Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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『誰も「神」に立ち向かうことは出来なかった。
無論、あらゆる祈りの言葉も通じなかった。
「神」は破壊の限りを尽くした
世界は混沌に打ちひしがれていた
復活を望む死者たちの墓は暴かれ、獣たちは互いに牙を剥ぎ、生き残った人間は絶望と不信に重く沈んだ。
野火が消え、無明の夜を迎えた時、一匹の蛇が地に横たわる屍より這い出てきた。
蛇は体をくねらせて丘に登り、焼け焦げたかんの木の脇にとぐろを巻いた
そして、首をもたげて待った。
「神」は蛇に向かって言った。

呪われてあれ

これが「神」の言葉の、その始まりであった
蛇は暗雲に閉ざされた大地に向けて降りていった
蛇は幾多の災い、幾多の試練をもたらすべく、憎悪渦巻く世界へ、進んでいった。 』




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「…宣伝か」
「ん?お前の所にも来たのか?鳴上」
「え?花村も来たの?」
「え?ってことは里中もか?」
「うん。雪子も来た?」
「うん。…でも、なんなんだろうね、この宣伝」
「さぁ?考えるだけ無駄じゃん?」
「消すのが吉だな」


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プロローグ
第1話 Prologue 5月7日(土) 天気:雷雨


 

 

 

 

 

『その思念の数はいかに多きかな』

 

 

 

幾星霜もの月日が流れたと思う。

俺が『至高の魔弾』を『大いなる意志』最後に放ち、そして、混沌が秩序を呑みこんだと思われた。

 

だが、『大いなる意志』はしぶとかった。

 

再び我々『混沌』の中から何度も何度も『大いなる意志』は復活して現れてくる。

 

何度も何度も、それを繰り返すうちに、俺は『大いなる意志』との戦いに疲れ果て、

いつの間にか懐かしい『アマラ深界』へと漂流していた。

 

「仲魔」は誰も居ない。

「悪魔」の気配もしない。

 

すると、すぐ近くに居た思念体が話し始める。

 

「よぉ、あんた。災難だったな」

「・・・ここはどこだ?」

「どこって、深界だが」と思念体は何を聞いてるんだと言った感じで人修羅に答える。

「アマラ深界か?俺の知っているのとは違うな?」

立ち上がりながら俺は尋ねる。

 

「まぁ、そうだけどよ。ここはちょっとばかし特殊なんだな。これがさ」と得意げに思念体は答える。

 

 

「ここはさ、とある人間が希望を込めて作り出した世界の深界なのさ」

 

「人間?」

「そうなんだなぁ、これがさ。この先の階段を上がればわかるよ」と思念体は暗い道の先を指さす。

人修羅は軽く頭を下げるとその指を指した方へと歩き出した。

 

 

 

「これでいいんですかい?ルイさん」

「ああ」と突然、金髪のスーツを着た男が現れ答える。

「でも、あなたも人が悪い」

「堕天使になにを言っているんだ?」

「それもそうでした」と思念体は笑うとその場からいなくなった。

 

 

「・・・新たな可能性が此処にはある」

 

 

 

人修羅は扉の前に着くと、躊躇せずにドアを開く。

その瞬間、とてつもない光が人修羅を襲う。

 

「クッ・・・」と思わず腕で顔を覆う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次は~八十稲羽(やそいなば)八十稲羽(やそいなば)。」

 

気が付くと少し古めかしい電車に乗っていた。

 

 

俺は慌てて立ち上がり周りを見渡す。

(・・・幻覚か何かか?)

