デッドホール   作:一人ぼっちの狼君

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軽い気持ちで書いたので、スナック菓子を食べるぐらいの気持ちで読んで頂ければ幸いです。


プロローグ

その日は寒い日だった。

 

この土地に来てまだ数日の新米警官の俺は寒い中通報があった住所に先輩警官と一緒に向かっていた。

 

「それにしても先輩、本当なんですかねぇ。あの電話」

 

助手席側に座っていた俺が先輩に話しかけるが

 

「…………」

 

先輩は返事をしない。電話の話ではとあるマンホールに大量の血がへばりついているという。ただ付近には別になんの死体などはなくただマンホールに血がついているという話だった。既に深夜二時を過ぎているこの時間にはタチの悪い電話だった。

 

「マンホールの中に死体を入れたとしてマンホールだけに大量の血が付くわけが無いですし、何かのいたずらなんじゃないですか?」

 

「おい、少し黙ってろ」

 

ついでに俺の寒い理由はこれもある。さっきの電話があってから先輩が全然喋らなくなったのだ。日頃からそんなに喋らない先輩だがここまで喋らないことは初めてだ。

 

「っとそろそろ着きますね」

 

電話のあった所には一台のワンボックスカーと三人の人間。電話をしてきた人だろうか?

 

俺と先輩が車から降りてその人たちに近づくと三人の姿が徐々に判明してくる。

 

一人は若い女性。何歳ぐらいかはわからないがおそらく二十歳前半ぐらいの年齢だろう。髪は後ろ髪だけ伸ばしているようで後ろで結んでいる。

 

残り二人は男性。男性といってもどう見ても男子高校生だ。服装は近くの高校の制服であることを近くで勤務する俺は知っていた。

 

「オイオイ君たち、ここは遊び場じゃ」

 

俺が彼らを野次馬だと判断してここから離れさせようと語りかけた。しかしその言葉を全部言う前に隣にいた先輩が

 

「やっぱり、今回も例の……」

 

「はい、あとは警護をお願いします」

 

と若い女性に喋りかけたのだ。俺が呆然としていると先輩が俺の方を向いて言う。

 

「おい、俺とお前はこのワンボックスカーの警護だ」

 

「はぁ!?ちょっと待ってください。全く意味がわかんないすよ!」

 

既に高校生二人組はマンホールをあけて下に降りている。女性はワンボックスカーに乗り込む。その時チラッと見えたがワンボックスカーには女子高校生も乗っていた。

 

「理由は少しずつ話す。とりあえずは車の警護だ」

 

この事件が、俺が初めて経験する『殺人事件』の現場だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は寒い夜だった。

 

連絡があったのは深夜二時すぎ。俺たち四人は車に乗って現場に向かっていた。

 

「既に言った通りこれは恐らくいつもの奴だ。中に入ったのが誰か、性別はどちらか、それらは分かっていない。ただ誰かが入ったのは確かだ」

 

黒髪の若い女性が車を運転しながら俺たちに説明する。

 

「現場のマンホールについたら、この車を拠点にして被害者を探します」

 

俺たちの後ろで機械を扱っていた少女が喋る。車の後ろには大量のモニターと配線。それら一つ一つがどんな物に繋がっているか俺は知らないが、喋った茶髪の女の子は知っているのだろう。

 

「ま、つまりはいつも通り俺ら二人で調べるしかないってことだろ?」

 

俺の隣に乗っている金髪の奴が簡単そうに言う。

 

「血濡れのマンホールが見つかるまで何分かかったか知らないからな。どのぐらい時間がかかるか分からないぞ、慶(けい)」

 

そんな短絡的な考えを改めるように否定する俺。名前は上北 修司(かみきた しゅうじ)高校三年、高校の噂じゃ暗い人ランキング三位らしい。

 

ちなみに金髪の奴は八上 慶(やがみ けい)俺の中ではうるさい奴ランキング一位だ。

 

「そうですね、仮に見つかったのが二時間前ぐらいなら最短時間で帰れる場合……朝の七時です」

 

機械を扱っている少女は、一条 優奈(いちじょう ゆうな)

 

「やべぇ、そんな時間じゃ遅刻確定じゃねぇかよ……」

 

「遅刻は許さんぞ」

 

