●新堂創 LP5800 手札5
□unknwon
■unknwon
■《リビングデッドの呼び声》(対象:無し)
●二階堂学人 LP2000 手札4
□《時戒神メタイオン》
■unknown
■unknown
<終焉のカウントダウン カウント12>
「ふん、僕のターン。スタンバイフェイズに《時戒神メタイオン》がデッキに戻るがもう用済みだ」
一体の巨大な機械仕掛けの天使族モンスターがデッキへと吸い込まれて行く。
無敵と称された壁モンスターであったが彼が言った通りバウンスを目的としていたために役目としては十二分に果たしたと言えよう。
「《カードカー・D》を召喚。効果によりリリースし2枚をドローする」
カードカー・D
☆2 ATK/800
《時戒神メタイオン》と同様に前の2回戦で椚山が使用したカードだ。
彼らのデッキコンセプトは勝つために特化する事。そのために普通のビートダウンでなくバーンや特殊勝利、1キルを狙うのであれ似かよう部分は見られる。
《カードカー・D》はドローソースとして禁止カードである《強欲の壺》と同等の効果を発揮する。その代償として、発動すれば即座にエンドフェイズに以降するが二階堂にはいまだ2枚の伏せカードがあるのだ。
「エンドフェイズだ。さて、貴様は己が正しいと証明するんだろう? 見せてみろ」
「言われなくても! 俺のターン、ドロー!」
「ふん、スタンバイフェイズに《魂の氷結》を発動だ」
「む……」
またもや発動した《魂の氷結》も攻撃抑制の1枚だ。
己のライフが相手より2000少ないときに発動でき、次の相手のバトルフェイズをスキップする効果を持つ。ライフの発動条件があるため《覇者の一括》や《威嚇する咆哮》に劣ると見られがちだが、2000のコストを必要する【終焉のカウントダウン】ではあまり気にしないで使えるかもしれない。これでまたこのターンの攻撃も行えない。
このまま、創は引いたカードを手札に加えるがこの中では二階堂の防御を破る手段はいまだ無い。
「まあ、それでも進めさせてもらうぜ。《
XX-セイバー フラムナイト
☆3 ATK/1300
レベル3チューナーの戦士族である女戦士のフラムナイトが場に現れる。
攻撃力1300と低いが表側表示のとき攻撃を1度のみ防ぐ効果に、守備表示モンスターを戦闘破壊できれば墓地のレベル4以下の“X─セイバー”を蘇生させる効果を持つ。ただし現在の状況ではどちらも扱えない効果だ。
肝心なのはチューナーである事。
「裏側の《XX─セイバーダークソウル》を反転召喚。そして、“フラムナイト”と共にシンクロだ!」
《XX-セイバー フラムナイト》が3つの光の輪となって《XX─セイバーダークソウル》を包み込む。輪から3つの星と“ダークソウル”から同じく3つの星が現れた計6つの星が一直線上に並ぶ。
「現れろ! 《
「む……」
XX─セイバーヒュンレイ
☆6 ATK/2300
場に現れる“X─セイバー”のシンクロモンスター。
シンクロ召喚時に魔法、罠を3枚破壊する効果は悪くない。だが、それよりも【終焉のカウントダウン】に有効である《ナチュル・パルキオン》が《時戒神メタイオン》のバウンスでエクストラデッキに眠っているのは皆が承知のはずだ。それなのに、“パルキオン”でなく何故“ヒュンレイ”なのだろうかと皆が思う。
「“ヒュンレイ”の効果だ! その伏せカードを破壊するぜ」
「いいだろう。そのまま通す」
「バトルフェイズの宣言をする……けど、《魂の氷結》でスキップされるからそのままエンドフェイズだ。墓地に行った《XX─セイバーダークソウル》の効果! デッキから2枚目の“フォルトロール”を手札に加える!」
終焉のカウントダウン13→14
手札に加えた《XX─セイバーフォルトロール》。
次以降のターンで大量の展開を狙うのだろう。それが創の目論見だと考えた二階堂は鼻で笑った。
「無様だな。攻めあぐねる事しかできないとは。僕のターン、手札を2枚捨て《魔法石の採掘》を発動! 墓地から《一時休戦》を手札に加えて発動する」
