・一誠」

 

呼称も「俺」じゃなく「僕」となっている。

 

「何か用ではない。お前と話しをしに来たんだ」

 

「・・・・・ああ、そういうこと。でも、それは僕と話すべきじゃないよ」

 

「・・・・・なんだと?」

 

目の前の一誠は紛れもなくガイアが知っている子供の一誠。

だが、自分と話すべきではないと子供の一誠に言われ、ガイアは怪訝になった。

 

「お前は一誠だろう?」

 

「うん、確かに僕は兵藤一誠だよ。でも、僕は『鍵』みたいな存在の兵藤一誠だよ」

 

「・・・・・何を言っておるのだ?」

 

「僕は精神と魂が別れちゃっているんだ。肉体は器みたいな役割で精神と魂を納めて

ようやく個の存在となる」

 

「つまり、お前は精神か魂の一誠と言いたいのか?お前はどっちの一誠だ?」

 

「僕は精神の兵藤一誠」

 

ガイアの指摘に子供の一誠は答えた。

 

「なら、魂の一誠は?どこにいる?」

 

「あそこ」

 

精神の一誠が指した方へ向ければ、先ほどまでなかった物が存在していた。

―――禍々しいオーラを漂わせて何重にも厳重にも鎖で何かを縛っているような

巨大な鎖の塊が浮かんでいた。

 

「あの中に、魂の僕がいる」

 

「あの鎖は一体・・・・・」

 

「闇だよ。兵藤一誠が抱えていた闇そのもの。鎖に具現化して魂の兵藤一誠を縛っているんだ」

 

「闇って・・・・・これがイッセーの闇・・・・・?」

 

「この世界に来て、蒼天が侵略されるようになってから成長した。

でも今回、蒼天が滅ぼされてそのショックで闇が精神と魂を分けてしまったんだ」

 

悲しげに精神の一誠は鎖の塊を見つめる。

 

「魂を解放するには?」

 

「鎖を解くしかない。でも、簡単じゃないよ」

 

精神の一誠が鎖の塊に向けて気弾を放った。攻撃されていると認知した鎖の一部が動き始め、

意志を持っているかのような動きで気弾を弾いた。

 

「闇の鎖は意志を持っている。それに鎖を解くには引っ張るべき者じゃないとダメなんだ」

 

「どういうことだ?」

 

「選ばれた人間が大地に突き刺さった剣を引きぬく事で真の勇者となる。

それと同じだよ。引くべき者が鎖を引っ張らない限り、鎖は解く事は絶対にできない。

それはこの場にいる全員がその引っ張るべき者。だけど、この場にいる全員だけじゃ足りない」

 

「足りないって・・・・・他の皆も引っ張らないとダメなの?」

 

「うん、特に僕と関わった人達じゃないとダメだよ」

 

ガイア達は顔を見合わせる。一誠と関わった人達とは、

現世で見張っているメンバーも含まれている。

 

「わかった。準備をしてまた戻ってくる」

 

「うん、僕達はここにいるから」

 

一度、ガイア達は現世に戻ることにした。精神の一誠の言う通りならば、

今この場にいるガイア達だけでは人手が足りない。態勢を立て直して出直す。

 

―――○●○―――

 

―――川神院―――

 

「よかろう、ワシも力を貸そう」

 

「ありがとう、じーちゃん!」

 

「ジジイがいれば、どんな相手だろうと一誠を救える可能性が大きくなるな」

 

「これこれ、あんまりワシを頼るではない。これでも現役を引退しておるんじゃぞ」

 

「まだまだ現役じゃないか」

 

川神姉妹は一誠の奪還のため、戦力を集めていた。特に身近で強力な実力者のみだ。

 

―――九鬼家極東本部―――

 

「ヒューム、クラウディオ。お前達も協力してほしい」

 

「はい、仰せのままに」

 

「もう一人の川神百代と葉桜清楚の存在も気になりますからなぁ。

私の力を必要とあらば喜んで振る舞いましょうぞ」

 

