あの人がいなくなってから、日々は変わらず過ぎていた。
そして、自分たちがしてしまったことは皆が口に出さずとも受け止めていたに違いない。
そして、鳴上先輩が帰る日の前日。
鳴上先輩宛に届いた足立透からの手紙で僕達はテレビ世界を作り出した張本人である『イザナミ』に辿りついた。イザナミを追いテレビの世界に向かった僕達はまるで『黄泉の国会いに行くイサナギ』。まさにその神話に近い形でイザナミを追い掛けた。
そして、僕達はイザナミと戦い……僕が最後に見たのは『憧れの先輩』の姿だった……気がする……それは……誰だっけ………ああ、冷たい手が頭に乗っている……
『じゃあな。名探偵さん』
「……」
鳴上は自分の体から何か光り輝く珠を抜かれたことに気がついた。そうした瞬間に名状し難い脱力感が体に生じた。
「…」
それをじっと見つめ、ケースに納める少年はニヤリと笑みを浮かべる。そして、テレビの世界が本当のテレビの世界に変わりつつある中、少年は目を閉じた。
「悪いな足立……1発入れ損なった」
少年はそうつぶやくと倒れている鳴上の前に来た。
「さて、本当の黒幕の『イザナミ』を見つけ出し、このテレビの世界に終止符を打つためにここまで来て、そして、最後は倒した。」
少年は鳴上に近付くと顔を近づけた。
「やはり、見込んだだけはあるか…」
シンは不気味に笑みを浮かべると顔を離し歩き始めた。
「…あれからこの世界で色々と考えていた。どうすれば、最善だったのか。どうすれば、君たちと誤解なく分かり合えるのか…」
シンはテレビの世界の本当の姿である大自然の中で大きな石に座り口を開いた。鳴上の後ろには気を失った仲間たちがいる。鳴上は傷を負いすぎた為に動くことが出来ずに居た。
「だが、結局……答えは出ずに、こうしてこの世界での最後の目的を達成した訳だ」
シンはポケットから輝く光の玉を持っていた。
「最後の目的。それはお前の魂の一部を装填したモノを頂くこと。そして、それにはお前の『力の一部』が必要だった。だから、お前のペルソナ『伊邪那岐大神』だけ貰っていくことにする。」
彼はその光の玉を手品のように消し、そして、カードを1枚その手から取り出した。
「タロットカードは『
シンはそれをポケットに入れると大きくため息をはいた。
「結局、俺は失ったものを取り戻すことは無かったよ。鳴上。やっぱり、お前みたいに瓶の中に綺麗な水を入れることは出来なかった。…お前達はあるべき道筋に戻るべきなんだ。俺なんかと関わることなく交わることのない人生をお前達は歩むべきだ。全て、見えない手の上でお前達は踊り続けていくしかないのだ」
シンは大きな石から立ち上がると言った。鳴上は必死に何かを言おうとするも言葉にならない。何故だが、口が動かなかった。それはその気力すら使い果たしていたのだ。
「じゃあな。全て上手くいくさ、全てな」
「勝手にいなくなるつもり?」
「……」
そこにはブスっとした顔で立っていたマリーがいた。
「そうだな。お前がそうだったように」
「……そういうの良くないよ」
「お前も俺のことを忘れるように手配しておく」
「忘れないよ。私は人間じゃないから」
マリーはそういうと、微笑んだ。
「そうかな?君はあまりにも人間に染まり過ぎたな」
「!?」
シンが指を鳴らした瞬間、マリーは突然に眠気が襲ってきた。
「…君は選んだんだ。心地よい夢の中で生きることを。俺はそっちは選べないからな。選ぶつもりもないがね」
鳴上達は気が付くととても綺麗な景色の中にいた。それは紛れもなく自分たちが『イザナミ』を倒した左証に他ならなかった。皆は喜び、感動し称えあった。
そして、鳴上が都会へ帰った後もこの町では多くの事件があった。『P-1グランプリ』がその良い例だった。しかし、彼らはこの1年で培った力でそれらを乗り越え、大人になっていった。
