真剣で私にD×Dに恋しなさい!S改 完結   作:ダーク・シリウス

25 / 36
Episode11

 

 

「いきます一誠さま!」

 

「こい!」

 

蒼天のとある広い場所で、凪の言葉に一誠は叫び返すと、鋭い正拳が突き出される。

その正拳から避ける感じでヒラリヒラリと一誠は凪の動きを見切って避け続ける。

拳がダメなら脚で、と凪は横薙ぎに足を振るった。

 

「遅い」

 

薙ぎ払られた足より上へ跳んで後へ後退した。

 

「少し大振りだ。最小限の動きで次の攻撃へと移せ。

じゃないと今の動作で武神は一撃を入れてくるぞ」

 

「はい!」

 

「そんじゃ、今度は気を纏って稽古するぞ」

 

一誠の全身に淡い光が発した。同時に凪の全身にも淡い光が生じる。

 

「雷を纏え」

 

凪は一誠という師の言葉に従い、気を雷に具現化にして纏い始める。

対する一誠は闘気を纏うだけで「こい」と言う。その促しにバチッ!と電気を迸らせ、

一誠の前から姿を消した。

 

「・・・・・」

 

周囲に視線を配る。所々、大きく砂埃が生じている。

凪が激しく一誠を囲むように動き回っているからだ。

その砂埃の多さに息を一つ零し、徐に腕を伸ばした。

 

ガシッ!

 

その伸ばされた腕の先から衝撃が伝わった。一誠の手が雷を纏った凪の拳を掴んでいるからだ。

 

「評価は30点だ」

 

ぐわっ!と拳を掴んだまま凪を薙ぎ払った。凪は体に掛かる空気の負荷に体勢もままらない状態で

数回ほど地面にバウンドして、ようやく体勢を立て直した。

 

「相手の視界に捉えさせないようにしていることは分かるが、無駄があるぞ」

 

「・・・・・無駄、ですか?」

 

「凪、そっから三メートルまで一瞬で移動してみろ」

 

そう言われ、一誠の言う通りに立った一歩で三メートルの距離まで移動した。

その際、片足から地面について砂埃を舞わせる。

 

「その砂埃の量の多さがお前の移動のムラが出る」

 

「これが、無駄だと?」

 

「ああ、俺なんてこうだ」

 

一誠も佇んでいる場所から三メートル先にまで一歩で移動した。

その時、一誠が舞わせる砂埃はかなり少なかった。

 

「大体これぐらいまで、雷を纏った状態でし続けてみろ」

 

そう言いながらも一誠は物凄い速さで、分身を作ってしまうほど指示を出したのだった。

 

「これぐらいのことができれば、凪も空を蹴れる」

 

「空を・・・・・」

 

「そうだ。そうすれば、俺の体術の大半も身につくはずだ」

 

トンッ、と虚空を蹴って、地面から離れてその場で何度も空を蹴り続けて浮く姿を凪に見せた。

 

「虚空瞬動。これがお前に学ばせる足技だ」

 

「私もできるのですか?気を扱うことだけ長けている私が・・・・・」

 

「できるできないの問題じゃない。何事も限界までチャレンジするんだ。

それとも、する前に弱音を吐くか?」

 

「―――ご冗談を」

 

凪は真剣な表情でそう言う。時間を割らせて稽古をつけてもらっている一誠に弱音を吐くなど

言語道断。

 

「私は、一誠様の体術を全て学んで強くなると決めているのですから」

 

「期待しているぞ、凪」

 

「はっ!・・・しかし、私だけ強くなって良いのでしょうか?

真桜や沙和も強くならなけば・・・・・」

 

「当然、あの二人にもマンツーマンで鍛えている。

本人がやる気がなければ俺は鍛えたやるつもりもないさ。強制じゃないし」

 

その言葉に凪はホッと胸を安堵で撫でおろす。自分だけ贔屓気味で親友の二人に申し訳ないと

内心密かに思っていた。二人も一誠に鍛えられていると言うなら、

後ろめたさも何も心配もなく心置きなく一誠に鍛えられる。

 

「まぁ・・・・・ぶっちゃけ言えば、あの二人は武より自分の趣味をさせてたほうが

良いと思っている。真桜と沙和は町の活性化に役に立つほうが多いからな」

 

「そうですか・・・・・」

 

「寂しいか?」

 

「いえ・・・・・私も何となく分かりますので」

 

「そうか、すまないな」

 

「え・・・?」

 

どうして一誠さまが謝るんだろう?凪は不思議に呆けていると―――。

 

