遊戯王部活動記   作:鈴鳴優

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023.独りが嫌だから

 

 晃や涼香たちの教室である1年2組の教室に来ていた。

 勿論、決闘を行うためである。

 

 まだ、この学校の生徒と言うわけではない有栖は教室に入るにしてもおどおどとした表情で恐る恐る入っていく。例えて言うならば、下級生が上級生の教室に入るような感じだ。

 

「ここがオレの机だ……それじゃあこれと前の席を借りて始めるか」

「……う、うん」

 

 コクリと頷いてくれた。

 机一つ分では、カードを広げきるスペースが無いため前の席をくっつけることで2倍のスペースを確保する。晃が自分の椅子に座り、有栖はその前の席の人物の椅子を借りてちょこんと座った。

 

 晃は、自分の鞄からデッキを取り出し有栖もまた可愛らしいポシェットからデッキを取り出して机の上に置く。

 

「じゃあ決闘(デュエル)だ」

 

 お互いデッキをセットし5枚の手札を引く。これで決闘の準備は万端のはずだったが、いまだ肝心なことを決めていなかったことに気付いた晃がいた。

 

「あ……そういえば先攻、後攻を決めてなかったな。とは言え何かを賭けてるわけじゃないし、そっちが先攻でもいいけど」

 

 今日の朝には、涼香たちと制裁を受けるかどうかを賭けていたのを思い出してしまった。とはいえ、決闘で全てを解決するアニメや漫画じゃあるまいし遊戯王で何かを賭ける方が

珍しいケースだろう。

 

「うん、お言葉に甘えるね。わたしのターンから行くよ」

 

 そう言いながら彼女は小さな手でそっとカードを引く。

 どうにも同じ部で女子の涼香や茜と比べると丁寧にカードを引くような印象を受けた。

 

「モンスターカードを1枚出して、ターンを終了……するよ」

 

 最初は堅実に情報すら与えずにターンを終えた。初見であるか、無いかだけでもこのプレイは大きく違ってくる。相手の手の内がまったく見えない内は下手に動くことができないからだ。

 

「んじゃ、オレのターン。まずは《武神─ミカヅチ》を召喚」

 

 手札には《強欲で謙虚な壺》などのカードが来なかったが、代わりの武神として《武神─ミカヅチ》が手札に来てくれていた。攻撃力ならむしろこちらの方が上、様子見をするには十分のモンスターだ。

 

「バトルフェイズ。《武神─ミカヅチ》で攻撃だ!」

「うん……」

 

 有栖が場に伏せていたモンスターを表へと返す。

 イラストには、彼女のイメージにピッタリだと思える緑色のポニーテールの少女の姿が映ったモンスターカードだった。

 

「わ、わたしのは《ガスタの巫女ウィンダ》。守備力400だから、破壊されちゃうけど効果を発動する……から」

 

 《ガスタの巫女ウィンダ》は相手モンスターの攻撃によって破壊されるとデッキからガスタのチューナーを呼び出す効果を持つ。所謂、リクルーターでありガスタのデッキの性質上、戦線を支えるカードでもある。

 

「《ガスタ・ガルド》を守備表示で特殊召喚するね」

 

 今度は、破壊効果を含め破壊されたときにレベル2以下のガスタを呼べるリークルーター第二段だ。ステータスは低くともリクルーターで固められたデッキ守りを主体に相手を切り崩して行くデッキ。それが【ガスタ】の特徴だ。

 

「メイン2。手札の《武神─ヤサカニ》の効果を発動、手札から墓地へ送ってデッキから武神と名の付く《武神器─ハバキリ》を手札に加える」

 

 《武神─ヤサカニ》はメインフェイズ2にのみ発動できるという珍しい効果を持っている。デッキから武神と名の付くモンスターのサーチを行い、武神と名の付いた魔法、罠以外がターン中に使えなくなるデメリットもあるが、このターンは魔法、罠を使う気がないから問題は無いのだ。

 