『1人の仲間のことを忘れて』彼らは本来の人生を送っていた。初めからそうであったような人生を送り続けていた。
──2031年
その日の都心は酷い雷雨だった。白鐘直斗は探偵事務所社長として仕事を終え、いつものように帰宅していた。
すっかりと彼女は年老いたものの、その眼光の鋭さは30歳を超えても未だに衰えていない。寧ろ、鋭くなっていた。あの頃とは違い、ここは都会。排気ガス臭いし、忙しなく人々が動いている。
そんな直斗の前に車が止まった。そして、窓が開くと警察手帳が出てきた。
「白鐘さん、殺人事件がありまして、折角なので迎えに来ました」
「ありがとうございます」
「どうぞ」
彼女は車に乗ると、早々に事件現場へと向かった。
事件現場は雨が降っておらず、ビルの間の路地。そこは土になっており、足跡がくっきりと残っていた。既に野次馬が沢山いて、規制線を張っていた。直斗は白い手袋を付けるとブルーシートの中へと入った。
「…これは」
「検視の結果待ちですが、ナイフでめった刺しなのは違いありません。身分がわからない為、我々も困っています。」
直斗は死体を観察する。すると、1人の警察官が死体を触り始めた。
「おい!勝手に触んな!!」
そう刑事が言うも警察官は襟元や袖口、メジャーなど取り出し、終いにはスマートフォンで何かを調べ始めた。
「…彼は?」
「新人のヤツです。すみません、すぐに外に出します」
刑事がそういうと、新人の警察官をつかんだ瞬間、新人の警察官が口を開いた。
「犯人の足のサイズは27.5cm。170cmくらいの中年男性。足跡のかかった圧力だと70kg前後。
被疑者は左足に負傷のあと、引き擦り方からみて、外傷。被害者と争った形跡あり。ここにこの被害者以外の血、被害者の爪に皮膚片と手に防御創。
泥濘を歩いた形跡がある。ここ周辺は雨が降っていないし、泥濘もない。つまり、雨の降っていた場所から来た。それに、バツイチ。年齢からして、熟年離婚。薬指に跡が残るくらい指輪をしていた。刺し方からして、素人だが、怨恨によるもの。こんなに刺さなくても人は死ぬ。強い恨みがあった。」
新人の警察官はそれを言うと雨具を深く被った。
「適当なことを抜かすな!」
刑事がそういうと、新人の警察官の頭を叩いた。
「……いえ、あながち当てずっぽうではないと思います。」
直斗も彼に言われて死体を見ると、ズボンに泥が付いていたり彼の言う通り、足跡も確に被害者のものでは無かった。
「…彼の言った怨恨の線で調べて下さい」
「本気ですか?」
刑事の言葉に直斗は頷いた。
「…あなた、名前は?」
直斗は一緒につまみ出された新人の警官に名前を尋ねた。
「シン。間薙シン」
警官が雨具のフードを外すと、そこには年齢の変わらない『間薙シン』が居た。
「マナギ…変わった苗字ですね」
直斗はそういうと、彼から目を離した。それはかつて自分が憧れたカッコイイ探偵が吸っていた煙草を吸う為だ。そして、もう何十年も前に1度彼と会ったことがあるような気がしてならなかった。しかし、思い出せなかった。
「1度、会ったことがありますか?」
「ある」
「?すみません、いつでしょう、あ!」
直斗の帽子を彼は手に取り、腕を上に伸ばす。
「返してくだ……さい?」
直斗はこの光景に既視感を覚えた。シンは直斗に帽子を被せ直すと直斗の横を通ってそのまま歩き始めた。
「また会うことがあったら、思い出しておいてくれ」
「ちょっと!」
「その時はなにも言わないで笑っていてくれ」
そんな呟きを残して彼は消えてしまった。
「『じゃあな。名探偵さん』」
「!?」
直斗はすべてを思い出し、すぐに懐かしいメンバーに電話をかけ始めた。
「もう、りせちゃんって何歳?」
「もー、失礼ですよ!!」
久慈川りせは司会にそう突っ込むと周りの人たちが盛り上げる。
『久慈川りせの軌跡』と題されたその番組で勿論、彼女の高校時代の話になった。
