遊戯王部活動記   作:鈴鳴優

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014.まともじゃねーな

「1ターンキルって……馬鹿じゃないの?」

「……仰る通りです」

 

 遊戯王部の廃部を賭けた勝負の肝心である第一戦で、意外にも気が弱そうな少女、初瀬小桃が使用した1キルに特化された高火力の【歯車デミス】により無残な敗北を喫した晃は、戻るも早々、仁王立ちで待ち構えていた氷湊涼香によって屈した。

 背中を小さくして正座をし彼女の罵倒さえも肯定せざるを得ない状況だ。

 

「まー、とりあえず残念だった。けど、さすがに俺も彼女があんなデッキを使うなんて予想外だったぜ……」

 

 まるで晃をフォローするように創が口を挟む。彼も、どうやら相当驚いていた様で冷や汗をハンカチで拭っていた。

 もっとも、フォローを入れたところで敗北という結果は変わらない。後、2戦のうち1度でも敗北すれば遊戯王部は廃部となってしまうのだ。

 

「真剣勝負に予想外も想定外もないわ。けど、安心しなさい……勝ってくるから」

 

 決闘盤を腕に装着し、彼女にしては珍しく言葉上では棘があっても穏やかな口調で語る。次の第二試合では、すでに話合いにより涼香が出場すると決まっていた。彼女の実力は、遊戯王部でも創と並ぶほどに強いため問題はない……と、晃は思うのだが、ここで創が軽く告げる。

 

「氷湊なら大丈夫だと思うが気をつけろ……どうにも嫌な予感がする」

「嫌な予感? 一応、覚えておくわ」

 

 創の言葉に根拠はない。

 ただ単純にそんな気がする程度の理由しかないが、彼はときおり天性の直感で戦術を変える時がある。彼自身、優れた直感を持つからでこそ言えた事だろう。

 

『では、会場もさらなる盛り上がりを見せてきたので次の第二戦へと入ります! まずは、この人。ルックスは良い! けれど、この女好きは死んでも治らない……3年、生徒会副会長の椚山堅先輩!』

 

 再び歓声が沸き上がる。

 ただし、前の初瀬小桃の場合と異なり今回は椚山に対して罵声らしき声が多々と聞こえてくる。『女の敵め!』、『爆発しやがれ』などと特に男子からか野太い声が多い。

 気がつけば司会進行役の遠山までもが叫ぶように罵倒していた。

 

『爆発しやがれ! ……って、あー続いては遊戯王部から、入学して間もないのにも関わらず、クールな素振りで一躍男子に人気となった氷湊涼香さん!』

 

 こっちは、椚山とは真逆な歓声が響き渡る。時より、初瀬と同じ様な『好きだー!』などと愛の告白らしき言葉が飛び交うも彼女は、そのような事など微塵も気に留める事なく中央へと歩みを進めていく。

 体育館の中央、相手である椚山堅と対峙する。

 

「はは、運命なのかな……まさか俺の相手が君になるなんて」

「気持ち悪い事、言わないで」

 

 先ほどの紹介通り、女好きとされる椚山は対戦相手が涼香だと知った途端ににやけるような笑みを浮かべては口説く様な口ぶりで声をかける。それに対し涼香は、この手の人間が苦手なのかいつも以上に冷めた口調で切って捨てた。

 

「はー、ツンデレってやつかね? どちらにせよ生徒会長からキツく言われてるんでね……可愛子ちゃんでも手加減はしないぞ」

「望むところよ」

 

 両者、決闘盤を構える。

 数秒の間をおいて重なるように掛け声が響き渡った。

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

 今度の先攻は、生徒会側の椚山からだ。

 実力は未知数。どのようなプレイングをすると思ったら、彼はドローフェイズで引いたカードを含めた6枚を見つめては、その中から5枚ものカードを抜き出した。

 

「カードを5枚セット……ターンエンド」

「なっ!?」

 

 遊戯王において魔法、罠を伏せる制限は5枚まで。全て伏せてしまえば、空きが出来るまで他のカードを伏せるどころか魔法カードの発動すらできなくなってしまう。さらには全体除去などのカードを使われて大損害を受ける可能性すらあるのだ。

