遊戯王部活動記   作:鈴鳴優

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012.夢物語でしかない

「生徒……会長?」

 

 突如、現れた遊凪高等学校の生徒会長、二階堂学人(にかいどうがくと)

 彼は、やや細身の長身。そして頭の良さそうな堅物眼鏡キャラを思わせるような印象の姿と同じく、一度眼鏡のズレを直す様にクイッと指で動す。

 彼の言葉から、遊戯王部部長の創と何かしらの面識がある様であるが何故、生徒会長が遊戯王部のメンバーの前に現れたのかなどと晃は考察していると、まるで解答を出すかのように彼は、一歩前へと出て宣言する様に語る。

 

「さて、お前たちの前に現れた理由を率直に述べよう……遊戯王部を廃部にするために来た!」

「なっ……!?」

 

 予想外の言葉に、晃は声を出し絶句する。

 晃と同じ様に傍らで立っていた茜も声には出さないものの同じ様に驚き、また涼香もいきなりの事で納得がいかないなどと言った感じで生徒会長を睨んだ。唯一、平然としていたのが予想外にも一番、阿保だと思える人物であった創であった。

 

 彼は、例え相手が三年で生徒会長という立場である人間だろうと遊戯王部の部員と接する様な態度を崩さず、わずかながら悩むかのように頭の後を掻きながら平然と述べた。

 

「そうだなー……いつかそう言うと思ってたけど、廃部はさすがにムリだな!」

「ふん、相変わらずだ。だが、いち生徒でしかない貴様らが生徒会の権力に逆らえるとでも思ったのか?」

 

 生徒の中でも最も権力が高いのが当然ながら生徒会である。

 その中での長である生徒会長ならば、彼より権力が高いのは確実に教師レベルの人間でしかないだろう。それ故に、彼が述べる様にただの一般生徒でしかない創や晃たちでは、逆らうのが難しいのだ。

 偉そうに上から目線で語る、彼の言葉に晃や涼香は、普段から温厚な態度を取る茜ですら生徒会長、二階堂学人を敵を見る様な目で睨む。もっとも、その間に創は手をやり……唯一の上級生からか宥める様に抑えた。

 

「止めとけって……むしろ、敵意を見せた方が相手の思う壺だぜ?」

 

 この場で一番、感情を露わにしそうな彼がもっとも冷静沈着という似合わない行為に、ギャップを感じる。とはいえ、創は権力を盾に遊戯王部の廃部を図るもののその欠点を語る。

 

「けどさ、だからと言って権力で無理矢理ねじ伏せるのも他の生徒に示しがつかないだろ? 都合の悪い部活を潰すなんて、な」

 

 確かにそうだ。

 いくら生徒を自治する生徒会だろうとやれる事には限度がある。特に、決まりや規則を破ったわけでもなく、ただ単純に彼らの意見だけで部活を一つ潰すだけでも生徒から反感や違和感を覚えられるのは当然だ。

 もっとも、そんな事など承知だと告げる様に二階堂は語る。

 

「……無論、そうだろうな。だが、見たところ部員は貴様を含め4名か……大会に出場できないようでは、いや……仮に参加できたところで去年(・・)の惨劇を繰り返すだけだ」

「(去年の……惨劇?)」

 

 ここで、晃と涼香は生徒会長の言葉に疑問を持った。

 晃は、今年で遊戯王部に入部したため去年の部活の事など知らないし聞いた事もない。そのため今、二階堂が口にした単語に何かしらの疑念が浮かぶ。

 

「もう大会結果を残す事もできまい。その様な部活が、のうのうと存在するだけで部費の無駄遣いではないのか?」

「まっ……確かに、去年は最悪だったな。けど、結果が残せないなんて、決まっていないぜ! ……と、言うか部活って結果を残すだけのもんなのかよ?」

 

 さらに口で攻める二階堂だが、それをへらへらと笑って受け流す様に創は返す。

 結界を残す事ができないとか。去年は最悪だった……など、語る彼らだが、それが去年の惨劇とやらに直結するのだろうか。さらに、創は部活動において結果だけが全てなのかとやや、声色を強くして聞くが、その言葉は二階堂の神経を逆なでしたのか、不快そうに目を細め鋭い刃の様に睨まれた。

