セシリア・オルコットとの決闘の日。
なのに、一夏はアリーナの待合室にいた。
どういうわけか一夏の専用ISが届かない。
そのために開始時間が遅れている。
「遅いな・・・・」
「そうだな」
「これならラファールとか借りてやった方がいいと思うんだけど?」
「無理だ。学園上層部の命令でデータを取るためにBOARDとやらが用意する専用機で戦ってもらう」
「・・・・」
傍に居る織斑千冬の言葉に一夏は何も言わず目の前の映像を見ていた。
するとドアが開いて虎太郎と山田先生がやってくる。
「一夏君!遅れてごめん!持って来たよ」
「虎太郎さん!山田先生!」
一夏が叫ぶと同時に部屋の中央にISが現れる。
全身が白に包まれた機体。
全てが白の機体。
「これが織斑君のIS、白式です!」
「びゃく・・・・しき?」
一夏は呆然としながら白式に乗り込む。
「織斑、フォーマットとフィッティングは戦いの最中で済ませろ」
「時間がないんですね・・・・了解しました。箒、虎太郎さん」
「な、なんだ?」
「なにかな?」
「行ってきます」
一夏はそういってアリーナへと向かう。
「ようやく来ましたわね。謝るなら手加減して差し上げてもよろしいですわよ?」
「そんなもん必要ない。本気で来い!」
一夏の前に浮遊しているセシリア・オルコットの専用機“ブルーティアーズ”のメイン武装『スターライトmkⅢ』の銃口がこちらに向けられた。
白式を動かして飛んでくる光弾を避ける。
「踊りなさい。私とブルーティアーズの奏でるワルツに!」
同時に白式から警告音が出される。
ブルーティアーズのスラスターとして接続されているビット型の武器が次々と白式を狙ってきた。
「おっと・・・・」
一夏は持っていた大型ブレードで光弾を防ぐ。
「って・・・・マジか!?」
持っていた武器が一度レーザーを受けただけで刃こぼれしていた。
これは意外とマズイかもしれない、と一夏は冷や汗を流す。
「織斑君、劣勢ですね」
「そうかな?」
「少し違うと思います」
「ほぉ、何故そう思う?」
映像で様子を見て、山田先生とは異なる返答をした虎太郎と箒へ尋ねた。
二人はそれぞれ思っている事を述べる。
「一夏の剣の腕はあんなものではありません」
「無謀な戦いをしないからね。長引いているというよりは長引かせてなにかをしようとしているんだと思う」
虎太郎達の意見どおり事態が動く。
「(そうか・・・・あのブルーティアーズとかいう武器を動かしている間、あいつ自身は動かない・・いや、動けないみたいだな。それと他の武装との併用は出来ないみたいだ。よし、動くか)」
白式のブーストを吹かして手にあるブレードを振るう。
「甘いですわ」
ブルーティアーズは動きを予期してたため、道を遮るようにビットのレーザーが白式の進行上に降り注ぐ。
「なっ!?」
「どうした?」
セシリアは目を見開いた直後に一夏の白式が持つブレードが振り下ろされブルーティアーズのエネルギーが減少する。
「あなた・・・・私の動きを予期していたというの!?」
ブルーティアーズのビットから放たれたレーザーの合間をすり抜けるようにして白式は動いて一ダメージも受けることなくブルーティアーズへ接近を果たす事ができた。
「まぁ、そんなとこかな?」
「これ以上はやらせませんわ!」
ブルーティアーズを動かして雨のようにレーザーを降らす。
一夏は白式のブレードで受け流そうとするがパキィンと音を立てて刃が折れて、白式の足の部分のアーマーが音を立てて亀裂が入る。
「やべっ!」
一夏は焦る。
自身の武器が破壊された事。
敵が手を抜く事を辞めた事。
まだ切り抜けられない状況ではないがこのままでは勝てないだろう。
「(こいつに勝つには初期操縦者適応が必要だ。だが、まだ時間かかるのか?)」
「もう手加減しませんわ。受けなさい!」
「こなくそぉ!」
一夏は飛んでくるビットの身近なものを次々と折れた刃で叩き潰していく。
ビットの動きを読んでのヒットアンドウェイを繰り返しビットのほとんどを破壊した。
