真剣で私にD×Dに恋しなさい!S改 完結   作:ダーク・シリウス

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Episode1

「・・・・・ま」

 

「・・・・・・」

 

「さ・・・ま・・・・く・・・・い」

 

「・・・・・」

 

「ご主人様、起きてください」

 

少女の声が耳の中に入る。優しく、心地好い声音だ・・・・・。

 

「ん・・・・・」

 

「おはようございます。御主人様」

 

「・・・・・ああ、おはよう」

 

「・・・ふふ」

 

不意に、俺の視界に入る少女が笑った。目で、どうした?と送れば。

 

「ご主人様は良い夢を見ておられたようですね」

 

「どうして分かるんだ?」

 

「なんとなくです。さぁ、そろそろ起きてください。朝食の時間ですよ」

 

やんわりと俺を促す。俺はそうか、とそこまで寝ていたことに理解し、

少し悪かったなと罪悪感を抱く。

 

「ところで」

 

「はい」

 

「勘だが・・・・・朝食の時間になるまでずっと俺の寝顔を見ていたなんて、

ことはないよな?」

 

「・・・・・」

 

「へぇ?」

 

「す、すいませんでした・・・・・ご主人様を起こそうとしましたが、

見惚れてしまい・・・・・」

 

「気配を消してずっと見てたんだ?」

 

「ううう・・・・・」

 

少女は申し訳なさと気恥しさに、シュンと落ち込みだした。

 

「悪い子だな・・・・・」

 

俺は口の端を吊り上げて、少女の腕を掴んだ。

 

「え?」

 

「そら」

 

グイッ、と俺の方に引っ張ってやり、俺の胸の上に寝転がした。

 

「ご、ご主人様・・・・・!?」

 

「罰として、俺の上で寝てもらうとしようか。お前の温もりを感じながら俺は寝たいなー?」

 

「・・・・・っ!?」

 

少女の顔は一気に赤くなった。俺から離れようともがきだすが・・・・・そうはさせん。

 

「オーフィス」

 

「了解」

 

隣で寝ていたオーフィスはムクリと起き上がり、ジタバタと暴れる少女の上に乗っかった。

 

「オ、オーフィス様!?は、離れてください!」

 

「イッセーの言う事を聞く。これ、大切」

 

「うっ・・・・・!?」

 

オーフィスにそう言われて少女は動きを止めた。クスクスと俺は静かに笑って、

少女の頭を撫でる。

 

「―――愛紗、夜になったら俺の部屋に来い。罰の続きをしてもらうからな」

 

「・・・・・はい」

 

声を小さくして肯定の言葉を呟いた。少女、愛紗の顔はどこか、嬉しそうだった。

 

「さて、皆も待っているだろうし行くか」

 

「ええ、行きましょう」

 

「ん」

 

愛紗という少女とオーフィスと共に食卓へと向かう。風間翔一達と別れて数年。

俺は今、とある国にいて、板垣兄弟姉妹と住んでいる。部屋から出て、長い廊下を歩く。

しばらくして俺達を扉が出迎えてくれた。扉を開け放ち中に入れば、

大きな円卓に数十人の人物達が座っていた。

 

「あっ、おはようございます♪」

 

「おはよう」

 

「遅いわよ。今日はどうしたのよ?」

 

「愛紗が中々寝かしてくれなかったからな。起きるのが遅くなったんだ」

 

「あら・・・・・抜け駆けかしら?やるわね・・・」

 

「ち、違います!ご主人様も変なことをおっしゃらないでください!」

 

「ははは、ごめんごめん」

 

愛紗に窘められながら席に着いた。愛紗も、渋々と席に座った。それから朝食の時間となり、

テーブルに置かれている料理を食べ始めた。

 

「ん、今日も美味しいな」

 

「はい、ありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです」

 

「当たり前よ。私達が作っているのだから不味いわけ無いじゃない」

 

「それもそうだな。ん、お前らばかり作ってもらうのも悪いし、

たまには俺も料理を作ろう―――」

 

『ダメ!』

 

・・・・・せめて、最後まで言わせてくれよ。

 