服は着なれたパーカーであった。

 

 

 

 

だが、それ自体、有りえない事なのだ。

 

 

俺が居た世界は受胎でなくなったはずなのだから。

 

 

そして、創世したはずだ。

 

 

 

『混沌』を。

 

 

 

 

訳が分からず、キョロキョロしていると、肩を叩かれる。

 

「慌てているようだね」

「・・・ルイか」

 

ルイと言われた男は金髪で黒いスーツを着た男性がそこには居た。

 

「お前のせいか」

「そうだな。」と否定することなく頷く。

 

俺は思わずため息を吐く。

 

「これから、更に苛烈な戦いになるだろう」

「知っている。だからこそ、こんなところに居る場合ではない。」

 

「休息だ。」

 

「休息?」と思わずガクッと肩を落としてしまう。

 

 

「意味は分かるか?心身を休めることだ」

 

 

 

 

「休息・・・」そういうと自分の手を見る。

その手には刺青の様なモノがなかった。

 

「この世界では目立ちすぎる。」

「力は?」

「お前が使おうと思えば使える。だが・・・あまり派手にやらないことだ。

それに、休息(・・)だ面倒事にならないようにしてはいるが・・・」

 

 

「お前から首を突っ込んではこちらも処理できん」

 

 

 

だが、そういうルイだが顔は少し笑っている。

 

 

 

 

「お前の身分は変わっていない」と上着のポケットを指を指すルイ。

 

人修羅はポケットにある財布を取り出し、もう何百年と見ていないバイク免許証を取り出す。

そこには変わらない、そして、昔に見慣れた顔がその免許証にはあった。

 

「・・・高校生ということか」

「ああ、住む場所もある」

「・・・いたれり、つくせりだな」と人修羅は外を見る。

 

「さぁ、次で降りるんだな。」とルイは椅子から立ち上がる。

そして、ハンチング帽子を被る。

 

 

「限りある時間を、再び過ごすといい。・・・また、会おう。」というと、隣の車両へと移動した。

 

 

 

俺は免許証を再び取り出す。

忘れていた。名前だ。

 

「間薙・・・シンか・・・」

 

そして、中身を確認する。

「・・・こんな大金初めてだ」と驚いた。

 

マッカがどういうレートか知らないか、大量の現金に換えられていた。

 

そして、もう片方のポケットには通帳が入っていた。

 

「・・・なるほど。マッカ大量に持っててよかった」

そこには0が無数に連ねられていた。

 

そして、電車が駅へと着くと同時に俺は椅子から立ち上がり、財布の中にあった切符で降りた。

ルイに言われて降り立った駅はとても都会とは言えない田舎駅であった。

酷い雨の中、俺は駅から屋根の付いたバス停へと走った。

 

(住む場所まで位には案内してほしいものだ)

 

そして、走った感じ。やはり、この状態では早くは走れないようだ。しかし、恐らく普通の常人よりは遥かに速いし、体も頑丈なような気がした。

 

そんなことを思いながら、空を見上げバスを待っていた。

 

 

 

「ここが稲羽中央通り商店街か」

シンが思わず口に出してしまうほど、田舎な商店街であった。

 

大雨の中、シンは傘など持っている筈も無い。

だが、シンは少し雨が嬉しく感じていた。

雨と言うモノを忘れるほどの長い月日、最近はただただ、戦っていた。

それ故に、天の恵み、雨を少し喜んでいた。

 

 

バス停からすぐ近くにガソリンスタンドがあり、その奥には寂れた店々がある。

シンは走ってガソリンスタンドへと入った。

 

「・・・見ない顔だね。困ってるのかい?」と店員は微笑み尋ねる。

 

「ええ、まあ」とシンは空を見上げて言う。

 

「傘、貸しましょうか?」と店員が傘を差しだす。

 

シンは田舎だなと思い傘を受け取った。

 

 

「・・・ありがとうございます。今度返しに伺います」とシンは傘を差し、お辞儀する。

「いいよ。」と店員は微笑み奥へと戻って行った。

 

 

 

と、ポケットに入っている携帯が鳴る。

 

「な、なんだこれ・・・」

取り出すと想像していた形態ではなく、大きな画面のある携帯電話であった。

 

シンは興味深そうにそれを眺め、横に付いているボタンを押すと画面が明るくなる。

そして、ガソリンスタンドの屋根の下でぎこちなく操作を慣らす。

 

 

「なるほど・・・こういうモノか」と理解したようにシンはメールを開く。

 

 

『稲羽中央通り商店街の神社裏のアパート1Fの101』と書かれておりそのあとに

『ちなみにだが、学校は5月13日からだ。それまでは街の雰囲気に慣れるといい』とも書かれていた。

 