最初のターンで使った魔法カードだ。効果によりお互いカードを1枚ドローする。
これで次の創のエンドフェイズまでダメージは全て無効となりまたもや次のターンでダメージを与えられなくなってしまったのだ。
「さあ、貴様のターンだ」
終焉のカウントダウン 14→15
「俺のターン、ドロー」
これで残り5ターン。
創に残された3ターンであるが、彼は欲しいカードが来なかったのか引いたカードを手札に加えたまま場にカードを出す仕草を行わない。
「……ターンエンド」
「ふん、そろそろ観念したか」
終焉のカウントダウン 15→16
「僕のターン……2枚目の《ゼロ・ガードナー》を召喚しターン終了だ」
終焉のカウントダウン 16→17
今度は魔法でなく効果モンスターで攻撃を凌ぐつもりだ。
残りの創の2ターン。もうゴールは目前なのだ。
「……俺のターン、ドローだ」
これで創はこのターンでは《ゼロ・ガードナー》の効果を使われ攻撃は無意味と終わる。そして次のターンでも攻撃を防がれればそれでおしまいだ。もはや、決着ムードなのか周囲の観客たちは二階堂の勝ちを信じてやまない。ただ、それでも創はデッキトップに手を掛けた。
「驚いた。生徒会長……アンタ、遊戯王部で対戦した時よりも強く感じたぜ」
感
創が今告げた言葉を過去形で使ったのだ。
それが意味するのは、もうすでに決着がついたと彼も思ったからだろう。
この言葉を聞いては晃たちも思わず息を飲んでしまう。今だ二階堂には手札が5枚もあるのだ遊戯王としては十分といえる枚数を持つため逆に攻撃を通す方が困難だろう。
「ようやく貴様も認めたか──」
満足げに軽く笑う二階堂。
だが、創はその言葉を遮るのだ。
「いや、悪いけど俺の勝ちだ」
「何っ……!? 戯言を。だったら、やってみろ。スタンバイフェイズに《ゼロ・ガードナー》の効果を発動。このターンも僕へのダメージは0だ」
これで、このターンもダメージが通らなくなった。
次のターンで決着をつけなければ敗北する状況で創は今引いた1枚の魔法カードを発動させるのだ。
「常に切り札は、必要な時に来るってか? 俺は手札の《XX─セイバーエマーズブレイド》を捨てこのターン引いた《ワン・フォー・ワン》を発動。デッキからレベル1、《
XX─セイバーレイジグラ
☆1 DEF/1000
レベル1のカメレオンの剣士だ。
かつて氷湊涼香との決闘でも最後にこれを選択した事で勝利を収めたモンスターでもある影の立役者である。
「“レイジグラ”が特殊召喚に成功した事で効果発動! 墓地から《XX─セイバーフォルトロール》を回収だ!」
そう宣言しながら墓地から手札へと戻す。
これで前のターンに“ダークソウル”でサーチした1枚と合わせて手札に《XX─セイバーフォルトロール》が2枚存在する事となる。
「行くぜ! 手札の《XX─セイバーフォルトロール》を2体特殊召喚だ! 1体目の効果で墓地から《X─セイバーウルベルム》を特殊召喚するぜ」
やはり、二階堂が思い描いたような大量展開だ。
これで創の場は埋め尽くされた。このターンは攻撃が無意味でも次のターンで攻めきるつもりなのだろうか。だが、それは無意味だと二階堂は語る。
「ふん、最後の悪あがきか。だがそれは無駄な努力だ……僕の手札には《速攻のかかし》に加え、まだ《威嚇する咆哮》も握っている。次のターンの攻撃も無意味だ」
絶望的な宣告だった。
手札から直接攻撃を防ぎバトルフェイズを強制終了させる《速攻のかかし》にフリーチェーンで攻撃そのものをさせなくする《威嚇する咆哮》。たった2枚のカードであるがそれがあるだけでも次の1ターンで攻撃を通すのは絶望的だ
しかし、創は絶望しない。むしろ口元を釣り上げて笑みさえ見せたのだ。
「へぇ……けど、
XX-セイバー ガトムズ
☆9 ATK/3100