「不味いとは言わないけど・・・・・お願いだから女としてのプライドを粉々に

しないでちょうだい」

 

「はい、お願いします」

 

『うんうん』

 

この場にいる少女と女性達が頷く。俺は、またか・・・と嘆息する。

 

「・・・・・いいもん、あの料理店で俺は料理を作るんだから・・・・・ぐすん」

 

「はわわ!そ、その手がありました!」

 

「あうあう・・・・・流石の私達も手も出せないあの料理店で料理を作らせたら大変です」

 

「へう・・・・・ご主人様。勘弁してください」

 

「―――俺の料理を何だと思っているんだよ・・・・・」

 

『女殺し』

 

そうでした・・・・・。こいつら、俺を作らせないから寂しくてしょうがない。

 

「イッセー、可哀想」

 

「うん、オーフィスだけだよ。俺を慰めてくれる家族は」

 

隣で座っているオーフィスを抱きしめて、シクシクと嘘泣きをしてもオーフィスは、

俺の頭を撫でて慰めてくれる。

 

「まったく・・・・・料理が作れないからって情けなく泣かないでくれる?」

 

「だったら、作らしてもらうぞ」

 

「・・・・・作らないでくれるかしら」

 

猫耳のフードを着いた服を着込む少女が、顔をそっぽ向けながら否定しやがった。

 

「はぁ・・・せっかく新しい料理を完成したから食べさせたいのに・・・・・」

 

「い、何時の間に・・・・・!?」

 

「私達の目を盗んで作っていたようね・・・・・侮れないわ」

 

「我、食べたい」

 

「ああ、オーフィスだけ食べさせるよ。他の奴らは俺の料理なんて食いたくないって言うし、

後で作ってやるよ」

 

「それは楽しみ」

 

ニッコリとオーフィスは笑った。俺も笑うと愛紗達は、むぅ、とつまらなさそうな顔をする。

 

「(女のプライドを玉砕覚悟で食べようかしら・・・・・)」

 

「(そうすれば、あの笑みを向けてくれる)」

 

「(女としての意地か、あの人の笑みを見たいか・・・・・うう・・・・・悩むよぉ)」

 

「まっ、料理の話は置いといて・・・・・この国は平和だな」

 

俺がそう言えば、急にどうした?と言った感じでキョトンとする皆。

 

「いきなりどうしたの?」

 

「なんとなく、そう言いたかっただけだ」

 

朗らかに笑みを向けると、皆は力強く頷いた。

 

「ここにいる皆は、とある思いを胸に抱いて集まった人間だ。これからもよろしく頼むぞ」

 

「言われるまでもないわ」

 

「ええ♪」

 

「はい!皆と一緒にやればできないことはないんですから!」

 

三人が代表して、笑みを浮かび、そう告げた。俺も頑張ろう。

と、心の中で呟きながら皆に告げる。

 

「華淋、雪蓮、桃香。他の皆もよろしくな」

 

『応!』

 

 

―――川神市。

 

 

「・・・・・」

 

「おっはー。キミ、タクヨちゃん?」

 

「・・・・・」

 

一人の女子高生が無言で頷く。男は女子高生の顔を見て嬉しそうに口を開く

 

「メタクソ可愛いじゃんー。合格間違いなしでしょ。

俺が客に成りたいぐらいだよ、リアルで。川神学園の学生って激レアだから。

お小遣いスゲー稼げちゃうよん。リアルで。さ、こっちこっち」

 

女子高生はコクコクと頷き、男の隣に並び歩を進めた。

そんな様子をじっと見ていた複数の存在が動き出す。

 

『モロと男が接触。移動開始』

 

「・・・・・流石は弓使い、目が良くて助かるよ。そして、お友達で」

 

『男のはるか後方にも男。周囲を確認中。二重尾行だね』

 

無線機でやりとりする男と女―――服装を見れば高校生だと一目瞭然だった

 

「もしもしまゆっち。モロはそっちの信号に来るよ」

 

『確認しました。追跡に移ります』

 

『気配を消すのはお任せだぜ』

 

男子高校生は通信機で他のメンバーにそう告げると傍にいた男性に呟く。

 