慶のそんな嘆きを一刀両断で切り捨てる若い女性は俺の姉、上北 蓮(かみきた れん)

 

一応見た目は美人の部類に入るので男子生徒からの人気は高い。

 

「そろそろ現場だ」

 

例のマンホールについた俺たちは優奈以外車から降りてマンホールを調べる。

 

「うわぁ、こりゃべっとりついているな」

 

「……時間は結構経っているな」

 

慶はマンホールの見た目を純粋な感想で、姉さんはついた血がどのぐらいの時間が経っているか調べている。

 

「朝帰り確定だな、慶」

 

「そりゃないぜ……」

 

俺たちがマンホールを調べているともう一台車が近づいてくる。近くに来るまで車のライトが眩しくわからなかったが、近くに来たらそれがパトカーということが分かった。

 

中から二人の警官が降りてくる。一人は若い男、もう一人は中年ぐらいの警官だ。

 

「オイオイ君たち、ここは遊び場じゃ」

 

「やっぱり、今回も例の……」

 

「はい、あとは警護をお願いします」

 

恐らく若い警官は何が起きているのか分かっていないのだろう。まぁどうせ後でほかの誰かが説明する。

 

「慶、いくぞ」

 

「あぁ、明日は朝からエリーと登校するつもりだったのに……」

 

俺たちはマンホールを開けるとその中へ入るのだった。

 

 

 

 

 

 

「はぁこの中はいつも暗いなぁ」

 

「当たり前だ」

 

マンホールを降りていくと空間が広がる。この土地の地下に存在する地下通路だ。どんな理由でこの通路ができたのか分かっていない。ただ分かっているのは、この通路はここらの土地全域に広がっているという事だけだ。

 

「さて、血は……あっち側だ」

 

ライトで地下通路を照らすと通路には血がべっとりとついていた。マンホールの蓋にはついていたがマンホールを降りる手すりには全くついていなかった。恐らくビンゴだろう。

 

「優奈ちゃん、案内頼むぜ」

 

『了解しました。といっても血のあとがあるなら案内も必要ないでしょうけど』

 

「チッチッチッ分かってないなぁ優奈ちゃんは、こんな暗い空間で君みたいな可愛い女の子の声が聞こえるだけでも心の支えになるってものなんだよ」

 

『…………学校で愛理さんに言っておきます』

 

「それだけはやめて!?痛い!?」

 

「馬鹿やってないで行くぞ」

 

くだらない会話をしている慶を蹴って血が向かっている方へと進む。

 

この地下通路の入口はマンホールだけだが、入口は一つではない。半径約一キロに一つはここに繋がるマンホールがある。つまりこのマンホールから下に降りたって事は運がよければ一キロ以内に目標はいるって事だ。しかしこの空間では明かりが自分たちの持っているライトしかないので暗い。万が一のことがあったらいけないので二人で手分けして探すこともできない。結果として時間がかかるのは仕方ないことだ。

 

「おい、修司」

 

「なんだ……二手に分かれているな」

 

俺たちは血の痕を辿っていると血の痕が二手に分かれている。

 

「一つは、まぁダミーだろうな」

 

「奴ら……だな。優奈、どっちが本当かわかるか?」

 

『……左がダミーかな。そっちには見えないだろうけどカメラからなら相手の足跡がはっきりわかるから』

 

「了解した」

 

優奈は俺たちの服についているカメラからこっちの情報を見ている。赤外線、暗視カメラ、その他諸々のカメラがついているらしいがまぁ俺らは覚えていない。

 

「はてさて、何が出るやら……」

 

慶はダルそうに呟く。

 

「慶……静かにしろ、そろそろらしい」

 

俺は聞こえた。奴ら独特の音が。

 

グチャグチャと何かを咀嚼する音。それは人間が汚らしく何かを食べる音ではなく、動物が何かを食べる音だ。

 

その音を聞きながら俺たちは進む。その音の原因に……

 

「おっと犯人を見つけた。今日も素敵なクチャラーだな」

 

「慶、小さいが油断するな」

 

俺と慶の目の前にいるのは、犬の姿をした化物だった。

 

その化物は、人を喰っていた。

 




ある程度の流れは決めているので週一ぐらいのペースで投稿できたらなぁと思っています。こんな作品でも楽しんで頂けたら幸いです。

誤字脱字がないならいいなぁ……

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