「カードを2枚伏せて、エンドフェイズ。このターン《武神─ヤサカニ》が手札から墓地へ送られたため《武神─ミカヅチ》の効果でデッキから武神の魔法か罠である《武神降臨》を手札に加える」

 

 しかも、《武神─ミカヅチ》との相性が抜群だ。

 サーチ効果のために使用したコストのおかげでサーチ効果が使えるのだ。

 

「さて、風戸さんのターンだ」

「う、うん……わたしのターン」

 

 カードを引き再び最初のターンと同じ6枚の手札からどのようなカードを出そうかと迷うように首を捻っていた。迷うこと5,6秒にして有栖は今度は1枚のモンスターカードを表側表示で召喚する。

 

「えーと、《ジャンク・シンクロン》を召喚」

 

 白いマフラーを纏ったオレンジ色を基調としたボディの機械族っぽい戦士族モンスターだ。遊戯王5D’sの主人公〝不動遊星〟が扱うチューナーモンスターであり1体からシンクロ召喚を扱えるその使い勝手から【ジャンクドッペル】などのデッキが活躍するほどである。

 

 効果は、召喚時に自分の墓地からレベル2以下のモンスターを効果を無効にして表が守備表示で特殊召喚するのだ。丁度前のターンでレベル2のモンスターが墓地へと送られている。ちなみに、攻撃力1300と《奈落の落とし穴》に引っかからないのも一種の強みだ。

 

「こ、効果でウィンダを特殊召喚するよ……」

 

 当然と言えば当然だ。

 並ぶのはレベル3チューナー2体とレベル2モンスターであり、必然的にレベル5のモンスターが召喚できる状態だ。中でも《A・O・Jカタストル》や《TGハイパー・ライブラリアン》など有用なカードもいる上、《ガスタ・ガルド》もいる現状繋ぎでレベル8モンスターまで出せるとなれば打開策が無いわけではないだろう。

 

「…………」

 

 有栖は、どうするか迷うかのように少しの間身体を硬直させていた。

 いや、戦術云々よりもこの先の在り方を迷う様な感じで彼女は、震えたような声で宣言した。

 

「……ターン終了だよ」

「えっ……!?」

 

 思わず声を出してしまった。

 あの場面ならば例えば《A・O・Jカタストル》で《武神─ミカヅチ》を葬ることができるし、無くてもレベル8には数多くの有用なカードが存在する。例え手札に《武神器─ハバキリ》を握ってはいても、それを突破したり対策となるカードも無い訳ではないのだ。

 勿論、そのようなカードを持っていないという可能性も無いわけではないものの、それならばこの場面で《ジャンク・シンクロン》を召喚するだろうか?

 

 今の有栖のプレイングには、初心者である晃とて違和感バリバリであった。

 

「まあ……それでいいのなら、オレのターンだ」

 

 それでも決闘は続行させる。

 彼女の場には3体のモンスターが並び、そのうち2体はリクルーターである。魔法、罠を伏せていないにせよ守りが固いと思われるが晃のデッキとは相性が悪いとも言えるだろう。

 

「ならオレは、《武神─アラスダ》を召喚し、2体の武神でエクシーズ召喚だ。顕現せよっ! 《武神帝─スサノヲ》ッ!」

 

 高らかに召喚宣言をする晃のエースモンスターには、武神をサーチしたりする効果と珍しくエクシーズ効果を用いずに扱える全体攻撃の効果があるのだ。1ターンに複数回攻撃をできるその効果は、リクルーターで呼び出されたモンスターにさえ攻撃が可能のため呼び出しても根こそぎ破壊していけるだろう。【ガスタ】なら墓地を肥やせるメリットにもなりうるが、【ライトロード】などの爆発的な威力は期待できない。

 だからでこそ、《武神帝─スサノヲ》を出されたのを見て有栖は怯えたような声と表情で震えていた。若干、涙目だ。

 

「うぅ……全体攻撃モンスター……」

「なんか罪悪感が……いや、まあ……悪いけどいつも通りにいかせてもらう。エクシーズ素材を1つ取り除くことでデッキから《武神器─ヘツカ》を墓地へと送り、バトルフェイズに入る」

