仮面ライダー剣―Missing:IS   作:断空我

47 / 48
ついに、ここまできました。

王道展開ばっかりで、人によっては不満があるかもしれません。

では、最終章 Ⅲ部 仮面ライダーブレイド、スタートです。


第四十三話

 

 

アルビノジョーカーが復活し、アルビローチたちはさっきよりも活発に動いていた。

 

事実を知らないがアルビローチの活発が激しくなったことに橘朔也は舌打ちする。

 

「山田先生、二時の方向、狙撃お願いします」

 

「はい!」

 

スナイパーライフルを構えている山田真耶に指示をだし、生徒に襲い掛かろうとしているアルビローチを狙撃する。

 

IS学園では大量のアルビローチが現れていた。

 

篠ノ之束によってISが使用不可能となった現在、教師達は訓練でしか使用していなかった火器を用いて防戦体勢を強いている。

 

中でも打鉄の戦艦刀を持って奮闘している千冬と剣崎のおかげで被害は少ない。

 

そう、少ない。

 

アルビローチによって生徒の中で何人か怪我をした者がいる。

 

誰もが絶望する中で、橘はあきらめていなかった。

 

「弾、信じているぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「剣崎!」

 

「はい!」

 

千冬の言葉に戦艦刀でアルビローチをなぎ払う。

 

「はじめて使うにしては中々の腕だな」

 

「重たいな。これ」

 

戦艦刀をアルビローチに叩きつけて二人は距離をとる。

 

ISは使えない。

 

だが、粒子変換していない武装を使うことは出来た。

 

限られたものだが、剣崎と千冬は刀を持ってアルビローチと戦っている。

 

倒す事はできないが少しでも時間を稼ぐ。

 

「・・・・一夏が全てを解決するまで!」

 

「(一夏君ならきっとやれる・・・・だって、アイツは俺の)」

 

――ブレイドを継いだ者だから。

 

だから、剣崎たちはアルビローチの数の多さに臆すことなく戦い続ける。

 

 

 

 

 

 

「うわぁ、ドンドンきているよ」

 

「口動かさないで手を動かしなさい!」

 

虎太郎、広瀬、睦月たちは楯無達、生徒の協力を得てアルビローチが侵入してこないようにバリケードを作っていた。

 

表で剣崎や千冬達が戦っているがどこから侵入してくるかわからない。

 

彼らが知らないところで襲われる人がでないように、ここでも戦っていた。

 

「ラウラちゃん、そっちは大丈夫?」

 

「問題ない。五分いないに医務室のセシリア達も運び込まれる」

 

渡り廊下で楯無とラウラが警護を努め、医務室で休んでいるセシリア達の移動を手伝っていた。

 

「申し訳ありません」

 

「気にしない、気にしないの!」

 

「二人とも大丈夫~?」

 

「ありがとう、大丈夫よ」

 

「うむ、友を守るのは当然の事だ」

 

鈴音達にラウラは微笑み、空を見る。

 

分厚い雲によって太陽は隠され、闇色の雲が空を隠していた。

 

「(一夏、私達は信じているぞ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲間達の奮闘を一夏は見ていた。

 

誰もいない海岸、波の音が静かに響いている。

 

そして、澄み切った空に、橘が、山田先生が、虎太郎が、広瀬が、睦月が、楯無が、本音が、セシリアが、鈴音が、ラウラが、千冬が、剣崎が―。

 

自分達を信じて戦っている者たちの姿がそこに映されている。

 

「・・・・ずっと、不安を抱えていたのかもしれない」

 

一夏は後ろにいる白い騎士に言う。

 

「ISを動かして世界で唯一の男子と騒がれて、もしかしたら余計な混乱を引き起こしているのかもしれない、って、もっといったら始のことも気づいていたのに、気づかない振りをしていたかもしれない。

 多くの皆に迷惑をかけたかもしれないという気持ちがどっかにあったのかもしれない。でも、それをみんなに悟られたくなくてずっと、ずっと、心の底に仕舞いこんでいたんだと思う」

 

「貴方は、どうして力を望んだの?」

 

白い騎士は静かに問う。

 

――どうして、力を求めたのか、その理由を、問う。

 

「最初は憧れだった。俺を助けてくれたあの人みたいになりたいって、あんな風に誰かを守れる力が欲しいって思った。それで、我武者羅に訓練に励んでライダーになった。でも」

 

そこからが大変だった、と一夏はもらす。

 