「うむ、他に九鬼家従者部隊十五位~四位の者達も引き連れよう。

これは歴史に残る戦いとなるであろうからな!」

 

九鬼英雄も強力な助っ人を加えることが成功した。

 

―――蒼天メンバーズ―――

 

九鬼英雄に一時的な休暇を得て、桃花、華淋、

雪蓮は数人の護衛を引き連れて中国の山奥にいた。

 

「そろそろこの辺りのはずだわね」

 

「ふええ・・・・・やっと着くんですねぇ・・・・・」

 

ぐったりと、額に汗を浮かばせ、疲労困憊とばかりだるそうに体を前目乗りにして

坂道を歩く桃花に雪蓮は呆れ顔で言った。

 

「まったく、桃花ったら、胸ばっかり成長して、武の方はちっとも成長しないんだから。

体力の方も増やさないとこれからやっていけないわよ?

 

「胸はどうしようもないんです!

ご主人様だって、『人にはそれぞれの得意不得意がある』って慰めてくれましたもん!」

 

「それ、一誠が絶対に苦笑いを浮かべていたでしょう」

 

「違います!抱きしめながらですよ!」

 

「・・・・・ちょっと、私も苦手な部分を一誠に見せつけようかしら?」

 

「あなたたち・・・・・」

 

二人の王の言動に溜息を吐く華淋であった。と、その時。3人の前に人影が舞い降りた。

 

「ここから先は―――!」

 

「あっ、見つけた!」

 

「え?」

 

疲労困憊の桃花が物凄い速さで現れた少女を捕まえた。

華淋達が「速っ!?」と今まで見せた事のない桃花の動きに驚愕している余所に桃花は懇願した。

 

「あなた達の力を貸して!一誠様を助けるために!」

 

「・・・・・一誠様?」

 

少女は怪訝に小首を傾げていると、さらに影が舞い降りた。

 

「どーしたのー?って、KOS大会の時のやつらじゃん」

 

「・・・・・あの時の」

 

「ふむ、こんなに早く見つけれて運が良い。お前達、話がある。聞いてくれ」

 

護衛の一人、愛紗が語り始める。

話に耳を傾けていた少女達の顔に信じられないと驚愕の色が浮かんだ。

 

「一誠がそんな状態に・・・・・」

 

「それに、師匠を連れ去った謎の集団・・・・・」

 

「私達と共に戦ってくれないかしら?共に一誠を救出するために」

 

雪蓮の頼みに少女達は顔を見合わせた。すると、頷き合って真剣な面持ちで桃花達に話しかけた。

 

「私達はあの人に恩がある。統領も一誠と友人の関係でもあるし事情を教えてくれば、

梁山泊はお前達に力を貸すことができるだろう」

 

「・・・・・!」

 

「お前達がこの地に来なかったら、私達は一誠の事を知ることはできなかった。

―――共に一誠を取り戻そう」

 

少女が桃花達に手を差し伸べた。桃花は満面の笑みを浮かべ、その手を取った。

 

―――○●○―――

 

それから数日後。直江大和達は戦力を整えた。一誠を慕う者、一誠を知っている者、

一誠と拳を交えた者達が勢揃いした。どの顔も、瞳も強い意志が籠っている。

 

「我が九鬼家と蒼天、梁山泊、四天王に四天王クラスの実力者・・・・・その他、強者達。

総勢、百五十人以上・・・・・」

 

「相手の戦力を知る限り、たったの数人・・・・・数は圧倒的にこちらが有利」

 

「モモ先輩ぐらい強い奴が一気に集結しているから、勝てない戦いじゃなくなっているわ!」

 

「だが、油断は禁物だ。奴らの強さはとても計り知れないし、百代の弱点も知っている。

あいつは百代自身だ。百代の事ならば、あの百代がよく知っているだろう」

 

九鬼揚羽の言葉に直江大和は、あの時の二人の百代の戦いの光景を脳裏に甦らせながらも

首を横に振る。分かっているがこうするしかないと。

 

