「じゃあそっちは頼んだ。」とシンは授業終了すぐに鳴上達に言う。
「ああ!こっちは任せとけ!」と花村は意気揚々と出て行った。
シンはすぐに稲羽中央通り商店街へと来ていた。
「・・・さて、悪魔で鍛えた会話術を使う時が来たか」と伸びをして準備する。
そして、カバンから一つの帽子を取り出す。
それは『ライドウ』から貰ったものだ。
昔の話だ。
帝都に俺は居た。
アマラ経絡はどこにでもつながっている。その時、初めて俺は知った。
正直、俺も驚いた。
名も無き神社に四人は居た。
「・・・」ライドウは無言でシンに帽子を渡す。
「・・・そういう顔をしていたのだな」
そういうとシンは帽子を被る。
「・・・似合うな」とライドウは淡々と言う。
「そうか」とシンは少し帽子を手品のように消す。
猫の『ゴウト』は厳かな声で言う。
「闇へと落ちた貴様は我々とは対極の者だ。
我々は貴様を倒さねばならんのだろう」
だが、とゴウトは続ける。
「我々は貴様とは
依頼者の依頼は達成された。それで報酬ももらえたそれで我々は満足だ。
それに、ヤタガラスからの依頼がないのでな」そういうとゴウトは笑う。
話していると、バアルが来る。
「主、そろそろ閉じてしまう」と疑似ターミナルを作り出しているバアルが言う。
「わかった」とシンはそれに触れる。
「・・・また、会おう。十四代目葛葉ライドウ・・・いや・・・くずのは」
と何か名前を言いかけてシンとバアルは消えた。
「・・・その名はもう捨てた」とライドウは跡形も無く居なくなったシンに言う
「教えたのか?」とゴウトはライドウに問う。
ライドウは横に首を振る。
「そうか・・・」
「ライドウ。あやつはやはり侮れんぞ」とゴウトが言うと、ライドウは頷く。
懐かしいな・・・
と、そう言っている場合ではない。
まず、初めに・・・あの親御さんか・・・
まぁ・・・いいか。
シンは巽屋に入る。
昨日見たが、綺麗な彩色だと感心するほどのものだろう。
「こんにちは」
「あら?雪ちゃんのお友達?昨日は大丈夫だった?」と優しく声を掛ける。
「・・・ええ、まぁ。」とシンは淡々と答える。
「それで、ですね・・・」
・・・中略
「ありがとうございました」とシンは巽屋の扉を閉めて商店街へと出た。
やはり俺のイメージ通りだった。
人は外見ばかり見がちだ。故にその観念に捕らわれる。
巽完二。
天城の言う通り昔はあれほど荒れてはいなかった。
だが、昔、実家近辺を暴れまわっていた暴走族を一人で壊滅させたという伝説を持つ。
・・・でもそこには真意があるようだ。
暴走族の件は「族の出す騒音のせいで眠れない母親を救う」ためだったという事だ。
人は見かけによらないということだ。
そして、その他の人にも聞いた。
だが、出てくるの話は半々だ。
あの外見通り、悪い話。そして、その逆といったものだ。
だが、どの話も踏み込みが足らない。
そして、俺は聞き込みを終え、そして、四六商店前の自販機で『リボンシトロン』を買い、その場で飲んでいた。
(そういえば、あいつらはどうなんたんだろう)と考えた瞬間、叫び声が聞こえた。
「にげろー!!シンッ!!!」
「は?」とシンは何が起きたのか分からずぼーっとしていると鳴上に腕を引っ張られる。
「な、なんだ?」
「後ろ後ろ」と鳴上は涼しい顔で後ろを指さす。
そこには鬼の形相で金髪の悪魔が追って来ていた。
「これは・・・ライドウとの追いかけっこ以来だな」
「ライドウって誰だよ!!そんなこと言ってる場合じゃねーッ!!!」の声で皆更に加速する。
「ちげぇからな!!ぜってーちげえかんな!!」
「はぁ、はぁ」と全員が息切れしやっとあの金髪の鬼を巻いたことを実感させる。
「はぁ、なんで・・・息切れしてないんだよ・・・はぁ。だって、お前が合流してから5分は走ったぜ・・・はぁ」と花村は地べたに座り言う。
鳴上でさえも珍しく表情が疲れ息切れしている。
無論、千枝や天城も激しく呼吸をしている中、シンは何事も無いように屈伸をし、伸びをする。
「まだまだ、余裕だ」
「はぁ・・・すごいね。シン君は」と千枝はそう言い両膝に手を付く。
「まいどー」とバイクで愛屋の少女が来る。
「?」とシンは見渡すとシン以外全員が千枝を見る。