 

「当たり前だ……部活とは、生徒の能力を育て上げるのが目的だ。結果すら残す事のできない程度の活動の部活なぞ、無い方がマシだ!」

「ふぅん……そういうもんなのかね?」

 

 二階堂は、部活こそ結果だけを残すための存在なのだと迷い無く肯定したのだ。もっとも、それを軽口で、さらっと彼の言葉を受け流す創もかなりの強者だ。

とはいえ、仲が悪いのか相性が最悪なのかお互いの間には、いつ暴力沙汰になってもおかしくない敵意と険悪な雰囲気が流れているのだ。さすがに、それ以上見てる事に耐えられなくなった晃は、二人の間に入り込み質問を掛けた。

 

「あの、一ついいッスか?」

「ふん、何だね?」

「いや……去年の惨劇とか、なんとかオレたちのとっちゃ意味不明なんスけど……」

 

 などと聞く。

 今年、入学した晃たち1年生にとっては去年の惨劇など言われても何一つ理解できない。唯一、予想できるとすれば言葉通り、去年に何かしらの事態が起こったのだろう。もっとも、質問をした晃に対し二階堂は鼻で笑った。

 

「……知りたければ、そいつにでも聞くんだな」

 

 と、二階堂は視線を創へと移す。

 この時、さすがの創も言葉を言い淀むがどう話したらいいものかと、考えるような仕草を取りながらも語る。

 

「そうさな……まず言うとすれば、昔……去年の遊戯王部は部員数が20名を越える部活だったって事だな?」

「……え?」

 

 いきなりの事に晃は呆気に取られた。

 部活なら部員がそれなりにいる部であれば20名など越えるのは当たり前だろう。もっとも、現在の遊戯王部が創、茜、晃、涼香の4人である事。まして、晃が入る前までは部員数が足らず廃部寸前だったのだ。去年、卒業した先輩たちが18、19人近くだったとも考えづらく、何故なのだと晃は思考する。

 

「なんで、今はたった4人じゃない……」

 

 晃と同意見なのか涼香も驚きを隠せずに呟いた。気付けば、晃や涼香と同じ1年の茜も驚きを隠せなと言う表情で創を見ていた。

 

「まあ、減ったんだよ。一昨年、建設された日本第七決闘高校って学校がな、ウチの部のメンバーの大半をスカウトという形で転入させたからなぁ」

「は……?」

 

 一瞬、彼の言っている意味がわからなかった。

 晃が近所の中学校に通っていた時代、近くの地区から遊戯王を専攻する学校、別名デュエルアカデミアが建設された事でひどく話題になった記憶がある。そこから進路を変更変え志願する友人も少なくはないが、まさか多くの人が転入するとは考えられなかった。

 まして、それが遊凪高校遊戯王部のメンバーの大半という事も。

 

「そんで残った主力メンバーが俺と、もう卒業しちまったが、当時の部長の橋本部長。後、一人いたんだけどな……後は適当に俺たちから知り合いとか当たって、なんとか団体戦に挑んだが……」

「ふんっ……無様に1勝もできずに負けたわけだ。まして、その相手が日本第七決闘高校ときた」

 

 その出来事を忌々しく思うのか二階堂は、不機嫌そうに創の言葉を付け足した。

 部員の大半を奪われた挙句、大会で惨敗とくればさすがに嫌気がさすだろう。実際、晃たちも聞いていて良い気がしない。

 

「そういば詳しく言ってなかったが、橘。お前が使ってる【武神】は、当時部長だった橋本部長が使っていたデッキなんだぜ!」

「あ、そうなんスか……」

 

 晃は、懐からデッキを取り出して見つめる。卒業と同時に遊戯王をやめて部室に残していったと言われるデッキだが、その人もまた遊戯王をやめて行ったのだ。いったい、その人は何を思ってデッキを残して行ったのだろうか考える。

 