「釣れたぞ。露出の大きい夏服を選んだ甲斐があった」

 

「・・・・・あのまま真っ直ぐ行くと、本町の方に出るな」

 

「ガクト、本町の交差点に先回りしてくれ。そこで、まゆっちと尾行を交代してくれ」

 

『おうよ!モロの貞操のためだ、頑張るか』

 

無線機でガクトと言う男に指示し溜め息を吐く。

 

「尾行リレー・・・・・上手くできているな。素人を騙すには十分だ」

 

「面倒くさい真似をするなぁ。捕まえて締め上げてしまえばいいじゃないか?」

 

男子高校生のやりとりを背後でみていた背中にまである黒の長髪に赤い瞳の少女が嘆息した。

そんな少女を尻目に男子高校生は言った。

 

「相手は携帯でこまめに連絡を取り合っているんだ」

 

「・・・・・連絡が途絶えたらアクシデントと思われるか。ふーむ」

 

「一網打尽にしないといけないからな、逃げられても困る」

 

男性が今回の『作戦』の重要さに失敗は許されないと風に言うと無線機から声が発した。

 

『目標モロと車に乗っちまったぜ。ナンバーを伝えるぞ』

 

『二重尾行してた男もその車に乗り込んだよ』

 

「追跡者がいないと判断してくれたかな・・・・・?キャップ頼む」

 

男子高校生は顎に手をやり呟くと無線機で誰かに指示する。

 

『俺の疾風号(バイク)で追い越せばいいんだな?』

 

その言葉を聞いて思わず大声で言った。

 

「尾行だっつうに!・・・・・途中で俺たちの車と代わるから。

―――ヒゲ先生、楽している分運転よろしく。俺たちも追跡」

 

「おう。依頼人として、協力させてもらうぜ」

 

今回の『作戦』はこの中年の依頼で動いている模様。

男子高校生たちは乗車している車を中年に運転してもらい移動を開始した。

そして数分で目標とバイクを見つけ追跡していたバイクと交代する。

 

「大和、あの車、親不孝通りに入るみたいだな」

 

少女の言葉に大和と呼ばれた男子高校生は口を無線機に近づけ口を開く

 

「全員に通達、親不孝通りに集まってくれ」

 

「それにしても売春組織たぁ、最近のガキもマせてるぜ」

 

運転している中年の言葉に頷く男子高校生―――大和

 

「川神学園の学生も商品にしようとは図々しい」

 

「はじめから警察に通報するという手はどうなんだ?」

 

車に乗っている赤いリボンを結んでいる金髪の少女が思案をするが

 

「もちろん仕上げは警察にお願いするけどさ」

 

「その前に黒幕たちを数発殴ってお仕置きをしねぇとな」

 

中年の言葉に乗車していた大和たちは頷く。

そんなやりとりをしている最中に親不孝通りに到着した。

少しして他のメンバーも全員集合した。

 

「あのオーナー募集って書いてあるボロビルが売春斡旋所の本部みたいだな。

皆入って行ったぞ」

 

「根城に廃ビルを利用するって考えは皆同じなのかね」

 

呆れながら言う筋肉質の男に黒髪の少女はとある場所に指を指す

 

「入口にごっついのが立っているから、関係者以外は、あいつに追い払われているんだろう」

 

「アジトがビルか・・・・・配置はパターンBでよろしく」

 

大和は全員に指示を出すと頭にバンダナを巻いた男子高校生が告げた

 

「モロからワン切り連絡が来たぜ!」

 

「敵は揃ってるみたいだな。武力制圧。指揮はキャップ」

 

大和はバンダナの男―――キャップに指示する。それを聞いて嬉々になった

 

「よし、俺とモモ先輩とクリスは、正面から行くぞぅ」

 

「悪の組織に踏み込みか。正義の血が騒ぐぞ」

 

三人は真っ直ぐ廃ビルに赴く。

そんな三人の中で何時の間にか一人だけステップを踏みつつガードマンに近づく

長い黒髪の少女。

 

「楽しくなってきたなぁ。こーんにちはっ」

 

「・・・・・?なんだ、お前等は、帰れ。ここは入れないぞ」

 

ガードマンは自分の仕事をこなそうと三人を追い払おうとするが・・・・・。

 

「―――女が女を買ってもいいじゃないか」

 

赤い瞳の少女が意味深な言葉を発するとガードマンは目を大きく開いた

 

「っ!貴様、どこでそれを・・・・・こっちへ来い!」

 

ガードマンは強引に何処かへ連れだそうと腕を伸ばす―――が

 

ゴキンッ!