現れたのは【X─セイバー】で最高レベルであり最も高い攻撃力を誇り切り札としての存在を見せるモンスターである。実質、何のサポートもなく伝説の龍と称される《青眼の白龍》を倒せるという事を考えれば当然だろう。
《XX-セイバー ガトムズ》を見る二階堂だが、この場を見てある一つの状況を見出した。
「“ガトムズ”……っ、貴様まさかっ!?」
「ああ、そのまさかさ! 《XX-セイバー ガトムズ》の効果を使い《XX─セイバーレイジグラ》をリリースし相手の手札をランダムに捨てる一番左を選択するぜ」
「くっ……」
《XX-セイバー ガトムズ》の号令により《XX─セイバーレイジグラ》が光の粒子へと変貌し二階堂の手札の1枚を打ち抜く。ハンデス効果だ。これで二階堂の手札は4枚となるが。
「2枚目の“フォルトロール”の効果を発動! 今リリースした“レイジグラ”を蘇生し効果によりシンクロ素材にした《XX─セイバーフォルトロール》を回収する」
「貴様……」
「そして“ガトムズ”の効果をまた使うぜ! “レイジグラ”、2枚目の方の“フォルトロール”をリリースだ」
さらに2枚削る。
《XX-セイバー ガトムズ》の効果は1ターンに1度となるような制限はない。“X─セイバー”をリリースしてハンデスを行う効果は可能である限りいくらでも使えるのだ。
「まだ行くぜ! もう1度、回収した《XX─セイバーフォルトロール》を特殊召喚し“レイジグラ”を蘇生。効果でまた“フォルトロール”を回収する」
【X─セイバー】の無限ループだ。
《XX─セイバーレイジグラ》と《XX─セイバーフォルトロール》2枚をパーツとし1ターンに何度でも扱える“レイジグラ”、“フォルトロール”をリリースできるカードを使用する事で成り立つ。
《XX─セイバーレイジグラ》をリリースしては“フォルトロール“で“レイジグラを蘇生。”それで“レイジグラ”の効果を使用する事で2枚目の“フォルトロール“を墓地から手札に加える事で特殊召喚が可能となる。そして、1枚目の“フォルトロール”、“レイジグラ”をリリースしては2枚目の“フォルトロール”で“レイジグラ”を蘇生する。
かつて《マスドライバー》を用いる事で1キルコンボが行えるほどとなった事だ。現在では、《キャノン・ソルジャー》で可能だがコンボ以外でシナジーも薄く扱う事は少ないが《XX-セイバー ガトムズ》を用いれば相手の手札を全て捨てさせる事が可能である。
「これで最後、“レイジグラ”、“フォルトロール”をリリースするぜ」
「っ……手札が……」
これで5回の《XX-セイバー ガトムズ》の効果を使用した。
二階堂の5枚もあった手札は0となったのだ。《速攻のかかし》等のカードがあったとしても手札や場に無ければ使用できず墓地に送られた今、それらは無意味となった。
それどころか二階堂の場、手札にはカードが1枚も無い。
「ターン終了だ」
「くっ……僕は、負けるわけにはいかないんだ。ドロー!」
彼、二階堂学人は勢いよくカードを引く。
どれだけ勢いよく引いたとしてもカードの位置を入れ替えでもしない限り手札に来るカードは同じはずでありながら、さながら運命は自分の手で切り開くかのように。
単純な話。このドローで次の創の攻撃を防ぐカードが来ればいいのだ。それも彼のデッキには、それが半分以上を占める故このドローで引く確率の方が多いかもしれない。
だがしかし、彼は引いたカードを見て固まった。
「……あ」
引いたのは《終焉のカウントダウン》。
攻撃を防げるカードでなければ、すでに発動した今では《千眼の邪教神》にすら劣るカードかもしれないのだ。それどころか発動するコストすらない。
皮肉な話だ。
彼は、勝つためだけに組んだデッキ。しかし、その最後の最後で引いたカードである主要カードにて敗北する事となってしまったのだ。もはや次のターンで攻撃を防ぐ術は無い。敗北が決まりショックを受けたのかがくんと項垂れて両膝をついてしまう。手で顔を押さえ消えるような声で二階堂は呟いた。
