Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第73話 Make Me Feel……Alright? 20XX年1月7日(?) 天気:不明

「やっとか」

シンはグニャリと太い檻の一部を歪め、檻の向こうの廊下を確認した。

 

しかし、不思議なのはその廊下には見張りがいないし、敵の気配もこの階層に感じない。

そもそも、この階層から下の気配が妙に分かりづらい。

何か特殊なことがされているのだとシンは感じた。

 

そもそもここは何階なのか。

おそらく、最上階だと推察される。

 

理由としては上に空が見えたからである。至って単純である。

最上階でなければ上に空は見えないからだ。

 

シンは宙ぶらりんの檻から出ることにした。

中で助走をつけて飛ぶと、なんとか廊下につながる縁へと片手で掴まった。

 

シンは檻が吊るされていた底を見た。

白い建物の性質上、底まで見える。

 

「無傷は無理だな」

イケブクロの元本営ビルを思い出す。あそこから飛び降りたのは良い思い出である。

「というより、一番初めはピクシーに突き落とされたのか。」

 

シンは手に力を入れると、廊下にはい上がった。

 

「それにしても…真意が読めんな」

シンは廊下の両側にあったドアから外を確認しつつ、出る。

 

ピラミッド型をしているこのカテドラルは最上階はそれほど広くない。しかし、シンはそれを知らない。

調べようもない。念通もノイズに似た何かが混ざっており、不通。尚且つ、召喚もできない状態である。

 

ふと壁を見ると、メタトロンの絵があった。

その前には神を象った、像が置かれており剣を天に掲げていた。

 

シンは思い出す。

 

『よくここまで辿り着きましたね

…永劫のアマラの流れを越え、待ち続けた甲斐がありました。

すべてのメノラーを排し、最強の光の刺客すら退けたあなたは…まさに我らが待ち望んだ悪魔です』

 

「…待ち望んだ割には……扱いがひどいがな……大体、待ち望んだ悪魔はこんな良く分からない場所でウロウロとしているぞ。まったく……」

 

シンはボヤくようにメタトロンの絵をアギダインで燃やす。

八つ当たりも甚だしい。

 

シンとしてはメタトロンを見ると腹が立つのだ。

 

 

そんなことを考えながらもシンは冷静にこの建物を調べていた。

感覚的に現在の階層はそれほど、広くないと感じていた。

 

だが、問題は降りる階段が見当たらないことである。

 

(…闇雲に穴があるわけでもなさそうだな…下手に壁に穴を開けると、鳴上たちに被害が出るかもしれん)

シンは結局、その階の大きな広場で待つことにした。

 

大きな陰謀の渦に既に巻き込まれていることさえ、予想もしてなかった。

 

 

 

 

 

 

「汝らの力…見事なり」

「しかし、我らは消えはせぬ。すべては手の内に……」

 

2体の大天使たちはそういうと、マガツヒを放出しながら目を閉じた。

 

 

「はぁはぁ…疲れた……」

花村は息を切らしながら、尻餅を着くように地面に座った。

 

「な、なんで、まとめて出てくるクマ…こ、こういうのは、フツー別々に来るクマ。そーいう、ソウバクマ。」

「た、確かにそういう、相場ですけど、4体同時でなくて良かったです」

クマのメタ発言に直斗がツッコミを入れる。

 

「も、もうダメ。つ、疲れた」

全員、疲れがピークになっていた。

 

それもそうだ。もう既に、7階まで来ている。

そして、四大天使を倒した今、彼らを遮るものはいない。

 

「…鳴上くん、気付いた?」

「?」

膝に手をついて休憩していた鳴上に天城が言う。

 

「この階に上がってから、りせちゃんの声が聞こえなくなってるの」

「…確かに」

「…何か、あったのかな…」

天城は心配そうに言う。

 

「多分、大丈夫。ピクシーさんが居たから。」

鳴上の瞳にはまだ闘志が光っていた。

 

 

 

 

「センパーイ!!センパーイ!!」

りせはペルソナ越しに鳴上たちに声を届けようとするもノイズが混じって何も聞こえない。

 