 故に、制限までカードを伏せるプレイングを行う決闘者は比較的少ないのだ。だが、相手の椚山はその比較的少ない部類に分類されるし戦術もおそらく彼女が知りうる限り特殊なのだろう。

 

「っ……私のターン、ドロー。《E・HEROオーシャン》を攻撃表示で召喚!」

 

 E・HEROオーシャン

 ☆4 ATK/1500

 

 場に現れる水属性のHEROであるオーシャン。さらに、彼女がこのターンのドローフェイズで引いたカードは“HERO”を“M・HERO”へと昇華させる《マスク・チェンジ》だ。

 これで《M・HEROアシッド》を特殊召喚し相手の魔法、罠を全損させる事が可能であるが、その対策を相手が取らないとは考え難い。そのため、まずは様子見から始まる。

 

「バトルフェイズ! 《E・HEROオーシャン》で……」

「おっと、せっかちな子も嫌いじゃないけど、アプローチは男性からというのが俺の哲学でね! 《威嚇する咆哮》を発動するよ!」

「ちぃ……」

 

 椚山が使用した《威嚇する咆哮》の効果は、“このターン相手は攻撃宣言をする事ができない”と言う単純明解な効果だ。ただし、フリーチェーンでいつでも発動できる、発動に成功すれば確実に攻撃を防げるという大きなメリットがあるカードだ。

 ただし、生徒会のメンバーは一筋縄ではいかない。彼は、加えてカードを発動させる。

 

「《威嚇する咆哮》にチェーンしよう。チェーン2《八汰烏の骸》、チェーン3《仕込みマシンガン》、チェーン4《積み上げる幸福》、チェーン5《連鎖爆撃》!」

「っ……!?」

 

 一斉に伏せたカードを使用され涼香は、目を見開き椚山のデッキを理解した。

 彼が扱うのは【チェーンバーン】と呼ばれるバーンデッキの一種だ。

 

  通常、モンスターでの攻撃で相手のライフを削るのを“ビートダウン”と言うなら“バーン”はモンスター効果、魔法、罠でダメージを与える事を指す。ただし、《ファイヤーボール》や《火炎地獄》などの単純に相手にダメージを与える【フルバーン】では、8000ものライフを削りきれず、相手の攻撃を封じるロックカードでジワジワと削る【ロックバーン】などはロックを切り崩されれば立て直しが難しくうたれ弱いなど“ビートダウン”と比べれば効率が悪い。

 だが、椚山が使用する【チェーンバーン】はそれらを克服しているのだ。バーンに加え、手札補充、攻撃封じのほとんどがフリーチェーンでチェーンを積むように発動するのが主な戦術だ。これにより攻撃を封じながら手札を補充しつつ相手にダメージを与えるという現代でも通じる“バーン”デッキだ。

 

「チェーンの逆処理だ。まずチェーン5の《連鎖爆撃》により積まれているチェーンの数×400ダメージで2000のダメージを受けてもらおうかな」

 

 涼香 LP8000-2000→6000

 

 バーンでも十分以上のダメージを負う涼香。

 ここから、さらにチェーンの処理が行われて行く。

 

「続いて、チェーン4の《積み上げる幸福》で2枚ドローし、チェーン3《仕込みマシンガン》で相手の場と手札の数×200の1200ダメージ、チェーン2の《八汰烏の骸》で1枚ドロー……最後に《威嚇する咆哮》で攻撃を封じる」

「……っ、こいつ……」

 

 涼香 LP6000-1200→4800

 

 半ば怒りで彼女は体を震わせる。バーンは、れっきとした戦術であり卑怯と言うわけではない。怒りの理由は、まず彼女のモンスターでの攻撃中心のデッキと相性が悪く一方的にダメージを受けては攻撃を封じられて溜まったフラストレーションにより至極、個人的な理由だ。

 それでも、結果的にいきなり3200のダメージに相手は手札を3枚補充。攻撃を封じられれば誰でも良い気はしない。

 