「中々やりますわね・・・・でも、ブルーティアーズはまだありますのよ!」
腰に装備されていた二対の砲弾が白式に迫り爆発する。
勝った!とセシリアが思った直後、煙を切り裂いて純白の機体が姿を見せた。
先ほどよりも白く、新しいブレードを持った白式。
まさか、とセシリアは戸惑う。
「まさか・・・・あなたファーストシフトせずに戦っていたというの!?」
「時間もなかったしな。悪いがこれで終わらせて」
新しくなった武器“雪片弐型”を構えて切りかかる。
IS学園警備室。
アリーナで生徒達が戦いを見ている頃、異変が起きていた。
「す、すぐに本土へ連絡しろ!増援を・・・・」
叫んでいた警備員の周りを大量のバッタが取り込み、口や鼻の中へと入り込んでいく。
「ひっ・・・・あ・・っ・・ぐっ!?」
あえぎ声を上げながら呼吸器官を塞がれて警備員は窒息死する。
「ひっ・・・・ひぃぃぃぃぃ!?」
目の前でむごい姿で死んだ同僚を見て息を呑んで座り込んだ警備員の周囲を飛び回っていたバッタがある姿を形成していく。
バッタの姿に人型の体系。
ローカストアンデッドはゆっくりと座り込んでくる警備員へ近づいていく。
白式の持つ雪片弐型がセシリア・オルコットのブルーティアーズを倒すと同時に試合終了のブザーが鳴り響き、試合が終了した。
しかし、突如、アリーナの壁の一角を壊してローカストアンデッドが現れる。
「な、なんですの!?あれは・・・・」
「っ!危ない!!」
セシリアは突如現れたアンデッドに戸惑い、反応が遅れた。
跳躍してローカストアンデッドがブルーティアーズへ攻撃する。
攻撃を受けたブルーティアーズはエネルギーがほとんど残っていないために一撃で強制解除されてしまう。
「なっ・・・・山田君!すぐに生徒をアリーナから避難させろ!教員はISを装着してイレギュラーの排除に向かわせるんだ」
「は、はい!」
様子を見ていた千冬達は慌てて指示を飛ばす。
アリーナは砂埃などにより見えにくくどうなっているのかわからない。
箒は祈るように一夏の無事を願う。
「くそっ!」
一夏は白式を降下させて地面に激突する寸前でセシリアを抱きとめた。
「あ・・あなた・・・・何故」
「あいつの相手はあんたじゃ無理だ。逃げろ」
「逃げろって・・・・あなたはどうするつもりですか?」
「戦う」
そういって、白式を解除する。
「あなた!何故、ISを解除して」
「ISではヤツを倒せないし・・・・君を守る事ができないから」
そう、奴らを倒すためにはISではなく“こっち”でないといけない。
一夏は肌身離さず持っている変身ツール・ブレイバックルとスペードスートのカテゴリーAのラウズカードを取り出し、ブレイバックルの中心部ラウズリーダーに装填することによりバックルからカード状のベルト・シャッフルラップが自動的に伸張しバックルが装着される。
「・・・・変身!!」
『ターンアップ』
叫び一夏はターンアップハンドルをを引くとリーダーが回転してブレイドアーマーを分解した光のゲートオリハルコンエレメントを前面に放出する。
一夏はオリハルコンエレメントを駆け抜けてブレイドへと変身した。
「行くぞ!」
砂埃を払いのけるようにしてラウザーホルスターから醒剣ブレイラウザーを取り出してセシリアを守るようにして構える。
「(な、なんですの・・・・・・これは?)」
セシリア・オルコットは目の前で起こっている状況に戸惑いを隠せない。
目の前ではバッタを模した怪物と先ほどまで戦っていた男が変身した異形同士がぶつかりあっている。
「(あの人・・・・さっきまで私と戦っていたというのにどうして)」
セシリアの知っている男はどれも女性に対して卑屈で、女性に付き従う事しかしない生き物。
それがセシリアの知っている“男”という存在。
彼女の父もそんなもの、常に優秀な彼女の母に卑屈で自分の意見を通すような事を一切しない、そんな男。
そんな二人がそろって事故死など、何があったのだろうか?