 

 これで現在、ハバキリとヘツカのサポート効果が扱える状態だ。

 攻撃力上昇と対象効果の無効が組んだ今、そうそう《武神帝─スサノヲ》を破壊する事はできない。

 

「まずは攻撃表示モンスター《ジャンク・シンクロン》を攻撃する」

「……うん」

 

 そのまま、すんなりと攻撃が通った。

 攻撃力差は1100と彼女のライフが6900へと減る。《武神器─ハバキリ》を使えばさらに2400追加の3500までの大ダメージとなるが、この場では温存することを決めていた。

 

「さらに《ガスタ・ガルド》へ攻撃。効果は使用するか?」

「う……ううん、使わない」

 

 首を横に振って効果は発動させないと語る。

 なんとなくここでも違和感。例え全体攻撃モンスターが攻撃を行ってリクルーターを倒してもモンスターを特殊召喚して墓地を肥やしたりするものだ。それに彼女のガスタならば《ガスタ・サンボルト》のようにリクルートするタイミングが遅れた効果を使えば場にモンスターを残したりすることができるだろう。

 ただし、後者については晃はまだ知らない。

 

「それでいいなら、次にウィンダへと攻撃する!」

「う、うん……ウィンダも、効果は使わない」

 

これで全滅だ。

 とは言え、何故か違和感が残るばかりだ。

 

 何か策があるのか、それとも──。

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ」

「う、うん……わ、わたしの……番、だね」

 

 有栖がデッキへと手を伸ばすが、この時の彼女の手は怯えているかのように震えているのだ。否、実際に怯えている。きっとこれが、違和感の正体なのかもしれないと晃は感じる。

 そのまま、彼女はデッキへと手にやりカードを引こうとするが──。

 

 

 

「──悪いな、そこまでだ」

 

 

 

 その手は、第三者によって止められた。

 晃とて見知る人物、遊戯王部部長の新堂創だった。

 

「って、部長!? 帰ったはずじゃ……なんでここに?」

 

 晃がここにいるはずの無かった人物を見ては驚きの声を上げる。なにせ部活が終わった後は、全員がそれぞれ学校の昇降口へと向かって帰ろうとしていたのだ。晃とて帰宅しようとしたが、帰り道の途中で忘れ物を思い出して取りに戻ったためここにいる。

 それを、創は軽く笑いサムズアップしながら冗談っぽく答える。

 

「ああ、実は俺には半径1㎞以内の中なら決闘(デュエル)の気配を探ることができる特殊能力があるんだ。気配を辿って今に至るってとこだぜ!」

「マジっすか!?」

 

 新堂創という人物は、一言で言えば決闘馬鹿だ。

 常に遊戯王を楽しむというスタンスに加え、野生の獣の如き直感を取り入れたプレイスタイルを駆使して戦う。遊戯王部を賭けた氷湊涼香との勝負や、廃部を賭けた二階堂学人の決戦でさえ楽しむかのように戦うなどある意味常識外れの人物。そんな彼ならば決闘の気配を探るなんて、本当にやってのけてしまえると思えるからでこそ恐ろしい。

 だが、彼は軽く肩を落としながら申し訳ないかのように語った。

 

「あぁ、わりぃ、冗談だ」

「そ、そうッスか……いや、部長のことだから本気で──」

「実は……半径500mまでぐらいしか察知できないんだよ」

「そっちっ!?」

 

 冗談というのは見えを張って倍の距離まで察知できると語っていたことだった。

 どうやらおそろしいことに本当に出来てしまうらしい。

 

 まるで漫才のようなやり取りを行う二人を有栖は、ぽかんとした表情で見つめていた。ちなみにだが、どこからどう見ても創がボケで晃がツッコミだろう。

 

「そんなことはさておき、ほんと悪いな。本来なら決闘を邪魔するなんてしたくなかったが、あまりに似てたからな、つい止めちまった」

「似てる……ッスか?」

 