「お前には武のことしか教えていない。二人のように人に役立つようなことを教えたいが、

凪は体術が秀でているからそっちの方を中心に鍛えているからさ」

 

「―――――」

 

信じられないと言った顔で凪は目を丸くして一誠を見据える。

 

「(この人は私を強く鍛える事より、

私が町に住んでいる民たちのためにと何かを伝えたかったのか)」

 

凪は自慢とは言えないが政治的なことに関しては不向きだ。なので必然的に警邏、

または相手を倒す、拘束する術の方が向いている。頭脳派より肉体派だと凪自身も自覚している。

 

「(・・・・・一誠様・・・・・)」

 

いま思えば、この体の傷を盗賊に傷つけられて以来、

自分の為、相手の為に強くなろうと思っていた。

だから今の自分がいるわけだが、他の二人のように人の為に役立つ術を持っていない。

 

「(戦いがなければ、私に何が残る?)」

 

相手を傷つけるだけの力。守るべき者が平和の中で暮らせるなら、

この力はいらぬ力で周りに恐れられる力になる。だからなのだろう。

一誠は凪にこの蒼天に住む民たちの為に役立つ何かを伝えたかった。

凪の性格、能力を考慮した上で凪に体術を鍛え、学ばせている。

 

「(一誠様が悪いんじゃない。この私が一誠さまの期待に応えていないせいでいるからだ)」

 

拳を握りしめ、心の中で悔やむ。だが、何時までも悔やんでいることはできない。

悔むぐらいなら、悔むことがないぐらい人の為に役立つことをすればいい。

自分ができることをしてでもだ。

 

「一誠様、稽古の続きを」

 

「分かった」

 

それは―――私は―――民を危険から守る盾と成ることだ!

 

―――○●○―――

 

―――川神学園―――

 

「・・・・・」

 

貯水槽の上で六対十二枚の翼を展開して太陽の光を吸収し、

吹く風を受け流しながらいる一誠は胡坐を掻いた足にオーフィスを乗せて、

耳にイヤホンを付けて瞑目している。イヤホンから流れる音は一誠がとても懐かしさを

感じさせる歌だった。

 

だからだろう、背後にいる人物には見向きもせず音楽に集中している。

その人物は一誠が音楽に夢中でいる事を知り、何も言わず―――鋭い蹴りを放った。

相手の首を狩らんとばかり振るわれた足は狙いを違わず一誠の首に迫った時、

一誠の背中に生えていた翼が意思を持っているかのように動き出して足を受け止め、

 

「イッセーの敵は我の敵」

 

オーフィスが何時の間にか、一誠の背後にいる人物をそう言って蹴りつけた。

 

ガッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

屋上の転落防止のために設けられた網を突き破って人物は屋上から姿を消した。

 

「ん・・・・・?」

 

ここでようやく一誠が異変に気付いた。

 

「オーフィス、何かしたか?」

 

「ん、何もしてない」

 

「そうか」

 

あっさりと鵜呑みにして再び静かに音楽を聞くのであった。

 

―――昼休み―――

 

「先輩、翼を出してください」

 

「いきなりだな。まあいいけど」

 

開口一番に織田信長に懇願され、

願い通りに翼を生やせばその翼に背中を寄せて一誠の隣に座った。

 

「はふぅ・・・・・落ち着きます」

 

「そうか?」

 

「はい、それに先輩のその姿はとても恰好良いです」

 

「ん、ありがとうな」

 

微笑ましい先輩と後輩のシーン。

だが、面白くないと羨望と嫉妬の眼差しを向けてくるのがいる。

 

「ううー!」

 

「あの子・・・・・かなりの強敵だね」

 

「あの一件以来、物凄く一誠さんに甘えているよな」

 

「見ていて目が痛くないけほどだがな」

 

「ほら、義経も甘えたらどう?」

 

「ふぇっ!?べ、弁解、何を言うのだ!?」

 

「私は甘えるというより甘やかす方があっているよん」

 

「燕に同じくだ」

 

「フハハハハ!あの信長が義兄上に心を完全に開いておるわ。流石であるな」

 

「ちゃっかり、清楚先輩も一誠さんの隣に座っていますしね。

ちょっと羨ましい気持ちが湧きます」

 

「くぅぅぅっ!どうして一誠さんはあんなにモテるんだ!?」

 

「一誠さんだからじゃないかな?」

 

「ああ、俺もそう思うぜ」

 

「右に同じく」

 

と、賑やかに雑談している一誠を慕う者たちだった。

 

「―――そう言えばお兄様」

 

「なんだ?」

 

「お兄様って歳上なのは分かるけれど、実際何歳なの?」

 