「……あの人のデッキを使わせるとは、もしや貴様……あの人の意思をコイツに受け継がせようなんて、下らない事を考えているのか?」

「さぁてねえ? 俺は、俺のしたい事をするだけだぜ」

「ふん……」

 

 まるで、しらばっくれる様な口調で創は語るが、どうにも創と生徒会長の二人は会話をすればするほど、互いに険悪なムードが流れて行く。もっとも、それも長くは続かず創は再び子供っぽい笑い方で語る。

 

「けど、さ……俺一人、部に残ってもいい事だってあったぜ! 入学式にすぐ一人! 日向が入ってくれてよ……1年の入部期限最後の日に橘、それに氷湊だって最初は、道場破りっぽく来たけど入ってくれた……」

 

 そう言われたは、なんとなくだが晃に茜、涼香は照れくさくなってしまう。

 そのまま、彼は何事も臆することなく断言するのだ。

 

「後一歩だ! 後、一歩……もう一人新入部員が加入してくれれば、去年と劣らない最高のチームができるぜ!」

「最高の、チーム……か」

 

 屈託の無い笑みで語る創に、生徒会長はまるで彼の言いたい事を理解するようにオウム返しに呟く。だが、数秒の間をあけたのち二階堂は、表情を変えず切り裂くような鋭い声でこの場の雰囲気を立ち斬った。

 

「反吐が出るな」

「……え?」

「何が、最高のチームだ。貴様らが描くのは、現実の前ではただの幼稚な夢物語でしかない」

 

 鋭く、氷の様な冷たい視線で創……いや遊戯王部のメンバーを睨む二階堂。これは、冷たさなどの比ではない。完全な敵意を向けられていたのだ。

 

「貴様らがその様な夢物語を信じるのならば、現実という物を教えてやろう……僕……いや、我々生徒会が貴様らのお得意のデュエルで勝負を申し込む。我々が勝てば、遊戯王部は即刻廃部にさせてもらう」

「ちょ……!?」

 

 いきなりの発言に晃は驚く。

 かつて涼香も、デュエルで自分が勝てば廃部にするなど言っていたが、それは彼女の理不尽な怒りが原因だった。しかし、ここまで冷酷に……まして生徒会として権力を持つ相手が廃部にしてやると述べるのは、比べ物にならないほど重い一言だった。

 だが、創はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「いいぜ……つまり、俺らが勝てば廃部にはできないってわけだ」

「って、部長!?」

「ふん、相変わらず気に食わん奴だ……いいだろう完膚無きまでに叩きのめしてる。貴様らは、4人だったな……なら勝負は3対3。先に2勝した方の勝利だ」

 

 遊戯王部のメンバーを考慮してか、人数は団体戦より少なく3対3。そして2勝した方が勝ちというルールというのは、彼が『僕』ではなく『我々』と言った理由なのだろう。まして、相手は生徒会メンバーで挑んで来るとも告げていた。

 

「いいぜ……それで時間は?」

「明日の放課後、体育館だ。せいぜい、今日最後の部活を楽しむんだな」

 

 最後に日程と時間を告げたのち、二階堂は購買に背を向け去って行く。

 昼食時とは思えない重苦しい雰囲気を彼は残して遊戯王部メンバーは、その彼の背中を黙ったまま見送る。二階堂の姿が見えなくなっても重苦しい空気は消えず、シンッと静かな空気に包まれるが数秒後に最初に口火を切ったのは涼香だ。

 

「何っっ、なのよあの眼鏡! あったまに来るわ! 蹴っとけばよかった!」

「ほんとですよ! さすがの、私も少しイラッと来ました!」

 

 二階堂の口調や言葉が気に食わなかったのか、いつも以上に涼香は苛立ちを見せ、それに同意する様に珍しく普段は穏やかだという印象の茜も頬を膨らませては不満げに言う始末だった。

 

