Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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戦闘は当分後になりそう・・・


第5話 Investigation 5月16日(月) 天気:曇

「昨日の彼、やっぱりあのシン君が言ってた彼だよね・・・」と千枝は椅子に座ったまま言う。

 

「"巽完二"か・・・見るからに絡みにくそうだよな。」と花村は少し困った表情で応える。

 

「ってかすっげー怖い人なんじゃないの・・・?」と千枝は言う。

 

 

「あの子、小さいときはあんな風じゃなかったんだけど・・・」

「雪子、彼のこと知ってるの?」

里中の問いに天城は頷く。

 

「今は全然話さなくなっちゃったけどね。

あの子の家、染物屋さんなんだけど、うちで昔からお土産仕入れているの。

だから今も完二くんのお母さんとはたまに話すよ。」

 

「あ、染物屋さん、行ってみる?話くらい聞けると思うけど」と天城は提案する。

 

「よし、思い立ったが吉日。行こう」と鳴上はイスから立ち上がり皆それについて行く。

 

 

 

そして、五人で商店街へと来た。

 

「俺、荷物置いてくる」

「あーそうか。シンの家ってこの辺だっけか?」と花村が思い出したように言う。

「そうなんだ。」

 

 

 

 

 

「で、なんでついて来たの?」とシンは自宅のドアに鍵を刺した状態で皆に言う。

 

「いや、なんでだろうねー」と花村はニヤニヤしながら答える

 

「すごい外観が綺麗だったから」と天城は淡々と言う。

「雪子はそこなんだ」

 

「まぁ、別に何もないし、いいよ」とドアを開く。

 

 

 

四人は茫然とする。

 

 

「ひ、広すぎだろ!!!なんだよ!!テレビでけぇ!!!」と花村は靴を脱ぎドタドタとリビングへとむかった。

 

「ほ、本当にここシン君の家?」と千枝は驚きのあまり口が閉じない。

「うちの旅館の一番大きい部屋より広いかも・・・」

 

「すごいんだな。」と鳴上は部屋を見渡す。

 

 

 

広い部屋は1LDKなのだが、その広さは異常である。

 

 

「ちょっと待ってて着替えてくるよ」というと奥の部屋にシンは入って行った。

 

 

「でも、なんていうか・・・生活感が無いね」と天城は見まわして言う。

「そうだね。キッチンとか、テーブルがあるけど。とてもきれいだし」

 

 

 

「これは主の友人ですか?」

 

 

その声の主に四人が顔を向けると白い鎧を着用した美青年が居た。

 

「クーフーリンか。悪いが冷蔵庫からなんか飲み物をだしてやって」と襖の向こうからシンが言うと「了解したぞ。主よ」と応え、その美青年は冷蔵庫からペットボトルの飲み物を出す。

 

 

「あ、ありがとう」と千枝は顔を紅くしてそれを受け取る。

「ありがとうございます」天城は普通にその飲み物を受け取る。

「あ、え?あ、すみません」

花村はソファに座ったまま、それを受け取る。

 

そして、鳴上は普通に受け取る。

 

「・・・良い目をしている」とクーフーリンは鳴上を見て言う。

「ぜひ、わr「待たせた。行こう」」とシンはクーフーリンの言葉を遮り言う。

シンの恰好はいつものパーカーを着て出てきた。

 

そして、五人は部屋から出て行った。

 

「・・・クッ・・・無念だ」とクーフーリンは無視されたことにショックを受けそのまま『アマラ深界』に帰還した。

 

 

 

 

 

「か、彼は何者?」と千枝はシンに尋ねる。

「あれも『悪魔』だよ」

 

「普通の美青年だよなどう見ても」と花村は言う。

「そうだな」と鳴上は頷く。

「名前はなんていうの?」と千枝は神社の角を曲がり尋ねる。

 

 

「『クーフーリン』」

 

 

 

「見えてきたよ。あれが巽屋」と天城が言うとそこには正面に大きな看板があり、横からでもわかるように"巽屋"と書かれていた。

 

 

 

 

その扉を開くと、小柄な少年が店主らしきお年寄りと話していた。

 

「こんにちは。」と天城はその店主のお年寄りに話しかける。

「あら、雪ちゃん。いらっしゃい」とにっこり笑い応える。

 

彼らは親御さんが良い人そうでよかったと思っただろう。

 

だが、そのお年寄り独特の少し皺を重ねた笑顔にシンは少しイラッとする。

『大いなる意志』を思い出すからだ。

思わず、奥歯に力が入る。

 

 

「それじゃ、僕はこれで」

「あんまりお役に立てなくて、ごめんね」

「いえ、なかなか興味深かったです。ではまた」と小柄の少年はこちらを向くと軽く会釈し店を出て行った。

 

「・・・悪い、俺は外にいる」

「ん?どうしたんだ?」と花村は心配そうにシンを見る。

「いや。ちょっと体調がな・・・」そういうとシンは店を出て行った。

 

「あら。お友達大丈夫?」と店主の人も心配そうに見つめる。

「大丈夫だと思います」と鳴上は答える。

 

 

 

 

シンが外に出ると先ほどの小柄な少年が店の前に居た。

 

 

 

「・・・君は何を聞いていたんだ」とシンは何気なく声を掛ける。

「残念ながらお教えできません」

 

「君はこの町の人じゃないだろ」

「・・・」と沈黙する少年。

 

「・・・ダンマリか・・・まぁいい」とシンは不気味な笑みを浮かべる。

 