 

「うごぐぼはっ!?」

 

黒髪の少女の手によって首の骨を外され、道路に倒れ込んだ。

 

「なぁに、死にはしないさ。そのまま悶えてろ」

 

「ようし、突入だ!行くぜオラーー!」

 

バンダナを巻いた男が先陣切って廃ビルの中へ突入。

それに続く金髪の少女と黒髪の少女達。

 

ガッタアアアンッ!

 

バンダナを巻いた男が廃ビルの扉を蹴り破ると廃ビルにいた不良集団達が驚愕し、

視線を向けた。

 

「っ、なんだ!?警察・・・・・じゃねぇな、リアルで」

 

「てめぇらの悪事はお見通し。証拠と身柄をよこしやがれ!」

 

「ほう、なかなか数がいるな。―――20人といったところか」

 

「(そこそこ喧嘩強いのは20人で後はほとんど雑魚ってことね・・・・・)」

 

少年は目の前にいる不良軍団を見て口に出さず心の中で呟いた。

 

「・・・・・ざけんな!川神の郡狼と言われた俺たちをなめんなよ・・・・・!」

 

一人の不良の言葉に不良たちが猛りつつ襲いかかった。

すると金髪の少女がズイ、と前に出た。

 

「ここは自分が退治してくれよう」

 

そういって不良たちに突貫していった。

 

「はあああっ!」

 

金髪の少女は舞うように蹴りを放っていった。

 

「悪事を働く暇があれば、鍛錬を重ねるんだな」

 

不敵の笑みを浮かべながら次々と不良達に退治していく。

 

「なんだ、こいつら・・・・・やべぇ、逃げろ!」

 

不良達は敵わない相手だと理解し、裏口になだれ込むが裏口に筋肉質の男がいた。

 

「残念だが、ここは通行止めだぜい!」

 

不良の足を捕まえて、豪快に振り回す。不良達を薙ぎ払い逃げ場をなくす。

だが、それでも尚も不良達は窓からも逃げ出した。

 

「おっとー!一人も逃がさないわよ!」

 

―――しかし、そこにも不良達の逃走を阻止する存在がいた。

赤よりの茶髪にポニーテールの少女が逃げる不良達を捕まえていった。そんな最中、

静かにこの場から去ろうとする不良達もいるが。

 

「んー。こそこそ逃げようとしても駄目」

 

青色に近い紫の髪の少女が屋上から狙撃していく。

弓を構えて矢を放つ。放たれた矢は服を破り、壁に突き刺さり、不良の足を止める。

そこにポニーテールの少女が追撃していった。

 

「て、てめぇら動くな!リアルで!」

 

最後に残った男がビルから出てきた。

 

「うわ、ちょっと放してよ!」

 

女子高校生に銃を突き付け、人質にしながら。

 

「お、俺は、絶対逃げ延びるぞ・・・・・!」

 

「あの、それ銃刀法違反・・・・・ですよ?」

 

刀を抱えて男に近づく一人の少女

 

「お前だって刀持ってるじゃねぇか!ってか、それ以上近づくんじゃねぇ!」

 

刀と銃、どっちも持っているのでお互い銃刀法違反になっていると男は言うが―――。

 

「まゆっちのは・・・・・合法なんだぜ、ヤンキークン?」

 

刀を持っていた少女の手により男の銃が何時の間にか二つに割れて地面に落ちた。

だが、それだけでなく服もキャベツの如く微塵切りに成っていた。

そんな男に集合するメンバー達。

 

「あ・・・・・あぁ、なんなんだよ、お前たちは!?」

 

金髪の少女が言った。

 

「名乗るほどのものではないな」

 

「えー、ここは名乗って決めないと!」

 