「まー、まーあんときゃ暴力でもやってればアイツの思う壺だったぜ。それよりも、これからの事だ……勝負に勝つ! それだけを考えてこーぜ!」

 創の言う事はもっともだ。

 3対3の勝負で勝ちさえすれば、部は存続できる。むしろ、言い出しっぺはあちらなのだ逆にこれから廃部など言う立場すら無くなるのだろう。

 と、ここで創は考える様な仕草を見せる。

 

「さて、ここで問題なのは……勝負が3対3って事だ。つまり、この4人の中で誰か一人が出れないっつーわけだが?」

「そんなの簡単よ! そこの勝率が極端に悪い奴が、出なければいいんじゃないの?」

「…………」

 

 ガンッ、などと晃の頭に巨大な石を叩きつけられた様な衝撃がめぐった。

 別段、晃とて負けたくて負けているつもりはない。むしろ、勝つために努力はしている……だが、涼香が言った様にまるで彼に才能がないみたいに勝てないのだ。

 さすがに、消去法で考えれば誰でも勝率の悪い晃を外すだろう。

 

 それに晃だってあそこまで言われて黙っているなんて嫌なのだ。

 なんとしても、彼らに一泡吹かせてやりたい。

 

「あ、はは……ドンマイですよ、橘くん!」

「ひ、日向……じゃあ、変わってくれるのか?」

「嫌です♪」

「ぐっ……」

 

 優しいのか厳しいのか。

 結局は、晃がメンバーから外れる事は既に決定事項になってしまったのだろう。晃は、またしても両手両膝を地面へと付けて項垂れる。もっとも、それを部長である創は片膝を付けて晃へと語る。

 

「橘」

 

 名前を呼ばれて顔を上げると、そこには創が真剣な眼差しで晃を見つめていた。

 

「ああ、お前の気持ちだってわかってるし、いずれお前の力だって借りる時が来るさ……だから、今は生温かい目(・・・・・)で見守ってくれ」

「部長……」

 

 ショックで跪く晃へと手を差し伸べる創の手を取るのは、男子同士ではあるが良い雰囲気っぽく見えてしまう。それを逆に冷たい目で見守る涼香に、まるでBLでも見ているかの様に『キャー』と騒ぐ茜がギャラリーっぽく見ていた。

 さすがに、彼女らの視線に耐えきれなくなったのか晃はただ、この場の雰囲気を壊す様に──。

 

「部長、それを言うなら温かい目……ッスよ」

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

『レディース、アンド、ジェントルメーン! さあ、やって来ました。生徒会のゲリラ的な催し物! 遊戯王部とのデュエル大会がやってまいりました』

「「「……は?」」」

 

 生徒会長、二階堂が指定していた時間と場所、明日の放課後の体育館に彼らはやって来た。本来なら、バスケ部やバレー部が活動している時間帯であったものの何故か今日に限って練習は行われていない。

 それどころか、体育館の隅から隅まで観客の如く人、人、人で埋め尽くされており、中央の人間なぞノリノリでマイクを持ち語るのだ。まるで、これは何かのイベントだ。

 

 さすがに、これは予想外だったのか晃や涼香だけでなく馬鹿げた行動や言動を行う創ですら、呆気に取られる始末だった。

 

「っ……随分、派手な事をするな。これで、俺たちは後に引けなくなったってわけか……」

「ふん、その通りだ」

 

 どうやら秘密裏に行うどころか、堂々と生徒たちの前で見せつける事で後に引けなく……そして敗北を認めさせるために、事を大きくしたのだろう。二階堂は、嫌みたらしい笑みを浮かべては笑った。

 

「なに、廃部については伏せてあるから安心しろ……ただ、遊戯王部が生徒会にすら勝てない実力だったから廃部にすると皆には伝えるがな」

「先輩、生徒会に入ってからやり方が変わったな……」

「ふん、その方が合理的だからな」

 

 やはり、この二人が再開すると険悪な雰囲気だ。

 今か、今かと二人の目線の間ではどうにも火花がバチバチと音を立てて弾けているような気がする。気付けば、二階堂の背後には二人の生徒が立っているのだった。

 

「紹介しよう、この二人が今日、貴様らと対戦するメンバーだ!」

 