幼き頃に両親は事故で死んだ。
どうして一緒に車に乗っていたのかはわからない。
けれど、両親がいなくなった日からセシリアの人生は大きく動いた。
両親の遺産を狙う親戚から奪われないように様々な事に努力をし続ける。
その結果、イギリスの代表候補という地位にまで上り詰めた。
男なんてどれも一緒・・・・・・だと思っていたのに。
「(あの人は何故・・・・それに・・・・あの姿・・・・)」
「ぐぉっ!?」
ローカストアンデッドは跳躍力を生かしてブレイドへ攻撃を仕掛けてくる。
相手の動きに対してブレイドはブレイラウザーで防戦の態勢をとっているが相手の動きに翻弄されていた。
「くそっ・・・・一撃でしとめる」
ブレイドはブレイラウザーのオープントレイを展開してその中に収められているプライムペスタの一枚を取り出してスラッシュリーダーにラウズする。
『タックル』
カテゴリー4のタックルボアの力を解放してこちらへ攻撃を仕掛けようとするローカストアンデッドへボアタックルを放つ。
銀色の光を纏ったブレイドのボアタックルはアリーナの壁まで突進しローカストアンデッドを叩きつける。
「ゴァ・・・・」
ローカストアンデッドはうめき声をあげて大の字になって地面に倒れ込む。
倒れると同時に腹部のレリーフが開く。
アンデッドは基本、死ぬ事がない。
どんな攻撃を受けたとしても死ぬ事のない不死の存在。
そのため、ライダーシステムはアンデッドを倒すために在るのではなく。封印するためにある。
ブレイドはアンデッドが封印されていないカードプロバーブランクを取り出してカードを投げる。
プロバーブランクがアンデッドの体に突き刺さった途端、プロバーブランクの中へローカストアンデッドは封印された。
封印されたプライムペスタはブレイドのところへ飛んでいき、彼の手の中へと収まる。
手にはカテゴリー5があった。
「あれは一体なんだ?」
アンデッド騒動の後、一夏は千冬に呼ばれて質問というの名の事情聴取を受けていた。
「自分の一存では答える事ができません」
「これは教師としての質問ではない。お前の姉、織斑千冬としての質問だ」
「それでも俺は答えられない」
「一夏!」
口調を強める千冬に一夏はきりっと口を硬く閉ざす。
「失礼します」
一夏はそういって部屋を出て行く。
「一夏・・・・・・・なんで何も話してくれない」
「浮かない顔してるね。一夏君」
「虎太郎さん」
夕方、寮へ続く道の途中にあるベンチで夕焼け空を見上げていた一夏の隣に虎太郎が座り込む。
「みんなの前で変身・・・・しちゃったね」
「そうですね・・・・覚悟していたというか・・・・まさか学園にアンデッドが侵入してくるとは思っていなかった」
「でも、守れたね」
「・・・・そう、ですね」
橘朔也はIS学園へ足を運んでいた。
いくつか伝えないといけない事と一夏へ渡したIS白式の状況を確認するためである。
確認するためなのだが、アリーナの方から大きな振動と土煙らしきものが見えるのは気のせいだろうか?