「戦いは子どもが思い描くようなものじゃない。汚い事もあれば、全員に理解してもらえる事もない。他者と理解しあう事も難しい」

 

一夏が思い出すのは始を一度、助けられずジョーカーへと至らせた事、ライダーを敵視してネットで叩いた連中の事だ。

 

「そんな人達を貴方は守りたいとまだ思う?」

 

「思う」

 

騎士の言葉に一夏は答える。

 

「何百回、何千回、戦って、誰にも理解されなくても、俺の手で誰かが、その人達が笑っていられるのなら俺はそれでいい・・・・それだけでいいんだ」

 

「そんな貴方を支えようとしている人がいる」

 

海岸に声が響き渡る。

 

それは今にも消えそうだ。けれど、一夏ははっきりと聞き取れた。

 

「箒・・・・セシリア、鈴、ラウラ・・・・」

 

「彼女達は貴方が帰ってくる事を望んでいる。その人たちだけを守るだけではダメ、なの?」

 

「・・・・それじゃあ、幸せになるのは俺だけだ」

 

震える声で一夏は答えた。

 

「自分だけが幸せになるのは簡単だ。でも、俺が持っている力はそういうためにあるものじゃない。作られた理由はあったのかもしれない。でも、俺は!」

 

拳を握り締めて一夏は騎士を見据える。

 

「この力を自分のためだけじゃなく大勢の人のために使いたい」

 

「すべての人を救えると思う?」

 

「わからない、でも、俺は助けられるなら助けたい。エゴだといわれても曲げない。俺は・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――仮面ライダーなのだから!と一夏は叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

――都市伝説で語り継がれている仮面ライダーは人を守る為だけにその拳を振るうといわれている。

 

自分の知らない誰かの為に拳を振るうヒーローになれるかはわからない。

 

だが、一夏の決意は固かった。

 

「俺は、これからも人を守る。仲間を守りたい。そのために力が要るっていうのなら俺は迷わずに使う。みんなを守れるなら、それでいい!」

 

「・・・・貴方に力を与えたのは間違いかもしれないしそうでないのかもしれない」

 

騎士の言葉が遠のいていく。

 

ソレと同時に一夏の意識も段々と薄れる。

 

「どうなるのか見定める。だから、戦いなさい」

 

一夏の意識はそこで落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、長話が過ぎた。キミ達もそこに転がっているヤツと同じ運命を辿ってもらおうか」

 

アルビノジョーカーの言葉に箒は血まみれの一夏を抱き寄せる。

 

「来るな!お前に、これ以上やらせない!」

 

「お前に何が出来る?仲間を傷つけるだけしかできないお前に」

 

「私が友達を傷つけた事実は変わらない。でも“これから”はわからない。私はこれからのために剣を振るう!」

 

瞬時加速を使って箒はアルビノジョーカーに空裂と雨月を繰り出す。

 

「遅い」

 

アルビノジョーカーが鎌を振るうだけで、二本の刀はあっさりと折れてしまう。

 

腹部を蹴られ、くぐもった声をあげた箒のポニーテールをアルビノジョーカーは掴む。

 

「これから?お前たちにこれからは存在しない!俺の手によって全てを滅ぼされる。どう足掻いてもお前たちに待っているのは“死”だけだ」

 

箒は否定しようと目の前のアルビノジョーカーを睨み、口を開こうとする。

 

しかし。

 

「・・・・違う・・・・よ」

 

反論したのはとてもか細い声。

 

だが、一人と一体は届いた。

 

箒は驚き、アルビノジョーカーはゆっくりと視線を向ける。

 

「姉さん・・・・?」

 

意識を取り戻したのか篠ノ之束は焦点が定まっていない目で二人を見た。

 

「箒、ちゃん・・・・紅椿・・・・の・・・・ワン・・・・・アビリティー・・・・いっくん・・・・に」

 

「え?」

 

「はや・・・・く」

 

「ちっ!」

 

束の言葉と同時に紅椿から絢爛舞踏が使用できます、と表示される。

 

アルビノジョーカーは舌打ちして鎌で箒を殺そうと振り上げた。

 

それよりも早く、箒は折れた刃を掴んで、アルビノジョーカーが掴んでいる髪を乱暴に斬りおとす。

 

髪を切った拍子にバランスを崩したアルビノジョーカーを無視して箒は一夏に駆け寄る。

 

「一夏!・・・・一夏!」

 