 と、遊戯王部メンバーに大っぴらにするように宣言する二階堂。一人は、金髪にピアスと到底、真面目だと言う印象の生徒会には似つかわしくないだらしない服装の男子生徒である。彼は、ポケットに手を突っ込んだまま、涼香の前へと歩みを進めた。

 

「な、何よ……」

「君、可愛いね! 俺と付きあわね?」

「はぁ!?」

 

 いきなりの告白だった。

 一瞬の事で呆気に取られる涼香だったが、彼女はさすがにそれでYESと答えるわけもなく冷たい口調で答える。

 

「嫌よ」

「あー、振られちまったよ。小桃ちゃんにも振られちまったし……ルックスには自信があんだけどなぁー」

 

 第一印象は、限りなくチャラい男だ。

 どうしてこのような人物が生徒会に……なんて思っていると、さすがの二階堂もこれまでは許し難いのか眉を細めて軽く睨む。

 

「おい、椚山……貴様、この前も女子生徒に告白をしていなかったか? さすがに、生徒会の面子として、体裁ぐらい守れ!」

「いやー、美少女相手だとどうしてもな! 許してくれ! とりあえず自己紹介。3年の生徒会副会長、椚山堅(くぬぎやまけん)だ。よろしくな……特に、そこのかわいこちゃん!」

「っ……!?」

 

 最後に涼香に対し、視線を向けウインクをするが逆に彼女は全身に鳥肌がたったような表情で数歩、後退していた。堅と言う名前に似合わず、軟派な男に明らかに涼香は引いていた。

 

「ふん、くだらんな……次はお前だぞ」

「ひゃ、ひゃい!?」

 

 と、もう一人の方に声を掛けるが、チャライ男葉山ケンとは逆に、二階堂に声を掛けられては軽く飛び上がり、返事すら噛んだのだ。小さな女の子……とても高校生には見えない良くて中学生に見えてしまうだろう。

 

「ご……ごめんなさい!」

「は?」

 

 椚山が自己紹介より先に涼香に対しナンパを行うのであれ、彼女もまた自己紹介より先に謝罪の言葉を述べたのだ。いったい、何故と晃が呆けるもよく見れば彼女が謝罪で最高位のお辞儀と言える最敬礼の45°を軽く越えていた。もうすでに足から腰までの曲がる角度が90°近くに達しようとするぐらいに。

 

「あ、あのー、この度は、廃部などの件で皆さんに多大な迷惑をおかけしてしまって……どうお詫びをして良いのか……本当にごめんなさい!」

「あ、あー……いや、発端は生徒会長たちだしアンタが謝る義理は無いと思うんスけど……」

「い、いえ、それでも生徒会のメンバーとして謝らなければ……」

 

 などと、何度も頭を下げては上げての繰り返し。

 まるでメトロームの様だ。その彼女の仕草が不愉快だったのか、二階堂はわざとらしく地面を軽く二回音を鳴らすように踏み告げた。

 

「いいから。さっさと自己紹介でもしておけ」

「は……はい! わ、わたし……2年生で生徒会書記を務めさせてもらっています初瀬小桃(はつせこもも)と申します。ごめんなさい!」

「いや、だから何故……謝る?」

 

 予想以上に濃い面子だった。

 

一人は、堅物眼鏡の生徒会長。

次いで可愛いと判断すれば即座に告白するチャラ男の副会長。

過剰に謝る挙動不審な感じの生徒会書記。

 

どこぞの漫画かよ……などと晃は思うが、正直な話。遊戯王部の面子も彼らに勝るも劣らないと思ってしまう。さすがに、創も予想外な事が多いのかハンカチで顔から垂れた冷や汗を拭いていた。

 

「いや、想定外な事ばっかだ……まあ、楽しんでやろーぜ」

 

 もっとも、それでも彼のポリシーは変わらない。

 だがその時、涼香はあたりを見回しては不思議そうに晃と創に聞いた。

 

「そういえば、日向さんがいないんだけど?」

「「えっ……!?」」

 

 周囲を見渡せば、確かに試合に出るはずの日向がこの場にいなかった。

 

 

 


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