「だけど、あのもう一人の姉さんには姉さんと相手をしてもらないとダメだ」

 

「当然だろう。百代と相手できるのはヒュームか川神鉄心殿、自分自身だからな。

もしかしたらお前自身もいたりしてな?」

 

「か、勘弁してください・・・・・ところで揚羽さん。

あの巨大なドラゴンみたいなものはなんですか?」

 

直江大和の視線には三つ首のドラゴンのフォルムの巨大な機械の塊、ロボットが鎮座していた。

 

「あれは十年ぐらい前に一誠が創った巨大ロボットだ。

他にも五体の金色のロボットもあったのだが・・・・・我らが壊してしまった」

 

「・・・・・一誠さん、あんたは一体なにを創っていたんだ・・・・・」

 

巨大な龍のロボットを創った一誠に、どんな気持ちでロボットを創り上げたのか想像もできない。

だがしかし、あのロボットが九鬼家にあったとすれば、あのロボットは操作できるということだ。

切り札の一つとなる。

直江大和は切り札のカードがまたひとつ増えて良い誤算だと心の中で呟いた。

 

「―――お前の知謀、頼りにしておるぞ。軍師殿」

 

「ええ、任せてください。あの巨大な機械の中に一誠さんがいるんだ。

それなりの準備も整えないと攻略は不可能に近いでしょう」

 

直江大和は九鬼揚羽から離れ、

眼鏡を掛けた中年男性が筆頭とする知的な面持ちの集団へと近づいた。

 

「俺達は敵のアジトと思しき機械の索敵と中の構造の情報を調べることが主です。

先行、潜入部隊の武神・川神百代達がアジトに侵入した時にハッキングをしてサポートをする」

 

「OK、僕達に任せてくれたまえよ。フフッ、あの巨大な未知なる機械は調べ甲斐がありそうだ」

 

一方、川神百代が率いる武士達は九鬼揚羽の演説を耳に傾けていた。

 

「蒼天を占拠している者達は、情報だと宇宙からやってきたようだ。

つまり、奴らは宇宙人であると思って奴らのアジト、宇宙船に乗りこみ、

連れ去られた兵藤一誠を奪還する。

だが、これから行く場所は戦場に等しい命を掛けた戦いとなるであろう。

命が欲しいと思った奴は速やかに去ってくれ。我は咎めない。

己の人生だ。我らの宿願のために来てもらって命をむざむざ捨て欲しくはない」

 

九鬼揚羽から発する演説に誰一人もこの場から去ろうとはしなかった。

その面々に九鬼揚羽は頭を下げた。

 

「・・・・・感謝する」

 

礼を述べると、九鬼揚羽は説明し始める。

 

「我々が知る限り、あの宇宙船の入口は三つがある。

その三つはドラゴンの口内と思しき出入り口だ。

三つの口から侵入し宇宙船の中へ突入する。それ以降は、索敵班からのアドバイスを受けつつ

船の中にいるであろう兵藤一誠を手当たり次第探す。当面の作戦はこれで行く」

 

川神百代達と見渡すと、鋭く腕を天に突き上げた。

 

「皆、心して掛かれ!我らは歴史に残るであろう一戦を数時間後に行う!勝利は我らの手に!」

 

刹那、「勝利は我らの手に!」と空気を振動するほど怒号が轟いた。

一誠奪還作戦の火蓋が切って落とされた―――。

 

―――蒼天―――

 

ドドドドドドドドドドドドンッ!

 

一方、蒼天では襲撃に遭っていた。侵略した蒼天がまたしても奪われ、

今度は巨大な機械が我が物顔で占拠しているからだ。それを隣国は陸・空・海から攻撃を開始し、

三つ首のドラゴンの宇宙船に攻撃を始めている。

爆発と爆音、土煙が絶え間なく発生していて、宇宙船を包んでいく。

―――しかし、立ち籠める煙の中から煌めく六つ。ユラリと六つの光が動き始め、

一瞬の閃光が生じたと思えば。

 

カッ!カッ!カッ!

