ハドラー子育て日記   作:ウジョー

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かつての勇者と魔王

〈ダイよ これからどうするのじゃ? まずはポップ君たちにおまえの無事を伝えるべきじゃが〉

 

《そうだね まずはみんなに会いに行こうと思うけど、

その後はゴメちゃんを探そうと思うんだ》

 

〈そうか ゴメはまだデルムリン島には帰ってきておらん、

そういうことなら今度はワシも同行しよう

もう破邪の結界に閉じこもっている必要も・・・〉

 

ブラスがこちらに振り返った

 

「安心せい 今のオレに世界を混乱させるような意志はない 

お前たちにかつてのような影響がでることはない」

 

〔オレも同行しよう お前たちの捜索のためにこの島で目や傷の回復に専念していたのだ

その治療も もう終わる頃合だ 獣王としての人脈も生かせるだろう〕

 

「クロコダインにブラスよ オレが共にいることに疑問や不信はないのか?」

 

〔愚問ですなハドラーどの。

オレは男の価値というのは どれだけ過去へのこだわりを捨てられるかで決まると思っている

今 貴殿とオレ達の道が交わり歩んでいる それでよいではないですか〕

 

〈あなたはダイを わしの息子と言ってくださった それで十分ですじゃ〉

 

クロコダイン、見た目以上に大きいやつであったわ。

ブラスもオレの配下だった時よりも随分レベルアップしておる これもダイを育てた経験によるものか

 

《じゃあ おれがみんなにただいまって言ってまわる間に 準備頼むね》

 

〈うむ いっておいで アバンどのやポップ君たちによろしくのう〉

 

{なあ隊長さん オレもハドラー様達といっしょにいくぜ!!いいだろ?}

 

(うむ 勇者ダイ君の護衛と隊員の捜索は獣王遊撃隊の最優先事項だ 

わが隊の代表として立派に務めたまえ)

 

「ホウ ずいぶんヒムが世話になっているようだな あのおおねずみに。

クロコダインよあれはお前の部下か?」

 

〔フ、あいつは次代の獣王になるでしょうな もっと頑張ってもらわねばなりませんが。

さてダイよ ポップ達はおまえを探す旅に出て世界中を飛び回っており場所が特定しにくい状態だ

まずはカールのアバン殿やパプニカのレオナ姫に会いに行くといいだろう〕

 

《アバン先生 今カールにいるの?》

 

〔ああ フローラ女王とご結婚されて王位に就かれた 今は国を離れられないはずだ〕

 

《それじゃ 先にカールに行こっか 先生たちにおめでとう って言わなきゃね》

 

「ならオレがルーラで連れて行こう その前にブラスよ これを渡しておこう」

 

一冊の本をブラスに渡した

 

「こうやってお前にアイテムを渡すのは あのときの魔法の筒以来だな」

 

〈あれには かつてダイやゴメを救っていただきました まことにありがとうございました〉

 

「別にそのようなつもりで預けたわけではないが まあよかろう ではいくぞ ダイ、ヒム!

ルーラ!」

 

ドオン

 

             ドヒュン

 

 

(いってらっしゃーい!)

 

 

 

                     ドーン!

 

「着いたぞ ここがカール王国だ」

 

ここは城門の前か まずは城に入ってみるか、さて警備を見るに・・・

 

《じゃ あの門番さんに聞いてみようか》

 

そうだった・・・ 別に侵略や侵入が目的ではないのだからあれでいいのか

 

“これは勇者さま よくぞご無事で!! すぐに陛下にお知らせします 

どうぞお仲間のみなさまと中にお入りください”

 

しかも顔パスか あの若い門番 オレの顔を知らんようだな

 

 

 

そしてオレ達は城の中の部屋でアバンと再会し ダイの無事をよろこぶアバンに

ブラスに渡したものと同じ本を渡した。

アバンがそれを真剣に読み進めている・・・

かつてこのオレがこの城に入ったのはドラゴンに乗り壁を破壊したものだったが

今回は竜の騎士の顔パスで難なく入ってこれた・・・

などと考えてる間にアバンは読み終えたようだ

 

‘なるほど この「日記帳」でダイ君が今までどうしていたかはよくわかりました

しかしあなたには驚かされることばかりですね’

 

「まあダイはな・・・」

 

‘ハドラー あなたのことですよ。

あなたとはじめてこの城で 私が騎士として出会ったときは 野心に溢れる魔王でしたが

それが今は竜の保護者’

 

「貴様は今や国王だがな」

 

こんな腐れ縁 300年以上生きてて他におらんな 出会ってからたった20年程度とは思えん

王となってもふざけたヒゲ以外 ひ弱そうな外見と妙な笑顔はかわっておらん

 

‘さてこの日記帳ですが このまま私がお預かりしてもよろしいのでしょうか?’

 

「こちらの条件を2つ呑めば それは貴様にくれてやろう 

それの価値は貴様にはよくわかっているだろうからな」

 

《条件?》

 

「ひとつは ヒュンケルに用があってな 案内を頼みたい」

 

{ハドラー様 お言葉ですが ヒュンケルのやつは激戦のダメージがまだ回復しきってないので

とても闘える体ではありませんよ}

 

「心配するなヒム 闘うことが目的ではない やつに伝えたいことがあってな

それにダイやアバンを伴えば やつから仕掛けてくることもあるまい」

 

《もうひとつは何? ハドラーじいちゃん》

 

・・・正直 こやつにこんなことを頼むのは抵抗があるが

 

『がんばってください ハドラー もう一声です!』

 

聖母竜がうるさいし、さっさと言っておくか

 

「・・・料理を教えてほしいのだが」

 

{ハドラー様?!}

 

‘なるほど わかりました その条件全て呑みましょう ではヒュンケルを迎えに行って来ます

リリルーラですぐですから みなさんこちらで待っていてください’

 

               フッ

 

アバンがその姿を消した

流石に察しがいいな 説明がいらん しかし国王が簡単に外出していいのか?