「……カードを2枚伏せて、ターン終了よ」

「はは、怒った顔も可愛いけど、笑っている方が俺の好みかな。俺のせいだけどな……ドローしてカードを4枚セット、さらに《カードカー・D》を召喚」

 

 カードカー・D

 ☆2 ATK/800

 

 現れたのはカードの様に薄っぺらい車のモンスターだ攻撃力も800と低い。とはいえ、彼のデッキは“バーン”が主軸だ。このカードはサポートでしかない。

 

「“カー・D”が召喚に成功したメイン1にこのカードをリリース。2枚ドローし、エンドフェイズに移行するよ」

 

 ちゃっかりとドローソースを発動させる。

 “バーン”において手札=銃弾と例えるのであれば、常に弾丸を補充しながら撃つ戦術でありドローソースは必須だ。このまま、行けば涼香はなぶり殺しという感じに手も足も出ないだろう。ただし、このまま行けば──であるが。

 

「ふん、別に引きたいならお好きにどうぞ。ただし、場のカードは潰させてもらうわ! 《マスク・チェンジ》を発動し“オーシャン”を変身、現れなさい《M・HEROアシッド》!」

 

 M・HEROアシッド

 ☆8 ATK/2600

 

 “オーシャン”が宙高く飛び上がり、着地と同時に変身した《M・HEROアシッド》が姿を現す。彼女にとって“アブソルートZERO”がエースであっても、そのエースに引けを取らず使用頻度の高いカード。

 

「《M・HEROアシッド》の効果発動! 相手の魔法、罠を全て破壊するわ!」

「お、やるねえ……」

 

 “アシッド”が銃を乱射し相手の伏せられた4枚ものカードを全て破壊する。いくらフリーチェーンでも伏せたターンには使用できず、エンドサイクと言う相手がカードを伏せたエンドフェイズに《サイクロン》を発動する戦術があるが、これは禁止カードの《ハーピィの羽箒》で例えエンドハーピィとも言えるだろう。

 

「エンドフェイズだったから、私のターンへ入るわ! 《E・HEROエアーマン》を召喚し、効果により《E・HEROバブルマン》を手札に加える」

 

 E・HEROエアーマン

☆4 ATK/1800

 

 場にモンスターを出す。彼女としては、さらにモンスターを展開しこのターンで一気に決めたいと思うものの現在の手札ではこれ以上は無理であるため仕方がない。

 

「バトルフェイズ! “エアーマン”、“アシッド”の順で直接攻撃(ダイレクトアタック)よ!」

「これは効くなあ……せっかちの挙句、御転婆か。ますます俺の好みだ」

 

 椚山 LP8000-1800-2600→3600

 

 それでも、総攻撃力は4400と決して低くは無く一瞬で相手のライフを半分以下に持って行く。しかし、こうも【チェーンバーン】で無防備で攻撃が通るのはそうそう無く、これほどのチャンスはもしかしたらこれっきりかもしれない。

 一気に大ダメージを受けたにもかかわらず椚山は余裕そうに笑う。相手の手札数を考えても涼香が有利だ。なのに笑える相手が涼香にとって不気味だった。

 

「アンタ……この状況で笑っていられるの?」

「今のは、先輩から後輩へのプレゼントだからね。ただし、これ以上のサービスはしないぞ!」

「っ……調子に乗って……カードを1枚伏せてターン終了」

 

 まるで、今の現状が涼香の実力でなく椚山が意図的にやった風に聞こえる口調。これは決闘者として人一倍プライドの高い涼香にとって神経を逆なでするには十分だ。

 

「ふふ、俺のターン……モンスターを伏せ、残りの手札2枚も伏せておこう。ターン終了だ」

「ふん、大口叩いてそれだけ? 私のターン、ドロー……まずは《スノーマン・イーター》を召喚!」

 

 スノーマン・イーター

 ☆3 ATK/0

 

 攻撃力0のモンスターを場に出す。これは、かつて創と決闘をしたときにも行った行為であり、普段は無意味に見えるがこれをやった意味は、まぎれもなく彼女の切り札を呼ぶ布石だ。