 

陸・空・海にそれぞれの光の柱が伸びた。一拍して、三つの領域から激しい爆発と突風が生じた。

隣国の兵がたった一撃で全てこの世から消え去った。

それから六つの光が消失して静まり返った。

 

「・・・・・まったく、静かにしてよ。ふぁぁ・・・・・・」

 

一人の茶髪の女性が嘆息と共に欠伸をした。その背後に豊かな金髪の女性が現れた。

 

「今回の見張りを任せられていた御坂さんが居眠りしていたから襲撃にあったんでしょうが」

 

「だって、この世界で襲撃されるなんて思ってもしなかったわよ」

 

「まったく、この宇宙船にもしもの事が遭ったらガイアにこっ酷く叱られるのは

御坂さんですからねぇ?」

 

「うげぇ・・・・・あのドラゴンって怖いから勘弁なのよねぇ・・・・・」

 

「当然じゃない。この宇宙船がなければ私達は帰れない事を理解しているんですものぉ」

 

「・・・・・はぁ、あいつ。さっさと意識が回復できるといいんだけどね」

 

「私の力も役立てないなんて、とても嫌な気分力だわぁ・・・・・」

 

「話によれば、鎖を解けば意識が戻るそうだけど。まだまだ掛かりそうね」

 

「私も頑張って解いてみたけれど・・・・・」

 

「そう・・・・・ん?」

 

「どうしたのぉ?」

 

「・・・・・」

 

御坂と呼ばれている女性がドラゴンの顔の内部、コックピットにある機器を操作し始めた。

前髪をバチバチと電気を弾けさせながら、何かを確かめるように画面をとある場所へ

ズームすると目を見開いた

 

「ちょっと・・・・・あれはないんじゃない?」

 

「なにがよぉ?」

 

「―――今度は直接こっちに乗りこんでくる奴らが現れたのよ」

 

ズームされた画面には☓が記された大型の船が、空にはヘリコプター、

そして、船とヘリコプターの間に飛ぶ超巨大な三つ首龍の機械が映り込んでいた。

 

「んなっ!なに、あのロボットわぁ!?」」

 

「この宇宙船と匹敵しそうなぐらいの大きさだわ・・・・・!」

 

御坂は迷うこともなく赤いボタンを押した。次の瞬間、けたたましい警報が鳴り出した。

マイクに向かって、御坂は叫んだ。

 

「総員、戦闘配置!巨大なロボットを引き連れてこっちに来るわよ!

今いるメンバーで一誠の奴を守りながらこの宇宙船も守りに徹するわよ!」

 

「相手が人間なら、私一人の能力でも十分だけどねぇ?」

 

「あっという間にリモコンを奪われたら、

あんたはそこらへんの一般人より弱くなってしまうでしょうが」

 

「あら、私の力は昔とは違うわよぉ?私もそれなりに、強力になっているんだからぁ」

 

「んじゃ、前線に出なさいよね。私はここで敵をふっ飛ばさないといけないんだから」

 

そう言って御坂は操作を始めた。やることは変わらない、襲撃者を吹っ飛ばす。それだけだ。

 

―――○●○―――

 

「うわぁ・・・・・あれが宇宙船?見るからに一誠のドラゴンみたいな宇宙船じゃん」

 

「師匠があの中にいる・・・・・助けなければ」

 

「どうやら、私達の存在に気付いているようだ。動き始めているからな」

 

その通りであった。三つ首のドラゴンの宇宙船が方向を向け始めている。

三つ口から砲身を覗かせ、光を収束。

 

「って・・・・・あれってヤバいんじゃ・・・・・?」

 

「こ、こっちに撃ってくるなんて事は・・・・・ある?」

 

「―――アレはどう見たって、あるに決まっている!」

 

蒼天の大陸まで千メートルはある。

そこから砲撃されたら、海のど真ん中で自分達は呆気なく死んでしまう!