「僕は……負けるのか。過去を……決闘者だった自分すら捨て、勝つためだけを考え挑んだというのに……それでも僕は勝てないのか?」
「生徒会長……それは一つ間違っているぜ」
「何……?」
「アンタは、この試合……ただ自分の主張を証明するために戦ったんだろ。それはいいけどさ……
二階堂学人という人物をよく知らない晃たちは創が逃げるみたいにという言葉は賛同しかねた。不機嫌そうに鋭い視線で敵でもみるかのような目をして勝負を行っていたぐらいにしか見えない。それは、一緒にいた時間があった創だからわかったのだろう。
「本来、遊戯王は楽しくやるものだし生徒会長だって遊戯王部で決闘をやってたのは楽しいのが理由……じゃないのか?」
「ふんっ……価値観が変わった。それだけだ」
肯定はしない。
それでも二階堂は否定もしなかった。
「まあ、どっちにしろ。遊戯王ってのは楽しんだもん勝ち……だと俺は思うぜ。本当に敗者がいるとすれば楽しめなかった奴だと思うけどさ」
「楽しんだもん勝ち……か。ちっ、気に食わん奴だ今の僕が本当の敗者だと言っているじゃないか……」
不機嫌そうに舌打ちをして創を睨む。
しかし、その目は敵を見るかのような視線では無くなっていた。二階堂は立ち上がっては膝を軽く手で払い短く単調に創へと告げた。
「終わらせろ。貴様のターンだ」
「……ああ」
肯定し創は自分のターンへと入る。
もう何もカードを使う必要は無い。ただバトルフェイズに入りモンスターで攻撃宣言を行えばいいだけなのだ。
攻撃宣言を行い剣を構え一閃の太刀を与える《XX-セイバー ガトムズ》。
攻撃力3100の一撃は残り2000しかない二階堂のライフを確実に0へと追いやるのだ。
二階堂 LP2000→0
ライフが0となった瞬間、終わりを告げるブザーが鳴り響く。
勝者は新堂創。生徒会との対決は2勝1敗。遊戯王部の勝利で終わったのだ。
「ふんっ……」
二階堂は不機嫌そうに踵を返し無言で戻ろうとする。
敗者は何を吼えても負け犬の遠吠えにしかならないと理解しているからだ。だからでこそ、勝者である創の方が声をかけた。
「まってくれ生徒会長……」
「……何だ?」
声をかけられたためか律儀にも足を止めて体をわずかに傾け創の姿を目でとらえる。
いまだ不機嫌そうな二階堂に対し、さすがの創でさえ一瞬戸惑うかのような表情を見せたが迷いなく彼へと告げた。
「遊戯王部に……戻って来てくれないか?」
「…………」
ほんの一瞬の間があいた。
これは迷いなのだろうか二階堂は誘いを告げた創の姿を捉えながら沈黙する。
彼が遊戯王部に戻ってくれれば5人となり団体戦にも参加できる。
だが、それだけじゃない。例え部員が5人以上いても創は誘っていた。これは彼自身、また二階堂と楽しい決闘がしたいからでこそ誘うのだ。
ほんの一瞬、沈黙していた二階堂は表情を和らげた気がした。
だがしかし、それはほんの一瞬のみですぐにまた創に背を向けては会場を後にするように数歩前へと歩みを進めたのだ。
「断る」
拒絶の言葉だ。
二階堂は創の誘いを受け入れてはくれなかった。
ほんの少しだが創にも落胆の表情が見えた。だが、二階堂はまた足を止めて振りかえずに彼へと言葉を述べた。
「退部した挙句、部を潰そうとした身だ。もう部に戻る権利もあるまい。それにもう僕の居場所はそこではない……
「…………」
断った理由を述べた。
退部したのと同じ様に責任を感じているのだろうか。だが、止まっていた足はいまだ動かずさらに言葉を続けて行く。
「──だが、僕ら生徒会は貴様らに負けたままでいるというのがどうしても気に食わん。いずれリベンジさせてもらうぞ! 今度は──貴様の言う『楽しい
言うべき言葉を言い終えたのだろうか。
またもや歩き出し他の生徒会メンバーを終えて体育館を後にした。
それを黙って見送った新堂創だったが、少しは彼も理解してくれたのだろうか?
きっと全部とは言わずも少しはわかってくれたのだろう。
2勝1敗。
こうして生徒会との対決は幕を下ろした。