深白の竜姫、我が道をゆく   作:羊飼いのルーブ

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◆第11話 【二年間の歳月】

 

 

 

 

 ユーリア会戦の終結後。

 都市長たるマレーズたっての希望もあり、ヒュルックの屋敷にて祝勝会が開かれた。

 

 畏まった場は苦手だと、ホツリ村のハンター達は過半数以上が帰る事を選んだ。

 ヴァリエもそうしたかったのだが、今回の戦いにおける最大の功労者が不参加では成り立たぬと、都市長であるマレーズに散々に泣きつかれてしまい、参加せざるをえなくなってしまった。

 せめて夫たるシュタウフェンが傍にいれば、ヴァリエが酒に呑まれようが、小難しい話となっても安心であったのだが……。

 ホツリ村で帰りを待っているであろう愛娘のセリエの事を思えば、先に帰って安心させてほしいとヴァリエにしては良識ある発言をし、渋々ながらも夫を先に見送ったのである。

 

 では、そのほかの面々はどうかというと。

 ギルドの支部長を勤めており、こうした集まりにも多少慣れているはずのアイナは、「めんどくさいから帰るわね」と本音を隠すつもりもなく告げ、早々に帰路についてしまった。

 お行儀だの礼儀といったものと無縁であろう、悪友ギースカスなどは言わずもがなである。

 「もう少し気楽な集まりだったらなぁ」と言いつつ、鍛冶職人のダルナスも帰っていったのであった。もっとも、こちらはババコンガとの殴り合いであちこち骨折しているので早々に帰るべきであろう。

 雷鷲らいじゅの異名を持つブラムセルもまた、面倒事は御免だとばかりに去っていく。

 

 そうなってくると結局参加したのは、泣き落されて参加せざるをえなくなったヴァリエに、若くして活躍を見せたために同じく懇願されてしまい、参加したのであろうルークにニーナ、強面ではあるがホツリ村でも随一といってもいい良識家のアルバスといった面々くらいのもので、あとは食事目当てに参加した数人くらいだった。

 

 テンプエージェンシーの支部長であったメリディナも不参加のようである。

 ヴァリエが会場内を見渡しても、彼女の気配は露ほども感じられなかった。

 彼女の性格からして、畏まった雰囲気が得意とは思えなかったが、かといって人見知りだの遠慮をする性格にも思えなかった。

 

 ヒュルックで活動するハンターであったタイラーの姿もまた、見かけなかった。

 もっともこちらは、言葉を発する都度けたたましいので、参加を許されなかったのかとヴァリエは思っていた。

 だが、意外にもそうではなく、ユーリアの戦いで負傷してしまったかららしい。

 戦闘終盤において、大タル爆弾などが誘爆しないようにと撤退していたらしいが、慌てていたハンターがタル爆弾を落としてしまった際にかばっての怪我、という事だった。

 タイラーの為人を知らない以上、ヴァリエに深く追及もできないが、意外な一面だと感じたのは確かだ。

 

 ともあれ、祝勝会自体は特に滞りなく、流れるように進行した。

 都市長マレーズの挨拶から始まり、次いで今回の戦いに参加したすべての者達への感謝と賞賛の言葉を述べ、戦死していった者達への哀悼の意を告げ、ほどなく開催された。

 いざ開催すると、ヴァリエはせめて張り切って豪勢な食事にありつこうと思ったのだが、間を置かずしてマレーズをはじめとする者達が訪れた。

 そして、ヴァリエの耳朶が痒くなるような美辞麗句に賞賛の嵐を浴びせていき、マレーズが何度頭を下げてきたのか、覚えてはいない。

 心からの感謝の礼を繰り返し告げられ、流石にいたたまれなくなってきたあたりで、ギルドマスターのヴェルラーが「その辺でよろしいかと」なんて言って、切り上げてくれた時は素直に感謝したものである。

 

