夢を見ていた。
断片的な映像がノイズと共に脳内を暴れまわる。
刻まれた傷がじくじくと疼いて体を這いまわる。
この世のあらゆる憎悪を言葉として浴びせるように。
この世のあらゆる憤怒を暴力として振るうように。
彼等は傷つけた。
何故と言う疑問に意味が無い事を知ったのは意外なほど早い段階であった。
何故ならば意味なんてものは存在しなかったのだから。
ただ、たまたまそこに生まれただけ。
ただ、たまたまそこで生きていただけ。
ただ、たまたまそこで憎まれていただけ。
ただ、たまたまそこで愛されなかっただけ。
それでも彼等が自らの手で終わりを迎えた時に涙が流れた。
自分を連れで逝かなかった事を最初で最後の愛情だと信じて。
家族を失った。
そして新しい家族ができた。
新しい家族は自分の知っている家族ではなかっ た。
風の様な少年は自分の事を好きだと言ってくれた。
天災の様な少女は自分の打たれ強さを褒めてくれた。
元気溢れる少女は自分を頼ってくれた。
知的な少年は自分に役割をくれた。
筋肉な少年は自分と殴り合ってくれた。
気弱な少年は自分の言葉に突っ込みをいれてくれた。
そして―――
「・・・・・ん」
目を覚ますと教室は無人になっており、夕日の茜色が射し込んでいた。
最後の授業からずっと寝ていたのだと気づく。
夢を見ていた様な気がするが良く覚えていない。
「くあ~~~あ」
大きく伸びをして再び机に顔を預ける。
隣の席を見ると射し込んでいた光が半分だけあたっている。
しかし、その目には別の景色が写し出されていた。
「……あ……あの…」
か細い声が微睡みから意識を引き戻す。
「…お、起きて……」
「…ん?」
顔を上げると、其処には天使がいた。
食い入るように見つめていたら、怯えた様な顔をして俯いてしまった。
「えっと…な、何か用?」
「……下校時間……だから」
俯いたまま今にも消え去りそうな声で呟く彼女の声に顔が熱くなっていくのを感じる。
「あ、そ、そっか」
真っ赤になったままの顔で、机の横にかけてあったランドセルを取って慌てて席を立つ。
「ありがとう」
「……え?…」
不思議そうに呟いて天使が顔をあげる
「……ありがとう?…」
他に誰かいないか確認するかのように、天使はキョロキョロと辺りを見回した。
「あ、ああ、起こしてくれてありがとう」
「…あ、う……」
急に頬を赤く染める天使に、心臓が飛び出しそうなほど鼓動が高鳴るのを感じて、慌てて教室を飛び出してしまった。
「ま、また明日な!」
その言葉を残して。
一人教室に残された天使が呟く。
「……ま、また…明日ね……」
「・・・しょうもない」
不意に教室の扉が開いて声がした。
その声だけで鼓動が速くなるのが分かる。
再び目を閉じてその時を待つ。
最初に出会ったあの時の様に。
足音が自分の横で止まる。
触れてくる手から鼓動が高鳴っているのがばれてしまったかもしれない。
柔らかな手の感触と心地よい揺れで目が覚めるふりをする。
「武、おはよう」
「おはよう、京」
あの日から始まった恋の物語。
はじめましてやさぐれパパです。
ほぼ勢いだけで書いてます。
物語の時系列は「真剣で私に恋しなさい!」の百代ルートをベースにやっていこうかと思ってますが、ちょいちょいオリジナル展開入れたりしますんで細かいところは目を瞑ってください。私は瞑ります。
誤字脱字についても以下同文でお願いします。
今後ともひとつよろしくお願いします。
更新遅いです。