「肉!!」と千枝は愛屋の少女から肉丼を奪うように受け取り、食べ始めた。
「どんぶりは、置いといてー」
「ああ、いいよ。俺が持っていくよ。どうせ、今日も愛屋だろうし」
「まいどー」と少女は軽く頭を下げバイクに乗り颯爽と走り去っていった。
「・・・それでどうだったの?」とシンは言う。
「・・・特に変なところはなかったと思うが。
ただ、なんか"変"って言葉にとても反応してた気がする」と鳴上は言う。
「"変"か・・・」とシンは腕を組み考える。
「まあ、今日のところは何も起きなかったし、それでいいか・・・」と花村はやっと息が整い安心したようにその言葉を口にする。
「けど、あいつがテレビに映ってからもう何日も経ってる。天城の時を考えると、起きるんなら、そろそろだよな」
「気が抜けないね・・・明日もまた、様子見に来た方がいいかも。」
「そうだな」
そういうことで、今日は解散となった。
「このあと暇?」と鳴上がシンに向けて言う。
「まあ、暇だ」
「じゃあ、愛屋に行こう」
「ああ」
「あいやー。毎日来てくれてありがとうアルヨ」と店主にシンは言われる。
「これ。先ほどのどんぶりを」
「まいどー」と蒼髪少女がそれを受け取り奥へとはけた。
「何にしまするネ」
「いつもの」というとシンは席に着く。
「俺は肉丼で」と鳴上も席に着く。
「それで、話しかい?」
「まあ、そうだな」と鳴上は言う。
「どうだ?ここは」
「・・・君がそれをいうとは少し驚きだ。」とシンはコップに水を入れると中に入っている水を見る。
「君こそ、どうなんだ?ここは」
「・・・悪くない。友人も出来たし、信頼できる仲間が出来た。」
「そう・・・よかったね」とシンはコップの水を飲み干す。
「おまちー」といつもの少女が二人の前に肉丼を置く。
鳴上はお腹が空いていたのか、肉丼を物凄い勢いで食べ始める。
(君だったらどうしただろうか)とシンはそんな鳴上を見ながら思う。
(世界が壊れて、変わっていく友人にどんな言葉を掛けただろう)
『ハッハッハ。わざわざ、やられに来るなんてシンは頭が悪いなぁ。
ムスビの世界が出来るまで待てば、もしかしたら、オマエも死にこそすれ
生まれ変われたかもしれないのに。
いくら友達だったからといっても・・・オレの創世を邪魔するヤツは許さないよ。
残念だけどオマエもサヨナラさ。永遠にね・・・』
「…仕方ないか」とシンは手に力を込める。
「…俺、お前の事嫌いだったんだ!」
そういうとシンは飛び掛かるように戦いを始めた
『なんで・・・なんでオマエはいつも、オレの邪魔ばかり・・・なんで・・・あん時みたいに・・・助けてくれない・・・』
そういって勇はシンを見上げる。
勇にはシンがどう見えたのかは分からない。
「・・・貰って行くぞ」とシンはヨミノタカラを手に取る。
『・・・おまえの勝ちだ・・・好きにするが・・・いいさ・・・』
「ああ、俺の勝ちだ」
『俺も・・・お前のこと・・・嫌いだった』というと勇の体から『マガツヒ』が漏れ出し、意識を失う。
だが、その顔は笑っていた。
「・・・あれは嘘だ。好きだったさ、お前のこと。」
シンはそう呟くと扉が開き、その場を後にした。
『よくぞ来た。
汝もまた、戦う運命にある者なれば礼は尽くそうぞ・・・』
そういうと間を開けて千晶・・・いやバアル・アバターが口を開く。
『・・・わたしたちは、もう友ではない。
コトワリを違え、創世を争う、出会えば戦うしかない敵同士だ。
幸いなるか、互いに涙も流れぬ体になった。』
「そうだな」とシンは不敵に笑う。
その笑いに答えるように相手も笑みを浮かべる。
『戦を交えることなど、何のためらいも無かろう・・・
さあ、真に優れたるは汝か我か。全ての力をもってかかってくるがいい!』
苛烈な戦いをくりひろげた。
流石は力を選んだ『コトワリ』だった。
だが、苦戦したものの俺は勝った。
『・・・あなたのほうが・・・優れていたのね・・・
それだけの・・・力を持っていて・・・どうしてヨスガに・・・』
「戯言をヨスガより・・・混沌の方が興味深いからな」とシンはニヤァと笑う。
『変わったわ・・・あなた』と千晶はそのままぐったりとし『マガツヒ』が漏れ出す。