 それが終わると、今回の戦いに参戦したのであろうヒュルックの騎士達や、ハンター達が次々と挨拶がてらにと、酒を注ぎにやってきた。

 慌ただしい戦況の中で、ヴァリエに呑気に声をかけるのは憚られたらしい。

 

 

「名高き竜姫殿にご挨拶させていただきたく……此度、共に戦えた事を光栄に存じます。一献御注ぎ*1させていただけましたなら恐悦至極……」

 

 

 等々云々の似たり寄ったりの言葉を口にしては、酒を注いで去っていくのである。

 ヴァリエ自身、酒に強いわけでもないので、嗜む程度に口につけて、グラスが一杯になると別のグラスを用意してもらう羽目になった。

 貴族だらけの見世物じみた集まりなどは、今更絶対に参加しまいと固く誓うほどに嫌悪していた。だが、このようにゆっくりとする暇もなければ、心休まる暇もないというのも、ヴァリエにとっては中々に厳しいものがあった。羽目を外して騒げないというのも辛い。

 だから、列を成していた騎士達やハンター達を捌ききったのを見て取ると、心の底から安堵の息を吐いたものである。

 

 途中、視界の隅には同じように人だかりに囲まれていたルークやニーナの姿も見えており、特にうら若きニーナなどは戦いの場から離れれば、途端にただの礼儀正しい可憐な少女と化す。

 戦いの中の狂気じみた姿を知らぬのであろう、まだ若そうな騎士やハンター達が、お世辞ではない賞賛の言葉と、熱の籠った視線を送っているのも見えた。

 一応、そう遠くない距離にアルバスが控えているし、そうそう厄介な事にはならないであろう。

 

 そのあとは、気分的にも幾分かマシであった。

 途中、騎士団長であるシュライハムや、その副官たるシーリアスなどと短く挨拶を交わした。

 

 

「ヴァリエさんがいなければ、私はきっと死んでいました。貴方は本当にヒュルックにとっても、私にとっても恩人です!」

「そんな大げさな……」

「いえ、事実です! きっと、この受けた恩は返させていただきますからね!」

「あはは、気持ちだけで十分だよ。シーリアス、元気でね」

「はいっ! ヴァリエさんもお元気で! またお会いできる日を心待ちにしております!」

 

 

 シーリアスは、最初から最後まで変わらず、堅苦しく、大真面目であった。

 きっと嘘偽りなど含まぬ、心からの言葉であったのだろう。

 何度もヴァリエと篤く握手を交わし、感謝の気持ちと言葉を繰り返し伝え、最後はシュライハムに連れ去られていった。

 彼らは彼らで、戦後処理などの仕事が残っており、まだまだ休む暇がないらしい。

 

 

「竜姫殿、今回は本当に良い機会だった。次にまた会う日まで壮健である事を祈るよ」

「団長さんも、元気でね」

 

 

 シュライハムとの会話は端的であったが、言いたい事は互いに伝えられたとヴァリエは思う事にした。

 

 

「お疲れ様、竜姫さん。人気者は大変ね」

「カヤキスぅ! ……右腕は大丈夫なの?」

「まぁ、大丈夫よ。ちょっと不自由するけれど」

 

 

 そして、カヤキス。

 知り合って短い間柄とはいえ、当初から友好的であった彼女が気さくに話しかけてきた時、思わず声を弾ませるヴァリエであった。

 

 カヤキスの右腕は肩から包帯を巻いて、がちがちに固定されていたが、あの戦いで坂道を転がり下った際に骨折していたらしい。

 大事に至らなかったのは、不幸中の幸いであっただろう。

 とはいえ、あの時ヴァリエ達が駆け付けてくれなければ、カヤキスも今頃はどうなっていた事か。

 目の前の竜姫は、憧れの対象であるばかりか、今や命の恩人でもあった。

 

 カヤキスはヴァリエ目当ての長蛇の列が一通り落ち着くのを待っていたらしく、ヴァリエの傍で腰を落ち着けると、飲食と談話に興じた。

 カヤキスからすれば、じっくりと話せるであろう、この機会を逃すわけがなかった。

 ヒュルックでハンターをしており、しかも実力も高い事から都市をそうそう離れるわけにもいかない立場である以上、今後いつこのような機会が訪れるか分からないのだから。

 

