Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

7 / 93
第7話 In The TV 5月19日(木) 天気:晴

「また会ったな、・・・少年探偵」とライドウの帽子を被ったシンはジュネスの入り口で完二の店に居た少年に声を掛ける。

 

「・・・何故、僕が探偵だと?」

 

「・・・簡単な話だ。君の背丈、そして、歳で刑事とは考えにくい。

それに万が一君が刑事だとしても・・・」

 

そういうと、シンは少年探偵の靴を指さす。

 

「靴のすり減りが浅い。

つまり、その時点で足を使う刑事であることは考えにくい。

 

それに君は筋肉量が少なすぎる。刑事ではないことは明白だ。」

 

「・・・」と無言で少年探偵はシンの話を聞く。

 

「じゃあ、なんで探偵になるのか。

 

それはたまたま俺が見かけた光景だ。君は巽屋の人に聞き込みをしていた。

前の会話までは分からないが、まぁそうだろう。

それに」とその少年の帽子を取る。

 

 

「この帽子はそれを意識してるとしか言いようがないな」とシンは帽子をパッと取り天に高く上げる。

 

 

「か、返してください」とその少年は帽子に手を伸ばす。

 

 

「返すとも」と腕を降ろし、すぐにそれを返す。

 

それを受け取り、軽く咳払いをし少年は口を開く

 

「・・・それで、僕に何か用ですか?」

 

「巽完二と少し前に話していたな。何かおかしなところはなかったか?」

 

・・・何故、俺がこんなことをしているのか。

それは一昨日映った『マヨナカテレビ』が問題だ。

 

 

 

昨日の放課後まで話は戻る。・・・

 

 

5/18(水) 天気:晴

 

 

 

「ハァ・・・」と花村がため息を吐きその話題は始まった。

「今までのこと考えるとさ。完二はもう、あの中じゃねーかな・・・」

 

そういうと頷き、シン以外は下を向く。

皆、思うことがあったのだろう。とシンは感じていた。

 

 

「"マヨナカテレビ"って結局、何なんだろう」と天城は呟く様に言う。

「んー・・・」と花村は分からずに唸る。

 

「初めは心霊現象みたいなモンかなって噂を試したら、見えたんだよね。

そしたら、"もう一つの世界"なんて大事に関係してて・・・」

「?噂になってるってことは、実際に見てるヤツが結構居るって事だよな」と花村が口を挟む。

 

「このまま増え続けると、それこそ問題になるだろうな」とシンは腕を組む。

 

「・・・あのさ、話が逸れるんだけど・・・あの映像、犯人も見てるんだよね?」

 

「たぶんね、きっとどこかで面白がっ・・・まさか楽しんでる!?人を放り込んで、その"番組"を楽しんでるの!?」

「あーなるほど、確かにその可能性あるな。

うわ、頭ん中の犯人像が一気にヘンタイ属性になったぞ!!」

 

千枝の言葉を聞いて皆、変な方向へと話が逸れる。

 

「"キミの全てが見たいよ、雪子たーん"」

 

「・・・」

 

「うっわ、うわ、うっわー!!」

 

陽介の演技に、千枝はドン引き。

 

「てか、雪子だけじゃなく、一緒にあたしのも見られた可能性アリ?」

「大いにある」と鳴上は上を向く。

 

「わーっ!!犯人・・・絶対に許さん、顔中靴跡だらけにしてやる!!」

と足で何かを踏みつける動作をする千枝。

 

 

「・・・でも今回の件でその可能性は無くなったんじゃないか?」

シンは腕を組んだまま続ける。

 

「確かにこれまで女だったから、そういった可能性はあった。

だが、今回は男だ。しかも・・・あれはきつい。俺は良く知らんが、天城さんや里中さんのやつを見て、喜んでいる人間がだ、次は突然"男"というのは考えにくいだろう。個人的恨みがあるなら別だけども・・・」と冷静にシンは分析する。

 

「・・・そうだな」と鳴上は納得する。

 