「大丈夫なの?悠は。」

「たぶんね」

 

ピクシーは少し不安そうに言った。

マリーはそれを感じ取った。いつもとは言わないが、どこか融和な雰囲気がピクシーにはあった。

しかし、今は少しだけピリピリしている。

 

「…心配なの?ピクシーさん」

「…心配は無かったわ。でも、マーラが門を突破してから随分と時間が経ってるわ。それにさっき感じたし熾天使の気配が不安なの。」

「先輩を、助けてくれた悪魔?」

リセの言葉にピクシーは頷く。

 

「熾天使の中でもセラフが出てくるなんて思わなかったわ……そうなると、事はもっと大事(おおごと)で単純じゃなくなるの。」

「あら、こんなところに居たの?ピクシーさぁん?」

そんな3人の後ろに緑色のワンピースのような服を着た悪魔が来た。

 

「ティターニア。なに?あんたまで、出張ってきてるの?」

「当たり前じゃない?私たちの主がピンチなのよ。

それだっていうのに、あなたはこんなところにいるの?」

ピクシーはティターニアを睨むと言う。

 

 

 

「私だって心配よ。今すぐにでも飛んでシンの元に行きたいわ。でもね、それじゃあ、私はシンに言われたことを守れないわ。」

 

『鳴上たちを頼む』

 

シンは消える前にそう言っていた。

たったその一言だけのために、りせたちを守ることにしたし、ピクシーはずっとここにいるのだ。

 

「でもね、ここで私が飛んで行ったら、シンの信頼を裏切ることになるの。だから、私はシンを待ってるわ。」

 

ティターニアにはその言葉にため息を吐いた。

 

「相変わらず素直じゃないのね。」

「うるさい」

「……まっ、キライじゃないわ。」

 

ティターニアはそういうと、マーラがこじ開けた門の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

鳴上たちが8Fに着くと正面に人影があった。

 

「敵!?」

「…ん?」

 

その人影は床に仰向けに寝ていた。

そして、鳴上たちに気付くと、鳴上たちの方に顔を向けた。

 

「……なんだ、鳴上たちか。」

「「「シン(先輩)!?」」」

 

鳴上たちはシンに駆け寄る。赤い絨毯の上で横になっていたシンは勢いよく立ち上がる。

 

「おまっ!ふつーなんか、囚われてるっていうのは、檻とかにさ「ああ、壊してきた」…」

花村のツッコミにシンは平然と答える。

 

「…でも、相変わらずで良かった。それと、たすけてくれてありがとう。」

鳴上はシンに言う。

 

「お前たちには帰る場所がある。それだけの話だ」

シンは相変わらず淡々と答えるだけ。

 

 

 

「感動の再会は終わったか?堕ちた人修羅よ…」

「…セラフか。だから、妙に空気が不味いわけだ。」

 

シンはそちらを向くと淡々と構えた。

メタトロンの絵の前にセラフがゆっくりと降りて、地面に着地する。

「いやはや、実に見事であった。人間たちよ」

セラフは拍手をするように手を叩いた。

 

「いや、まぁ、伊達に俺たちもテレビの中で戦ってないからな」

花村は照れたように言う。

 

「流石はヒーロー(・・・・)と言ったところであるか……」

セラフは言葉を強調して鳴上達に言う。

 

「……そういう事か、セラフ。お前はそういうやつだったな」

シンは何かを悟ったように構えを解いた。

シンのその言葉に皆が首を傾げる。

 

「どういうことです?」

流石の直斗も今の会話だけでは、理解できなかった。

 

 

セラフは笑みを浮かべると大きな声で言った。

「ここに今!我らが救世主たちが誕生したのだ!」

 

まるで、ミュージカルのように大袈裟だ。

 

「救世主?」

千枝は首を傾げた。

「そう。救世主なのだ。そして、我らが敵、人修羅を倒すのだ。」

 

「…?」

鳴上たちは突然のことに意味も分からず、今一理解できていない。

 

 

「二度も言わせるか。汝らが、人修羅を、倒すのだ」

セラフは笑みを浮かべる。

 