そして。
『一夏さん!大丈夫ですか!?』
『なっ!何故名前で呼んでいる!?』
『謝った時に俺がオーケーしたんだけど、不味かったか?』
関わってはいけない状況が起こっていると判断して学園内で待機する事にした。
「どうやら白式は正常に稼動しているようだな」
「はい」
橘が白式のデータを見ながら一夏に尋ねる。
「あの・・・・白式にはどうして後付武装がないんですか?」
「知らん」
「知らん・・・・って」
「製作者が何をどう考えて造ったのかわからない。ワンオフアビリティーがかなりの容量を占めているのが原因だろう。それにより雪片弐型という刀一本しかない。まぁ、お前には丁度いいんじゃないか?剣一本あれば」
「はい」
一夏の追い求める男は剣と拳、そして13枚の始祖が封印された力で人々を守った。
どんな状況の中でも諦めることなく。解決策を捜し求めた男。
そして、織斑一夏の目標。
「ところで・・・・」
橘は何かを言う前にドアを開ける。
「うあっ!」
「きゃっ!」
ドアが開くと同時に聞き耳を立てていた二人の少女が倒れ込む。
ポニーテールと金髪縦ロールの少女。
篠ノ之箒とセシリア・オルコットだ。
「何か用かな?キミ達」
「申し訳ありません・・・・あの、一夏さんのあの姿がなんなのか教えてもらえませんか?」
「私も知りたい。教えてください」
二人は同時に頭を下げる。
「織斑・・・・鞄を開けてあの本を出せ」
「あ、はい」
一夏はカバンの中から一冊の本を橘に渡す。
「この本にすべて書かれてある」
「あの、この本って」
「信じられないかもしれないがこの本に書かれている事はすべて実際に起こった事。ノンフィクションだ。これを読めばすべてわかる。織斑のあの姿、IS学園を襲撃したあの怪人の事。それを読んでからもう一度、織斑と話をしろ。行くぞ」
「あ、はい」
橘の後を追うようにして一夏も続けて出る。
「・・・・読んでみましょうか」
「そうだな」
残された二人は一夏の本。『仮面ライダーという名の仮面』を読み始めた。
「いいんですか・・・・話して」
「学園内にも協力者は必要だ。何かの理由で動けなくなったら厄介だ」
橘はぴたりと立ち止まり一夏へ視線を向ける。
「一つ大事な話がある」
「なんですか?」
「・・・・お前にブレイバックルを渡して少し後、BOARDに保管されていたカテゴリーAのカードが強奪された事は知っているな?」
「はい・・・剣崎さんの戦友が使っていたものですよね?」
詳しい事は聞いていないのだが、戦っていた仮面ライダーは全部で四人。
その中で二つ、ブレイドとギャレンは一夏と弾が継承している。残りの二つのうち一つは強奪されて行方不明だと橘は話す。
「その一つがフランスで確認された」
「フランス!?」
「フランスの公共の監視カメラに堂々と姿を現したのが数ヶ月前、それからどういうわけか今度は日本で姿を確認された。その時、同時に出現していたアンデッドの反応も消えた」
「それってつまり・・・・」
「何者かがハートスートのカテゴリーAを使用してアンデッドを封印している可能性がある。最悪、遭遇する可能性もある気をつけろ」
「はい・・・・」
そういって橘は帰っていく。
「ハートスートのカテゴリーAか・・・・」
一夏は自室で本を見つめてぽつりと呟く。
一回だけ。剣崎一真から聞いたことがある。
ハートスートのカテゴリーAを使用して戦っていた仮面ライダーの事を。
「(話しているときの剣崎さん。とても辛そうだったよな。どうしたんだろ・・・・?本には詳しい事は書かれていないし)」
「おはようございます。一夏さん」
「おはよう。一夏。すまないが大事な話がある」
次の日・早朝。
外に出るとセシリアと箒が待ち構えていた。
話の内容は大体予測できていたが、一夏は尋ねる。
「なんだ?」
「まずは私から・・・・白井さんの本のこと、色々と無礼なことを言ってしまい申し訳ありません」
「わかってくれたならいいよ・・・・俺も自分の気持ち押し付けるようなことして、ごめん」
「それでだが・・・・一夏、あの本に書かれていた事は全て事実なのか?」
「あぁ、“仮面ライダーという名の仮面”に書かれていたアンデッドと戦った仮面ライダーは実在している」
「でも・・・・そんな話一回も聞いたことがありませんわ」
「小さな国のことだし、全て連続殺人事件とか突然死とかで処理されていたから」
「だが、この本によると全てのアンデッドは封印されて戦いが終わったんじゃないのか?」
「・・・・俺も詳しい事を知っているわけじゃないんだけど、少し前に永久に解放されることのない場所にアンデッドが封印されたプライムペスタは葬られた。けど」
けれど、その封印は解かれてしまい。アンデッドが再びこの世に姿を見せた。
事態を重く見た橘朔也は解散したBOARDを再結成して、嘗てのライダーとその仲間達を呼び寄せることとした。
変身するのに必要なカテゴリーAについては全て無事だった。
「この世界に再び現れたアンデッドをもう一度封印するために俺はこの力を使っている」
「それは・・・・あの、アンデッドが現れたときにも使っていましたわね」
「橘さんの恩師ともいえる人が立案、製作したライダーシステム。詳しい原理は知らないけれど、アンデッドには様々なカテゴリーに部分わけされていて、俺はこのスペードスートのカテゴリーAを使って変身する」
そういって一夏は彼の目標ともいえる剣崎一真が使用していたカテゴリーAを見せる。
二人はまじまじとカテゴリーAのカードを見た。
「一夏・・・・どうしてお前が戦うんだ?」
「え?」
「箒さんの言うとおりですわ。一夏さんの前にも仮面ライダーとなっておられた方がいますのに、どうして一夏さんが仮面ライダーに?」
二人からすれば前も仮面ライダーとして戦っていたのなら経験が豊富で対応も早いのではないだろうか?