 何だろうと疑問に思いながら首を傾ける晃。

 それを、何か含みがあるかの様に創は、まだ名前も知らないであろう少女である風戸有栖へと視線を移す。突然、視線を向けられたことに困惑したのか有栖は『ひゃ!?』と小声で驚くような声を上げた。

 

「なんつーかさ、あんたの目がさ……似てるんだよ。生徒会長とさ」

「え゛っ……生徒会長、ッスか……?」

 

 ありえないと思ったのだろうか。

 晃は驚きのあまり裏返った声を上げてしまった程である。

 

 生徒会長、二階堂学人は一見、眼鏡の堅物という印象であるが、その眼光は鋭く睨まれでもすれば背筋が凍るかのような寒気を覚えるほど攻撃的な目だ。対して、有栖は鋭さとは無縁の丸っこい小動物を思わせる小さな目だ。敵を威圧することなど出来そうも無く、むしろ癒しを与えてしまうだろう。

 

「い、いや……部長、さすがにそれは無理があるんじゃないッスか……?」

「ん、ああ、別に目つき云々じゃないぜ。俺が言ってるのは、その奥……本質的なもんだぜ」

 

 などと語るが、本質的なものだと言われてもピンと来るはずもない。

 じっー、ついつい彼女の目を見つめてしまったものの、またしても『ひゃう!?』と驚きの声を上げて視線を逸らされてしまう。

 

「わかりやすく言えばさ、前に俺が生徒会長と戦ったときの事を覚えてるか?」

「それは、まあ……」

 

 それ以前に生徒会書記の初瀬小桃に1ターンキルを受けたことがあまりに印象的で、その日のことは忘れられない。とりあえず、彼が嫌いなカードを上げると真っ先に《終焉の王デミス》が出てくるだろう。

 

「あんときの生徒会長がさ、どうしても遊戯王から怯えるような顔をしてたんだぜ。まるで逃げ出したいとでもいいたげな目でさ……はっきりと覚えてる。なんとなくだけどさ、あんたもそんな顔をしてたと俺は思うんだけどな」

「ひぅ……」

 

 まるで図星を当てられたかのように身を縮める有栖は、身を震わせていた。今、この場で彼女が本当に怯えているように見えた。それでも、今の創はどうにも容赦が無い。怯える彼女に対しても遠慮なく次の言葉を述べるのだ。

 

「単刀直入に言うけどさ。あんたは、今遊戯王が全然好きじゃないだろ?」

「…………」

 

 ほんのわずか、注視していなければわからないであろうぐらいに小さくコクリと頷いていた。申し訳なさそうに顔を表情が見えないぐらいに俯かせながら彼女は語る。

 

「わ、わたしは……独りが嫌だから」

「独り?」

 

 それがどういう意味かは良くわからない。

 けれど今の彼女は涙ぐんでおり、まるで思い出したくない出来事を思い出してしまったかのように震えた声で語っていたのだ。

 

 

 

 + + + + +

 

 

 

 翌日の放課後。

 

 カッ、カッ、カッとキーボードを高速で叩く音が聞こえる。

 すでに日が落ち暗がりが空を包むほどの時刻の中、遊凪高校の生徒会室では3人の役員と実質、一人の部外者がそれぞれ席に座ったり壁に寄り掛かったりと待機しているのが見える。

 そのうちの一人である小柄な黒髪の少女、生徒会書記である初瀬小桃がずっと細い指でキーボードを叩いていたのを止めた。

 

「あ、あのー、ご、ごめんなさい……情報が出ました」

「何故、謝るのだ……」

 

 彼女が生徒会に所属したのは、今年の4月からそれも現生徒会長の二階堂が直々にスカウトした人材である。いまだ入って2カ月程度であるのだが、その働き様は十分であるものの、ことあるごとに謝るのはどうにかしてほしいと思う。

 

「ははっ、別にいんじゃねーの。そういうのも小桃ちゃんの個性だし、可愛いよそう言うの。むしろ好きだよ。嗜好にしても恋愛にしてもさ」

 

 などと、軽々しく愛の告白を語るのは生徒会にあるまじき金髪にピアスをつけた男である副会長の椚山堅だ。その姿は高校デビューによるものであり、大の女好きで敵に回す人物も多いが、いざという時であれば人望があるとかないとか。

