あなたの周りにいる、霊感の強い人。
その人には確かに見えるらしい。しかしあなたには何も見えない…
みたい気持ちと見えない安堵感そんなものが入り混じっていたりして
でも時には見えたり聞こえたり
あなたにも感じることがあるはずです
そんな時っていうのは、その霊が何かを伝えようとしている時なんですよ。
夏なるといつも、この小さな町は少しだけ騒がしくなったように感じる。
それは事件終結の空気を漂わせているからなのか、あるいは、夏という季節がそうさせているのか…
あるいは怪談話のせいか…
幽霊というものが、存在するかしないか。
それは陳腐な話題のような気がするが、俺達の死後に関係しているのだとすると、それはそれで面白い話題になるような気がする。
世間はそんな事で溢れている。
それの一例が幽霊だと言える。
突き詰めれば、面白いものがある。
だというのに、興味のない人間はそれをくだらないと言う人間もいる。
そんなことより、やるべきことがあると言う人間も居る。
実につまらない人生だと、俺は批判する。
そんな思考を俺は嫌悪する。
まぁ、何れにしても、俺は幽霊などにはなれないだろうが…
「出た?何が」
「見たんだよ!血まみれの女の人が、歩きまわってるのを!!」
そんな会話がシンの耳には入ってきた。
「…ここにもそう言った怪談話があるのか?」
「そうなのか?」
「…なんか、聞いたことある」
皆、ジュネスで溜まっていた。
花村のバイト手伝いが終わり、そして、補講組は補講が終わり、天城以外のメンバーがジュネスへと集まっていた。
「昔ね、子供を迎えに行っている途中で、交通事故に遭って、子供を迎えに行けなかった母親の霊が彷徨ってるって聞いたことある。」
「へぇ、まあ、ありがちっちゃありがちなのか」と花村は残念そうな顔で椅子の背もたれに寄り掛かった。
「ユウレイって何クマ?」
「幽霊っていうのは、死んだ者が成仏できず姿をあらわしたものとか、死者の霊が現れたものなんて言われてる」とシンはクマに説明した。
「クマも恨みを買うと、化けて出てくるかもしれんぞ?」
「うひょー!!」クマは怯えたように声を上げた。
「クマ、純粋すぎ」とりせが言うとみんなが笑った。
「なんか、間薙君とか霊感ありそうだよね」と天城は何となくシンに言った。
「…あるかもな」とシンは言った。
「あーなんか、わかるわ…お前が見えてもなんも違和感ない」と花村はシンに言った。
「じゃ、じゃあ見たりとかするの?」と千枝は少しテンション低めにシンに尋ねた。
「ある。例えば…鳴上の後ろとか」
そう言われた瞬間、皆がびくっとした。
「俺か?」と鳴上は少し驚いた表情で言った。
「女の人、いる」
「…」
「う、うそだよね…」と千枝は少し鳴上からはなれた。
「…」とシンは鳴上の後ろに目線をやった。
「…うひょー!!!」
「うわ!!クマ公!何しやがんだ!!この野郎!」
クマが叫び声を上げ立ち上がると、机にぶつかり、完二にジュースをこぼした。
そんなドタバタがあってかすっかり幽霊の話を皆が忘れていた。
その日の夜、鳴上は酷く体が重く感じた。
家に帰ってもそれは取れず、風呂に入るとすぐに布団へ入った。
鳴上は幽霊など見たことはない。
だが、話のせいだろうと思い、特に気にすることはなかった。
その日の夜。
鳴上はふと夜中に目が覚めた。
だが、体が動かない。いわゆる金縛りだと鳴上はすぐに察した。
そして、階段を登ってくる音がした。
その時、窓から入ってきた風を冷たく感じた。
すると、自分の足が掴まれている感覚があった。
それが徐々に顔の方へと近づいてくる。
そして、次の瞬間、恐ろしい形相で血まみれの女性の顔が目の前に来た。
あまりの事に流石の鳴上も気を失った。
翌日、そんなこともあり、鳴上は疲れた様子で階段を降りると、菜々子が少し泣きそうな顔で部屋から出てきた。
「どうした」と鳴上は心配そうに菜々子に言った。
「あのね…ユウレイ…見たの」
「またか…」と堂島が菜々子の頭を撫でた。
たしかに菜々子にいつもの様な笑顔はなく、起きてくる時間も少しばかり遅かったように感じた。
「また?」
「ん。ああ、この時期になるとな、菜々子はいつも見るんだっていうんだ。
俺は見た事無いんだがな、いつも菜々子を見てるだけらしいんだ」と堂島は頭をポリポリ掻いた。
