異世界?での改変生活   作:松竹

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今回はなぜかサクサク書けたので早めの更新です。

感想ありがとうございます。

いくつか批判というかダメだしを受け、軽くへこみましたが私自身納得のいく内容でしたので前向きに受け取り今後に生かせればと思います。まぁ思い付きを書いてるだけなので今後も「つまらん」と思われる事もあるかと思いますが気長にお付き合い頂ければと思います。


あとがきなどの私の考えはあくまで希望というか「こうしようかな?」程度のものです。なので「主人公っぽく~」の様な考えもあくまで「できるだけこうしたい」と言うだけなのでかならずしもそうなる訳じゃ無いです。思いつきを書いてるだけなので今までの話もほぼ全て話の流れというか内容が予定と違う方へ行ってますし。


戦闘終了

ナギとの試合も終わり全力を振り絞り力尽きたサイは現在闘技場内にある医務室で治療を受けていた。

 

「痛い痛い痛い!!もう少し優しくしてくれませんかね!?」

 

医務室のベッドに腰掛けながら乱暴に巻かれる包帯に悲鳴を上げる。

 

「男ならこのくらい我慢せんか」

 

「男でも痛いモンは痛いんですが!?」

 

「黙らんともっと痛くなるぞ?」

 

「ッ……」

 

包帯を巻くアリカにジロリと睨まれ必死に悲鳴を押し殺す

 

「……てか自分で手当てかってでたんだからもう少し優しくしてくれても良いと思うんだけど」

 

「何か言ったか?」

 

「イエナニモ」

 

「さて。そんな事より今日の体たらくは何じゃ?全く情けない」

 

なんだかんだでさっきよりも優しい手つきで包帯を巻きながらもアリカの鋭い眼光がサイを射抜く

 

「……面目次第もございません」

 

言い訳の仕様も無い。本当に無様な所を見せた。

 

「……まぁいい。だが……次は無いぞ?」

 

「ああ。何度もあんな恥さらす気は無いよ」

 

自分を見据えるアリカの眼を真っ直ぐに見ながらサイはそう言葉を返した。それを最後に2人の会話が途切れ室内に沈黙が流れる。黙々と治療を続けるアリカを見ながらなんとなく気まずいサイが何か無いかと言葉を探して視線を彷徨わせている時---

 

「そろそろ治療は済みましたか?」

 

---そんな言葉と共にアルナとアスナそして【紅き翼】の面々がドアを開けて入ってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お加減は如何ですか?」

 

「ええ。大した事ありません。アルナ様にも不甲斐無い所をお見せしました」

 

アルナの問いかけにいったん治療の手を止めてもらい深々と頭を下げる。

 

「そうですね。正直失望しました」

 

「……」

 

アルナから辛辣な言葉を吐かれて押し黙る。さほどアルナとの付き合いは深くないが彼女がアリカとアスナを深く愛している事は知っている。その彼女の前で2人の専属護衛とも呼べる俺が無様を晒した。ナギの強さを前に勝ちを諦めた。アルナからしてみれば許せる事じゃないだろう。つまりナギが、もしくはナギクラスの相手が敵として襲ってきたら俺は2人を守る事を諦めるという事だから。

 

これでは実際に2人を守れる力があるかどうか以前の問題だ。俺は試合で勝ちを諦めようと実際に襲われれば最悪でも2人を逃がすくらいはするつもりだがそんな言葉に説得力は無いだろう。だから黙って頭を下げる。

 

「アルナ」

 

俺たちの様子を見かねたのかアリカが口を挟む

 

「何ですか?姉様」

 

「もう止せ。その話は済んだ」

 

「私に彼を許せと?」

 

いつもと違いアリカ相手にも笑顔を見せない事がアルナの怒りを示している様に思う

 

「確かにサイは先ほどの試合で一度勝負をなげた。だが再び立ち上がって見せた。最後まで戦って見せた。結果は敗北と言う形で終わったが十分じゃろう?」

 

「……」

 

「それにその事については私から叱責しておる。2度は無いゆえお主も今回は抑えよ」

 

「……」

 

「納得いかんか?ではどうする?サイを我らの護衛から外すか?後任はどうする?誰に任せる?【紅き翼】は一時的に滞在しておるだけじゃぞ?サイの他にナギとあれだけ戦える者などこの国には居らんぞ?」

 

捲くし立てる様なアリカの言葉を黙って聞いていたアルナがようやく言葉を返す

 

