ACE COMBAT ZERO-Ⅱ -The Unsung Belkan war- 作:チビサイファー
あれから一年が経ちました。ベルカ事変の混乱は徐々に落ち着いて、オーシアとユークトバニアの両国は復興を開始し、ベルカもそれに大きく関わって三国での結束を強めることを約束し、新しい同盟を作るべく、話が進行しています。
それに伴ってヴァレー空軍基地の潔白も証明され、ベルカ事変を誘発した過激派残党の大半は拘束。ベルカ公国もようやく新しい時代に向けて動き出せたそうです。
私たちの生活も、大きく変わりました。まず、私小早川ゆたかは民間の航空管制官になるために現在勉強中です。一応、戸籍上は死んだ扱いにされてましたが、ハーリング大統領の計らいでなかったことになりました。もちろん、スザクさんたち傭兵組も。おかげで就職には困らないです。家族にはとても心配されましたけど。
みなみちゃんも、民間旅客機のパイロットになるそうです。技術はあるから一応問題ないみたいだけど、E-2Dの先輩には残ってほしいといわれたそうで。私としてはこんなにころころお仕事かえちゃっていいのかな? って思ってます。でも、みなみちゃんは「ゆたかが行くなら私もいく」としか言ってくれません。もっと自分のことを考えてもいいと思うんだけどなぁ。
航空母艦ヴァレーは、ユージア大陸に戻ってどこかを航海してるみたいです。一応存在は公にしていないテストヘッダー艦なので、その後のことはあまり聞いてません。でも、こなたお姉ちゃんは相変わらず乗ってるみたいで、たまにお手紙が届きます。手紙におうちに帰らないと、叔父さんが心配すると思うなって送ったら「お父さんうざいからいいや」と返事がきました。お姉ちゃんらしいです。
次にやまとちゃんについてです。やまとちゃんはあれからユージア大陸に戻って、ノースポイントの空軍基地で整備士を引き続きやっているそうです。ヴァレーに来てから腕はめきめきと上がったみたいで、18歳にして主任資格を取ったそうです。すごい。今も連絡はたくさんしていて、チャットやテレビ電話で彼氏の愚痴を言ったりしています。
その彼氏が、スザクさんです。めでたくあの二人は結ばれて、毎日楽しそうにしています。なんでわかるかというと、二人の愚痴や惚気を私が受けているからです。やれこうされて可愛かったとか、やれ兄さんがたまにイケメンに見えるとか、全部私に来ます。なんででしょうか。ちなみにすっかり慣れてしまったのか、未だにやまとちゃんはスザクさんのことを「兄さん」と呼んでいるそうです。そのうち「あなた」になるんでしょうね。
そんなスザクさんは、やまとちゃんと同じくノースポイントで訓練教官として飛んでいます。あの最終決戦の後、スザクさんは右目の視力を失い、右腕が動かなくなってしまいました。腕はリハビリで操縦できる程度には戻したそうですが、目だけはどうしようもなく、T-4練習機でアグレッサーをしています。本人、「眼帯ってかっこいいよな」と言ってまんざらでもないそうです。ちなみに、やまとちゃんは言うまでもなく、スザクさんの機体を整備しています。
にとりさんは、戦いの後ベルカ公国から栄誉国民勲章を授与されました。その際国籍を戻すこともできるといわれたそうですけど、にとりさんは今オーシアの田舎町、シンリアで自動車整備士として働いてます。そう、サイファーさんについて行ったんです。時々サイファーさんの個人所有のF-14を整備しながら、ひっそりと自動車やバイクも整備してるそうです。ただ、サイファーさんの機体を整備するとき「なんであいつは整備が大変なF-14を買ったのか、しばきたい」と言ってました。仲がよろしいことでよかったです。
如月姉妹の妹、夏芽さんは長い休暇を取って同じくシンリアに住んでいます。今家族が帰ってきて楽しいそうです。平和になって家族が帰ってくる、これほどうれしいことはないでしょう。私もちょっとだけ家族が恋しくなりました。
そして。サイファーさんと海里さんは毎日死亡フラグを立てたおかげで無事、結婚を迎えました。もちろんヴァレーメンバー全員で祝福です。ブーケトスは争奪戦で、なぜか私がキャッチしちゃいました。残念ながらお相手はいないんですけどね。そう言ったらみなみちゃんが複雑そうな顔をしていました。何でだろう?
二人に子供は作らないのかと聞くと、「しばらく二人きりの時間を過ごしてから」と言ってました。5年ってけっこうきついですね。海里さんのお父さんは「早く孫が見たい!!」と泣きついて、お母さんのげんこつが落ちるやり取りが面白かったです。
現在海里さんは専業主婦として家事をこなし、サイファーさんはフリーで飛行機乗りをやっています。必要があれば、エアショーに出たりして観客を盛り上げてるそうです。私も一度見たことがありますけど、管制塔至近距離を飛ぶのはやめてほしいです。おかげでコーヒーこぼしたんですから。
みんなとても元気で、毎日平和に過ごしています。そしてこれから半年ぶりに、ヴァレーのみんなと会ってきます。集合場所は、ヴァレー空軍基地のバー、「らき☆すた」です。今私はにとりさんが用意したチャーター機の中で、ヴァレーに向かいながらこの日記を書いてます。窓の外にはサイファーさんと海里さんが乗ったF-14、その向こうにはスザクさんとやまとちゃんが乗ったT-4が飛んでいます。半年ぶりに見るお二人は、ここからでもよくわかるくらい元気そうでした。
反対側を見ると、ヴァレー空軍基地からのお迎えの航空隊が私たちをエスコートしています。同窓会みたいで、この後がとても楽しみです。
どうかこの平穏が、いつまでも続きますように。
2011年12月30日 小早川ゆたか