Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第14話 Preparation 6月17日(金) 天気:曇

破門された際に「破門状」という文が有るそうだ。

破門されたことで有名?なスピノザの際には。

 

『  彼は昼に呪われよ、夜に呪われよ。

 彼は寝る時に呪われよ、起きる時に呪われよ。

 彼は外出する時に呪われよ、帰宅する時に呪われよ。

   神が彼を赦し給わざらんことを。』

一部だが、こんなものらしい。

 

…では、俺はどうだろうか。そもそも信仰はしてなかった。

神の存在は別にそれが生き方だとか、道だとかそういった考えもなった。

でも、『呪われよ』と言う点では似ているな。何より、それが『永遠』ということである。

"昼にも夜にも呪われろ"と書かれている。その狭間がない限り、永遠だ。

寝ている。起きている。この狭間もない。つまり、永遠だ。

 

『カグツチ』に呪われてあれと言われたとき、俺の中で『死』というもの以外で初めて『絶対』が出来た。

 

それが『永遠の闘争』…。

愛でも誰かに託す理想でも、夢でもない。時間でも世界でもない。

永遠の闘争…だが、それを恐ろしいとは思わない。

最近になって、それは思うことだ。

こうして、静かに考えているとそう思うときがある。

 

 

 

…寧ろ、今、この眼前にある物体Xの方がオレにとっては恐ろしかった。

これはなんだろうか。目で見える程の紫色の煙を上げて、見た目はカレーだ。

 

 

 

だが、何故だろう。味が…気になる。

俺の悪い癖だ…。

 

 

こうなった、原因を話しようと思う。

良い意味でも悪い意味でもそれが重要だ。

 

話は前日に戻る…

 

 

『何言ってんだっ!生きて、生きて帰るぞ…』

と映画の最後のセリフを言いかけた瞬間、テレビを消される。

 

 

「…学校の時間ですよ」とメリーにテレビを消された。

 

「…ああ、そうか。もうそんな時間か」

「しかし、私の主の想像とはまったくもって違う生活をしていらっしゃいます」

メリーは不思議そうに首をかしげた。

 

「そうやって、寝ずにDVDを見るなどというのが『混沌王』なのですか?」

 

それを聞いてシンは腕を組み、「さぁ?」とだけ言うと、制服に着替える。

「『混沌王』というのは怠惰ということなでしょうか」

「たぶん違うと思うよ。ある意味、大罪のうちの一つではあるけども。」

 

「…」

「…」

二人に流れる沈黙。

 

「…そうですか。覚えておきます。では、いってらっしゃいませ」

そういうと、メリーは頭を下げシンを送り出した。

 

 

未だに彼女との距離を測りかねている。

『悪魔』も人間もコミュニケーションの意味で考えるなら、感情豊かな点だ。

無論、無感情な人間も悪魔もいるだろうな。

 

だが、一方、彼女はどうだ。

 

笑うところは見たことがない

悲しむところも見たことはない。

嬉しそうな顔も、怒ったところもない。

 

ただ、淡々と物事を済ませていく…

 

…彼女を見ていると、少し息苦しくなる。

…理由は概ね予想はつく。

昔のあの普通に学生をやっていたころの自分に似ているからだ。

ただ淡々と高校に通い、何をするべきなのかわからず、何が正しいのか、何を知らないのか。

只々時間を消費していたあの頃の自分に似ている。

故に少し自己嫌悪する。

 

 

 

 

シンも既に半そでのYシャツを着て登校していた。

既に季節は六月半ば。徐々に夏に向かっている。

シンは帰宅部ではあるものの、通常より早く登校する。

朝の練習をする部活と普通の生徒の間である。

 

本人はそれに関しては深い意味はない。

 

ただ、その時間の静かな河川敷が情緒があり好きであるという理由だ。

真っ暗闇のあの世界。

光も射さないあの世界。

 

それとは対照的な景色であるからだ。

 