「・・・」

「・・・」

再び沈黙が訪れる。

 

シン以外はあの忌まわしき『マヨナカテレビ』思い出しての沈黙である。

シンは犯人を脳内で想像するための、沈黙である。

 

 

そんな中、鳴上が「・・・クマのもとに行こう」と口を開く。

 

「そういえば、そうだった。その『クマ』とやらが、やっとお出ましか」

 

 

そして、鳴上達は『テレビ』に向かう。

 

 

「テレビって・・・ジュネスか」

「ここからでしか、クマの居る所にはいけないんだ。」と鳴上が説明する。

「なるほど」(アマラ経絡と違ってそこはランダムではないのか)と安心するシンである。

 

 

「じゃあ行こ」と千枝に言われて、シンもテレビの中に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

シンが着いて初めて目にした景色は、まるでテレビスタジオの様な場所でそれなりに広い場所に出た。

先ほどの世界とは違い空気が重いが、どこか懐かしいような感じがした。

 

そして、気が付く。

 

(『ボルテクス界』に似ている)

 

鳴上たちは何か変な着ぐるみと会話しているが、俺にとってはまずここの世界を知る方が先だと考えていた。

 

それは、『ボルテクス界』でまず身に付けたことだ。

でなければ、迷い死ぬ可能性が充分にあったからだ。

一度、魔人との戦いで一瞬、あの世を見かけた。

それは正に『フランダースの犬』が如くだ。天使が螺旋状にお迎えに上がろうとしてくる。

 

でも、おれはまだやれると思った。

それはまだその時のオレがどこかで先生を期待していたからだと思った。

勇や千晶の事も。それに『仲魔』もいた。

 

だからこそ、力が湧いてきた。

 

今となってはいい思い出だが・・・

 

 

「およよ?君は誰クマ?」とシンに気が付いたのかクマがシンに近づく。

「・・・君がクマか」

「せんせー。この人は誰クマ?」とピョコピョコと音を立てながら鳴上の方へ行く。

 

「彼は間薙シン。」

 

そういうと、クマはシンの匂いを嗅ぎ始めた。

「シンクンはクマと同じ匂いがするクマ」とクマは少し喜んでいるように見える。

 

 

「クマと同じ匂いって・・・獣臭?」と天城はそういうと何かを想像し笑い始める。

 

「あーもう・・・いいよ、雪子は放っておいて」と千枝は呆れてため息を吐く。

 

 

シンはおもむろにクマの頭を持つ。

 

そして、外す。

 

「あー何をするだー」とクマは慌てふためく。

「空っぽなのか・・・」

シンはまるで確認するようにつぶやきクマの頭を戻す。

 

 

すると、一撃の軽い雷音がする。

 

 

「主の危機を察知し、参上し仕りました。」

「あ、クーフーリンさん」と千枝は出てきた悪魔にそういう。

 

「うひょー!!」と慌ててクマは鳴上の後ろに隠れる。

 

「・・・あのモノは何者でしょうか。主」

「知らん」と腕を組み考えながらシンは首を傾げる。

「本人も悩んでるそうだ」と鳴上はクーフーリンに向かって付け加えるように言う。

 

 

「な、なんですか!!チミは」とクーフーリンに鳴上の後ろに隠れながら尋ねる。

だが、興味津々である。

 

「我はクーフーリン。父は太陽神・・・(以下略)」

と会話を始めた。それに安心したのかクマは近付き話を聞いている。

そして、それに混ざるように花村や千枝、そして、ある程度笑い終わった天城が会話を始める。

 

 

 

「・・・それで、なんと?」とシンはそれを見ながら鳴上に尋ねる。

「巽完二に関する。パーソナル的な情報が必要だそうだ。」

「なるほど。それなら、あてがある。」

「わかった。俺たちもそういう情報を集めてみようと思う」と鳴上は頷く。

 

 

 

だが、その日は少年探偵が見つからず翌日、探しているとジュネスに居たという経緯だ。

 

 

そして、先ほどの質問に戻る。

 