「……姉様」

 

「何じゃ?」

 

無表情でアリカを見ていたアルナの口元がニヤリとつり上がる

 

「そんなに必死にならなくても大丈夫ですよ?別にサイを解雇しろなどと言いませんから」

 

「なっ!?別に必死になどなっておらんわ!!」

 

「まぁ何時もならもう少し姉様をからかう所ですが……サイ」

 

顔を紅くするアリカを微笑ましく見た後アルナが真剣な表情で俺に向き直る

 

「はい」

 

「姉様をからかう為に態とああいう態度を取りましたが、最初に言った言葉は私の本心です」

 

「……はい」

 

失望した……か。返す言葉も無い。

 

「姉様たちを守る貴方が敗れるという事は姉様たちの命を失うという事です」

 

「……」

 

その通りだ。俺は守る者としての心構えすらできていなかった。

 

「姉様たちを守る貴方が諦めるという事の意味をよく考えて下さい。只の試合だったからなどと言う言い訳は聞きません。たかが試合で心折れる者が実際の戦場で心折れない保障がどこにあります?」

 

「……」

 

アルナの言葉に怒りはない。不甲斐無い俺を蔑む感情も無い。ただ真摯に言葉を紡ぎ続ける

 

「貴方が姉様たちをこの国を守る最後の砦であると胸に刻んで下さい」

 

「……」

 

多分ここまで真っ直ぐにアルナと向き合ったのは初めてだ。彼女の想いが俺に突き刺さる

 

「もう一度だけ貴方を信じます。……どうか2人を守って下さい」

 

「この身に代えましても」

 

俺に向かって深々と頭を下げるアルナに俺に出来る精一杯の答えを返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう!思ったより元気そうだな」

 

「……へたれ」

 

「……」

 

アルナとの話が終わった後俺の傍にやって来たのは俺と違いほとんど無傷でやたら元気なナギとナギの隣で大人しくしていたアスナの毒舌だった。

 

「いや~魔法ぶっ放した後イキナリ倒れるから驚いたぜ」

 

「……へたれ?」

 

「……」

 

何でナギはこんなに元気なんだろう?それなりにダメージも入ってた筈なんだが。てか何でアスナは俺を指差しながら毒を吐いてるんだろう?

 

「でもアレすげ~な。まさかオレが撃ち負けるとは思わなかったぜ」

 

「……へたれってなに?」

 

「……」

 

俺も勝てるとは思ってなかった。とは言ってもほぼ相殺されてたし撃った後限界以上に魔力を搾り出した俺が倒れて試合はナギの勝ちだったけどね。てかアスナ。意味も解らず俺を罵ってたのか?

 

「でもアレだよな!自分だけの技って何か燃えるよな!オレもお師匠と相談して何か考えっかな~」

 

「……サイがへたれ?」

 

「……」

 

確かにちょっと厨二くさいけどオリジナルってのは何かこうクるものがあるかもな。でもお前はこれ以上強くなる必要は無いと思うよ?てかアスナ。結局結論はそれか?

 

「ってさっきから何で黙ってんだよ。オレが一人で喋ってるアホ見たいだろうが」

 

「……へたれだから」

 

「とりあえず……ナギは黙れ。それと……アスナさんはそろそろ勘弁して下さい」

 

憮然とするナギを黙らせつつ俺はアスナに頭を下げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大事無い様で何よりじゃ」

 

「見事な試合だった」

 

「フフ。どうでしたか?美幼女の罵倒は?」

 

最後に寄ってきたのは【紅き翼】の面々。それぞれの第一声は見事に人間性の垣間見える言葉だった。

 

「ゼクトさん。ご心配ありがとうございます。詠春さん。正直情けない所を見せてしまって恥ずかしいかぎりです。お前が原因かアルビレオ=イマ。……殺すぞ」

 

それぞれに感謝、羞恥、殺意の言葉を返す

 

「途中心が折れた様じゃが持ち直して何よりじゃ。お主はこんな所で潰れるには惜しい。ああそれとゼクトでよいぞ?この通りの容姿じゃからな。敬称なぞ慣れておらん」

 

「そんな事は無いさ。あのナギに本気をださせたんだ。誇っていいことだ。それと私ももっと砕けて話してくれて構わない」

 