話は逸れたが、今日は『普通の生徒』の時間である。

周りには沢山の八十神高校の生徒が沢山居る。

 

シンは少し残念な顔で河川敷を歩いていると、「おはよう」と後ろから声を掛けられた。

それは鳴上であった。

 

「珍しく遅いんだな」

「まあ、そうだな」とシンはうなずき答える。

 

そこに走ってこちらに寄ってくる足音がする。

「おはよう、鳴上君。間薙君」

 

声の主は天城である。その表情はどこか明るい。

 

「林間学校、明日からだね」

「そうだな」

「私たち、同じ班だけど、ご飯はなに作ろうか」

天城は鳴上たちに尋ねる。

「別に俺は特に」とシンが言うと鳴上もそれに同意するようにうなずく。

「あ、じゃあ放課後みんなで買い出しにいかない?」

 

「ぜひ行こう」鳴上は笑顔で言う。

「俺も暇だしいいよ」

 

そういうと天城は嬉しそうにうなずいた。

 

 

 

 

放課後…

 

「なるほど、そういった惨劇があったのか」

「まさか、大谷が出るとは…」と鳴上は苦い顔をする。

大谷。というのは、うちの学生だ。だが、容姿が正直に言うと、ひどいのだ。

 

だが、どうして花村がナンパした相手が大谷の番号を渡したのか…どういった手段を用いたのか…わからない。

 

 

鳴上はひらめいたようにいう。

 

 

「まさになんぱせん(難破船,ナンパ戦)・・・・・だった」

「なるほど。うまいな」とシンは感心したように鳴上に返した。

「…いや、そこは笑うところなんだが…」と鳴上は珍しく突っ込んでしまった。

 

その後、ジュネスへと向かった。

 

 

ジュネスの野菜売り場に来ていた。

「カレーって何入れたっけ?」と千枝は天城に尋ねる。

「にんじん、じゃがいも、たまねぎ…ピーマンまいたけに…ふきのとう?」

 

「…」

「…」

シンと鳴上は妙な胸騒ぎを感じる。

 

「ふきのとう…と"ふき"って一緒かな?」

 

どうやらカレーを作るようだ。

 

千枝はシンたちの方を向き、尋ねた。

「カレーでいいよね?人気ナンバーワンの国民食。」

「ラーメンとカレーで迷ったんだけど、ラーメンじゃちょっと浮くと思って」

「確かに、飯盒炊飯でラーメンというのは聞かないな」とシンはいう。

 

「でしょ?だからカレーにするね」と千枝たちは再び野菜の方へと体を向けた。

 

「んー、花村とか、どんな具が好きかねえ…あいつ、細かく文句言いそうだし。」

「上の階に行ったんだっけ。訊いてくる?」と天城は千枝に尋ねる。

「そこまではいいよ。それに、なんか準備があるって言ってたし。」

 

花村は学校の授業中に魘されていたようだが、それに関しては突っ込まないことにしておこう。

 

それぞれの食品コーナーを回る四人。

 

ふと、天城は粉系コーナーで足を止めて唸っていた。

 

「…うーん」と天城は考えるように食材を見ていた。

そして、千枝に尋ねる。

 

 

「ねえ、千枝。カレーに片栗粉って使うよね?」

「「!?」」と鳴上とシンは眼を見開く。

 

「…?そ、そりゃ、使うんじゃん?」と千枝は慌てた様子でうなずいた。

「「!?!?」」とさらに二人は目を見開いた。

それと同時に、胸騒ぎはさらに加速した。

 

「使わないと、とろみつかないよね。じゃあ片栗粉と…小麦粉もいるかな。」

「こ、小麦粉って、あれでしょ。薄力粉と、強力粉?どっちだろ。」

「強い方がいいよ、男の子いるし。」

そういうと、強力粉を籠に入れた。

 

「じゃあ、それと…あった!」とトウガラシも籠に入れた。

 