ヘリコプターとロボットは回避ができようが、船では不可能に近い。

そして、蒼天から三つの光が放たれた。

 

「ぎゃあああああああああっ!撃ってきたわぁ!?死んじゃう!」

 

「一つは任せろ!」

 

「私も手伝います!」

 

川神百代と織田信長が船の船首に立ち、極太のエネルギー砲を放った。二人の放った気は、

二つの光と直撃して、爆発が生じた。残りの一つの光は巨大なロボットに襲いかかるが、

軽やかに避けられ、逆にロボットの三つの口から砲身が出て来て、

仕返しとばかり光を三つ放った。―――だが、宇宙船の周囲に緑色の光の膜が出現して、

光に直撃しても無傷で防ぎきった。

 

「うわぁ・・・・・あの宇宙船にあんなことができるんだな」

 

「いや、当然と言うべきだろう。しかし、攻撃と防御に使うエネルギーの消費が半端ではないと

思うし、連続で攻撃はできないはずだ。タイムラグが存在するはず」

 

その推理は的を得たかのように、攻撃がしばらく来なかった。

蒼天まで残り五百メートルまで迫ったところで、宇宙船に動きが。

宇宙船の背中のハッチが次々と開き、ミサイルの先端をいくつも覗かせた。

ミサイルが御坂の操作で発射され、ロックオンした船とヘリコプター、

巨大ロボットに飛翔する。

 

「今度はミサイルか!?」

 

「まるで戦争を目の当たりにしているような感じだな!」

 

川神百代は空を蹴って次々とミサイルを落としてく。

ロボットの方も、次々とミサイルを発射して相殺していくが、全て防ぎることができず、

船の看板にミサイルが直撃した。

 

「うわっ!?」

 

「直撃した!」

 

「―――ご心配はございません」

 

ヒュンヒュンと風を切るような音と共に、煙が晴れていく。煙からクラウディオが姿を現した。

直撃したと思しき看板は焦げているものの、破損はしていなかった。

 

「この船の周りには私の糸で張り巡らされています。

ミサイルの一つや二つ、私が全て防いでみましょう」

 

クラウディオの言う通り、船に直撃する直前に次々と張り巡らされている糸に切られて一人で

爆発した。蒼天との距離は三百メートル。宇宙船の一つがまた砲身を覗かせた。

 

「またくるぞ!」

 

「何度こようが、私が―――」

 

予想していた攻撃とは違っていた。砲身から極寒の冷気の吐息が吐きだされ、

海に放ったかと思えば、海が瞬く間に凍っていく。

 

「んなっ!?海が凍ってんぞ!」

 

「あの宇宙船、私達を近づけさせないためか!」

 

速度が徐々に緩み、やがて氷の大地に阻まれて動きが止まった。

 

「くそっ!あの宇宙船は何でもありか!」

 

「氷の大地をどうにかしないと!」

 

「私が砕いてやる!」

 

船首から飛び降りた川神百代も拳が氷の大地に直撃し、氷の大地が一気に砕け散った。

船の動きも再開し、ゆっくりと前進を始める。

 

「流石モモ先輩だ!」

 

「当然だ。だが、氷の大地を砕くなんて初めての経験だな。私は楽しくなってきたぞ」

 

船はいよいよ蒼天の岸にたどり着いた。選手の部分に足場が設けられると、

 

「全身!突撃っ!」

 

号令が告げられ、最初は蒼天のメンバーが船から降りた。

続いて我先と大勢が船から降りて行く。

 

「それじゃ大和。ここに残ってモロと一緒に私達のサポートをしてくれよ」

 

「姉さんも気をつけてね」

 

「ああ、もうあんな無様な敗北はしない。負けるなら清々しく負けてやる」

 

川神百代が船からいなくなった。それに追うように織田信長も移動する。

 

―――ガゴンッ!