「…そうか」と鳴上は大きな欠伸をしてしまった。
「ん?お前も疲れてるようだな。」
「大丈夫…です」と鳴上は花村に頼まれた、バイトの最終日を頑張るため家を出た。
「幽霊ね…」とシンは休憩中の鳴上の話を聞いていた。
「マジで出やがったのか…」と花村は鳴上の話を聞いて思ったことを口に出した。
「突然、憑いたからな…だが、気にする必要はないぞ。それはお前に害を成そうという類ではない。」とシンは鳴上に言った。
「どうしてわかるんだ?」
「俺は小さいころはもっと見えていた。
…今は人間ではないことで別になんとも思ってはいないが、昔は結構、切実な問題だった。
人には見えないものが見えるってのはな。
そんなときさ。偶々、親が好きだった深夜のホラードラマの録画を見ていたとき、最後で言ってたんだ。
『霊はね…会いたがってる人がいるから会いにくるの…』ってな。」
「それを聞いて以来、そのセリフにもあったように、どうも幽霊ってやつが怖くなくなってな。
俺に会いに来てるって思うと、何だかひどく嬉しくなってそれで、良く寝不足になった。
初めのうちは良く見てたんだが、自然と見えなくなっていた。
…だが、悪魔となった今、再び見えるようになったな。だが、最早どうでも良い部類だが。」
「会いたい人がいるから…か」
花村はそういうと、恐らく片思いだった『小西早紀』を想い出していた。
「…会いたいひとか…」と鳴上には誰だかわからなかった。
夜…
「…菜々子に会いたい人?」
「そうだよ」
鳴上はシンに聞いた話を菜々子に話した。
「…なるほどな…」堂島もその話を聞いていて、納得したような顔であった。
「うーん…」
「…大丈夫」と鳴上は菜々子の頭を撫でた。
「うん…」と菜々子は少し暗めに返事をした。
深夜、再び菜々子は深夜に目が覚めた。
すると、同じように白い幽霊が近寄ってきた。
菜々子の心は恐怖でいっぱいだった。
分かっていても、怖いものだ。
菜々子はいつものように、目を閉じてしまおうと思った。
怖いことに目を背けてしまいたかった。
だが、『菜々子に会いたい人が、会いに来てるんだ』という鳴上の言葉を思い出した。
わざわざ、会いに来た人を無視する事は、菜々子には出来なかった。
菜々子はその人物をよく見た。
すると、どこかで見たことがあった。
菜々子は勇気を振り絞って、声を出した。
「…おかあさん?」
母親と確信が持てなかったのは、写真では見たことがあるが、実物は覚えていないし、暗いためかよくみえない。
だが、死んでしまった人で菜々子に会いたい人と言ったら、母親しかいないと思ったのだ。
「…」
その幽霊が菜々子の近くまで来た。
何かされると思った菜々子は大声を出しそうになったが、冷たい手で髪を撫でられた瞬間、不思議な事にスッと菜々子の恐怖心がなくなった。
寧ろ、温かい優しい気持ちになった。
そして、血まみれの女性は小さな声で言った。
「…ごめんね、迎え…行けなくて」
「…うんうん、大丈夫…」と菜々子は笑顔で答えると相手も笑顔で消えていった。
菜々子はそのまま寝入ってしまった。
一方、鳴上は夢を見た。
そこには女性が一人いた。それはどこかで見たことがあった人であった。
その女性は軽く頭を下げると
「…菜々子…します」と言うと姿を消した。
お祭り当日の朝…
昨日とは打って変わった明るい表情の菜々子に堂島は驚いた。
「どうしたんだ?幽霊見なかったのか?」
「見たよ!でもね、怖くなかった!」
「…そうか」と堂島はつぶやくと少し嬉しそうな顔で菜々子の頭を撫でた。
「…あのね、たぶん…お母さんだった…」
「…夢でも見たんじゃないか?」
「夢じゃないよ!だって、ほら」と菜々子は自分の顔の左側の髪を見せた。
「?」堂島はわからないのか首を傾げた。
一方、鳴上は菜々子の髪が珍しく寝癖が付いていることがわかった。
必ずしも幽霊=悪いものというわけではない。
大切な人があなたの隣にふっと出てくると気があるかもしれません。
そんな時は思い出してあげてください。
その人がどんな人だったか。
ちなみにそれ以降、菜々子は幽霊を見なくなったそうだ。
夜…
「へぇ…なんか不思議な話だな」と花村は腕を組んで答えた。
「ありがとう。シン」
「…そうか」とシンは言った。
「にしても、祭りって、去年はもっと賑わってた気がすんだけど…事件のせいか?」