二人は盛り上がりたくさんの何に使うのか不明な食品まで入れ始めた。

 

 

「…シン。」

「なんだ、悠」

「俺には言えない。勇気が足りない」

鳴上は盛り上がる二人を止められるほど、勇気が足りなかった。

 

シンは少し黙り、盛り上がる二人を見て口を開いた。

「…悠」

「なんだ。」

「絶対に生きて帰るぞ」とシンは鳴上を見る。

 

「…ああ」と鳴上は遠い目をしながらうなずいた。

 

 

 

結局、二人は籠に何を入れたのか覚えていなかった。

出来上がるカレーがどうなるのかで頭がいっぱいになり、それどころではなかった。

明日、迎えるであろう『カレーという名の何か』がどうなるのか、それをどう攻略するべきなのか、鳴上とシンは自宅でもそれで頭がいっぱいであった。

 

 

 

 

次の日…

 

 

完二が出席日数の関係で林間学校に参加したため、一年は葬式だと完二は言っていた。

そりゃそうだろう、と誰もが思った。

そして、完二と合流しごみひろいをしていた。

 

「ゴミ拾いって…俺たちは、ボーイスカウトかってんだよ。」と花村は文句を垂れながら森林のごみを拾っていた。

「にしても、ゴミ多いねえー」と千枝はため息を吐き、一息ついた。

 

「…すこし、事件について整理しよう」と鳴上は空き缶を大きな袋に入れる。

「そうだね。完二君の事件で被害者が女性って共通点は崩れちゃったね」と天城は思い出すように言う。

 

「何か、見落としているのかもしれない」

「とは、いえほかの共通点っていってもねえ」と千枝は中腰でごみを探す。

 

「なんでもいいから、情報出し合ってみようぜ」

「そういやあ、お袋が言ってたんスけど。生田目議員は辞職したあと、この実家の稼業継いだらしいっスよ」

 

「私も聞いた。配送業者なんでしょ?」と天城は完二の方を見て同意する。

「でね、私。気が付いたことがあるんだけど、山野アナは事件の前に不倫報道でテレビで出てたでしょ?小西先輩も第一発見者でニュースに出てた。」

 

「おい、待てよ、天城も確かテレビでインタビューされたよな?」と花村は天城に確認をする。

「完二君も、たしか特番に出ていたよね?」

「ああ、思い出したくもないっすね」

 

「全員、いなくなる前に『テレビで報道されていた』」

いつの間には全員が集まって、会話をしていた。

そして、全員が考え込む。

「テレビつながりってことっスか」

 

ふと、完二は周りを見渡す。

「あれ?ってか、シン先輩はどこにいるんすか?」

と言われ、全員がキョロキョロする。

 

 

 

 

「…え?まさか、バックレ?」

 

 

 

「るはずがないだろう」

木の陰から、シンが出てきた。

 

「つまりだ、テレビの報道を見ていれば、ある程度犯人の次の行動が予測できるということだ」そういうと、シンはスチール缶を片手で握りつぶした。

 

そして、シンは言葉を続ける。

 

「しかし、それだと犯行の理由が思いつかん。

何のために、どうしてテレビで報道された人を、テレビに入れて『殺す』理由があるのか。」というと、シンはすぐにごみひろいを始めた。

 

「動機はまだ見当もつかないな」と鳴上は軽くため息を吐いた。

それと同時に全員がため息を吐く。

 

 

それと同時にシン以外は鳴上の後ろに立つ人物に気が付いた。

 

「こらぁああ!おまえらグダグダしゃべってないで間薙のようにごみひろいをせんか!!」

そうモロキンが叫び、皆ごみひろいを再開した。

 

 

 

午後になり、それぞれ生徒たちが、飯盒炊飯の準備をしていた。

それが終わり、いよいよ冒頭に戻るわけだ。

 

 

すでに花村と鳴上は噴出して倒れた。

(…『忘れねば思い出さず候』)とシンは両手を合わせて二人に合掌した。

 