叫びながら箒は紅椿のワンオフアビリティーを発動される。

 

紅椿から白式へエネルギーが渡っていく。

 

それと同時に地面にエネルギーが流れていった。

 

 

 

 

 

 

 

更識簪は意識を取り戻す。

 

暖かい光を全身に浴びたような感覚と共に薄れていた意識が覚醒し、貫かれていた傷が癒えていた。

 

どうして、と疑問が浮かんだが。それよりもやることがあると体を起こす。

 

倒した相手が起き上がったことに気づいてケルベロスⅢが起動した。

 

「変身」

 

『オープン・アップ』

 

オリハルコンエレメントが通過して、簪はレンゲルへと変身する。

 

レンゲルラウザーを構えて、ケルベロスⅢ、ではなく壁の機械を壊して、そこからプライムベスタを取り出す。

 

「・・・・嶋さん、力を借ります」

 

レンゲルの目的に気づいたケルベロスⅢは地面を蹴り、拳を繰り出そうとする。

 

早く、腕のラウズアブゾーバーにプライムベスタをラウズした。

 

『アブゾーブ・クィーン』

 

『エボリューション・キング』

 

ケルベロスⅢに取り込まれていたプライムベスタ、ラウズバンクに入っていたプライムベスタが飛び出し、レンゲルの体を覆う。

 

眩い光と同時にレンゲルのアーマーにディアマンテゴールドへと強化され、アンデッドクレスがブレイドと同じように付与される。

 

レンゲルラウザーと酷似するキングラウザーを展開し、ケルベロスⅢを突き飛ばす。

 

「・・・・これで、決める」

 

キングラウザーを振るい、ケルベロスⅢを倒した。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・っ!」

 

始は銀の福音を展開してシルバーベルで機械を破壊する。

 

爆風にあおられて飛んでくるプライムベスタを掴む。

 

「シャル・・・・痛いだろうが、少し我慢しろ」

 

自分と彼女を貫いている刃を無理やり引き抜く。

 

赤い液体が混ざり合いながら地面に落ちるのを感じながら刃を抜いて、始はふらふらと倒れそうになるシャルロットを抱き寄せて床に寝かす。

 

「・・・・てめぇ、俺の女に傷つけやがって、ただじゃすまさねぇぞ」

 

『チェンジ』

 

カリスへと変身しプライムベスタをラウズする。

 

『エボリューション』

 

ワイルドカリスへと変身すると同時にケルベロスⅣにワイルドスラッシャーを振り下ろす。

 

攻撃を避けて、火炎弾などを放つ。

 

だが、ワイルドカリスは天井に逆さまに飛ぶようにして攻撃を避けて、疾走してワイルドスラッシャーでケルベロスⅣにダメージを与える。

 

カリスアローにワイルドスラッシャーを合体させ、ワイルドのカードをラウズした。

 

『ワイルド』

 

「吹き飛べ!」

 

ワイルドサイクロンに飲まれたケルベロスⅣは逃げる暇もなく濁流に飲まれて消滅する。

 

『スピリット』

 

変身を解除した始はふと、違和感に気づく。

 

「傷が塞がってるだぁ?」

 

グレイブラウザーで貫かれたはずの傷口が塞がって、さらにいうならば変身の後にやってきていた倦怠感と細胞が消滅するような感覚もない。

 

「まさか・・・・」

 

始は倒れているシャルロットに駆け寄り、服をめくる。

 

貫かれていた腹の部分の傷は綺麗さっぱりなくなっていた。

 

「う・・・・ん、って、何やってるの始ぇ!?」

 

目を覚ましたシャルロットは始を殴ろうと手を伸ばすが、その手を掴んで、始はぐぃっ、と彼女を引き寄せて。

 

「むぐ!?」

 

――彼女とキスをした。

 

すぐに始は顔を離して真剣な表情になり。

 

「なにがあっても俺はお前を放したりしない。ずっと傍にいてもらうからな。覚悟しろ」

 

「え、え?」

 

困惑しているシャルロットを置いて始は優しく彼女を抱きしめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

弾は重傷のはずの自分が生きていることに驚いた。

 

さらにいうなら、貫かれていたはずの傷が消えている。

 

驚きが隠せなかったがそれよりも、と思考を切り替えた。

 

ギャレンへと変身する為にターンアップハンドルを引く。

 

オリハルコンエレメントに弾き飛ばされたラルクを無視してギャレンになると機械に向かってギャレンラウザーを向ける。

 