 

宇宙船の胸部の部分に変化が起きた。左右にハッチが開いたかと思うと、

鈍い音がハッチの奥から聞こえてきた。

 

「なんだ・・・・・あれは・・・・・!」

 

「まるでゴーレムだ!」

 

先陣切っている愛紗が驚愕した。ハッチから人の形をした岩が現れた。

その数は十体。宇宙船を守るように陣形になったかと思えば、極太の腕が変形して、

まるで重火器のような砲身に変化した。

 

「・・・・・まさか!」

 

そのまさかであった。腕が変化した重火器の砲身から―――次々と砲弾とも等しい銃弾が

放たれ始めたのだった。

 

「ぐわあああああああああああああああああああっ!」

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

先頭にいた戦士達が次々と吹っ飛ばされる。

 

「くっ・・・・・どれだけの技術力が誇っているというんだ!」

 

「だが、ここで立ち止まるわけにはいかないだろう!」

 

星の槍に闘気が纏い始めた。

 

「彗竜!」

 

爆発的な脚力でゴーレムに突貫した。自身を龍に象って、槍の先端をゴーレムの腹部と直撃した。

 

「おおおおおおおおおっ!」

 

まるで龍が敵を呑みこむような光景を一行は目の当たりにした。

ゴーレムの上半身が星の一撃で消失したのだからだ。星は地面に着地しながら咆えた。

 

「まずは、一体!」

 

―――○●○―――

 

「うわー、ゴーレムを倒すなんてこの世界のレベルはそれなりに凄いようね?」

 

「まあ、前菜はこんな感じでしょう。川神百代と葉桜清楚がいるもの。

ゴーレムで足止めされちゃ、中で待機している奴らの足元だって及ばない」

 

「あっ、また倒されちゃったわぁ。御坂さん、どうするのぉ?」

 

「・・・・・宇宙船を破壊されて中に入られても困るし、

この中に入る資格がありそうだから、渋々入れさせてやるわ」

 

「飛んで火に入る夏の虫・・・・・ふふふっ、さーて、どこまでこれるかしらねぇ?」

 

「まっ、私はここを任されているし、ハッキングされないように手を打っておくわ。

あんたも、少しぐらいは動きなさいよ?」

 

「はぁーい☆」

 

―――○●○―――

 

一方、川神百代達は半分近くゴーレムを破壊すれば、胸部の部分のハッチの中へ侵入した。

 

「うわ、だだっ広い!」

 

「あのゴーレムが入っていたんだ。当然の収納スペースを確保するだろうな」

 

「壁のところに階段を発見!」

 

「前方にも階段!」

 

壁際に階段と中央の階段。三つの階段が出迎えられ、九鬼揚羽は叫んだ。

 

「各々の意志で進め!連絡は無線で通信しながら状況を報告だ!」

 

蒼天と梁山泊は中央、川神百代は右、九鬼揚羽は左へと階段を上っていく。

 

―――川神百代side―――

 

宇宙船の中に侵入を果たし、川神百代達は廊下を駆ける。

 

「一体、どこまで伸びているんだ?」

 

「というか、どこに向かってモモ先輩は走っているんで?」

 

「適当!」

 

「・・・・・だと思ったぜ」

 

進める限り進んで、川神百代達は走り続ける。すると、扉が見えてきた。

 

「この王道的なパターンは、扉の向こうにボスがいるって奴だよな」

 

「ボスか・・・・・相手は人間だから怖くないがな」

 

「入るぞ」

 

いざ、扉を開け放った川神百代は警戒しながら中に入る。部屋の中は一変していた。

機械的な宇宙船にも拘わらず大自然がそこにあった。大地、水が絶え間なく流れる滝、

森林も生えていた。

 

「・・・・・ここ、宇宙船だよな?なんで樹が生えているんだよ?」

 

「さあ・・・・・」

 

疑問が尽きなかった。だが、それ以上の疑問を浮かべる状況では無くなった。

 

「やあ」

 

朗らかに川神百代達に挨拶する声が聞こえてきた。その声がした方へ振り向けば、

滝の崖に立っている金髪の男性がいた。

 

「君達がイッセーくんを奪いに来た人達だね?」

 

「・・・・・誰だ?」

 

「僕は木場祐斗。騎士だよ」

 

フッ、と木場祐斗が消えたと思ったら、川神百代達の前に現れた。

 