「は?何言ってんだ?てめぇ」

完二はセラフにガンを飛ばす。

セラフはそれを無視して話を続ける。

 

「これまでの四大天使を倒してきたのは、お前たちが適性があったか。それを確かめる為である。」

 

「今一理解できません。なぜですか?そもそも、僕たちと間薙先輩が争う必要はありません」

 

「実に単純だ。お前たちは人修羅を倒すか、死ぬか。そのどちらかしか無いのだ。」

 

「…如何にもお前らがやりそうなことだな」

 

「だ、だったら、クマたちが、オマエを倒すクマ!」

クマは焦った様子でセラフに言葉をぶつけた。

 

「…フフフッ……それも叶わぬよ。我が倒されたとき、この世界は消え去る運命なのだ。逃げ道のない汝らに何ができる……」

 

 

「!?」

鳴上は飛んできたシンの拳を刀で防ぐ。

つば競り合いのような形になる。

シンは一旦距離を取る。

 

「そういう事らしい。やるしかないだろう。

「で、出来ないよッ!!そんなこと」

 

「言ったはずだ。いつかは選択しなければならないと」

シンがアギダインを千枝に放つが、天城が前に出て吸収する。

 

「こんなの絶対におかしいよ!」

天城はシンに向かって言い放った。

 

「クッククク……そうか?俺は嬉しいぞ。こうして、戦えることがな」

シンは不気味な笑みを浮かべる。

 

「こうでもならなければ、お前たちと闘うことも無かっただろう?」

 

シンはそういうと、ずっと昔に動かなくなった『マロガレ』を飲み込んだ。

貫通を覚えて以来となるだろう。そう思うとシンも少しだけ感慨深くなる。

 

多くの戦いをマロガレでやってきた。

これが最悪、最後になるかもしれない。

だからこそ、最高の興奮と探究心、

 

 

そして何より。

 

 

気が赴くままに戦うのみ。

 

 

「人生最高の一戦にしよう。可能性を見せてみろ!」

 

シンはそう言うと両掌に火炎を出現させて頭上に掲げ、踏み込みと同時に巨大な火柱を対手に打ち込む。

『マグマ・アクシス』である。

 

「やるしかねぇのか!?」

花村はマハスクカジャで全員の素早さを上げ、その攻撃を避ける。

 

「選択しなければなりません。分かっています……いつでも、そうしてきました……ですが、こればかりは………」

 

直斗は顔を歪めると今にも泣きそうな顔でメギドラオンをシンに向け放つが。集中できていないのか、それを外す。

 

その爆風からシンが飛び出してくると、『ジャベリンレイン』の向かう先を一点に集中させる。

 

「ヘッァ!」

それを振り下ろす。足先から出てきた無数のエネルギーが容赦なく直斗を襲おうとしていたが、完二がとっさに前に入るとそれをモロに受けた。

 

完二は壁に叩きつけられると、そのまま気絶した。

 

「巽くん!!」

直斗は完二に駆け寄る。

 

 

「こ、こんなの絶対におかしいクマ!!シン君やめるクマ!!」

「絶対などない。それに、理不尽なのは今に始まった事ではない。

俺もオマエたちも、その犠牲者に過ぎない。

お前たちは選ばれたのではなく、苛烈な運命に選ばれてしまったのだ(・・・・・・・・・)!」

 

シンは着地した所に、鳴上が一気に距離を詰め、拳と刀のつばぜり合いになる。

 

「これ以上、理不尽な事はもう沢山だッ!!」

鳴上はシンを睨む。

 

「…呪うなら運命を呪え。そこが入口だ」

 

シンはそう言うと、鳴上の腹に蹴りを入れる。

鳴上は少し判断が遅れたものの、瞬時に下がることで軽傷で済んだ。

 

 

「…下らぬ情よ。救世主たちよ。その手で悪しき人修羅を殺せ」

セラフは微笑むと鳴上に言う。

 

「うるせぇ!黙ってろ!」

花村が大声でセラフに言う。

 

「本気で来い。そうすれば、倒せるかもしれん。」

シンは鳴上達を見ながら、再び戦闘態勢に入る。

 