目的に気づいたラルクはラルクラウザーを放って、牽制してきた。

 

「くっ!」

 

転がるように光矢を避けて、ラルクにギャレンラウザーを発砲する。

 

残り少ないアーマーが壊れて、トライアルBの素顔がむき出しになった。

 

トライアルBはラルクラウザーを連射してギャレンを目的地へ向かう事を阻止する。

 

「先に、倒すしかないってことかよ!」

 

オープントレイを展開してプライムベスタをラウズする。

 

『ドロップ』

 

『ファイア』

 

『ジェミニ』

 

『バーニングディバイド』

 

分身したギャレンを見ながらラルクラウザーを放つ。

 

光矢が直撃しながらもギャレンは止まらず炎を纏った蹴りを繰り出す。

 

蹴りが肩に直撃して爆発を起こし、トライアルBは地面に倒れた。

 

ギャレンは機械をラウザーで破壊して、プライムベスタを取り出す。

 

同時に、復活したトライアルBが襲い掛かってくるのを冷静にみながらラウズアブゾーバーにプライムベスタをラウズする。

 

『アブゾーブ・クィーン』

 

『エボリューション・キング』

 

ディアマンテゴールドが付与され、アンデッドクレスが刻まれたアーマーを纏い、ギャレンキングフォームはキングラウザーの銃口をトライアルBに向けた。

 

放たれた光の波がトライアルBに直撃し大爆発を起こす。

 

「ホント、何で無事なんだろ?」

 

原因がわからず、ギャレンは首をかしげることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

箒は折れた刀をアルビノジョーカーへ向ける。

 

その行為を笑いながらゆっくりと箒との距離を詰める。

 

「諦めろ、お前たちに残されているのは死だけだ。ここで俺に抵抗して無残に殺されるか安からに殺されるかのどちらからだ」

 

「うるさい!私は、お前なんかに屈するつもりはない!それに一夏がいる!」

 

「白騎士の能力で治ったとしてもこいつに何が出来る?死に損ないの命が余分に減るだけだ」

 

箒の目に諦めという感情は消えない。

 

アルビノジョーカーがどんな言葉を投げたとしても彼女は信じているのだ。

 

幼馴染が。

 

織斑一夏という男を。

 

自分が愛している男が立ち上がって目の前の敵を倒す。

 

だから、箒は絶望しない、屈したりしない。

 

昔のように怯えて震えるつもりもない。

 

そんな彼女の表情にアルビノジョーカーは苛立ち始める。

 

「なら・・・・死ね」

 

アルビノジョーカーが鎌を振り上げる。

 

折れた刀を構えて受け止めようとした瞬間。

 

『ターン・アップ』

 

音声が響き、黄金のオリハルコンエレメントによりアルビノジョーカーは反対側の壁に叩きつけられる。

 

「ぐっ・・・・」

 

くぐもった声をだしてアルビノジョーカーは顔を上げた。

 

瀕死の重傷だった織斑一夏が立っている。

 

黄金のオリハルコンエレメントが動いて彼の体を包み込んだ瞬間、スペードスート“全て”のプライムベスタがブレイドの体に吸い込まれるように溶け込み。ブレイドはキングフォームへと進化した。

 

「みんなの、声が聞こえた」

 

ブレイドはぽつり、と呟く。

 

キングラウザーの剣先をアルビノジョーカーへと向ける。

 

「みんなを守る為にも、お前にこの世界を滅ぼさせたりしない!」

 

「人間がほざくな!」

 

アルビノジョーカーを守るようにアルビローチ達が地面から現れる。

 

「人間だけれど、俺には戦う力がある」

 

ブレイドはキングラウザーを横一閃に振るう。

 

「俺は、仮面ライダー・・・・」

 

 

黄金の光を放った刃がアルビローチを一掃した。

 

「仮面ライダーブレイドだ!!」

 

「ちぃ!」

 

鎌の刃とキングラウザーの刃がぶつかり合う。

 

ブレイドとアルビノジョーカーは互いをにらみ合いながら神速でぶつかり始める。

 

 

 

 

 

箒は倒れて動かない篠ノ之束に近づく。

 

「姉さん」

 

「・・・・箒、ちゃん」

 

「無理して、喋らないでください」

 

束はかなり衰弱しているのか声に覇気がない。

 

箒は束を抱えてゆっくりと二人の戦いから遠ざけようとする。

 

しかし、そんな二人に別の所から現れたアルビローチが襲い掛かった。

 