シンはそれを気にせず、アメノタカラをシンは拾い上げその部屋を後にする。
トビラが閉まると、高い高い462Fである。
そこからシンは空を見上げる。
その空は間近に『カグツチ』が見える。
眩しいほどではないが、確かにこの『ボルテクス界』と照らしていた。
だが、シンの顔は晴れやかではない。
「・・・変わったんじゃない・・・初めから俺はこうだった」
「これで、もう・・・誰も居ない」
そう思うと、シンは胸が熱くなった。
世界を変える為に殺し合った。
それに関してはもう何も思わない。
だが、人間の君だったら・・・何を思ったんだろう。
「ん?どうしたんだ?」と鳴上はぼーっとしているシンに声を掛ける。
「いや、なんでもない」
そうシンは言うと、割り箸を割り、肉丼を食べ始めた。
そして、愚問であることに気が付いた。
あの事があったからこそ、今の俺を形作っている。
「それで、シンはなんで『悪魔』が使えるんだ?」
「・・・そういう環境に居たんだ」とシンは答える。
「どういう環境なんだろう」
鳴上は怪訝な顔をした後に笑う。
「すまないな。詳しくは・・・まだ言えん」とシンは淡々と謝る。
「いいんだ。シンが話したくなったら話せばいい」
「・・・ああ」とシンは頷く。
[Rank Up 混沌 1→2]
「・・・まいどー」
二人は愛屋を後にした。
「じゃあ、また明日。」と鳴上は手を振り商店街出口に向かって行った。
その日の夜は雨だった。
シンは雨だと知り、テレビの前で『マヨナカテレビ』を待ち呆けていた。
まだか、まだかと期待する気持とは裏腹に時間は進まない。
気持ちだけが焦る。
(・・・一旦、落ち着こう。)
そう思うと、座禅を組む。
すると、チリーンという鈴の音が部屋に響く。
「・・・何か用か?だいそうじょ」
シンは目を瞑ったまま、暗闇に居る骸骨の僧侶に向かって言う。
「・・・シン殿。汝の心の乱れは衆生の迷い。我に任せよ」
「そうか」とシンはふぅと息を吐き、肩の力を抜く。
「南無・・・」とだいそうじょは言うと手に持った鈴を鳴らす。
「・・・すっきりした」とシンは目を開く。
これは毎回止められない。心身ともにリラックスできる。
「・・・流石はシン殿。我が死の救済を退けるとは・・・」
「俺にとっては最早、リラックス作用しかないがな」とシンは時計を見る。
「主よ。そろそろ時間です」とバアルがシンに言う。
「ああ、わかった」とシンはテレビの前に座りマジマジとテレビを見る。
すると何もついていないテレビに何かが映り始める。
(きたか)とシンはテレビに齧り付く様に凝視体勢に入った。
前のモノとは違い、非常に鮮明に映っている。
すると上半身裸で、ふんどしの巽完二が映る。
「皆さま・・・こんばんは。"ハッテン、僕の町!"のお時間でえす」
とオカマ口調で完二が話し始める。
「・・・」
「・・・ジャックショップの『マネカタ』を思い出しますな」とバアルは杯を持ち、ワインを飲む。
「今回は性別の壁を越え、崇高な愛を求める人々が集う、ある施設をご紹介しまあす」
「これは上品なブドウの香りがしますな。こちらも悪くない」
「あなたの酒も悪くないですよ」
「へへ、相変わらずわかってるじゃねーか、ディオニュソスさんよ」
とバアルはディオニュソスとマダを勝手に呼び会話を始める。
「・・・ちょっと静かに頼む」
「わかりました主」とバアル達は隣の部屋でテイスティングという名の飲み会を始める。
「極秘潜入リポートをするのは、このボク・・・巽完二くんどえす!
一体、ボクは。というかボクの体は、どうなっちゃうんでしょうか!?」
そう言いつつも完二はまるで動物の様に息が荒いように見える。
「それでは、突・入、してきます!」
そういうと画面の奥に入って行って、マヨナカテレビは消えた。
シンは真っ黒になったテレビ画面を見つめて思う。
(・・・きっつ)
アマラ経絡の設定は元とかけ離れてるけど、ライドウがどう来たのかっていう疑問もこれで解消したかったのがあります。
そして、ライドウは・・・登場・・・しますん。
完二ですね。ホモォ ┌(┌^o^)┐回に突入ですね。
次は人修羅がIn the TVですね。恐らく。