ギャレンはギャレンラウザーで目の前にいるアンデッドと戦っていた。
シマウマの祖たるアンデッド・ゼブラアンデッドに苦戦している。
「くそっ、動きが速すぎる」
敵は俊敏な速度で動いているためギャレンラウザーで照準を定める前に動かれてしまい、苦戦していた。
「この!離れろ!」
背後から飛びつかれて、ギャレンは後ろの壁にゼブラアンデッドを叩きつけて、引き剥がす。
その隙にギャレンラウザーのオープントレイを開いてプライムベスタを取り出す。
『ドロップ』
『ファイア』
『バーニングスマッシュ』
距離を置いて地面を蹴り、宙返りをし相手の頭上から炎の力を込めた二段つま先蹴りを放つ。
避けられることが出来ず、ゼブラアンデッドは爆発して倒れた。
ギャレンはプロバーブランクを投げてゼブラアンデッドを封印する。
プライムベスタを手に入れてギャレンはレッドランバスに乗り込みIS学園の方へ向かう。
「こんのぉ!」
凰鈴音はIS甲龍を纏い、突然、アリーナに現れた男に苦戦していた。
そう、男だ。
黒いコートを身に纏い、サングラスをかけた男。
だが、ただの男ではない事は隣で戦っていたセシリア・オルコットもわかっていた。
男はISも装着することなく空中に浮いており、先ほどから二人に火炎弾を放っている。
ISのシールドのおかげで肉体にダメージはでていないがISはボロボロになりつつあった。
ブルー・ティアーズも素手で破壊されてしまうという結果。
セシリアはスターライトMkⅢを構えて敵を狙撃するが空中でくるりと反転して攻撃を避ける。
「そこ!」
隙を突いて鈴音が双天月牙で斬りかかる。
「ふん、弱い」
男はそういって双天月牙を受け止めて先端を手で砕く。
「ウソっ!?」
男が素手で双天月牙を破壊した事に鈴音は驚き、動くのが遅れた。
「消えろ」
掌が鈴音の顔へ向けられる。
「鈴さん!」
セシリアがスターライトMkⅢを向けて守ろうとするが間に合わない。
「(私・・・・死ぬの?)」
男の火炎弾が至近距離で命中すればいくらISを纏っているといってもシールドエネルギーが0に近い状況では無事でいられるわけがない。
体に大きなダメージを受ける、最悪『死ぬ』可能性もあった。
「(一夏との・・・・約束・・・・)」
鈴音の両親は中華料理店を開いていたのだが、突如、離婚する事となって、父親と離れ離れになり、母親と一緒に中国にわたった。
その時にIS適正があることがわかり中国の代表候補生になるまでに色々な事があったけれど再び一夏に会えることが出来て鈴音は嬉しかった。昔の約束をちゃんと覚えていてくれたし。
意味をわかってはいなかったけれど、これからちゃんと付き合っていき、距離を埋めていけば本当の家族に慣れるかもしれない、頑張ればなんとかなる!と思っていたのに――
。
「(死んじゃったら・・・・もう一夏に会えないじゃない!)」
鈴音が思っていると、上空から雄叫びをあげて銀色の流星が男と彼女の間に割り込んできて火炎弾を弾き飛ばす。
まるで、正義のヒーローみたいな登場に彼女は不覚にもカッコイイと感じてしまう。
抱きかかえるように腰に手を回して彼は安堵の表情を浮かべる。
「遅すぎ・・・・バカ」
「ごめん、無事みたいだな。鈴」
いいたいことだけをいって鈴音は意識を失う。
一夏は片手で雪片弐型を構えて男を睨む。
「お前・・・・アンデッドか?」
「その通り。お前らの使うISというのがどの程度の力を持っているのか見せてもらおうと思ったのだがな。てんで相手にならん。お前なら相手になるかな?」
「っ!」
目の前の男の姿が変わる。
人間からアンデッドへ。
一夏の脳裏にある単語が蘇る。
アンデッドの中に上級のアンデッドがおり、上級は人間に姿を変えることが出来る、と。
「お前・・・・アンデッドなのか!?」
「ふっ、人間が作った力でどこまで戦えるか見せてもらおうか」
ピーコックアンデッドは羽の手裏剣を放つ。
一夏は後ろへ下がりながら片手に持つ雪片弐型で叩き落す。
「(まずは鈴を安全な所へ・・・・)」
『織斑!現在アリーナは何者かのハッキングを受けて外へ出られなくなっている。出るにはお前の雪片弐型で叩ききるしかないぞ!』
「情報ありがとう・・っと!」
スピーカーから聞こえてきた千冬に感謝しながら。
一夏は雪片弐型でアリーナのシールドを破壊して鈴音を観客席に寝かせるように置く。
壊れた部分からセシリアも出てくる。
「一夏さん、大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫。鈴を頼む」
一夏は再びアリーナの中に戻る。
途中で白式を解除しブレイドに変身して。
「ほう、戻ってくるとは・・・・しかし、ISではなくブレイドでやってくるとはな・・・」
「アンデッドを封印するのは俺の仕事だ」
「そうか・・・・しかし、封印できるかな?」
「っ!」
地面を蹴ってブレイラウザーをピーコックアンデッドに振り下ろす。
ピーコックアンデッドは片手でブレイラウザーを受け止める。
しかも、指二本で。
「この程度か?」
「くっ!」
ピーコックアンデッドは羽手裏剣をブレイドに放つ。
眼前で爆発し、視界がふさがれてしまう。
「ぐあっ!」