『・・・・・・』

 

川神一子の発言にこの場、屋上に静寂が包まれた。奇異な視線を送り、送られる。

一誠はその尋ねに頬をポリポリと掻いた。

 

「秘密だ」

 

「って、秘密ですか!?どう見ても二十代ぐらいなのに!」

 

「いえ、先輩は蒼天を創造した人なのでもっと年上です。・・・・・百歳以上?」

 

「ちょっと待ってくれ。サラッととんでもないことを口にしなかったか?」

 

織田信長の指摘に直江大和は冷や汗を流した。

 

「だから、秘密だ」

 

「じゃあじゃあ、一誠さんの好きなことは何だ?」

 

「誰かと一緒にいることだな。俺、兎だし?」

 

「う、兎って・・・・・」

 

どう見ても、どう思っても兎と連想できな過ぎる人だ。

この場にいる殆どの皆の心が一つになった瞬間でもあった。

 

「ん、イッセーは何時も寝るとき必ず誰かと一緒に寝ている」

 

その通りだと弁当を食べていたオーフィスがそう証言をした。

 

「何時も寝るときって・・・・・オーフィスも?」

 

「我、ずっとイッセーと共にいる。これ絶対」

 

「ああ、そうだな」

 

優しい眼差しで徐に手でオーフィスの頭を撫でる。その時、井上準が震えだした。

 

「ま、まさか・・・・・あの瑠々ちゃんも・・・・・ですか?」

 

「紫苑も一緒にな」

 

一誠の返答に井上準が固まった。

 

「・・・・・一誠さん、流石にそれは犯罪じゃないですか?」

 

「はっ?犯罪?」

 

「だって、その、えっとだな・・・・・幼い子供にまで襲っているんだろう?」

 

「―――――」

 

そう言われて一誠は何を言われているのかようやく気が付いた。

 

「お前ら、勘違いしているぞ。俺が誰かと一緒に寝ているというのは添い寝のことだ」

 

「そ、添い寝?」

 

「家族だが、蒼天にいる彼女達とは肉体関係を結んでいない。

ただ俺の傍で一緒に寝てもらうだけだ」

 

深く溜息を吐いた。危うく直江大和達に謝った誤解を認知されるところだったので

安堵の息が混じった溜息も吐く。

 

「じゃあ―――一誠さんは童貞?」

 

「悪いな。卒業した」

 

「んがっ!?」

 

ガーンッ!と効果音が立つぐらい島津岳人は衝撃を受けた。

直江大和も意外そうに「へぇ」と漏らした。

 

「一誠さんってそういうことに関しては縁がないと思っていたんだけどな」

 

「俺だって男だぞ?性欲だってある。見知らぬ女を抱きたくないがな」

 

「じゃあ、知っている女だったら抱きたいの?」

 

「本人が心から俺とそうしたいなら俺は拒むつもりはない。

でも、その時の俺がそう思っていたらの話しだ」

 

「―――じゃあ、一誠。私を抱いて?」

 

「断わる」

 

椎名京の誘惑を断わって「こんな感じでな?」とばかり一誠は周囲に目線を配る。

 

「じゃあ、先輩をその気にさせれば良いんですね・・・・・?」

 

どこからともかく取り出した瓶を横眼で一誠に視線を向ける。

 

「信長、それはなんだ?」

 

「はい、先輩をその気にさせる九鬼家が開発した超強力な精力増強&媚薬です。

飲めば、三日三晩は野獣のようにお互い求め続けるとかで・・・・・」

 

「なっ!?」

 

葉桜清楚が顔をボンッ!と赤く染めた。源義経も頬を羞恥で赤く滲ませた。

椎名京が「それ、いくらで買える?」と織田信長に問い、榊原小雪は椎名京と同じ考えなのか

ウンウンと頷いている。川神百代と松永燕はニヤニヤと笑みを浮かべ、

川神一子は頭に?を浮かべる。武蔵坊弁慶は興味ないと瓢箪から川神水を器に流していた。

 

「・・・・・そんなの俺に盛らすなよ?」

 

「ダメですか?」

 

「普通にダメだろう。というかだな」

 

「はい?」

 

途端に苦笑を浮かべる一誠。

 

「俺にそんな物を盛ったら、三日三晩どころか百人の女を最低三回ぐらいシないと治まりが

効かなくなるかもしれない。それとこの数十年間、誰とも性交をしていないからなー。

一度シたら、相手を快楽に堕として狂いに狂わせてしまう恐れがある。

―――お前の精神も壊してしまうぞ?」

 

「―――――」

 