「っ!」

 

姉を守ろうと覆いかぶさろうとした箒の前にワイルドカリスとレンゲル、ギャレンが現れ武器でアルビローチを一蹴する。

 

「大丈夫か?」

 

「始、みな、無事なのか」

 

「まぁ・・・・なんとか」

 

「一夏は?」

 

「あそこだ」

 

 

 

 

 

 

「ウェェェイ!!」

 

キングラウザーがアルビノジョーカーの鎌を地面に落とす。

 

アンデッドクレスの光を放つ拳をブレイドが放つ。

 

「ふざけるなぁぁぁ!」

 

アルビノジョーカーが叫んだ瞬間、背中から巨大な腕が複数現れてブレイドを突き飛ばす。

 

殴られたブレイドは壁にめり込む。

 

「ぐっ!」

 

壁から這い出たブレイドの前でアルビノジョーカーは巨大な異形へと姿を変えていく。

 

やがて、大邪神14へといたる。

 

14は巨大な腕を伸ばしてブレイドに襲い掛かった。

 

ブレイドは伸びてくる腕から逃げつつキングラウザーで反撃する。

 

しかし、14の腕の数の多さと速さにより、一本の腕に足が捕まり、そのまま体を壁叩きつけられる。

 

「このままなぶり殺しにしてやる!」

 

14と半ば融合した形のアルビノジョーカーは別の腕でブレイドの胴体を引きちぎろうと伸ばす。

 

『ワイルド』

 

突如、ワイルドサイクロンにより14の腕が千切れ飛ぶ。

 

「なに!?」

 

「何時まで遊んでいるんだ」

 

「始!?」

 

「俺だけじゃねぇぞ」

 

ブレイドを拘束している腕をレンゲルとギャレンが破壊する。

 

「弾!簪も、無事だったのか!」

 

「勝手に殺すな!・・・・まぁ、死んでいたような気がするんだけれど」

 

「無事に勝ってきた・・・・」

 

「・・・・あぁ!」

 

四人のライダーは14にそれぞれの武器を構える。

 

「ふざけるな、俺がお前たちに、お前たちに倒される事があってたまるかぁ!」

 

「残念ながら、これは現実だ」

 

「お前を倒して俺達は帰る!」

 

「みんなのところに!」

 

「これで・・・・終わりだ!」

 

最強形態になった四人のライダーはそれぞれの必殺技を放つ。

 

“全て”のアンデッドの力を宿した攻撃に14は成す術もなくその体が崩壊する。

 

巻き添えを食う前に脱出したアルビノジョーカーの前にブレイドが立つ。

 

「逃がさない。お前との決着はここでつける」

 

「俺が、俺がこんなところでぇぇぇ!」

 

『スペード10』

 

『スペードJ』

 

『スペードQ』

 

『スペードK』

 

『スペードA』

 

『ロイヤルストレートフラッシュ』

 

叫びながら光弾を放つアルビノジョーカーの前にギルドラウズカードが現れ、ブレイドはキングラウザーを構え、そのカードの中を突っ切る。

 

「ウェェェェェェイ!」

 

光弾を弾き飛ばし、キングラウザーの刃が袈裟切りに振るわれた。

 

一発の光弾がブレイドの横を通過する。

 

「こんな・・・・」

 

刃を避けられず、直撃を受けたアルビノジョーカーの体は爆発を起こす。

 

爆発で終わった、とブレイドが安堵した瞬間、アルビノジョーカーが煙の中から飛び掛る。

 

「コイツ!」

 

「終わって堪るか、俺が俺が!こんなところで終わって堪るかぁぁぁ!」

 

アルビノジョーカーの拳が何発もブレイドに直撃した。

 

体の血が殆どなく、意識がおぼつかない中、ブレイドは拳を握り締める。

 

「だぁぁぁぁぁ!いい加減に、しろぉ!」

 

アンデッドクレスが輝きを放ち、ブレイドの拳がアルビノジョーカーの腹部に直撃した。

 

ライオンビートの力が発動してアルビノジョーカーの体は今度こそ地に伏す。

 

「はぁ・・・・はぁ・・・・」

 

ワイルドブランクを取り出してアルビノジョーカーへ投げる。

 

カードが当たった瞬間、光の中に吸い込まれ、ワイルドベスタとなりブレイドの元に返ってきた。

 

その手の中には『JOKER』と書かれたカードがある。

 