「む、無理しなくていいよ」と千枝はシンに言う。

だが、その目はどこか期待をしているように見えてなおさらシンを苦しめた。

それよりも、興味。混沌王たる俺がこの明らかに毒々しいカレーを食べたい。

どんな味をしていて、どんな触感なのだろうか。

 

それだけで、シンはスプーンに一口分の物体Xを口に入れた。

 

(…な、なんだこれ…)

シンはそして、思い出した。マガタマを『マサカドゥス』にしていた。

いつもは、とある場所で頂いた、マガタマを装備していたのだが、今回は偶々、変えてしまっていた。

(『マサカドゥス』を貫通!?万能属性か!?…ああ、この…かんか…くは)

 

シンはいつの間にかうつぶせに倒れていた。

白い空間の中、天使たちが舞い降りてくる。さながら、フランダースの犬だ。

 

 

『死の安らぎは 等しく訪れよう

 人に非ずとも 悪魔…』

 

 

 

「はっ!!!」とシンは『食いしばり』でこの世に生をつなぎとめた。

 

シンはすぐにポケットから、『ソーマ』を取り出し飲み干した。

 

 

夜。

 

 

鳴上と花村のテントがどう考えても狭いので、モロキンに言ってみると、案外すんなり代替えのテントをくれた。

理由は間薙の授業態度など真面目で、屡授業後の質問などをしてくる、浮いた話もなく、モロキンからの評価は高かったためである。

 

鳴上たちのすぐ近くにテントを建てる。

それが終わると、すでに真っ暗になりつつあった。

 

シンは寝っころがると、耳栓をする。

これは一つの合図である。この際には『俺のところにくるな』という手下に対する合図。

 

シンは天井を見上げると、考え始める。

 

それはやはりこの事件とその犯人のことである。

 

 

 

テレビで報道された人間を『テレビに入れて殺す』。

それだと動機が不明だ。テレビに出たから羨ましい…というわけではないだろう。

実際、完二や天城のテレビの内容は良いものではなかった。

 

…そもそも、『入れて殺す』

 

入れて…殺す?

 

仮にだ、今回の犯人が、猟奇殺人者とか快楽殺人者だった場合

 

…そうだ。

 

『殺し方』にこだわるはずだ。それが態々、自分の手を汚さずに『殺す』か?

それに、『殺し』を目的としているものが、天城が助かっている時点でやり方を変えるはずだ。殺すことが目的であるなら、尚更だ。

だとするならば、『テレビに入れる』こちらに焦点を合わせるべきだ。

 

『テレビに入れる』ことに意味があるとするなら、殺しは二の次を意味する。

 

…どんな犯人だと『テレビに入れる』ことを重視するだろうか…

 

テレビに出ていたから、テレビの中に居るはずの人間がテレビの中にいないのはおかしい!だから、テレビに入れるよっ!それで二人くらい死んじゃってるけど、僕は悪くない!

 

…ないな。

 

ふふふっ、私は選ばれた人間だ。

この力があれば…フフフッ…私は新世界の神になるッ!!

 

…相当、イッてる。

でも、まあ、これは可能性はあるな。

盲信的なことから生じた行為だとするなら、『テレビに入れる』ことに宗教的意味や何らかの思想で偶々、『テレビに入る』能力を手に入れたものがそういった思想になった。

…少し、無茶苦茶だな。

 

だが、盲信…

 

……。

 

 

シンは天井を見上げて海に沈む様な感覚。

深く、深く潜る様に思考の海に沈む。

真っ暗闇の中、ゆっくりと海に沈んでいった。

隣の騒ぎに気付くことなく、只々、沈んでいった。

 




読み返していて思いましたが、今回のは本編知らないと分からないことが多すぎだなって思いました。それにいろいろ端折って、なんか支離滅裂。
なので、鳴上視点も作った方がいいのかなとかなんとか考えてます。

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