ポニーテールがそう言うとバンダナを巻いた男が笑顔で言った

 

「俺の愉快な仲間達だ!」

 

「いやいやいや、俺と、だろ。お前のじゃないから」

 

呆れて言う黒髪の少女。

 

「モロ、怪我はないか、大丈夫か?」

 

「うん、大丈夫、なんか、何時もより優しいね・・・・・?」

 

筋肉質の男が女子高生―――に、変装した男子高校生を安否の確認する。

その顔は傍から見ればBL的な空間であることは間違いない。

 

「素晴らしい友情だッ!」

 

「お前、ボーイズラブ的なところで喜んでるだろ」

 

弓使いの少女に指摘する黒髪の少女に男は叫ぶように言葉を発した。

 

「・・・・・特にやたら強い女たちは何なんだよ、お前たち!」

 

その言葉を聞いて名乗り上げる少女達。

 

「元気一番、努力大好き、川神一子!」

 

「夢はあの人の正妻、あまり他人に話す口なし・・・・・椎名京」

 

「騎士道精神最高!クリスティアーネ・フリードリヒ!」

 

「け、剣を使います、後輩の黛由紀江ですっ」

 

「3年の川神百代だ。武器は美少女らしく拳のみ!」

 

5人の少女が名乗りを―――。

 

「5人揃って侍戦隊!」

 

「川神レディース!」

 

筋肉質の男が横槍を入れた。それにキレ、黒髪の少女、川神百代は殴る。

 

「横槍を入れるなコラァー!何時までも名乗れないだろう!」

 

「誰がレディースだっつーの!」

 

筋肉質の男に殴る少女達に耐えかね。

 

「うぐわっ!じょ、冗談だっの!殴るな!お前たち!い、いてっ!痛いって!」

 

と、ある意味自業自得なことに遭っている。

そんな光景を見ていた男が嘲笑の笑みを浮かべた。

 

「ん、で、ついでに言うと、

あのバンダナがキャップ。リーダーだな。正式名称は風間翔一だ」

川神百代は風間翔一の紹介を終ると、今度は別の人物に指を差す。

「いかにも馬鹿そうなのが島津岳人。面倒見はいい」

次の人物。

 

「いかにも根暗そうなのが師岡卓也。優しくはある」

そして、最後に残った人物の名は―――。

「で、最後の1人が私の弟分、直江大和。頭は回る」

直江大和だった。

「うわぁ・・・・・おざなり。しかも根暗とかさぁ」

「俺様のタフガイさが強調されてねぇ」

 

「今は女の子が強い時代だよなー。男の立場が無いぞぅ」

 

あんまりな自己紹介をされ、ちょっとショックを受ける男性陣。

 

「武士の血をひく武士娘・・・・・川神で悪さするもんじゃねぇな」

 

「全員ひっくるめて、風間ファミリーだ。覚えておきな!」

 

バンダナの男が男に向かって堂々と言った。

 

「くそっ、金儲けしたかったぜ・・・・・」

 

男は意識を失いながらそう呟いた。

 

「―――なぁ、売春のサンプル写真とか落ちていないのかな」

 

「・・・・・って、だ、ダメだよ!ガクト!」

 

いやらしい顔を浮かべる筋肉質の男―――島津岳人に一瞬、

同じ考えをしたが慌てて窘める女装している男子高校生―――師岡卓也。

 

「じゃあ、俺たちは縛ってから警察に通報しますね」

 

「・・・・・おう」

 

中年の男はビルの奥へと姿を消した。大和たちは不良たちを縛り上げ警察に通報した。

 

 

―――とある日。

 

 

2-F

 

 

「あー、太陽の日差しがギラギラする日は海にでも行きたいなー」

 

「海と言えば海水浴!俺様の肉体美が曝け出せる好機!」

 

「私はどこでも修行修行よ!」

 

「犬は今日も元気だな」

 

「それがワン子だからねー」

 

「ガクトもガクトらしい発言だけどね」

 

「確かに今日は日差しが強くて暑いな・・・・・」

 

神奈川県川神市にある学校・・・・・。そのクラスメート達はのびのびとしていた。2-F、落ちこぼれ、ろくでなしばかりの集団と言われているクラスには、直江大和と風間翔一、