「おや?お気に召しませんでしたか?フム……では試合前の演出は如何でしたか?私とアルナ様が演出、脚本を担当したのですが。我ながら改心の出来だと思いませんか?あと何故私だけフルネームで呼ぶんでしょう?私の事も気軽に呼んで貰って構いませんよ?親愛と敬愛を篭めてア・ルと呼んで下さい」

 

ああ……薄々予想は出来てたけどやっぱりか。どうしよう?込み上げる感情を抑えきれない。

 

「有難う御座います。それじゃあゼクトと呼ばせて貰います。それなら詠春って呼ばせて貰うな?まぁ結局完敗だしね。もっと精進しろってことだな。アルビレオ=イマ…………やっぱり貴様か!!!」

 

 

俺は……今日ここでコイツヲコロス!

 

 

「死ね!!」

 

込み上げる殺意のままに拳を振るう。いつもニコニコ微笑を浮かべるヤツのニヤケ(ツラ)を粉砕してやる!

 

「おっと!?イキナリ何をするんです?」

 

俺の行動を予想してたんだろう。ニコニコしながら体を反らし軽く拳をかわしてみせる。

 

「ふざけんなコノ野郎!!」

 

俺の拳なんか余裕でかわせるってか?舐めやがって。

 

「なんで!!」

 

試合で傷ついた体の痛みを堪え、拳を振るい蹴りを放つ

 

「俺が!!」

 

狭い室内で試合の時以上に殺気だって放たれる俺の攻撃をアルビレオがヒラリヒラリとかわしていく

 

「ロリコンなんだ!!」

 

激昂しながらアルビレオを追うもヤツの笑みを崩せない

 

「あれじゃ!!」

 

他の人間はすでに壁際に退避している

 

「俺が!!」

 

アリカは呆れ顔、アルナはアスナを抱えてご満悦、アスナはアルナの腕の中でこちらを無表情に眺め、ナギは自分も参加したそうにウズウズ、ゼクトはまるでをはしゃぐ子供を見る老人の様な眼をし、詠春は俺を見ながら沈痛そうに首を振る。……ああ詠春。アンタだけだよ。俺の気持ちをわかってくれるのは。

 

「変態だろうが!!」

 

 

 

 

 

 

 

そして全ての思いを込めた一撃が撃ちだされ---

 

 

 

 

 

 

 

---見事に空を切った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ落ち着いてください。アレは何も悪ふざけだけ(・・)が理由じゃないんですよ?」

 

「やっぱり悪ふざけ何じゃねぇか!!」

 

どうしてくれる!俺はお前みたいな変態じゃねぇんだよ!!

 

「アルナ様?」

 

「何でしょう?」

 

「そろそろ助けて欲しいのですが」

 

ッ!流石にアルナに手をあげるのは無理だ。

 

「全然平気そうに見えますが?」

 

「これでもかなり危ないんですが」

 

ニコニコしながら言ってもうさんくせぇんだよ!

 

「アルナ」

 

「姉様?」

 

アリカ?

 

「私も聞きたいんじゃが?先ほど聞きそびれたのでな」

 

「仕方ありませんね」

 

クソが!これ以上は不味いか。その内()ってやる。

 

「まぁそもそも今回のイベントを企画した理由はですね」

 

納得いくかどうかはともかくアルナの話を聞かねばならない。怒りを抑える為に腕を組みながらベッドに荒く腰を落とす。

 

「第一にナギ、つまり【紅き翼】とサイの力の確認、第二にアスナに手を出すリスクを知らしめるためですね」

 

どういう意味だ?

 

「先ず第一の理由は言うまでもありませんが2人が実際どの程度の力量を持っているのか知りたかったからですね。この国の私達の味方はとても少ないのです。だから数少ない味方の戦力は出来る限り正確に知る必要があります。先の防衛戦である程度見せて貰いましたが、その上限がどの程度か解りません。ナギたちについては一時的にこの国に滞在してるだけですが今後も戦況次第では協力を求める事もあるでしょうしなるべく正確な所を知りたかったんです。【紅き翼】の他の面々に関してはナギが強いと認めていますのでそこからある程度推測できますし」

 

俺はアリカ達の護衛だし自分で言うのもアレだけどこの国の最高戦力なんだから当然知っとくべきだろうな。

 

「おそらく今後【紅き翼】の名は今まで以上に広まり、その勇名は世界中に轟く事でしょう。そして彼らの名声が広がれば広がるほどナギと戦ったサイの名も同時に高まる事になります。これはサイが試合でナギと互角にわたり合う事が前提な訳ですが……まぁこれについてはギリギリ及第点と言った所ですかね?途中で誰かさんがへたれるとは思いませんでしたから上手く行かないかもしれませんが、最悪でも【紅き翼】との繋がりを示唆できれば良かったので特に問題は無いでしょう」

 

「……」

 

当分こうやってチクチク刺されるのか?