「しかし、凄いタイミングでりせちゃんも八十稲羽に戻ったんやね?」
「えぇ、もうその時は大変で」
とりせが言葉を続けようとするとふと、視界に見たことのある少年が客席に座っていた。彼だけはほかの観客と違って明らかに雰囲気が違った。どこか脆く、どこが危なげな瞳がりせをみていた。
「したよー」
と一瞬だが、彼女はプロらしく動揺を見せることなく話を続けた。
「はい!お疲れ様でしたー!!」
そうADの声とともに収録が終わると同時にりせは客席の方に向かおうとしたが、先輩への挨拶がある。それを軽く終わらせた頃には既に客はドアから出ていき、スタジオの外に近かっただろう。
りせは既視感を覚えた少年を探そうとした時、携帯電話が鳴った。
「はい!久慈川です」
『た、大変です!!』
「直斗?どうしたの」
『帰ってきたんですよ!!!』
「んで、なんでお前がいるんだよ」
「いいんじゃん。後輩の晴れ舞台な訳だし」
「そうだね」
『テレビで紹介されました!』と書かれた商品棚にはとても可愛らしい編みぐるみが置かれていた。
そして、その前には『店長』という名札をつけた花村陽介と警察官の格好をした里中千枝がいた。そして、その横には着物の良く似合う天城雪子とスーツを着た巽完二がいた。
「しっかし、完二くん大出世だよねー」
「ま、ある意味そうなんだよな」
「そう言われると照れるッス」
「でも、相変わらず…」
そういうと、天城は完二を見て笑い始めた。
「アハハハハ」
「まだ、慣れないんスね」
そこへ、フード付のパーカーを着た少年が棚を前に来た。
「ほら!早速、お客さんだよ」
「おお!流石だな」
と千枝と花村が言うと完二の携帯電話が鳴った。
「はい。巽です」と先ほどとはうって変わって丁寧な言葉遣いになっていた。
『巽くんですか!?』
「なんだ、直斗じゃねぇか。なんだよ」
『た、たいへんなんです!!』
「何がだよ」
少年はひとつ手に取ると花村たちの方へと近付いてきた。
その顔に完二は思わず携帯電話を落とした。
「これ、くれ」
その少年は何十年も前に見せた不気味な笑みを浮かべそう言った。
驚くほどに俺に変化がなかった。偽物の心を生み出されたから痛むんだとルイは言っていた。それは正しかった。結局、俺は彼らと別れあとは痛みも無くなり、平凡な混沌王のやるべき事をやっていた。
『平凡な』……実に不思議な表現だが、やることは永遠には変わらない。穴だらけのボートに乗り、永遠と穴を塞ぐだけのことを繰り返しているに過ぎないのだから。
そして、俺は再び。この世界のこの地へと来ていた。
彼らは俺に対して、何を感じたのだろうか。怒りだろうか。俺は彼らに難しい問を投げかけてしまったのかもしれない。
…明確な答えは彼らから得ることは無かった。彼らはかつてのように俺をまた迎え入れてくれたのだから……まったく、どうして人間というやつは根幹は変わらないのだろうな。
しかしながら、俺は卑怯だった。彼らから答えを聞く前に、俺は彼らから回答権を奪ったのだから。記憶を修正し、一時的にこの世界とのアマラ経絡を閉じた。そうすることで、俺は彼らの中から消えたのだから。
他人と自己、自己と他人。そんな括りの中で他人を自分の感覚でしか理解はできない。幾ら他人の心内を知りえても、他人には成り変われない。その瞬間の感情や心情は誰も理解はできない。
俺はそれが怖かった。他人の目が怖かった。他人の感情が自分の知らない所で物事が動くことが怖かった。
他人という得体の知れない怪物が怖かった。
本や映画には無い、謎の恐怖があったのだと今は思う。
俺は高台に来ている。俺が再び未練たらしくここに来た理由は二つある。
一つは大人になった彼らを見てみたかった。俺が望みかけた『俺の普通の暮らし』を必死に願ってくれていた彼らのその後を見てみたくなった。実にワガママな願いだ。自分から彼らと縁を切ったというのに。