 

(神社・・・あれか)と商店街の奥にある神社を目指し歩き始めた。

 

 

 

雨の中、傘を差し歩いている人がいる。

人が普通に歩いている風景に酷く驚きを隠せないのが事実だ。

 

一度は願ったこともある。

あんな混沌な世界じゃなくて「前の世界」のままでいいと。

 

でも、先生が殺されて。友人たちが理を開くなか、俺は何もなかった。

 

 

だから、混沌を選んだ。

俺はあの世界の可能性を摘んだ。

 

それが結果だ。

 

その結果があまりにも長い時間の中で永遠と思えるような戦いを繰り返しては、休み繰り返しては休みを続けてきた。

そんなことをやっていれば、創世の頃は今となっては随分と昔の話だ。

 

 

 

ぐぅ~

 

 

気が付くと何百年と感じていなかった「空腹」を感じた。

無尽蔵のマガツヒで空腹など感じることはなかったが、空腹を感じている。

 

と、辺りを見渡すと「愛家」なる食事する場所がある。

 

俺はその店の前まで行くと、張り紙がしてあった。

 

「雨の日限定。スペシャル肉丼」

 

 

 

 

(スペシャル肉丼・・・)

 

 

 

 

 

とてもおいしそうな響きと匂いに引き付けられ、俺は気が付くと席に着き、それを注文していた。

 

 

 

「バイクかぁ、やっぱりバイク乗りてぇよな、相棒」

「そうだな」

 

鳴上悠と花村陽介、そして里中千枝は雨の中、愛屋に寄る為、商店街に来ていた。

 

 

「しっかし、本当に食う気か?」

「あったりまえでしょ!雨の日にしかないんだから」と千枝は当然の様な雰囲気で言う。

 

「本当にお前は肉・肉だな」

「肉はあなたを裏切らない」と鳴上がドヤ顔で言いながら愛屋に入って行った

 

 

 

「まいどー」と同い年くらいの青い髪の少女が俺の目の前にとんでもなくでかい肉丼を置く。

 

食べ始めると、肉・肉・油・肉・油・・・

 

だが、ハラペコの俺には余裕だった。

 

そうしていると、学生が三人程入ってくる。

 

「まいどー」と淡々を少女は言う。

 

 

「「スペシャル肉丼」」と悠と千枝が声を揃えるが。

 

「ごめんねー。そこの人ので終わったアルヨ」と店長がシンを指さす。

 

「ごちそうさまでした」と丁度、シンが箸を置いたところであった。

 

「あいやー。あなたすごい早いネ」と店長らしき人物が空になった丼ぶりを見て言う。

 

「・・・す、すごすぎだろ」と陽介は空になったどんぶりをマジマジと見て言う。

「ちょ、失礼じゃん」と千枝は花村を引っ張る。

「・・・高校生?」とシンは制服を見て言う。

「はい。」と鳴上は頷き答える。

 

「・・・もしかして、八十神高校?」とシンはパーカーのポケットを探りながら、鳴上達に尋ねる。

 

「そうですけど、まさか同い年だったりします?」と千枝が軽い気持ちで尋ねる。

 

 

「たぶん、そうかな。君達の年齢知らないからなんとも言えないけど」

 

そういうと免許証を見せる。

 

 

「同い年なんだ・・・」と鳴上達は驚いた表情でシンを見る。

 

鳴上が驚いた理由は簡単である。同世代とは思えないほど、雰囲気が大人びていたからだ。

 

 

 

四人は同じテーブルに座り、自己紹介を始める。

これも何かの縁だと鳴上が言ったからだ。

 

「俺は鳴上悠。」

「わ、私は里中千枝」

「えーっと、俺は花村陽介だ。よろしくなっ!」

 

「俺は・・・間薙。間薙シン」

シンは噛み締めるように名前を伝える。

 

「間薙さんはどこに住んでいらっしゃったんですか?」と千枝がたどたどしく敬語でシンに尋ねる。

「なんで敬語なんだよ」と花村がツッコミを入れる。

 

「シンでいいよ。俺はトウキョウ。」

 