瞬間、地面が揺れだす。

 

「なんだ!」

 

「地震?」

 

「違う、この建物が倒壊を始めやがった!」

 

「脱出しないと!」

 

ブレイドたちはオート操縦のバイクの迎えを受ける。

 

束をギャレンのレッドランバス。シャルロットはワイルドカリスのシャドーチェイサーへ、箒をブルースペイダーの後ろに乗せ、四人のライダーは施設内を全力で疾走した。

 

四人のライダーの戦闘で研究施設の支柱のほとんどが倒壊していたらしく、さっきの一撃が決め手となり、施設は崩壊を起こす。

 

ライダー達が安全圏へ脱出したのはそれから五分強の時間が経過してからだ。

 

海に沈んでいく研究所をみながら、ライダー達はゆっくりと変身を解除する。

 

「・・・・あれ?」

 

「なんか・・・・」

 

「そりゃ」

 

「・・・・疲れた」

 

一夏、始、弾、簪の四人はそういうと地面に崩れ落ちる。

 

「い、一夏!?」

 

「始!!」

 

箒とシャルロットの二人が倒れた四人に近づくと、鼾をかいて眠っている姿があった。

 

しまりは悪いが長い戦いは終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからのことを語ろうと思う。

 

激戦を終えた自分達が目を覚ましたのはそれからなんと三週間後だった。

 

BOARDの医師たちによればこのまま永遠に眠ったままなのでは?という結論がでかけた時だったのでタイミングの良い事この上ないだろう。

 

目を覚ました時に見たのは泣いている千冬姉や箒、セシリア、鈴音、ラウラの姿、弾は虚さんに抱きつかれて顔を真っ赤にし、簪は本音、楯無さんに抱きつかれて顔を赤らめていた。

 

そして、始はというと、目を覚ました途端、シャルロットに不意打ちのキスをされてまた眠りについた。すぐに起き上がったが。

 

束さんはかなり衰弱していたが命に別状はないとのことだった。

 

しばらく療養することになるが、箒が寄り添っているのを見る限り大丈夫だろう。

 

束は憑依されていた時の記憶が少なからず残っていたらしく、最後の現象について質問すると丁寧に教えてくれた。

 

 

 

 

 

「久しぶりだね、ちーちゃん」

 

「少し前にあっているのだが、あの時からお前は操られていたのか?」

 

「操られていた・・・・というのは少し語弊があるかな?私の意識が在る時はあったから・・・・気づいたのは紅椿を作り終える直前だったかな」

 

「そうか・・・・すまないな、気づいてやれなくて」

 

「あれは仕方ないよ。気づけたらちーちゃんは世界一の名探偵になれるよ」

 

「・・・・束、白式のコアは」

 

「そうだよ。白騎士のコアだよ」

 

「どうして、あのコアを?」

 

「アレが白騎士だって気づかなかったみたいだけどね。でも、今回の戦いにおいて白騎士に助けられちゃうとは思わなかったな」

 

「ウソは感心しないな。お前は白騎士に助けられると確信していたんじゃないのか?」

 

「・・・・今となってはわかんないから、紅椿を渡してから、本当に意識がない時間が多かったから無意識に白騎士の治癒エネルギーが行き渡るような細工を施した覚えもないから」

 

「・・・・」

 

「ちーちゃん、人間って不思議だよね」

 

「あぁ、不思議だ」

 

「人間はいうなら何が入っているかわからない匣だ」

 

「・・・・そうだな」

 

 

 

 

それから束さんは少し変わった。

 

よい傾向と見るのか悪い傾向とみるのかははっきりいってこれからだろう。

 

公式では姿をくらましたということからIS学園の講師として教鞭を振るっている。多くの人の名前を覚えていないという欠点を抱えているが虎太郎さんと一緒に奮闘している事から改善されるのも時間の問題かもしれない。

 

そして、箒、あの時の騒動で長い髪をばっさりと切ってしまい、ショートカットになっていた。

 

似合っているといったら顔を赤くして戸惑い、セシリア達に睨まれたのは記憶に新しい。

 

そうそう、始だが命の心配はなくなった。

 

なんでも崩壊していた細胞が全て元通りになっていた。この事に一番喜んでいたのはシャルロットと楯無さんだったのはいうまでもない。

 

それから剣崎さん達がやってきた。

 

「頑張ったな!」そういって剣崎さんは拳を突き出してきた。俺はその拳に自分の拳をぶつけて頷く。

 

弾のほうは橘さんが笑みを浮かべている事に戸惑いの姿を見せている。

 

睦月さんにお帰りといわれて簪はただいまと返していた。

 

始のところには虎太郎と広瀬さんが話をしている。

 

ライダーシステムについてはどうするかとしばらく話し合う必要があるとのことで返却しないといけないのかと思ったが、預かっていてくれといわれた。

 

本当に終わったのかわからないから、といっていたけれど、俺はブレイドであることを認められたから持っていていいといわれたように感じた。自意識過剰すぎるかな?