「頑張れよ。探偵」とシンは南側に向かい歩き出す。

「!!」と初めて驚いた表情を見せる。

だが、シンは視線は既に自販機に映っていた。

 

自販機で飲み物を買い、惣菜大学で四人が出てくるのを待っていた。

シンは前にある簡易的に作られた椅子に座り目を閉じる。

 

 

『もう、オマエとか・・・祐子先生とか

アテにしねぇし、関係ねぇよ。

こんな世界で・・・助けてくれるヤツなんかいるもんか。

オレは・・・一人で生きるしかないんだ。』

 

 

 

 

勇。今の俺もそう思う。

 

トウキョウ議事堂で死んだ先生・・・その最後に聞いた言葉で俺は独りで生きるしかないと思った。『カグツチ』への道を示してくれた。

それが俺の決意をなお一層、強くしたと思う。

 

そして、俺は『アマラ深界』の五層でライドウを雇った。

 

 

 

 

 

・・・元気にやっているだろうか。

 

 

 

 

 

「・・・し・・・ん・・・シン!!」

「・・・ん?」と声に気が付き、シンはそちらを向く。

 

 

「俺たちがデスレースしてたってのに・・・寝てたのかよ」と花村は息を切らしながら言う。

「悪い」

「でも、あったよ!つながりがさ」と千枝は言う。

 

 

 

「えーっと・・・なんだけ?」と千枝は照れながら言う。

 

 

それにガクッと三人はずっこける。

 

 

「この短時間で忘れるかよ、普通」と花村は膝を払い言う。

「しょ、しょうがないじゃん!あんな怖いのに追われたんだから、忘れちゃうよ!!」と千枝は言う。

 

「・・・あの巽屋で『山野アナ』がスカーフを買っていたんだ。」と鳴上が説明する。

「でもさ、それだけで犯人は狙うかな?」と天城は疑問そうに言う。

 

「そうだよなぁ。だってよ、たかだかスカーフだぜ?」

 

 

「・・・何か理由があるのか。だが、スカーフじゃ巽完二との関係性は薄い」

 

 

「でも、例の共通点は母親なら一致はしている。」と鳴上が口を開く。

「だが、それだと完二の方が映ったことが説明できない。」

「・・・そうだな」と鳴上は腕を組む。

 

 

「・・・じゃあ、結局どっちがさらわれるんだ?」と花村が質問する。

 

「「わからない」」と鳴上とシンは声を揃えて言う。

 

 

「あ、でもこれって私のときに似ているかも」と天城は言う。

「と、いうと?」

 

「よく考えたら、被害者の条件に一番合うのって私より、お母さんの筈でしょ?

山野さんに直接対応してたの、お母さんだし。

・・・でも私が狙われた。」

 

「だから、今度も母親じゃなくて息子ってこと?」と千枝は言う。

「だが、それだと動機が不一致だ。口封じにもならないし、怨恨もない」とシンが目を瞑り言う。

 

「読み違えてるのか・・・?実は最初の事件から、恨みでも復讐でもなかったとか・・・?

それとも染物屋に何か秘密とか?」と花村が目を細くし考える。

 

 

「・・・あーわかんねー!!」と花村は思わず叫ぶ。

 

 

「でも、このまま放ってはおけない」天城は強くそれを口にした。

 

 

「・・・もう、完二君に直接聞いちゃったほうがよくない?ちょっと怖いけど」

「!あ、そういえば完二のやつ変なちびっ子と約束してなかったか?」

花村は思い出したように言う。

 

 

 

動機無き誘拐殺人。これまでに3件起きている。

・・・関連性は第一被害者の関係者で且つ女であること。

 

だが、マヨナカテレビに映ったのは殆ど関係のないしかも男・・・

無差別ということでもない・・・どういう意味がある・・・

何かしらの意味がある筈なんだ。

 

 

 

「聞いてる?シン君」

「?すまない聞いてなかった。」

「・・・明日、完二があのちびっ子と学校の校門でしているから、張り込みをしようという話だ」と鳴上が掻い摘んで話す。

 

「ゾロゾロ皆で行っても仕方ないだろう。明日、俺はあの巽屋について調べてみる」

 

「そうだな。尾行するってのにゾロゾロついていたらばれちまうしな」と花村は納得し、頷く。

 

 

 

 

 

夜・・・

 

シンはテレビをつけ、ソファーに座っていた。

 

「・・・あの少年は何者だ?」とシンは空に言う。

「あの人間は白鐘直斗と言うらしい」とバアルは言うと手に持った杯に入ったワインを飲み干す。

 

 

「なるほど。探偵か・・・まぁいい」

「我に掛かれば他愛も無いが・・・どうする?『人修羅』」とバアルは不敵に笑う。

 

と次の瞬間、バアルの杯が床に落ちていた。

 

シンの腕がバアルが杯を持っていた方の手首を掴む。

シンの腕には青黒く光る『刺青』が発光する。

 

 

 

「その呼び名は止めろと言ったはずだ。俺は『人』なのではない。ただの『修羅だ』」

 

 

 

「フフフッ・・・それでこそ主だ。鈍っていなくて我も嬉しいぞ」と先ほどよりも更に不敵に笑い、そして笑い声を上げ、消えて行った。

 

 

 

 

 

「俺はもう、『人』などではない・・・」とシンは刺青の浮かんだ腕を見てそう少し悔しそうに呟くでのあった。

 

そう言葉に出すと出すだけ、苦しくなる。

 

何故、こうも割り切れないモノが沢山出てくる。

 

 

 

 

 

 

 


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