一誠から向けられる眼差し。真剣さと欲情が混じったその瞳の奥に織田信長を魅入らせ、

引き寄せられる何かが宿っていた。ブルリと織田信長の体が一瞬の刺激で震え、

ゾクゾクと興奮が収まらなくなりつつなる。

 

何時しか、熱い息を漏らし始めて頬を朱に染め瞳を潤わせて恍惚となる。

今の織田信長は性欲に欲情した人間という動物のメス。

―――一誠という媚薬に盛られて逆に織田信長がその気になってしまったのである。

 

なので、熱く濡れた舌を突き出して、一誠の首筋を舐め始めたのだった。

自分の年齢不相応な豊満の胸を掴み、いやらしく撫で回し、全身を一誠の体に擦り寄せて、

欲情している、だからあなたのオスを欲しいと直江大和達がいる面前でもお構いなしに懇願した。

 

「うわぁ・・・・・っ」

 

「し、刺激が強い・・・・・」

 

「あ、あんな信長ちゃん・・・・・見たことないよ・・・・・」

 

「こっちまで・・・・・変な気になってしまう」

 

殆どの女性陣が顔を赤く染め、殆どの男性陣が上半身を前屈みに下半身を隠すようにした。

そんな光景に一誠は―――。

 

「てい」

 

と軽い口調で織田信長の首筋に手刀を叩きこんで気絶させた。

 

―――○●○―――

 

―――放課後―――

 

板垣兄弟姉妹を先に帰らせ、一誠とオーフィスは学校に残っていた。

屋上で目の前にいる女性に問うた。

 

「で、何か用なんだろう?」

 

「・・・・・」

 

「確か・・・・・名前はマルギッテだったな?俺を放課後になったらここに来いと言うんだ。

用がなければ帰らせてもらうぞ」

 

一誠はそう言う。蒼天に帰って色々としなくてはならない。

だから、無駄な時間を使いたくないと暗に女性、マルギッテ・エーベルバッハにそう言った一誠。

マルギッテ・エーベルバッハが口を開いた。

 

「単刀直入に言います。兵藤一誠、あなたは人間ではありませんね?」

 

「・・・・・はい?」

 

いきなり何を言うんだこの女性は、と間抜けな返事をした一誠を余所に

マルギッテ・エーベルバッハは言い続ける。

 

「空想生物のドラゴンを親しげに接するどころか、天使になるなんて異形に等しい存在です。

ですから、あなたはただの人間ではないです」

 

ビシッ!と人差し指を一誠に突き付けて断言した。

いやー、確かに?俺はただの人間じゃないのは自覚しているさ。

でも、何故今さらそう言われる?心の中で頬をポリポリと掻きながらそう思っていると、

 

「軽率かもしれませんが、ここであなたを倒しておくことに越したことでもないでしょう」

 

「へ?」

 

刹那―――。一誠に向かってトンファーが突き出された。

 

「敵・・・・・?」

 

オーフィスが反応した。―――オーフィスの全身からどす黒い魔力が噴き上がり、

マルギッテ・エーベルバッハを弾き飛ばした。

 

「くっ・・・・・!?」

 

「イッセーの敵、我、倒す」

 

オーフィスが戦闘態勢に入った。一誠が声を掛ける前にマルギッテ・エーベルバッハに攻撃を

仕掛けた。一方的な暴力という形で。

 

「がは・・・・・!」

 

満身創痍、口から血反吐を吐いて固い床にひれ伏した。

 

「バ、バカな・・・・・こんな子供にこの私が一方的になんて・・・・・!」

 

「あー、無知とは罪なもんだな」

 

「なに・・・・・?」

 

一誠は苦笑を浮かべた。

 

「オーフィスはな?俺より強いんだ。当然の結果だからしょうがないぞ?」

 

「―――――っ!?」

 

「俺だけじゃない。蒼天にいるドラゴンたちよりも強い。オーフィスこそが最強の存在だ」

 

「くっ・・・・・そんな少女だとは・・・・・・」

 

そこでマルギッテ・エーベルバッハが意識を失った。

傷だらけの彼女に手を伸ばし、淡い光を手の平から照らせば、見る見るうちに傷が癒されていく。

 

「オーフィス、手を出したらダメだろう?」

 

「イッセーの敵は我の敵、これ絶対」

 

「・・・・・全く」

 

呆れるも一誠はオーフィスを抱きかかえて、耳元で「ありがとう」と伝えた。

 

「さて、蒼天に帰ろう」

 

「ん、帰る」

 

金色の翼を展開し、力強く翼を羽ばたかせ日本海へと飛翔した。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。