 

「《ミラクル・フュージョン》を発動! 場の水属性《スノーマン・イーター》、墓地の《E・HEROオーシャン》を融合! 《E・HEROアブソルートZERO》を融合召喚!」

 

 E・HEROアブソルートZERO

 ☆8 ATK/2500→3000

 

 冷気と共に現れた氷の英雄にして、彼女の切り札。

 創すら苦しめたカードを出した彼女は、無類の強さを誇るがそれを前にしても椚山は笑みを絶やさない。むしろ、“アブソルートZERO”が召喚されたことで表情から笑みの色が濃くなった様に見える。

 

「はは、攻め急いでいるみたいだけどさ……俺はもっと長く君といたいんだけどな」

「っ……それが気持ち悪いって言ってるのよ! “アシッド”で伏せモンスターへ攻撃よ!」

 

 椚山の場に存在する裏側表示のカードが表となりモンスターの姿が現れる。

 壺の様な姿に、その中からは彼とはまったく違う不気味な笑みを浮かべる一つ目の顔が映っている。

 

 メタモルポット

 ☆2 DEF/600

 

「《メタモルポット》の効果。互いに手札を全て捨て、5枚ドローする」

「ちっ……またドローソース」

 

 両者の手札を最初の枚数である5枚にする、まるで手札の仕切り直しをさせるような効果だ。これで涼香の手札も5枚に補充されるが彼女にとって手札を消費しても《E・HEROバブルマン》で攻めるため、たいした利益と言うわけでもない。

 むしろ、相手の方が手札の消費が激しいため不利と言うしかなかった。

 

「けれど、まだ攻撃はできる! “エアーマン”で直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

「おっと、これ以上はサービスできないな。手札から《速攻のかかし》を発動し攻撃を無効。バトルフェイズを終了させる」

「ちっ……」

 

 攻守0のレベル1機械族モンスターであり場では、ほぼ無力のモンスターであるがその真価は手札で発揮されるカードだ。発動を防ぐカードも《天罰》など限られたカードのみしかなく防御手段としては優秀。これで、涼香はこのターンこれ以上の攻撃はできなくなった。

 

「……ターン終了よ」

「なら、俺のターン。さぁて、いつフルボッコされるかわからないしモンスターたちには御退場願おうか《時戒神メタイオン》を召喚」

「っ……“メタイオン”!?」

 

時戒神メタイオン

 ☆10 ATK/0

 

 レベル10の超ド級モンスターであるが、このカードは自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に限りリリースなしで召喚が可能だ。攻撃力は0と涼香の《スノーマン・イーター》と同じであるが、それとは訳が違う。

 種族は天使族であるものの巨大な機械の様な体躯の中心にある鏡面に映る顔が不気味に見える。

 

「さあ“メタイオン”で“アブソルートZERO”に攻撃しよう」

 

 攻撃力0のモンスターで攻撃力3000のモンスターへと攻撃を行おうとする椚山。初心者である晃はこの行動に対し驚くも、《時戒神メタイオン》の効果を知っている衆においてはこれが当たり前だと言う目で見る。

 

「っ、させない! 《デモンズ・チェーン》を発動、対象は“メタイオン”!」

 

 ただし、涼香もそう簡単に相手の思い通りにはさせようとしない。発動した《デモンズ・チェーン》には対象の攻撃を封じと効果無効の二つがあるのだ。これで《時戒神メタイオン》はただの攻撃力0のモンスターとなるはずだが──。

 

「そう簡単にはさせないけどさ。《デモンズ・チェーン》にチェーンして《強欲な瓶》を発動し、加えてチェーン《妖精の風》を発動!」

「っ、《妖精の風》!?」

 

 途端、風が吹き荒れ《強欲な瓶》、《デモンズ・チェーン》の2枚が破壊される。破壊されたカードの破片を巻き込み椚山、涼香へとダメージを与えた。

 

 涼香 LP4800-600→4200

 椚山 LP3600-600→3000

 