 

「で第二の理由ですが姉様も知っての通りアスナの立場はかなり不安定です」

 

そう言いつつアルナはアスナを抱く腕に力を込める

 

「元々アスナの存在は秘匿されていました。不快な事ですがある意味そのお陰で今までアスナは王宮内の権力闘争から無縁でいられました。ですがこれからはそうは行きません」

 

なるほど。幼い上に自己主張のほとんど無いアスナは傀儡として担ぎやすい訳か

 

「なにより父達が利用しようとしていたアスナの力の事もあります。この子はとても危険な立場にあります。今は姉様と私で抑えていますが旧勢力も完全に排除できた訳じゃありませんから」

 

本当にあの手の奴らはしぶとい。まぁ何十年も権力争いを続けてきた奴らだし早々上手くは行かないか。

 

「近い内にあの手の不穏分子は徹底的に掃除するつもりですが追い詰められた輩は何をするか分かりません。最悪武力に訴えてくる可能性もあります」

 

ようはクーデターか。上手くいくとは思えないけど無いとは言い切れないか。

 

「だから教える必要がありました。どんな愚かな人間にも理解できるように。自分達が楯突く相手がどういう相手なのかを。ヘラス帝国の軍勢を押し止め、既に名を高めつつある【紅き翼】を率いるナギと渡り合える存在を敵に回す事になると。まぁ何処かのへたれのお陰で危うくこちらもご破算になる所でしたが」

 

「……」

 

「っと簡単に説明するとこんな所ですね?色々端折りましたが大体の要点は押さえてますし……納得して頂けましたか?」

 

う~ん?なんとなく釈然としないんだけどそれなら仕方ないのか?

 

「……アルナ」

 

アリカ?

 

「何でしょう?」

 

「お主の話じゃが……今の説明ではサイ達をアスナの恋人の様に思わせる理由にはなっておらんのじゃが?」

 

!?確かにそうだ!なんかアルナの出す真面目な空気に誤魔化されて話をズラされてたのに気付かなかった。

 

「ああ!その説明がまだでしたね」

 

今気付いたと言うかの様にポン!と手を打ち合わせるアルナ

 

「サイ達をアスナの恋人の様に演出した理由はですね」

 

それが一番気になるんだよ!

 

「その理由は」

 

理由は?

 

「それはですね」

 

早く言えよ!

 

「それは」

 

焦らし過ぎだろ!

 

「実は……特に意味はありません」

 

なん……だと!?

 

「まぁしいて言うなら……その方が私が面白…では無く観客も楽しめそうじゃないですか?」

 

今絶対自分が面白いからって言いかけただろ!

 

「ただ戦うよりあの方が観客も盛り上がるでしょう?それにあくまでアレは演出。ただのお芝居です。アスナはまだ幼いですし誰も本気に取ったりはしませんよ……多分」

 

多分って何だよ!ちゃんと否定してくれよ!

 

「そう言うモノか?」

 

「そう言うモノです」

 

「ならば良いか」

 

「ええ。何の問題もありません」

 

問題あるから!アリカも納得すんなよ!

 

「さてと。話も済んだしそろそろ戻るか。少々時間を取り過ぎた」

 

「そうですね。イベントの後始末もありますし此処の所こちらの準備に時間を取られて少々仕事も溜まってますしね」

 

あれ!?本当に納得しちゃった!?

 

「いやいやいや!話すんでないから!俺全然納得してないから!」

 

「ふぅ~~。……サイ」

 

え?アリカさん何で呆れたみたいな感じなんですか?

 

「……何でしょう?」

 

「こんな言葉を聞いた事は無いか?」

 

「……どんな?」

 

「よいか?人はな……時には諦めも肝心じゃ」

 

「ってそれアリカも納得してないってことじゃん!」

 

諦めんなよ!もっとがんばれよ!