 

     ドーン!!

 

もう着いたか 帰りがルーラということはヒュンケルと無事に合流できたか

 

――――

 

ム アバンが捕まって叱られとる あれは確かフローラ姫、いや女王だったか 相変わらず気丈なことだ

一悶着を終え アバンがヒュンケルと、こやつはたしかバラン配下の竜騎衆・・・

 

《ただいま! ヒュンケル、ラーハルト》

 

そんな名前だったか

 

――――――

 

ダイたちが再会をよろこびあっている中に自然とヒムも混ざっている

オレがいない間に色々あったのだろう 子の成長か・・・

 

‘ヒュンケル ハドラーが話があるそうです’

 

アバンが促してヒュンケルがオレに気付く

 

゜貴様が ハドラー?! 何故ここにいる?!゜

 

どうやらオレだと思っていなかったようだ 人間ではアバンに次ぐ長さの腐れ縁なのだが まあいい

ヒュンケルの警戒に反応するヒムを制し 本題に入る

 

「ヒュンケルよ 貴様に伝えることがある 貴様の父バルトスのことだ」

 

                 ドン! 

 

ヒュンケルの目に殺気が混じる だがかつてのような暗黒闘気は感じない こいつも変わったものだ

 

「オレはかつてバルトスをこの手で処刑した それについて詫びる気はない」

 

ヒュンケルの殺気が増す ダイやヒムも心配するようにヒュンケルを見ている

 

「やつは 門番としての任務を放棄し勇者アバンを見逃し地獄門を開けた・・・」

 

・・・・・・

 

「だが 処刑のとき向かって放った言葉 あやつを『失敗作・不良品』と言ったことは撤回する

魔王ハドラー第一の配下、地獄の騎士バルトスは オレにとって尊敬に値する何よりの『誇り』だ」

 

天界でダイと過ごす日々のなかで常に感じていたことだった 

このオレの手で生まれ 魔王の邪悪な意志がもっとも濃密な地底魔城で高潔な武人の魂をもち

赤子だったヒュンケルを育て上げ伝えた、今のオレでは到底できんことだ。

そのことをあやつの息子であるヒュンケルに伝えたかったのだ

 

゜・・・・・・父バルトスは 貴様を恨めとは言い遺してはいない 

それにかつてバルジ島で オレ自身の手でけじめをつけている

ゆえにその言葉、素直にうけとり父の墓前に捧げよう・・・

父にとって騎士として 何よりの誉れとなりましょう・・・゜

 

「貴様がかつて贈った勲章には及ばんよ」

 

ヒュンケルが強く閉じた目から殺気も心情もうかがえないが・・・

急速におさまっていく闘気に ダイやヒムも緊張をといた

 

‘ヒュンケル。 私とハドラーはこれから祝宴の準備をいたします 

ですからダイ君をパプニカのレオナ姫のもとまであなた達で送ってあげてください

そしてしばらくは二人っきりしてあげるんですよ 墓参りなどをしてね’

 

゜・・・わかりました 行こう、ダイ、ヒム、ラーハルト゜

 

{あれ? オレも?}

 

「いってこい オレのかわりにダイの護衛をしろ まあ必要なさそうだがな お前もルーラが使えるのだ

役に立ってこい」

 

{わかりました! ハドラー様!!}

 

ヒュンケルを先頭にダイ達が城をでていく

 

「流石だな アバン」

 

‘フフ ヒュンケルは私の前で見せたくない顔がありますからね

それに私もバルトスさんとの出会いを 思い出しますよ

私も彼を非常に尊敬しています 一人の騎士として・・・

いずれは彼のような父親になれればともね・・・。

さて それではもうひとつの条件にとりかかりましょうか 

もちろん修業はムチャクチャハードですよ 結構日数もかかるでしょう

料理の道は一筋縄ではいきませんよ’

 

アバンが眼鏡ごしに楽しそうな顔をのぞかせる

 

『あなたの宿敵 なかなかの曲者のようですね』

 

こいつは前からこんなやつだった この城で出会ったときからな

 

「今のオレにない力を得る それには貴様が一番期待できる

その成果は 今でていった貴様の弟子どもが見せてくれたからな」

 

‘よろしいっ! では・・・ この本にサインを あとタイトルもいれてくださいね!!’

 

さっきこやつにくれてやった本をだしてきた

そこに血文字で魔族の文字を刻む かつてこの城の姫におくった襲撃予告を思い出すな

 

【ハドラー子育て日記】と

 

 




チラシの裏からおはようございます。
今回のは 単行本の最終巻とかに書き下ろされるおまけページぐらいのつもりで書き始めたはずなのに
かつてない長さになってびっくりです。
ハドラー様がカールに着いた途端に昔話に花を咲かせてしまうので・・・
これで連載前から書きたい内容は全て書ききりましたので暫く冬眠?に
コーセルテル編はまあ形になったらまたチラシの裏でボチボチと・・・
それでは ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

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