 

 彼もまたパソコンと向き合い何やらデータを整理していた様だ。

 そんな中、ここで唯一の部外者とされる遊戯王部部長、新堂創が先ほどまでパソコンと向き合っていた初瀬に対して問う。

 

「で、情報が出たんだろ。早く教えてくれねえか?」

「は、はいぃ……ごめんなさい!」

 

 などと言いながら、グルリとデスクトップパソコンの画面を回しては創たちへと見せるように向ける。Wordフォルダにまとめていたためか、テキスト文章で時に箇条書きであったり、経歴だったりと文章がずらりと並べられていた。

 

 そして最後の一人、生徒会長の二階堂が隣で画面を除き込む様にみる創に対して忌々しいと言わんばかりに睨んでは語る。

 

「ふんっ……貴様は、急に生徒会室に来たと思えば転入生の情報がもっと欲しいとか。そもそも生徒会とはいえ、さすがにそこまで一個人の生徒を調べ上げるのは規則違反だと知らんのか? 生徒会は探偵とは違うんだぞ」

「あぁ、悪い悪い……けどさ、実際に会って話をしちまったんだから、どうしても気になってさ」

「……ふん、部を潰そうとした借りだ。今回だけだと思っておけ」

「すまねえ」

 

 などと軽く頭を下げた。

 腕を組み、ふんっ、と軽く悪態を付く二階堂であったが彼はこれ以上嫌みを言わない。

 

「え、っと……風戸有栖さん。ですよね? 彼女の情報といえば、出身校と当時の成績、評価に身長体重、スリーサイズ……後はツテを使ったのですが、昔の彼女の人なりぐらいしか調べられませんでした。ごめんなさい」

「十分だ。それよりも、むしろ要らん情報まで集めてるぞ!?」

「……ご、ごめんなさい」

 

 またしても頭を直角ほどに下げていた。

 しかし、それを聞いて『いやいや……』と宥める椚山がいた。

 

「いいや、むしろ重要な情報だな。というわけで、小桃ちゃん……後でこっそり、その転入生とやらのスリーサイズを教えてよ。ついでにキミのも──カハッ!?」

「……丸聞こえだ」

 

 気がつけば、椚山が座っていた椅子を二階堂は蹴り飛ばしていた。

 バランスを崩し地面へと叩きつけられた椚山を見ては、このようなやり取りは、創が所属する遊戯王部になんとなく似ているのではないかと彼は、かつての先輩であった二階堂学人の新たな居場所を見ては笑う。

 

「じゃあさ、遊戯王関連の情報は無いのか?」

「あ、あります。そ、その風戸さんは……小学生のときに大会への出場は無いですが、学校の時中のグループで一番強かったと聞きました」

「そんな情報、どこから持ってきたんだ……つーか一日でこれかよ、凄えな!?」

 

 いくらインターネットであらゆる情報を取り寄せることができる情報化社会とはいえ、一個人のプライバシーまで調べることなどできないだろう。さすがに、ここまで来れば本当に探偵をやっていけるのではないかと創は驚愕する。

 

「ふふ、小桃ちゃんの集めた情報に根回しして俺が当時の彼女のクラスメイトや知り合いから聞いたんだ」

 

 などと得意げに携帯電話をちらつかせてみせる椚山。

 どうにもパソコンで調べられない部分は他から聞きあたってみたようだ。

 

「とはいえ、あまり面白い話でも無いから多くは語らないよ。わかりやすく言えば、強いあまり仲間はずれにされて孤立していた。悪い言い方を言えば苛めとでも言えばいいかな?」

「苛め……な」

 

 さすがに、創もこの場を聞いては笑ってはいられない。口元に手を当てながら考えるかのように顔を歪めていた。

 

「どーにも、面倒くさいことになってきたなぁ」

 

 本当にめんどくさそうに頭を掻きながら創は、生徒会室から見える暗くなった空を見あげていた。これからどうするかと、考える様に。

 

 

 

 


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