 

 

 

 

 

 

それから一ヶ月。

 

 

 

 

 

 

 

簪はシャルロット、ラウラと一緒にショッピングモールへ買い物に来ていた。

 

「結構、買い込んだな」

 

「季節の変わり目だからね。色々と用意しないと」

 

「うん・・・・そういえば、冬休みとか二人はどうするの?」

 

「私は、始とスキーに行こうかなって、計画中」

 

「何も予定がないな。嫁を拉致してどこかにつれていくか」

 

「ラウラ、大分、会長さんの影響受けているね」

 

「お姉ちゃんの影響か・・・・ねぇ、シャルロット」

 

「なに?」

 

「富樫さんとのこと、どうなったの?」

 

 

「えーっと、良くも悪くも決着はついたって感じかな」

 

「む、そうなのか」

 

「驚いた」

 

簪とラウラが驚いていると、シャルロットは苦笑した。

 

「まぁ、痛みわけっていうのが正しいのかもしれないけどね~」

 

「むぅ・・・・嫁との決着を早く・・・・ん!」

 

 

ビィーン!とラウラの髪の毛の一本が立つ。

 

「ラウラ、どうしたの?」

 

「嫁の気配がする!」

 

「あ、ラウラ!?・・・・いっちゃった」

 

「鬼太郎みたい」

 

そんな感想を漏らして二人は追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セシリア、鈴、一夏のヤツ知らないか?」

 

「知りませんわ」

 

「私達も探しているんだけれど、どこいったのかしら」

 

「・・・・なぁ、二人とも、一夏のこと、好きか?」

 

「「っ!?」」

 

箒の言葉に二人はびく、と反応する。

 

「私は好きだ」

 

「・・・・アンタ」

 

「だから、ちゃんと宣戦布告しようと思う」

 

宣戦布告、その言葉にセシリアと鈴音は小さく笑う。

 

「上等だわ!一夏を渡すつもりはないから!」

 

「私も、負けませんわ!」

 

「ならば、勝負だ!まずは一夏を探そう!」

 

「「異議なし!」」

 

 

「(やばいやばいやばいやばいやばい!?どうしょうどうしょうどうしょう!?)」

 

弾は虚と一緒に街を歩いている。

 

いわゆるデートだ。

 

だが、困った事に弾は今まで女の子と少し話をしたことはあっても、デートをしたことなんてない。

 

妹との買い物? デートにカウントするわけがないだろう。

 

そんな状況で弾はどんな会話をすればいいのか悩んでいた。

 

虚ももじもじと手を動かしてちら、ちら、とこちらを見ている。

 

沈黙が場を支配していた。

 

「「あの」」

 

話しかけようとしたところで二人は同時に喋る。

 

「えっと、布仏さんからどうぞ」

 

「いえ、五反田君から」

 

「じゃあ、これからどこにいきましょうか?」

 

「え」

 

「いや、プランを立ててないというわけじゃないですけれど、合うかどうか」

 

「大丈夫です。五反田君の選択に間違いはありませんから」

 

――え、なにこの人!?

 

弾が驚いていると虚はにこりと笑う。

 

その笑顔を見て、弾の顔が赤くなる。

 

「じゃ、いきましょうか」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公園に一夏と始はいた。

 

二人は私服姿で公園のベンチに座り遊んでいる親子や子どもの戯れている姿を見ている。

 

その光景を見ていると、アンデッドとの戦いが終わった事を実感させられた。

 

 

 

「本当に終わったんだよな?」

 

「今更何を聞くんだよ、54枚のプライムベスタが全て揃った。55体目のアンデッドが出ない限り、戦いは終わったに決まってるだろうが」

 

公園のベンチで俺と始は缶ジュースを飲みながら話している。

 

「・・・・始、俺さ、長い戦いを通して色々と学んだ気がする」

 

「奇遇だな。俺も色々と考えさせられた」

 