それにもう一つ理由はある。それがなければ、来ることもなかっただろう。そちらが本命だ。
シンは『ビフテキ』を食べ終わると空を見上げた。そして、シンは車椅子に座る男性に言う
「…世界は自己解釈でできている。お前もそう思うだろう?」
「そんなことはない。俺は他の人と多くの事を共有してきた。勿論、シンとも」
車椅子の男性はそういうと微笑んだ。
「…大病を患いながらも、お前の命の輝きは未だに衰えないな。人を助けるために色々な場所を旅したそうだな。それもここで終わる訳だが。」
「俺はまだ終わらない」
「…残念だが、俺は死神で、死人。何もかも全て失っているさ。何度も掴みかけたんだけどな、もう一層のこと死んだままでいることにした。それで、お前を呼びに来たわけさ。」
シンは男性にそういうと、男性はシンを見て肩をすくめた
「知っている。でも、俺は最後の最後までしっかりと目を見開いていたいんだ。」
「…その目に何を見る?」
「みんなの笑う顔だ」
その男性の言葉にシンは呆れた様子で答えた。
「どこまでも、お前は他人に尽くしてきたのだな。俺が…絶対に歩むことの無かった道をお前は進んできたんだな」
「……それは違う。シンもきっと俺達のためにみんなの前から消えたんだって」
「そうお前が思いたいのであれば、そう思え。所詮、世界は自己解釈でしかないのだから。お前が築いてきたお前の世界は、お前の中で完結するしかない。」
「…それも違う」
男性は弱々しく微笑んだ。
「俺達は伝えることができるんだ。自分の世界を、自分の気持ちを。」
「だが、それは欠落してしまう」
「だからこそ、俺はシンがこの世界にいたことをちゃんと伝えたかった…」
男性はシンの冷たい手を冷たい手で握ると大きく息を吸って吐いた。
「…全ては花火のように散る」
そうシンが言うと花火が上がった。それは何十年も前に見たものと同じものだった。
「…多くの事は語り尽くせない。お前の人生が多くの出来事で構成されているように、幾億もの言葉が完璧に物事を伝えられない以上、そこに『語り得ぬこと』が存在する。そして、それには沈黙するしかない。」
「…どこまで、話したかな…」
男性はそう言うと車椅子に深く寄りかかった。
「焦ることは無い。ゆっくりとお前の人生を語ってくれ、永遠の時間がお前を迎え入れる」
「……」
男性はギュッと車椅子の手すりを強く握った。
「死ぬことは怖いか?」
「違う。愛しいものが多すぎるから、置いていくのが怖いんだ」
「…それはお前が生きた証にほかならない。」
シンはそういうと、花火の方を見た。
そんなシンにポツリと男性は言った
「…もう、何年になるかな。シンの言葉がまだ突き刺さってるんだ。『何も言わないで欲しい』あの言葉が頭から離れなかった。」
男性は力を抜くと、目を閉じた。
「俺も……ここに来るまでは、空っぽだったからシンの言っていることが分かったんだ。何よりも、俺がそれを嫌っていたはずなのに、いつの間にか自分の一番嫌っていたことを友人にしてしまっていたんだって」
男性はそういうと、シンを見た。
「ごめん」
「いや、俺には帰るべき現実があった訳だ、その口実にしたかったし、俺なりに一時的にでもケジメを付けたかったのさ。」
シンは飲み物を飲むとため息の後に言った。
「…この幸せな幻から去る理由が欲しかった。何千年と他人のいない世界にいた俺には他人というモノが恐怖でしかなかった。それが俺の何かを痛めた理由なのかもしれないし、実際、よく分からん」
ただ、とシンは言うと花火を見て、言葉を続けた。
「俺の言っていることは滅茶苦茶だ。自己は無いなどと言いながら、自己を理由にお前達の前から去った。論理破綻もいい所だ。だが、俺にとって自己なんてものは小銭と一緒にポケットいれておけばいいものだと思っている。使う時は使い、使わない時はしまう。その程度のものだ。
なによりも、俺は矛盾の塊。言うことも成すことも、全ては矛盾。