 

 

 

 

 

「巽完二と少し前に話していたな。何かおかしなところはなかったか?」

 

それを聞くと何か考えるようにして口を開く。

「・・・ふぅん。まあ、いいですよ。聞かれたことにお答えします。」

 

そういうと思い出す様に腕を組み少年探偵は口を開く。

 

「そうですね・・・最近の事を聞いたら、何か様子が変でした。

だから、感じたままに伝えました。『変な人だね』・・・と」

 

「変な人ねぇ」とシンはライドウから貰った学生帽を脱ぎ、髪の毛を掻く。

 

「・・・随分と顔色を変えてましたよ。こちらがビックリするくらいでした

それを踏まえると、普段の振る舞いも少し不自然だった気がしましたね。

なにかコンプレックスを抱えているのかも・・・確証は有りませんが」

 

そういうと少年探偵は帽子を少し深めに位置を直す。

 

「・・・なるほどな」とシンは帽子を被る。

 

「さすがは探偵だな。」

「そういうあなたは何者ですか?」

 

「俺か?高校生だ。少しばかり、巽完二に用事のある高校生さ。」とシンは不器用に笑みを浮かべる。

 

「・・・気に入りました。僕は白鐘直斗といいます」

「俺は間薙シン。用があるなら、これにメールしてくれ」と紙にメールアドレスをサラサラと書き渡す。

 

 

「じゃあな」とシンはジュネスの外に出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

そして、少し離れたあと尾行してきていないか確認した。

 

(問題はなさそうだ。それに俺たちを疑っているような目だ。

だが、それには確証が少なすぎるようだがな)とシンは思いながら鳴上たちに電話をする。

 

 

 

 

 

 

「お、カンジの事、調べてきたクマね!」とクマはシン達を迎えた。

 

「これだけでわかるかわからないが、コンプレックスを抱えていたそうだ」と鳴上はシンの代わりに代弁した。

 

「ふむふむ・・・」

「・・・」

「・・・」

「え、それだけ!?それだけで探すクマ?クマ使いが荒いクマね・・・しょうがないクマね。なら、全力で鼻クンクンするクマよ!・・・むむむむ」

そういうと鼻をぴくぴくと動かし始めた。

 

 

「・・・主。あれは・・・」

「前にも言っていたぞ。俺も知らん」とシンはクーフーリンの疑問を黙らせる。

 

 

 

「おっ、なんか居たクマ!当たりの予感!これか?これですか!?」

そういうとクマは鼻を動かしながら歩き始めた。

 

 

 

 

鳴上たちがその後について行くのでシンとクーフーリンもそのあとについて行った。

 

 

「・・・そういえば、シン君は見えるの?周り」と天城がシンを見て言う。

 

「特に問題はないが。そういえば、君達はメガネを掛けているな。目でも悪かったのか?君達は」

「いや、そういう訳じゃねーんだ。なんか、このメガネを掛けないと霧で良く見えないんだ」と花村はメガネを上げて位置を直す。

 

「・・・俺は特にそういうのがないんだがな」

「どういうことなんだろう」と鳴上たちは疑問を特に考えることなく、クマを追いかけた。

 

 

 

 

 

「ここクマ!」とクマが止まる。

 

そこは湿気がとても多く、汗をかきそうなほどだ。

 

「酷く蒸し暑いな」と鳴上は辺りを見渡す。

 

「?なんかこの霧、今までのと違くない?」と千枝は先にあるドアから漏れ出すモヤのようなものを指して言う。

 

「メガネ曇っちゃった・・・」と天城はメガネを外し拭く。

 

「にしても、アッチーなー。これじゃまるで・・・」と花村が何かを言いかけた瞬間

 

 

 

ムーディーな曲が流れる。

 

 

 

「僕の可愛い仔猫ちゃん・・・」とダンディな男の声が室内に響く。

「ああ、なんて逞しい筋肉なんだ」と優男風の声。

「怖がることはないんだよ・・・」

 