花村はあたりを見渡し、祭りの様子を見た。
鳴上とシンが想像してたものよりも、とても静かな祭りであった。
「確かに今年は、人少ねっスね。ま、あんだけ殺しで騒がれりゃ、仕方ねえか…
マスコミぁ、もう引き上げたみたいっスね。
好き放題かき回して、逃げ足だけは速ぇぜ。」
「ま、空いてていいじゃねっスか。」
「そうだな」とシンはうなずいた。
「それよか、今重要なのは“イカ焼き”っしょ!」
「おお、イカを食うクマよ!」
「俺も食うか」と完二、クマ、シンはイカ焼きを食べ始めた。
そして、様々な露店を回った…
結局、神社の入り口に戻ってきた。
「あいつら、おっせーなー…わざわざ天城んちで集合って、何してんだ?」
「待ってりゃそのうち…」と完二が言うと、歓談をゾロゾロと上がってきた。
「わ、あれ、そうじゃない?」
「ごっめん、遅くなっちった」
「みんなのお着付けに手間取っちゃって」
「でもこれ、中に巻いちゃうから、言うほど涼しくないのよね」
それぞれが、天城の家で着物を着てきたようだ。
「歩きにくい…」
「似合ってる」
「…えへへへ…」と菜々子は照れていた。
「ナナチャン、可愛いーよ!クマさ、ナナチャンにゾッコンラブ」
「えへへ、ありがとう。」とクマの言葉に更に照れた。
「ね、先輩、私たちの浴衣どう?グッときた?」と鳴上にりせは尋ねた。
「ああ、みんなきれいだ」と鳴上はさらっとそれを言い。
皆を照れさせた。
「あれ?ってか、間薙センパイは?」とりせは居るはずのシンを探した。
「えーっと…まぁ、あれだ」と花村が自分の後ろを指差した。
そこには青い顔の店主。
そして、まるで無表情の仮面でもかぶっているような二人が、ものすごい勢いで金魚を取っている。
メリーとシンであった。
あれほど、大量に居た金魚が徐々に丸い水色のケースに入れられていく。
「あれじゃ、まるでサラリーマンっスね」
まるで機械のように作業をするその様子が、完二にはサラリーマンに見えた。
そんな二人はいつものことだと思い、皆は話を進めた。
「…で、結局お前らは男三人で居ると」
「…クマのせいだ」と鳴上は言った。
まとめると、菜々子は堂島が預かり、女子一男子一で分かれようという話になったのだが、ごたごたしているうちにクマが全員を連れて行った。
その結果どうなったかは言うまでもないだろう。
「運がないな。お前はいつも」とシンは花村に言った。
「なんでだよ。」
「しばしば、自転車でバケツに突っ込むは、ナンパで難破するし、」
「バカ!思い出させんなよ!」と花村はぶるっと震えた。
「じゃあ、じゃんけんで負けたやつがたこ焼き買ってくるってことにしようぜ!」と花村は言った。
「じゃんけん!…」
じゃんけんで負けた、花村と完二が買い物をしに行った。
鳴上とシンはベンチに座った。
「…こうしてると、俺は昔を思い出す」
「昔?」
「…時間は残酷だな」
「?」
鳴上には今一、理解が出来ない。
「俺は…ごく普通の高校生だった。お前たち…のようには、楽しめてはいなかった。
事実、俺は退屈な毎日だった。
こういう性格上な、何もない日常はあまりにも息苦しい海の底だった。
それが、ちょっとしたきっかけで変わって行った。
…どこかで楽しんでいた。生き死にの興奮、一瞬の判断…」
シンは空を見上げる。
そして、少し言葉をためた。
「…深淵は見ない方がいい…見るなら、それ相応の覚悟と強さが必要だ。
俺にはなかった。無いままに、好奇心だけで、覗いてしまった。
…キミは飲まれるな。キミは信じていればいい。信じれる仲間と友人を」
「…ああ」
そういうと、シンは立ち上がった。
メリーがさっとシンに寄ってくる。
「暑いな…帰ろうメリー…少し疲れた」
「はい」
そういうと、二人は帰って行った。
「あれ?シンは?」とたこ焼きを買ってきた花村が鳴上に尋ねた。
「体調が悪くなったらしい」
「そうか…結局、あいつのこと聞けてないからな…俺たち」
「…でも、そんなに気にすることじゃないっスよ。」と完二はイカ焼きを食べながら言った。
「のんきだなお前は…」
そこへトボトボとクマが歩いてきた。
その頬は綺麗に手形が付いていた。
次の日…
昨日よりも静かな祭りで少年が二人ベンチに座っていた。
「…あなたは変わっていますね」