「《妖精の風》は表側表示の魔法、罠を全て破壊し破壊した数×300のダメージをお互いに受けるカード。もちろん、永続罠の《デモンズ・チェーン》も効果を発揮できないわけだ。さらに、《強欲な瓶》で1枚ドロー……そして、《時戒神メタイオン》の攻撃は続行される」

「っ……」

 

 涼香は、悔しそうな目で《時戒神メタイオン》を睨む。機械の様な体躯から放出される炎が《E・HEROアブソルートZERO》を包み込む。だが、攻撃力0で倒されるわけもなく無傷で終わり《時戒神メタイオン》も健在したままで戦闘ダメージも発生しない。

 

「さあ、メインフェイズ2に移るけど戦闘を行った“メタイオン”のバトルフェイズ終了時に効果が発動する。このカード以外のモンスターを全て持ち主の手札に戻し戻した数×300のダメージを与える」

「くっ……」

 

 涼香 LP4200-900→3100

 

 途端、涼香の場の《M・HEROアシッド》、《E・HEROエアーマン》、《E・HEROアブソルートZERO》が光に包まれ、2枚はエクストラデッキへ“エアーマン”のみ手札へと戻された。さらに3体が戻された事で900のダメージを彼女は負う。

 これで“アブソルートZERO”は場を離れた事で効果を発動するのだが。

 

「っ……場を離れた事で“アブソルートZERO”の効果で相手のモンスターを全て破壊する……けど──」

「そう。《時戒神メタイオン》は戦闘ダメージを0にし、戦闘・効果ともに破壊されない効果がある要するに無敵ってことだな」

 

 今まで幾度となく相手モンスターを葬った冷気の暴風に晒されても《時戒神メタイオン》は凍ることなく全てを受け止めた。晃は遊戯王部で見ていたが、彼女の“アブソルートZERO”の効果がほぼ無意味になったのは初めてだった。

 

「まあ……それぞれ相性と言うものがあるけど俺のこのデッキに君の“アブソルートZERO”はさして問題にはならない。つまりは、このデッキに対し君との相性は悪いという事だ」

「くっ……」

 

 悔しそうに歯噛みをする涼香。彼女は、デッキの主軸は水属性の《E・HEROアブソルートZERO》や《マスク・チェンジ》からの“M・HERO”にある。だが、その中でも強力なのが圧倒的なまでの破壊力なのだ。だが、彼のデッキに対しその破壊力の威力は半減。下手をすれば、それ以下なのだ。

 氷湊涼香は確かに強者ではあるが、それも相性によっては覆る場合がある。創が最初に言った嫌な予感……それは確かに当たっていた。

 

 当の本人、創は二人のデュエルを見ては小さく呟く。

 

「まともじゃねーな」

「え……?」

 

 小さく呟いたわけだが、それでも隣にいた晃には余裕で声が届いていた。

 いったい何がまともじゃないのか、と聞きたげな目で創を見ると聞くより先に創は解説を行った。

 

「今、思い出したんだ。あの椚山堅先輩だが、遊戯王でもそれなりに有名だったんだ。大会でも成績を残していたんだが……俺が知っている限り、アイツが使っていたデッキは【チェーンバーン】じゃない。完全なビートダウンの【六武衆】だったんだよ」

「え……デッキが違うって事ッスか?」

 

 別に一人にデッキが一つなどという事がなく複数のデッキを使う人物だっているだろう。だから、それ自体は珍しい事ではない。だが、と創は言いたげな目をしては彼の仮定をする。

 

「初瀬のときだってそうだ。あいつは知らないが、《終焉の王デミス》なんてカードや、あそこまで1キルに特化したデッキを使うなんて思えねえし、ありゃ違和感バリバリだ」

「そうッスね……」

 

 さきほど綺麗に1キルされた事を思い出しては晃は落ち込みながら肯定する。

 

「俺が思うにだが、あいつら……生徒会は、本来使っているデッキを使ってこない。おそらく勝つためだけに特化したデッキを使ってきてるんだ」

 

 

 

 


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