煙に覆われた途端、切り裂くようにして巨大剣がブレイドに襲い掛かる。
ブレイラウザーで防ごうとするが間に合わずアーマーにダメージを受けた。
「この程度か?“今の”仮面ライダーの力は?」
「ふざけるなぁあああああああああああああああああ!」
『サンダー』
『スラッシュ』
『ライトニングスラッシュ』
雷撃と切れ味のパワーを増した攻撃をピーコックアンデッドに向けて放つ。
迫り来る攻撃に対してピーコックアンデッドは何もしない。
「な・・・・・・・・・・に・・・・」
ブレイドは動揺する。
アンデッドの力、二つを使っての一撃。
強力な一撃を指二つで止められているのだから。
「てんで話にならないな」
羽手裏剣が連続でブレイドの体に突き刺さり大爆発を起こす。
「一夏!?」
「一夏さん!」
鈴、セシリアが悲鳴を上げる。
煙の中、血まみれの一夏が地面にどさりと崩れ落ちた。
意識を失っているのかぴくりとも動かない。
「ふん・・・・死ね」
ピーコックアンデッドは巨大剣を構えてゆっくりと振り下ろした。
巨大剣がキィィンと弾かれる。
「!?」
ピーコックアンデッドの前に一人の女性がIS打鉄を纏って現れた。
見る人全てが息を呑むような美しさ。
まるで戦姫のような美しさと強さを兼ね備えた女性。
「私の弟に手を出すな・・・・・・」
打鉄をスーツで纏った千冬が刀を構えてピーコックアンデッドを睨む。
本来、彼女はこういう事態に関して自ら進んで出動する事はなかった。
大抵が教員任せともいえる。
なのに、どうして出撃したか?
答えは簡単。
――弟の危機だから。
一夏はそれなりの実力を有している事はわかったが、まだ荒い部分がある。
それでも、この程度なら乗り越えられるだろうと思っていた。
だが、目の前でボロボロになった弟を見た途端。そんな考えなど吹っ飛んでしまい、山田先生の制止も聞かずにISを纏って飛び出していた。
「フン、人間如きが邪魔を」
するな、とピーコックアンデッドは最後までいえなかった。
千冬が顔面に刀の柄を叩き込んだから。
反応が遅れ、追撃をかけるように刀でピーコックアンデッドをぶつけていく。
打鉄は量産されたISで、第三世代型と比べると力などは雲泥の差といえる。実際、打鉄の刀でピーコックアンデッドにダメージを与えられていない。
けれど、押されているのは彼女の実力がISの性能を補って、否、上回っているからこそピーコックアンデッドを圧倒できる。
だが。
「調子にのるなぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
叫ぶと同時にピーコックアンデッドの羽手裏剣が打鉄を襲う。
刀で叩き落そうとするがホーミング機能を有した羽手裏剣は器用に動いて打鉄の前で爆発する。
「くっ!」
爆発で視界が見えなくなりピーコックアンデッドの巨大剣を防ぐタイミングが遅れそうになる。
「まだだ!」
持ち前の反射神経で巨大剣をギリギリのタイミングで防ぐ。
だが、ピーコックアンデッドの強靭の肉体を連続で攻撃していたために脆くなっていたのか一撃を防いで折れる。
「人間風情がこのまま」
殺してやる。といおうとした所をギャレンラウザーの弾丸が命中する。
「まにあっ・・・・一夏!?」
ギャレンは倒れている一夏と傍で折れた刀を握り締めている千冬を守るようにして立つ。
「ギャレン・・・・・・」
ピーコックアンデッドは憎悪に顔を歪めたが何を思ったのか、背を向けてアリーナから離れていく。
「・・・・・・一夏!」
ギャレン=弾は変身を解除して倒れている一夏の所へ駆け寄る。
虎太郎達も一夏の所へ駆け寄っていく。
みんなは担ぐようにして彼を医務室へ運ぶ。
弾は手に持つブレイバックルを見る。
ブレイバックルには亀裂が入っていた。
IS学園保健室。
「先生・・・・一夏は?」
「命に別状はありませんよ・・・・ただ、一日安静にしないといけないです」
「山田先生ありがとうございます」
ぺこりと虎太郎は謝罪をして、鈴音とセシリアは中に入る。
少し遅れてIS学園に到着した箒も続く。
「お前も一夏と同じ仮面ライダーなんだな?」
「はい・・・・あの、このことは」
「お前も家族に内緒という訳か・・・・仕方あるまい。黙っていよう。悪いが今は非常時の状態でな。部外者を中に入れるわけにはいかないんだ」
織斑千冬は学園の入口でレッドランバスを停車させていた弾と話をしている。
とりあえず、緊急事態なので余計な尋問をされたらまずいだろうと判断した千冬がここに彼をつれてきたのであった。
「これからどうするつもりだ?」
「ひとまずBOARDに戻って報告をします。これを修理してもらわないといけないし」
弾は亀裂の入ったブレイバックルを取り出す。
ピーコックアンデッドとの戦いで壊れたかもしれないので見てもらわないといけない。
「悪いが、橘社長とまた話がしたいと伝えておいてくれないか?」
「わかりました・・・・それじゃ」
弾が去っていたのを見送って少しすると入れ替わるようにして一人の男がやってきた。
「あの・・・・」
「?」
「ここがIS学園ですよね?」
「そうだが、貴方は?」
「あ、俺の名前は剣崎一真といいます。この学園にいる織斑一夏君に会いにきたのですが」