そういうと、少年探偵は帽子を深く被った。
「…小さいころからだ」
それを聞くと直斗は笑みを浮かべた。
「それで。呼び出した理由はなんだ。」
「やっとあなたが言っていた意味が見えてきたんです。
『君から見える景色と俺から見える景色は違う。』と。」
直斗は続けて言う。
「君がそれぞれ単体の"花びら"を見ているのかもしれないが、
俺は『華の影』を見ているのかもしれない。
…その言葉の意味を少し考えていました。
ですが、今なら少しわかるかもしれません。」
「何が分かった?」
「つまり、あなたたちは、攫う側ではなく、"何らかの手段で助けている"ということですね?」
「それは俺に"尋ねて"いるのか?あるいは"確認を取って"いるのか?」
「…両方…ですかね」
「…理由は?」とシンはたこ焼きを食べた。
「それなら、これまでのあなたの行動が合致が行くんです。
あなたは攫うための監視ではなく、被害者が被害に遭うの防ごうとしていたのではないかと。」と直斗は言う。
「…正解か不正解か…それは君が"覚悟"を見せたらわかるだろうな。」
「…覚悟…ですか?」
「ああ」
そういうとシンは不敵に笑った。
ぞくぞくと、直斗の背筋が震え上がった。
恐怖。その言葉がふさわしかった。
思わず、直斗は目を逸らした。
シンのその瞳に飲み込まれてしまいそうな気がした。
真っ黒な瞳で光の差さない目。
ある種の逃避。生き物としての、死を感じ取った。
だが、直斗は口を開いた。
「…ど、どういう意味ですか?」
「…君はオレに近い人間だ。真実を知りたがる。絶対にキミはする」
「…話が見えませんね」と直斗は帽子を深くかぶった。
「…今すぐとは予言はしない」
シンは不敵な笑みを止め、立ち上がった。
「…期待しているよ」
シンは神社の階段を降りた。
自宅に帰る途中…
「残酷だな君は、あいつは覚悟をみせるだろうな」とニャルラトホテプが影の中から言った。
「…俺が出るより、あいつのほうが手早く出れるだろう。」
「リスクも高いがな」というと、不気味に笑い声をあげた。
シンは影を踏みつけると「押さえろ。ばれるぞ」
「そうだった…だが、ずいぶんと愉快なことをするな」
「…これでも"王"なんでな。非情な選択にはなれているよ。」
神社から自宅の人気の少ない通りに差し掛かった。
「非情…ね。お前は意外と気に入っている様だな。あの人間。」とニャルラトホテプは影からニュイっと、出てくると直斗に化けた。
だが、相変わらず皮肉に満ちた笑みである。
「どこがいいのだ?こんな人間。」と自分の姿をみる。
「物分かりの良さ、頭脳の回転速度、及びそれに付随する知識…
そこら辺の戦闘狂悪魔より全く以って使える。
失うのは惜しいが、万が一だ。そうなってしまっては、仕方あるまい。」
「それだけ…とは思えないが」とシンの腕に絡みつくようにニャルラトホテプは訊ねた。
シンはそれを弾くと、パーカーのポケットに手を入れた。
「…あとは『同族のよしみ』だな。」
「同族?」
「似ているのさ。『子供っぽい』ところがな…
子供みたいに見えるんだよ。意地を張ってな。」
そういうシンはどこか懐かしそうな顔をしていた。
「重なるか?過去のお前と」
「愚かだと嘲笑すればいい。だが、良い意味での過去だ。」
ニャルラトホテプはふっと鼻で笑い言う。
「過去と未来とは、 現実と理想だ。
予知できぬが故に、人は未来に希望を抱き、 それが過去となった時、儚い現実を知る。」
「未来に理想を託すほど、ロマンチストではない。
あるとすれば、俺は達成の可能性を秘めた現実的計画を未来に託す。理想は所詮"理想"でしかない。…結果が俺だがな」と皮肉を込めて言うとニャルラトホテプは本日最大の笑い声を上げたのであった。
稲川○二さん風に始まった今回。
そして、言いたいことがある。
四○R-1○は名作だと言わせて貰おう!!
そんで、まあ、全然関係ない話になりますが。
色んな人の動画とか作品見てると、「なんか作ってみたいな…」とか思うけど、思うだけで何もしないという最悪な状態。
一応、多少の絵心とDTMの経験はあるんですが、アニメーションだと動かし方とか、あと本当に文才がないので(なら、なぜこんなものを書いているのかという疑問が出てきてしまう)、本当に一人ではできないことが多いなと思うわけであります。