「こいつ・・・・・できる・・・・・!」

 

「残念だけど、ここから先は通さない。僕達の宿願もようやく達成できそうだからね」

 

「宿願だと・・・・・?」

 

「兵藤一誠を連れて帰る事。それが僕達の願い」

 

腰に携えていた剣を抜き放って、木場祐斗は構えた。

 

「騎士ですか・・・・・ならば、私がお相手です」

 

そこへ黛由紀絵が前に出た。彼女の登場に木場祐斗は目を丸くした。

 

「おや、この世界の黛由紀絵さんか。本当に姿が同じだね。皆が言っていた通りだよ」

 

「っ!どうして私の名前を・・・・・!」

 

「知りたければ、剣でも交えて語ろうじゃないか。でも、負けるのは君だけどね」

 

そう言って木場祐斗は動いた。黛由紀絵も反応し刀を振るう。

 

「負けません!」

 

「気迫だけじゃ、どうしようもないよ」

 

あっさりと、振るわれた刀をかわし、黛由紀絵の喉に切っ先を突きつけた。

 

「これで君は一度死んだ」

 

「っ・・・・・!?」

 

呆気なく、勝敗が付いた。

 

「そんな、まゆっちが歯牙も掛けれないなんて・・・・・!」

 

「ただ避けてただ剣を突きつけた。それだけの動作だった・・・・・よな?」

 

「ああ、俺の目からでもそう見えたぜ」

 

黛由紀絵は背後へ跳躍して距離をとった。

 

「その行動に意味がないよ」

 

二度目、黛由紀絵の喉に剣の切っ先が突き刺された。

 

「は、速い・・・・・!」

 

「剣士であれば、真っ直ぐ攻め込まないと。それが日本の武士というものじゃないのかな?

己の魂を掛けた剣戟を僕は求めている。僕を本気にしてくれるとすればそこにいる

川神百代さんだけだと思うけどね」

 

「だったら、私とまゆっちで相手してやろうじゃん」

 

川神百代が黛由紀絵の肩に並んだ。その様子に木場祐斗が口を開いた。

 

「あなたに伝言がある。

―――『お前と相手をしている奴を倒せないんじゃ、私と戦う資格はない』と」

 

「・・・・・」

 

その伝言に川神百代が深い笑みを浮かべた。

 

「なるほど・・・・・あいつか。だったら話はもう無用だ。

ここからは・・・・・武術と剣術のコラボレーションの始まりだからな!」

 

―――蒼天&梁山泊メンバーside―――

 

地面から噴き出る火、遠い場所では火山が噴火をしていてマグマが流れている。

そんな部屋に愛紗達はいた。

 

「何て面妖な・・・・・船の中だというのに、火山があるなど」

 

「あ、熱いのだ・・・・・」

 

鈴々が呟くも、それは全員も一緒だった。

だが、唯一汗を流さず平然といられている者が約一名。

 

「いらっしゃいませ。ようこそ私の領域に―――」

 

声がしたかと思えば、目の前に火柱が立った。その中から人影のシルエットが浮かび、

火柱が消失すると影の正体が姿を現した。ビシッとした黒いスーツを見に包み、

金色の髪を靡かせ、青い瞳は強い意志を持っていた。

 

「誰だ!」

 

「そう叫ばずとも、自己紹介はしますわよ。私はレイヴェル・フェニックス。

兵藤一誠様の秘書でございますわ」

 

「ご主人様の秘書だと・・・・・?そんな戯言、私達が信用すると思っているのか?