 

「私のところの娘はラキシスっていうの。今年で五歳になるわね」

「へぇ~。私の娘はセリエって名前でね。三歳になったよ」

「きっと、貴方に似て可愛らしいんでしょうね。今度、娘を連れてホツリ村に遊びに行ってもいいかしら? うちの子がセリエちゃんとお友達になれたら、嬉しいのだけれど」

「ぜひぜひだよ~。あの子もきっと喜ぶと思う」

 

 

 取り留めのない会話であったが、お互いに小さな娘を持つところから共通の話題がいくつも続き、しばし楽しい時間を過ごせた。

 もっとも、ハンターとしての見識や技量は確かなヴァリエであったのだが、一人の母親としては、愛娘への愛情を除けば、家事にせよ育児にせよ、あらゆる生活能力においてカヤキスの足元にも及ばないのは事実であった。他ならぬヴァリエ自身がそれを痛感せざるをえなかった。話しているだけでみるみると両者の差を思い知っていくのだから。

 ハンターとして活動しながら、母親としてもそつなく両立させているカヤキスを、祝賀会が終わる頃にはすっかり尊敬の眼差しを向ける事になるヴァリエであった。

 

 そうして時間は過ぎ、閉会した頃には夜も更けてきていた。

 都市長マレーズが直々に用意してくれた客室には、天蓋付きの上質な素材で作られたのであろうベッドが置かれ、シーツは手触りの良いリネン製、枕も布団も羽毛が敷き詰められており、ふかふかであった。

 汚れを落とせるようにと、お湯まで使わせてもらったヴァリエは、久方ぶりに一人で身体を広げて眠りに就いた。

 翌日、同じように休んでいたのであろうホツリ村の面々と共に、彼女は帰路へとつくのであった。

 

 

 


第11話

【>>ж・ 二年間の歳月 ・ж<<】


 

 

 

 ユーリアでの戦いを終えてから、あっという間に二年の歳月が過ぎた。

 

 その間、ヴァリエやその家族はもちろん、ホツリ村の面々にも少なくない変化が生じていた。

 まず、あの戦いで最も活躍し、竜姫の異名を再び広めてしまったヴァリエ。

 これまでの生活に対し、もっとも変化が生じたのは彼女であろう。

 

 

「まーた、ヴァリエをご指名の依頼が来てるわね」

「今度は何さ? ……リムルの森にドボルベルク? あんなでかいの出てくるんだ、あの森」

「そうみたい。木材を伐採しようにもドボルベルクが縄張りを広げてるみたいで、作業が満足に進まなくて困るといった内容みたい」

「まぁ、私にとってはやりやすい相手だけどさ」

 

 

 ハンターズギルド、兼、酒場にて。

 カウンター越しにアイナから依頼書を渡されたヴァリエは、小さく息をつきながら依頼の内容を確認する。

 

 この二年の間に、ヴァリエがハンター業を不定期ながら再開した。

 竜姫が活動を再開したのだと、情報が広まっていくにつれ、ヴァリエを指名する依頼が届くようになってきたのである。

 当初はまことしやかな噂程度にしか受け取られていなかったのだが、段々とその噂が誠の真実であると分かっていくにつれ、厄介そうな依頼がいくつも舞い込んできた。

 ヴァリエであれば、確実にこなしてくれるであろうとの期待が込められているのは、切実な内容がほとんどである事からも明らかだった。

 

 以前はしょっちゅうみられた、貴族関係のどちらかといえば交流目的の依頼に関しては、アイナがそれとなく理由をつけては断ってくれたのがせめてもの救いだろうか。

 国外はもちろん、国内でもあまりに離れた場所へ赴く内容の依頼はヴァリエ自身が断った。あまりに長く村を空け、セリエと離れるのを嫌がったからである。

 