「この世界は、命に溢れているっていうのをなんか実感したよ」

 

「生きているのは素晴らしいって、何度思い知らされたか」

 

話しながら二人は笑う。

 

少し前の自分達ならこんな笑いあって話し合うということはしなかっただろう。

 

アンデッドとの戦いが終わったから気が少し緩んでいるのかもしれない。

 

始も全身に張り詰めていたような空気がなくなって、笑みを浮かべている回数が多い。親友として一夏は嬉しかった。

 

「なに、笑ってんだ?」

 

「別に・・・・それよりさ、始はこれからどうするんだ?」

 

「しばらくはIS学園での生活だろうな、IS動かせているのは事実だから。高校生活まともに送るのも悪くない・・・・その後は旅にでもでようかねぇ」

 

「いいな、俺も旅しようかと思ってる」

 

「それはいいが・・・・お前、どーするつもりだ?」

 

「何を?」

 

「箒達のことだ、この一ヶ月、大人しくしているがそろそろ限界なんじゃないか?そろそろボーデヴィッヒ当たりが攻めてきても」

 

『嫁!嫁はどこだぁ!』

 

聞こえてきた声に一夏は近くの木に隠れる。

 

「む、富樫よ。嫁を知らぬか?」

 

「アイツなら、どっかにいるだろ。知らないぜ」

 

「そうか、嫁~~~~!」

 

ラウラがいなくなったのを確認して一夏は姿を見せる。

 

「お前、ホントにヘタレだよな」

 

「うるさいな。そういう始はどうなんだよ?楯無さんとシャルロットに言い寄られているくせに」

 

「あー、それなら決着つけた」

 

「え、マジ!?」

 

「マジだ、マジ。俺、あの二人と付き合うことにしたから」

 

「・・・・へ?!」

 

「ウソだろって顔しているが本当だ。俺はシャルロットと刀奈の二人と付き合うことにした」

 

「いや、でも、日本だと、その」

 

「別に日本で結婚しなくてもいいだろ?海外には100人の妻持っている男だっているんだ。そういう国にいって国籍取得すればなんとかなる」

 

「え~」

 

「二人が納得しないかもと思ったがすんなりと通ったのは以外だったがな」

 

始は笑い、羽織っていたコートを着なおす。

 

苦笑いを浮かべながら一夏もベンチから立ち上がる。

 

「お前も、どういう形であれ、答えはだしてやれ、でないと、後ろから刺されるんじゃないか?」

 

「やめてくれ、まぁ・・・・早めに出す」

 

「そうしろ・・・・さて、行くか」

 

二人は肩を並べて歩き出す。

 

「どこに行く?」

 

始の問いに一夏は澄み切った空を見上げて呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日とか?」

 

 

 

 

 

「なんだよ、そりゃ・・・・いいぜ、どこでも付き合ってやる」

 

 

 

 

 

 

 

~Fin~

 




最後まで読んでくださりありがとうございます。

無事に終わる事ができました。

思えば、二年くらいかな?はじめて構想ねって、書いてから。

Missing:ISは二つの分岐がありました。

一つが今回のHAPPYEND。
剣崎たちとは違う結末ということで、誰も死なず、全員幸せ?になりました。
最後の方は映画ファイズみたいなものになりましたが、あしからず。

もう一つのBADEND。
実はこっちを書こうとしていたので、四十一話から唐突な話になりました。
こっちでは、一夏と始が命を賭けて戦い、二人とも死ぬ。
ラスボスは統制者というものです。
ちなみに、BADでは二人はこちらと違い一人の女性を選んで愛する事になっています。

他のライダーは重傷になっていますね。一夏と始のせいで。




さて、次回作について。

次回もISのものを書くつもりです。

他の作品も手を出すべきなのかもしれないんですけれど、中途半端に手を出したら作品を汚しそうで抵抗あるんですよね。

次回作のタイトルですが、こんなものです。

特撮+IS+ヤンデレ=混沌にならないはずがない

こういう形のタイトルはとったことがなかったので終わらせるか不安です。

ちなみに特撮からは。

仮面ライダー
スーパー戦隊。
●●●●●。

最後の●は話の途中で明らかになる予定。

スーパー戦隊は一つだけ、でます。

プロローグで、わかるかも?
まぁ、第一話で何かはわかります。

ヤンデレは・・・・。

誰がなるか楽しみに?
既にプロローグで一名、とんでもないことに。

それでは、お付き合いありがとうございます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。