お前のような存在は御主人様から一言も聞いてなどいない!」

 

「信じようが信じまいがご自由にしてください。私がここにいるのはイッセー様を守ることです。

あなた達みたいなイッセー様の事を何も知らない輩から」

 

その物言いに愛紗が怒りで体を震わした。

 

「ふざけるなよ・・・・・私達は小さい頃から一誠様と共に過ごしていたのだ。

私達は一誠様に手を差し伸ばされた頃からの付き合いだ。―――それすら知らないお前に、

我らと共にいた一誠様を知った風な口をするでない!」

 

「それはこちらの台詞ですわ。この世界でどう過ごしたのか分かりませんが、

『元の世界にいた』イッセー様をご存じの無い方々に、

慕っていた殿方と長い間引き離された私達の気持ちを分かるはずもない・・・・・!」

 

「元の世界にいたご主人様だと・・・・・?」

 

怪訝な面持ちとなった。レイヴェル・フェニックスは一体、一誠の何を知っているのだと。

 

「・・・・・これ以上の話は無用ですわね」

 

彼女は自分の発言に気付き、心の中で熱くなったことに反省し、冷静になった。

真っ直ぐ青い瞳を愛紗達に見据える。

 

「戦いは避けられない。あなた達は私に負ける。

それがこの中に入った時点で既に決まっています」

 

「なにを・・・・・!」

 

口を開いた瞬間。愛紗達を囲むように火柱が出現した。

そして、レイヴェル・フェニックスの背中に炎翼が生え出したのだ。

 

「その翼は・・・・・!」

 

「どうやら、イッセー様はこの翼をお見せになったようですわね?

そう、この翼はフェニックスの翼。イッセー様と同じ翼ですわ」

 

『―――っ!』

 

「フェニックスは不死鳥と称されているのはよく存じていますわね?

イッセー様がフェニックスの翼を生やせるのは―――私の兄から不死の能力をコピーしたから

なのですわ」

 

「なんだと・・・・・」

 

相手が不死であれば・・・・・自分達の力ではどうしようもできない。

そんな絶望を抱き始めた愛紗達にレイヴェル・フェニックスが叫んだ。

 

「私はレイヴェル・フェニックス!イッセー様のフェニックスとして、

私はあなた達を倒してみせましょう!」

 

―――○●○―――

 

一方、九鬼揚羽達も部屋に到着していて、部屋にいた黒髪に真紅の瞳の女性、

黒髪に金色と真紅のオッドアイの女性と対峙していた。

 

「お前達もこの宇宙船の乗組員か?」

 

「乗組員とは違いますね。私達は家族を探してきただけですから。大切な、大切な家族を」

 

「その家族というのは一誠の事だな?」

 

「ええ、その通りですよ。九鬼揚羽さん」

 

「我の名を知っているとは恐れ入る。情報が早いな」

 

「いえ、元々知っていただけです」

 

「ふむ、可笑しなことだな。我と初対面だと思うが?」

 

「疑問を浮かべるのは当然でしょうが、今はこれ以上先に進ませない事が私達の役目です」

 

二人の女性から禍々しいオーラがにじみ出てきた。

 

「禍々しいな・・・・・とても一誠の家族とは思えない気である」

 

「一誠様は私達を受け入れてくれている。回りがなんと言おうと、

私達は一誠様の傍にいます。ようやく、再会できた愛しい男性とまた・・・・・」

 

恍惚と浮かべ、嬉しそうに笑んだ。九鬼揚羽は目を細め、食って掛かる。

 

「あの男は我のものだ。貴様らにやる通りはない」

 

「・・・・・なんだって?」

 

禍々しいオーラがさらに強まった。オッドアイの女性が冷たく九鬼揚羽を睨んだ。

 

「いっくんは物じゃない。一人の人間だ・・・・・」

 

「いや、言葉の綾なのだが・・・・・お前達の名を聞いてもいいか?」

 

その問いかけに、真紅の女性が口を開いた。

 

「私は―――兵藤楼羅。この子は兵藤悠璃。私達は兵藤一誠様の従姉弟であり、妻です」

 

「従姉弟・・・・・妻・・・・・!?」

 

「なに・・・・・義兄上にそんな関係の人がいるとは・・・・・!」

 

面々は驚愕の色を隠せないでいた。兵藤楼羅は淡々と感情が籠っていない声音で言った。

 

「これからあなた達に与えるのは―――絶望、恐怖。ただそれだけです。覚悟してください」

 


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