 とはいえ、厳選しても残っているのは難易度の高い依頼である。

 ヴァリエを指名してくる時点で、生半可な依頼などほとんど存在しないのだ。

 ホツリ村の面々ならばこなせなくもないのだが、確実に依頼を達成できる事を期待すると、やはりヴァリエに指名が集中するのだろう。

 ともなれば、無下にもできない。

 

 ペースは現役時代のそれに比べればまだまだ時々レベルであったが、ヴァリエは数カ月に一、二度は依頼を受けるようになった。

 そうなると夫であるシュタウフェンが家の留守を守りつつ、家事をこなしたり、セリエの育児を担うのだが、シュタウフェンも不在となる事がある。

 両親不在となる際には、愛娘のセリエを一人にしておけるはずもない。彼女はまだ五歳なのだから。

 だがそうなれば、隣家のネインツェル家で預かってもらう事に自然と多くなってしまう。

 もっとも、セリエ自身はネインツェル家の面々との付き合いも深く、今となっては第二の家族同然の間柄だ。

 ヴァリエとしても、親友であるティルテュであれば、申し訳なさはありつつも、安心して預けられた。

 

 そのネインツェル家にも大きな出来事があった。

 第二子の誕生である。

 

 

「クロちゃんもお姉ちゃんかぁ。頑張らなくちゃだ」

「うん! 私、頑張ります!」

 

 

 ヴァリエの何気ない声に、張り切った声で答えるクローチェであった。

 クローチェの小さな両手に収まるほどの、さらに小さくか細い存在。

 ネインツェル家の第二子は、リーズディスという名の女の子であった。のちに彼女は愛称のリィズで呼ばれるようになる。

 クローチェにとって妹にあたるのだが、元々セリエの事も妹に等しい存在とみなしていたから、二人目の妹が誕生したような感覚であったらしい。

 

 セリエにとっても、妹のような存在であった。

 彼女も五歳となり、一人で外へ遊びに行くことも増えたが、その都度ネインツェル家に寄っては、幼いリーズディスの顔を見に行っていた。

 小さいうちから姉代わりのクローチェや、慈しむべき妹のようなリーズディス、それに母親としての見本ともいえるティルテュらネインツェル家の面々と関わってきたからだろうか。

 お転婆を極めつつあった母に比べると、セリエも活発な性格ではあったのだが、比較にもならぬほどに落ち着いた性格に育ったように余人には思われた。

 

 クローチェも七歳となり、父親の仕事である装飾加工の手伝いをするようになったのも、一つの変化だろう。

 彼女は真面目で集中しやすい性格をしており、さらに要領も良く、手先も器用であった。

 まだ幼いのだが、簡単な装飾品くらいは任せられるようになったらしい。

 

 家業の手伝いといえど、父親はしっかりと賃金は支払う主義であり、少なくない小遣いが得られる事はクローチェにとっても悪くない事であった。

 ただその分、可愛がっているセリエやリーズディスと関わる時間は減ったし、村の友人達と遊ぶ時間も減ってしまったのが少なからぬ悩みではあったが。

 

 

「竜姫さん、セリエちゃん、こんにちは~」

 

 

 遠路はるばるヒュルックから、カヤキスが遊びに来るようになったのも、一つの変化だろう。

 半年に一度くらいのペースで、娘と共にホツリ村へと遊びに来るようになったのである。

 

 娘の名前はラキシスといった。

 セリエより二歳ばかり年長であった。つまり、隣家のクローチェと同年齢である。

 

 まだ幼いながらも、既にその顔立ちは整っているといってよかった。

 母譲りなのであろうか、勝気で負けん気の強い表情が印象的な少女だった。

 

 とはいえ、カヤキス同様に面倒見が良く、世話焼きな性格らしく、ラキシスは初対面で会うなりから年少のセリエの世話を焼きたがった。

 クローチェが落ち着いたお淑やかなお姉さんであるとするなら、ラキシスは活発で行動的な自信に満ちたお姉さんであっただろう。

 二人でホツリ村の中を散策し、数時間もして帰ってきた頃には、すっかりセリエの方がラキシスに懐いていたのである。

 