「すげぇ都会じゃん!ってか、首都じゃん!」と花村は大声で言う。

「東京かあ・・・」と千枝は想像できる限りの都会を想像するが、

「あーダメダメ。沖奈市(おきなし)が限界!」そういうと肉丼を頬張る。

 

「貧相な想像力だな。肉ばっかり食ってるからそうなるんじゃね?」花村がぼそりというと、「なんですって!」と千枝は立ち上がり怒る。

 

 

そして、口論を始める。

 

 

シンは微笑む鳴上を見て言う。

「いつも、あんな感じ?」

「そうだ」と鳴上もすこし笑いながら答える。

「そうなんだ・・・」

 

 

・・・思い出した。

俺もこうやって(いさむ)千晶(ちあき)なんかと笑い合っていた。

 

・・・どこで(たが)えたんだろう。

違う。初めから違ってたのかもしれない。

 

 

鳴上はシンの顔色が変わったのがすぐにわかった。

「どうした?」

「・・・いや、なんでもない」とシンは淡々と答え、氷で冷えた水を一気に飲み干す。

 

 

「・・・そういえば」鳴上は首を傾げたあと思い出したようにシンに尋ねる。

「シンはバイクの免許持ってるんだな」

 

「まぁ、トウキョウだと便利だったから」

 

「そうそう!俺たちも取りたいよな?相棒!」と花村は鳴上にそう言うと

「そうだな」と鳴上は頷く。

 

 

「・・・じゃあ、俺は引っ越してきたばっかりだから、いろいろ片付けなきゃならないから」とシンはイスから立ち上がる。

 

「手伝おうか?」と鳴上が言うが「いや、大丈夫だ」とシンはそれを断り、店を出て行った。

 

 

 

 

そして、鳴上の頭には恒例のあれが流れていた。

 

 

『我は汝・・・ 汝は我・・・

汝、新たなる絆を見出したり・・・

 

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

 

汝、"混沌"のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん・・・』

 

 

 

 

鳴上は首を傾げる。

(混沌なんてアルカナがあったかな・・・)と鳴上は内心思う。

 

「ん?どうしたんだ?相棒」

「いや、なんでもない」と鳴上はシンの出て行ったドアを見つめていた。

 

「・・・ちょっと用事が出来たから」と鳴上が立ち上がる。

「ああ・・・ってやべぇよ!俺、バイトだった!!」と花村は飛び上がり、すぐに愛屋から出て行った。

 

「じゃあ、私も帰るね」

「送ってくよ」

「だ、大丈夫だよ」とすこし照れながら千枝は愛屋から出て行った。

 

 

 

「・・・残念ながら、私達では扱えません」

マーガレットは本を閉じ、鳴上の手に持っているカードを見るとそう鳴上に告げた。

イゴールはただ、それを見つめ口を開く。

 

「これは非常に強い力でカードのペルソナが封じられています。

残念ながら、私達では扱えないということです。

しかしながら・・・もう少し"絆"の力を深めて頂くと・・・使えるやもしれませんな」

そういうと、フフフッ・・・と笑う。

 

 

「しかし、どんな人物からこの絆を得たのでしょうかね・・・」とマーガレットは不敵に笑い鳴上を見る。

 

それを見てビックっと鳴上は竦み、ベルベットルームを後にするのであった。

 

 

(シン・・・君は何者なんだろう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(空気が軽いなぁ)と夜になってシンは思う。

そして、部屋に置いてあった、大きなテレビをつける。

 

どうやら、奇怪な殺人事件がこの町では起きているというニュースがやっていた。

なんでも、アンテナに死体がぶら下がっていたとかなんとか。

 

・・・少し気になるが・・・

 

ただ、やはりルイの言葉を思い出し、テレビを消すのと同時に考えるのを止めた。

 

 

・・・明日はこの世界の現状を知る必要がありそうだ。

そう考えてシンはテレビを消し、冷たいベッドで寝る。

 

(思えば・・・ベッド自体も久しぶりか・・・)

そう考えているうちに瞼が重くなり、眠りへとついた。

 




2014 3/17 まえがきを追記。

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