「えっ・・・と・・・」と千枝が明かな困惑の表情を見せる。

 

そして、再び声が聞こえ始める。

「・・・さあ、力を抜いて。」

 

そして、その会話は終わる。

気まずい沈黙だけがその場に取り残された。

 

「ああ、俺、『ペルソナ』使えないから帰る・・・」とシンが回れ右をして帰ろうとするが、「悪魔が居るだろ?」と鳴上に腕を掴まれる。

 

「・・・ちょっと待て!俺もいきたくねぇぞ!!」と花村は焦った表情で大声を上げる。

 

 

「ねえ、本当にここに完二君がいるの?」とクマに天城は淡々と尋ねる。

 

「クマの鼻センサー、ナメたらあかんぜよ。」

クマは自信満々に言う。

 

「えぇ・・・この中に突っ込めっての・・・?

うぁ、汗出てきた」

「いや、それは暑いからでしょ・・・」と千枝が突っ込むが、最早花村には届いていない。

 

「・・・ここにいても埒が明かないし、行こうか」と鳴上はズイズイと中に入ろうとした瞬間

 

「ちょっと待った。シン君どうするの?」と千枝が鳴上に尋ねる。

「・・・そうだった」と鳴上は忘れていたと言わんばかりに言う。

 

「俺か?俺なら大丈夫だよ。それにこの世界について知りたいから、少し一人になるよ」そういうと、シンは濃い霧、いや靄の様なモノが立ち込める中へと入って行った。

 

「あ!ちょっと!危ないよ」と千枝が言うが、シンは既に居なかった。

 

 

 

 

 

シンは小部屋でふぅと息を吐き、力を解放する。

そして、手を見ると、何度も見た刺青が浮かび上がる。

 

「どうですか?主」とクーフーリンはシンの刺青が浮かび上がるのを見て、安心したようにも見えた。

「悪くない」というとシンが言った瞬間、後ろに影が現れる。

 

相手は間違いなく、捉えたと思っただろう。

だが、自分の手が当たる瞬間にシンの姿が消えていて、自分の頭を殴り付けられる感触を感じた。

 

相手は吹き飛び、壁に叩きつけられるとそのまま消えた。

 

 

「準備運動にもならないようです」とクーフーリンはため息を吐く。

「そうだな、」とシンは手を握ったり緩めたりとする。

 

すると、ぞろぞろと『シャドウ』が集まってきた。

 

「集まって来たようです」

 

「・・・それは好都合だ」とシンはニヤリと笑う。

 

 

 

 

 

 

「どこにいっちゃったんだろう」

「そんな遠くには行ってないはずだ」と鳴上が辺りを見渡して歩いているとクマの声が聞こえる。

 

『およよ・・・その先にすごいシャドウみたいのがいるクマ・・・』とクマが怯えている。

 

「おいおい!それはさすがにやばいんじゃねーの!?」

「どうする?鳴上君!」

 

『来るクマ!』とクマが言うと、皆が背筋が凍るほどの殺気を感じた。

初めて感じるその殺気に思わず足が竦む。

 

すると、グシャという何かを引きちぎる音と共に『シャドウの残骸』が飛んできた。

 

「!」と鳴上が武器を構えようとした瞬間には鳴上の目の前に拳があった。

 

 

 

 

 

「なんだ、君達か」

その声は間違いなくシンであった。

だが、彼の体は刺青の様なモノが浮かび上がっていた。

そして、その表情はニヒルな笑みを浮かべていた。

鳴上にはその笑みが脳裏にこびり付いた。

 

 

 




まず、更新が遅れたことをお詫びします。
恐らく、週末になると思います。

ここはホントなんだが書きたくなくて、だってホモォなんですから・・・

でも、重要なシーンなので書きました。

そして、名前も変更させていただきました。
小説版の名前を使わせていただきましたが、小説版を知らないので名前だけ拝借した感じです。


・・・完二だけに・・・。


あと、戦闘描写が本当に苦手なので、あんまり過度の期待はしないように。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。