島津岳人や師岡卓也の他に、椎名京と今年の春に入学したクリスティアーネ・フリードリヒが

所属している。

 

「フハハハハ!九鬼英雄の参上である!」

 

「おう、遊びに来たぜ」

 

「ウェーイ♪」

 

「お邪魔します」

 

「お邪魔しまーす☆」

 

「義経も失礼する」

 

「ほら、与一もさっさと来る」

 

「だからって俺の耳を引っ張るなよ!」

 

2-Fのクラスに8人の生徒が入ってきた。その8人はFクラスの隣にあるエリート集団が

集う教室、Sクラスからやってきた。その5人は旅人こと一誠と関わりがある生徒達である。

名を挙げて言えば、九鬼英雄と忍足あずみ、葵冬馬や井上準、榊原小雪である。

 

「おう、お前ら。今日も来たな」

 

「うむ。お前達といることがすでに習慣であるからな。で、海がどうした?」

 

「ああ、こんな暑い日は海でも行きたいなーって言ったんだよ」

 

「なるほど。では、九鬼が所有の無人島でも遊びに来るか?あの無人島ならば、

サバイバルでも、探検でもできるぞ」

 

「おっ!本当か!?そりゃ楽しみだ!」

 

「流石は九鬼家だな。楽しみにしているぜ」

 

「フハハハ、民の願いを叶えるのも王の務めである。当然のことであろう」

 

「ありがとうね!英雄くん!」

 

「う、うむ・・・・・(一子に礼を言われると嬉しいではないか!)」

 

「おっ、英雄が照れたぞ?」

 

「ワン子の事が好きだからねー」

 

「もう、誰でも知っていることだがな」

 

「ねーねー、旅人のお兄ちゃんから手紙は来ているー?」

 

「いや、まだ来ないな」

 

直江大和は首を横に振る。でも・・・、と鞄から一枚の写真を取り出した。

 

「―――旅人さんから昨日届いた写真ならあるぜ」

 

『っ!?』

 

一枚の写真を見たいが為に、九鬼英雄達は大和から写真を奪うように取って凝視した。

 

「おお・・・・・旅人・・・・・!」

 

「今度はどこに行ったんだ・・・・・?」

 

「おっ、この道のような壁は・・・・・万里の長城じゃないか?」

 

「つまり・・・中国ってことですか」

 

「いいなー、僕も中国に行きたいなー」

 

「しかし、今度は直江さんのところに写真が届いたんですね☆」

 

「ご丁寧に、俺宛に届いていたんだ」

 

苦笑する大和、大和のフルネームは直江大和と言う。一誠と関わりある一人の生徒。さらに、この場には一誠と関わりある生徒は15人いる。

 

「旅人さん、今頃どこで何をしているんだろうね?」

 

「竜兵達も写真を見る限りじゃ、元気そうだしな」

 

「そうね、皆も成長しているわ」

 

「旅人さん・・・また一段とカッコ良くなってる」

 

「京は旅人という男が好きなのだな」

 

「まあな、俺達やモモ先輩も含めて旅人さんと小学校の頃から付き合いだったんだ」

 

「我の姉上である九鬼揚羽もである!」

 

腕を組んで九鬼英雄は高らかに言う。

ふーん、と一誠が映っている写真を見詰めると気になった事を呟くクリス。

 

「どんな人だったんだ?聞かせてほしい」

 

その質問に、直江大和達は素直に述べた。

 

「凄い人だよな?」

 

「優しくてカッコいいよ」

 

「頼りになる人です」

 

「僕達のヒーロー!」

 

「九鬼家に仕えていた従者でもあるぞ。序列1位である」

 

「あの人といると楽しいわ!」

 

「ガキの頃はよく、空に投げ飛ばしてくれたもんだぜ。もう一度、空に行きたいなー」

 

「モモ先輩に頼めばできるじゃん」

 

「それもそうだな」

 

一誠の話で盛り上がり、次の授業が始まるまで直江大和達は雑談する。

昔も今も、直江大和達は仲良しであった。

 


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