 

「と・も・か・く!アルナには言うだけ無駄じゃ!だから納得せよ!できなくてもせよ!よいな!」

 

「横暴だ!このまま納得したら俺の人格が疑われるだろうが!せめてアレは事実じゃないってちゃんとみんなが解る様な対策を!」

 

「そんな暇は無い。私は忙しいんじゃ。どうしても気になるなら自分で地道に否定して回る事じゃな」

 

そんなバカな!?なら元凶に!

 

「アルナ様!ってすでにいねぇ!?」

 

何時の間に消えた!ってか誰もいない!?

 

「いつの間にか皆帰った様じゃな。では我らも行くぞ」

 

「……許せん」

 

どう考えてもおかしいだろ!なんで俺が変態にされなくちゃならない!

 

「アルナめ……こっちが手を出せないからって調子に乗りやがって!」

 

いつまでも泣き寝入りすると思うなよ!俺はヤル時はヤル男だって事を教えてやる!

 

「早く……こんか馬鹿者が!」

 

「ブハッ!?」

 

こうして猛り狂う俺の復讐心はアリカの平手に叩き潰されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分たちを救った英雄の戦いをまじかに見た興奮。世界最高峰の力に対する驚愕。ナギとサイの戦いが終わった後もその余韻は冷めず、観客たちは家族に友に己の興奮を伝え合っていた。

 

そんな何処か浮ついた雰囲気の街中を静かに歩く2つの人影。外套を羽織りフードを深く被る2人は街の空気に飲まれる事無くどこまでも静かに話し合っていた。

 

「記録はとったカ?」

 

「ハイ。マスター」

 

独特の口調で話す小柄な人物に応えるのはどこか機械的な印象を与える冷たい声。声色から察するに恐らく共に女性だろう。

 

「ナギ=スプリングフィールドとサイ=ローウェル。すでに2人の戦闘時における思考パターン、使用する術の構成など全て解析済みです」

 

「わかたヨ」

 

機械的な声の女性の言葉を聞いて小柄な人影は満足げに頷く

 

「さテ。これからどうするかナ」

 

「……」

 

「また露店でも冷やかそうカ?」

 

「マスター」

 

「どうかしたカ?」

 

「何故動かれないのでしょうか?」

 

「不満かナ?」

 

己の従者の問いかけを聞きどこか楽しげに問い返す。

 

「いえ。ですがマスターの目的が解りません。この街についてすでに10日。当初の予定では既に……」

 

「駄目だヨ」

 

小柄な人影はニヤリと口元を歪め従者の言葉を遮る。

 

「壁に耳ありというだロ?」

 

「……ではいつ動くのでしょう?このまま様子を見るのですか?それとも……」

 

チッチッチッと芝居がかった仕草で従者の問いを否定する

 

「解ってないネ。今は駄目だヨ」

 

「何故でしょう?」

 

「それはネ。私が動くべき時はすでに決まってる(・・・・・・・・)からだヨ」

 

その声は何処か皮肉気で何処か嘲笑う様な口調だった

 

「どういう意味でしょう?」

 

「解らなければいいヨ。下らないことダ」

 

「そうですか」

 

「それに私はあの老人どもの思惑通りに動く気も無いしネ?」

 

皮肉気に歪めていた顔を一転して楽しげに笑う

 

「そうなのですか?それでは何故ココ(・・)に?」

 

「それは……秘密だヨ?」

 

「そうですか」

 

従者の簡素な返答が気に食わないのか楽しげだった表情が不満げに変わる

 

「もう少し興味を持ってもいいんじゃないカ?」

 

「聞けば教えてくれるのですか?」

 

「それは駄目だヨ」

 

「ならいいです。私はマスターに従うだけですので」

 

小柄な人影はしばらく不満げに従者の顔を見つめた後気を取り直して話し出す

 

「まぁ当分は大した動きも無さそうだしココ(・・)にいてもやる事は無いヨ。しばらく暇だし観光でもするかナ。今の世界(・・・・)を見て回るのも楽しそうだしネ?」

 

「ではどちらへ?」

 

「とりあえずはヘラス帝国にでも行ってみようカ。私は見た事がないからネ。じゃあ行こうかドライ(・・・)

 

「了解。マスター」

 

そうして2人はオスティアの雑踏の中に消えていった

 




今回少し政治?というか権力うんぬんの部分がありますが私の浅い考えで書いているのでスルーしてくれるとうれしいです。今後そっち方面の話を書く気も別に無いので私も感想で突っ込まれてもスルーします。

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