なのに、どうして新しく一夏が仮面ライダーとなっているのかという疑問があった。
「最後のアンデッドを封印する時に・・・・その本に書かれていないんだけどね。みんなボロボロだったんだ」
「虎太郎さん!?」
いつの間にいたのか白井虎太郎が現れたことに一夏だけでなく二人も驚いている。
「ボロボロ・・・・ですか?」
「うん、その本にも書かれているけれど、最後まで生き残った一体のアンデッド、勝利者が確定するとその種族が繁栄する。もし、どの種族にも該当しない存在が生き残った場合。世界は“リセット”される」
「リセット、ですか?」
「言葉どおりの意味で全てなくなるんだ。そして生き残ってしまったのはどの種族にも該当しないアンデッド・・・・“ジョーカー”だった」
虎太郎の脳裏に蘇るのはジョーカーの事。
嫌なヤツだと思っていたけれど、最後にはその考えを改めさせられるようになった。
彼の行動で。
「ジョーカーが生き残った事によるリセットへのカウントダウン。それを阻止するためにみんなはボロボロの体をさらに鞭打つようにして戦った。結果的にはジョーカーを封印する事でリセットは阻止できた。でも、ライダーの何人かは戦いの怪我が原因でカテゴリーAとの融合係数が著しく低下して戦う事が難しくなった人がいる。だから、新たに融合係数が高い、みんなを守ってくれる覚悟を持つ仮面ライダーが必要になった」
「そして、偶然にもその事を知った俺は協力する事を申し出たんだ」
「本当の偶然だったんだけど、一夏君は空席だったブレイドの融合係数が高くて二代目仮面ライダーブレイドになったんだ」
「その事を織斑先生は知っているのか?」
「あの人は・・・・反対した」
今でも思い出す。
あの日、一夏はBOARDに所属する事を姉である千冬に相談した。
千冬は当然のこと、反対したのだ。
危ない事はするな!と、しかし、実際の所、当時の一夏は色々と危険なことに巻き込まれていて、もし剣崎と出会っていなかったら家で普通に生活していなかったかもしれない。
だから、強くなりたいと望んだ。
その時に喧嘩をして一夏は家を飛び出して剣崎の所にお世話になった。
剣崎はにっこりと笑って、ちゃんとお姉ちゃんとは仲直りするんだぞ?といって許可してくれて・・。
「でも、いつかはちゃんと話し合うさ。二人しかいない家族なんだから」
「そうそう、家族は大事だよ」
「ところで・・・・白井先生・・・・何故ここに?」
「ん?僕はこれを買いにね」
白井が手に持っているのは牛乳瓶、しかもかなり大きい。
「これを飲まないと一日が始まらないからねぇ・・・・それと篠ノ之さんとオルコットさんにお願いがあったんだ」
「お願い・・」
「ですか?」
「そう!二人に一夏君のサポートをしてもらいたいんだ。僕もサポーターの一人なんだけどいつも一緒に居られるというわけじゃないからね。それにキミ達は一夏君の手伝いをしてくれるでしょ?」
「はい・・・・」
「当然ですわ。一夏さんのサポートをします!」
虎太郎は微笑んで、ポケットからディスクを二人に渡す。
「これは・・・・?」
「アンデッドサーチャー。アンデッドが出現したら反応する機械だよ。ただ、サーチ範囲が限られているから遠すぎると感知することはできないということもあるけれど、キミ達ならきっとサポートできる!」
「どうして・・・・そこまで自信があるんですか?」
「僕もキミ達と同じような感じで剣崎君たちをサポートしていたから」
虎太郎の表情は昔を懐かしむ“それ”だった。