 その話を聞いた時、面白くなさそうにしていたのがクローチェであった。

 この時は、普段主張しないクローチェが珍しく、不機嫌な顔を浮かべて、自分こそがセリエの真の姉である*2と主張して憚らなかった。

 縁がないのか、ラキシスとクローチェの二人が邂逅する事はついぞなかった。

 しかし、セリエが「ラキ姉ちゃんと遊んだ!」と言った日からしばらくは、クローチェが仕事の手伝いも減らし、セリエから離れない日が続くから分かりやすい。

 

 

「おい、俺もA級クラス・エースだぜ。見たか、ヴァリエ!?」

「おー、やるじゃん。ギィ。じゃあ、私もG級クラス・グレートなるかぁ~」

「けっ。そう簡単になれっかよ」

「私ならいずれはなれるかもよ?」

「…………」

 

 

 ホツリ村のハンター達でいえば、ギースカス・ハールがついにA級クラス・エースへと昇格を果たした。

 

 これでホツリ村にはA級クラス・エースが二人在籍となる。一介の農村には過剰すぎる戦力である。ただでさえ、人口数百人程度の小さな村にハンターが何十人も拠点としているイレギュラーな村なのだ。

 もっとも、ギースからすれば、幼少の頃よりライバルとみなしているヴァリエに追いつき、追い越すための努力を欠かさずにいたがゆえの結果であった。

 しかし、当のヴァリエは時々の狩りでブランクをほとんど取り戻しており、ともすれば本当に人外魔境のG級クラス・グレートへと到達するかもしれない、そう思わせる何かがあった。

 狩りに赴けば必ず勝利し、必ず無傷で帰ってくるのだから。

 常人には真似するどころか、同じことをしようと考える事でさえもおこがましいであろう。

 

 これ以上、差を広げてなるものかとギースの依頼受注のペースは速くなる一方であった。

 だが、そもそもがヴァリエに追いつこうと思える事自体、他のハンター達からすれば驚くべき思考であったといっていい。

 常人からすれば、あの竜姫と差を縮めようと思う事自体、ばかばかしく、おこがましいとさえ感じるほどに、差は歴然としていたのだから。

 悲しい事に、階級が上がれば上がるほど、強くなればなるほど、彼女との差がより鮮明に、明確に見えてしまうのだった。

 実力主義にとって、誠に生きづらい世界である。

 

 とはいえ、そうした人々の心境等を気にしないのであれば、まずまず平和な二年間であった。

 ヴァリエの元に舞い込む依頼内容を思えば、決してルクレイア南部が安全であるとは言い難かったが、少なくともホツリ村は依然として平和そのものである。

 そうでなくとも、ホツリにやってくる依頼のほとんどが、指名でもない限りは瞬く間にハンター達が取り合っている有様だ。

 依然として、需要と供給のバランスが取れているのであった。

 

 

「アイナ、また依頼?」

「いえ、貴方には先に伝えておこうと思ってね……」

「なんだか、煮え切らないなぁ」

 

 

 だが、平和な時間は裏を返せば二年間だった。

 セリエもそろそろ六歳を目前としていた頃に、暗雲が静かに立ち込めつつあった。

 

 ホツリ村の酒場、兼、ハンターズギルドの支部にて。

 かつてはユーリア会戦の際、作戦会議の場として使った記憶のある応接室。

 その応接室の中、アイナが一枚の書類を手にし、彼女にしては珍しく言うべきか迷った様子を見せたが、暫し間を置いて口を開いた。

 その声はいつも通り、抑揚のないそれであった。

 

 

「マスター・ヴェルラーが亡くなったわ」

 

 

 

第11話【二年間の歳月 終了】

*1
誤用とは分かってますが、他の言い方が思いつかなかったのご容赦くださいませ。

*2
一応注釈しておくのだが、どちらも姉ではない。


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