「…シン君の気持ち…分かったよ」

 

天城はそういうと、アマテラスを召喚する。

シンは紙一重で天城のアギダインを避けると、シンは空中で大きく息を吸い『アイスブレス』を鳴上達に放つ。

クマが全員の前に出てそれを防ぐのと同時に花村達がペルソナで一気に攻撃をする。

 

「頼むぜ…ペルソナァ!」

「ペルクマー!!」

「来い、スクナヒコナ!」

 

シンがいるであろう場所に攻撃を集中させた。

しかし、その攻撃を腕で防ぐことなく、シンに直撃する

 

「当たったか!?」

 

しかし、煙の中から傷つきながらもその落下のまま、両手に力を込めている。

それは、何度も見たことのある技であった。

 

ダンジョン全体を揺らし、多くのシャドウを葬ってきた技である。

 

「!?や、ヤバイ!!」

 

 

『地母の晩餐』

 

 

シンを中心に、床に亀裂が入るとそこから、エネルギーが

溢れだし鳴上達を空中に飛ばした。

そして、シンは着地と同時に容赦なく追撃をする。

 

抜刀の構えに入ると、エネルギーで作り出した刀で一閃した。

 

「ヘアッ!」

 

『死亡遊戯』

 

嘗ての仲間たちを容赦なく一閃する。だからこそ、彼は混沌王に成り得た。

だが、3人が立ち上がる。一番初めに真実を追い続けようと鳴上と誓った3人が。

 

鳴上は物理無効にとっさに変えたものの『貫通』により想像以上にダメージを負っているようだ。

倒れたまま動かない。

 

「…まだ、立つか…俺も今ので体力を随分と使ったんだがな…」

「……へへっ、俺たちも舐められたもんだな。まだ、ヨユーだってーの」

花村は膝に手を当てて、息を思いっきり吐く。

 

「なんとなく、お前の辛さが分かったよ。こんな気持ちで親友と戦ったんだな……」

「…」

 

「終わらせようぜ…こんなことペルソナァ!」

ガルダインをシンに向けて放つ。

 

「…」

シンは無言でそれを避けると、『気合い』を入れた。

 

「もう迷わないよ…ペルソナッ!!」

天城はアギダインをシンに放つがそれは払い除けるように振り払われる。

 

「…」

シンは『雄叫び』をあげた。それは轟音に等しく建物が全体が揺れる。

花村達の攻撃が上がるも、それだけ無防備になっている。

 

「絶対にわたし達は諦めない!」

千枝はゴットハンドをシンに放つ。

シンはそれを両腕で防ぐ。

 

「……俺もまだ、諦めてない!!」

 

鳴上はなんとか、立ち上がると、イザナギを召喚する。

その心の決意に共鳴し、イザナギは『裁きの雷』をシンに放った。

それは恐らく、並みの悪魔では消し飛んでしまうほどの威力である。

 

シンはそれをモロに喰らうが、体が煙を上げていても笑みを浮かべる。

 

楽しいからである。戦うことが何よりもの楽しみなのだ。

 

 

「…見事だが…数歩、及ばずだな」

シンはそう言い終わると、掌に己の1割以上のマガツヒを込め、それを吐き出すように鳴上たちに向けてはなった。

 

それは嘗て、反逆の堕天使やカグツチ、そして、多くの熾天使を一瞬にしてマガツヒにした、人修羅最強の攻撃と言っても過言ではない攻撃を仲間に向ける。

人修羅が修羅たる所以。自分の体内のマガツヒを一気に大量に放出した。

 

 

 

『至高の魔弾』

 

 

 

 

 

 

 

 




想像より膨らまなくて、短めに終わります。
大体、こんなもんだと思う。

追記

大変失礼しました。修正しました。

それで、書いてて色んなメガテンの主人公とかペルソナの主人公達ってすげぇ、理不尽に巻き込まれてんなぁと思いました。
真女神転生1,2,3とかペルソナ3とか……
というか、ペルソナ4以外ほとんど理不尽に巻き込まれてるね。

(´・ω・`)カワイソウダネ

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