俺はどこまでいっても空っぽだ。半魔半人、正確なコトワリを開く事なく、空っぽな世界を作り上げた。だが、空っぽだからこそ、俺は混沌王になった。だからこそ、他人に自己を勝手に詰められること拒絶した。俺は俺だけの体で、意識で、感覚を俺1人で自己証明したかった。神の作り出した紛い物ではなく、全て手の内で全てを『確かなモノ』にしたかった」
「横暴だ」
その言葉にシンは肩をすくめた
「この世の不確かさに比べたら、横暴ではないさ。嘗ての俺達に選択肢さえ与えず、
シンはそういうと、男性の両肩を掴んだ。
「お前がそうしているのも神のせいだ。お前の輝きある未来の可能性を『運命』などという、狭い言葉で言いくるめられてしまっている」
「…」
「こうして、俺の伝えたいことは『言葉』などというものでテクスト化され、誤謬されてしまう。」
そして、シンは力強く男性に言った。
「俺は
シンはそういうと、男性の隣に座った。
「そして、それには人の力が必要なのだと分かった。『神殺し』。悪魔の主体、概念、精神性を壊せるのは人間でしかないという一つの答えにたどり着いた。人間には『観測』する力がある。残念ながら俺はもう悪魔になってしまった。だが、お前は違う。まだ、人間だ。」
そういうと、シンは男性の正面に立ち勢いよく男性の心臓に目掛け手刀を突き刺した。それは車椅子の背もたれまで貫通した。
「グフッ……」
男性は血を吐き出し、震えだした。
「そして、これで、お前も俺の『神殺し』だ。」
ニヤリとシンは笑みを浮かべると、男性の胸の辺りで嘗てシンが持っていた珠のケースが体に埋め込まれた。そして、シンは手を引き抜くと男性の体は突き刺された筈の傷が綺麗に無くなっていた。
「……ああ、懐かしい……感覚だ」
「何十年も前のお前の力だ。」
先程まで力なく持たれていた男性はいつの間にか若返り、嘗ての姿を取り戻していた。
「お前の力を借りる事にする、『鳴上悠』」
シンはそういうと、鳴上に手を差し出した。
「当たり前だろ?大切な友人の頼みだから」
鳴上はそう答えると手を取り笑った。
「悪いな」
そうシンが言うと鳴上は首を横に振り違うと言った意味を込めているように見える。
「……ああ…そうか…”ありがとう”…か」
混沌 Rank Unknown→10
我は汝…、汝は我…汝、ついに真実の絆を得たり。
真実の絆…それは即ち、真実の目なり。
今こそ、汝には見ゆるべし。
“混沌”の究極の力、“神殺し”の力
汝が内に目覚めんことを…
「どこまで行く?」
鳴上は大きく伸びをしながらシンに尋ねた。
「さぁな……行けるところまで行くさ、クマも共にな」
「そうクマ。今度はクマがシンくん助けるクマ!」
「クマ!」
鳴上は驚いた様子でクマを見た。クマもあの時の格好のままでそこにいた。
「クマだけ年取らないエイエンの王子様だったクマね」
「だから、ボルテクス界に殆ど居たな」
シンは呆れた様子で最後の花火を背に暗闇に歩き始めた。
そこへ、メリーがシンの肩を叩いた。
「準備できました」
「…行くか、愛おしくなる前に」
そういうと、シン達は闇に消えた。
我、漕ぎ出すは空虚な海
是、即ち悠久なる旅なり
衆生と輪廻に別れを告げん
――僕が産声を上げて、俺がそれを殺した。
とりあえず、これで一旦終わりです。
色々と不満はあると思いますが、とりあえず一区切りです。今後どうするかは不明です。
長い間、読んで下さった方々、本当にありがとうございました。良い意味でも悪い意味でも期待を裏切れたでしょうか。それなら、幸いです。
それと、これだけ言わせてくださいペルソナ4と真女神転生3を作り出していただいたアトラスに心の底から感謝をさせてください。これらが無ければ、僕は本当に人生を退屈に過ごしていたと思います。ありがとうございました。
詳しいあとがきは活動報告で、書こうかと思います。