仮面ライダー剣―Missing:IS   作:断空我

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番外編 その2

十二月二十四日、クリスマスイブ

 

 

この日は愛する人や家族がクリスマスケーキやプレゼントを渡しあう。

 

 

それは一夏達も例外ではない・・・・だが、今回は少し違った。

 

 

少し前の二十日。

 

 

現在、一夏やIS学園のメンバーは虎太郎と一緒に孤児院に来ている。

 

 

彼らが孤児院に来たのは数年前、ジョーカーとブレイドの戦いで家族を失った子達に虎太郎がクリスマスプレゼントを届けるためだった。

 

 

一夏や弾の二人は例年、来ており、箒達は一夏達が行くと聞いたらついていくといったのである。

 

 

「今年はみんな賢かったからサンタさんがプレゼントをくれるよー」

 

 

「サンタさんよりもいいけど、仮面ライダーからプレゼントが欲しいよ!」

 

「え、仮面ライダー?」

 

一夏が呆然としていると子ども達が集ってきた。

 

「知らないのぉ?」

 

「カッコイイんだよ!僕らを守ってくれる仮面ライダー、ヒーロー!」

 

「私、黒い仮面ライダーさんからプレゼント欲しい」

 

「僕も!」

 

「青い仮面ライダーから欲しいよ!」

 

「え・・・・」

 

一夏は困ったという表情をする。

 

青い仮面ライダーというのはおそらく自分が変身するブレイドのことだろう。

 

それならなんとかなるかもしれない。

 

だが、黒い仮面ライダーというのが問題だ。

 

彼が、進んでこういう事をやるとは思えない。

 

「なぁ、弾・・・・って、どうしたんだよ」

 

 

「お前はいいよなぁ」

 

 

「何を言っていんだ?なぁ、簪もって、同じかい!?」

 

 

「そうだよねぇー。私や弾なんか・・・・人気ないんだろうね」

 

 

どうやら二人は子ども達から自分のご指名がなかったことでショックを受けていじけていた。

 

 

「いや、そんなことはないよ・・ほら」

 

 

「俺は緑色の仮面ライダーがいいなぁ」

 

 

「俺はあれだよ、赤いライダーがいい!」

 

 

「「・・・・・・」」

 

 

「おぉ、復活しているな。嫁よ」

 

 

「まぁ・・・・・・って、ラウラなにしているんだ?」

 

 

「子ども達と遊んでいる。嫁との子どもができた時のシミュレーションだな」

 

 

「いやいやいや!シミュレーションって何言ってんだよ!」

 

 

「ふむ、不満か?私はいつでも嫁と」

 

 

「何を言っているこの不埒ものめぇ!」

 

 

「うわっ!?」

 

 

「ふざけんなー!そんなの認めるかぁ!」

 

 

「そ、そうですわ!」

 

 

キャットファイトが始まる。

 

 

「わー、夫婦喧嘩だ!」

 

 

「あの人、四人も奥さんいるの?」

 

 

「「「・・・・・・」」」

 

 

一夏達は黙り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、21.

 

 

IS学園の食堂で一夏は篠ノ之箒、凰鈴音、セシリア・オルコット、ラウラ・ボーデヴィッヒ、更識簪、布仏本音が集っていた。

 

「というわけなんだが・・・・橘さんから許可は得ているんだけど・・・・すこーし問題があるんだよ」

 

「カリス・・・・富樫始の事だな?」

 

「あぁ、アイツからのプレゼントを望む子達がいるんだ。俺らだけでいったら」

 

「悲しむ子ども達がいるというわけですね」

 

「しっかし、あんな黒いののどこがいいのかしらねぇ」

 

「だが、凄い人気だった・・・・嫁といい勝負をしていたぞ」

 

「うぅ・・・・私と弾なんて、所詮、その程度」

 

「落ち着け、簪には簪の良さがある」

 

「そうだよぉ、かんちゃーん」

 

「・・・・ありがとう」

 

「話がずれてきたから戻すけど、あいつを探さないといけないわけで・・・・」

 

「コアネットワークを使えばいいんじゃないのか?一夏の白式と福音は繋がっているのだろう?」

 

「いや、繋がってはいるけどさ・・・・あいつ、ここのところ連絡がとれないというかなんかシャットダウンされていて繋がらないんだよなぁ」

 

 

色々あって、IS学園へ転校生としてやってきた富樫始とシャルロットの二人だが、冬期休暇に入ってから何処かへ出かけていて、姿を見ていない。

 

「場所はわかるのか?」

 

「・・・・日本にはいるみたいなんだよ」

 

「ふむ、ならばこちらから会いに行けばいいだろうな」

 

「「「え」」」

 

「む?」

 

ラウラの提案に一夏達は息を呑む。

 

 

 

 

 

22日。

 

 

その頃、富樫始はというと。

 

 

「始は絶対に入ってきちゃダメだからね」

 

 

「わーってるって」

 

 

始は何度目かの問答に少しうんざりしながらも答える。

 

 

始が拠点にしている場所から少し離れた所にあるデパートに来ていた。

 

近づくクリスマスに向けてシャルロットはサンタクロースの衣装の試着をしているのである。

 

どうして、サンタクロースの格好をするのかわからないがシャルロットが本気のため、始はなにもいわず、彼女に任せている。

 

 

そして、始は試着室の外で待機していた。

 

「そこまでこだわる必要あるのか?」

 

独りになってから始はクリスマスや正月といった仲間で過ごす行事に一切の興味を示さなかった。

 

己の中にある復讐を果たす為だけに生きてきたから当然といえるだろう。

 

だから、シャルロットの意気込みように少し圧されていた。

 

「始と一緒に過ごすクリスマスだよ!?力いれるにきまっているじゃない!」

 

「・・・・そーすか・・・・ん」

 

始は何かに気づいて試着室の中に飛び込む。

 

「は、はじ!」

 

「しずかに」

 

着替えようとしていたシャルロットは悲鳴を上げようとしたがしっ、と手で塞ぐ。

 

「(何か外が騒がしい・・・・じっとしていてくれ)」

 

「・・(コク)」

 

少しして音が聞こえてくる。

 

「(普通の人間の足音にしては音が少し鈍いな・・・・何か重たい武装でもしょっているのか?)」

 

「ここは我々アンチIS同盟が占拠した。貴様らは人質だ。大人しく」

 

「貴重な情報ありがとう」

 

始は試着室から飛び出して男の意識を刈り取る。

 

あっという間の不意打ちに成す術もなく男は崩れ落ちた。

 

「さて・・・・情報はわかったが・・厄介なものを造ったみたいだな」

 

意識が刈り取られる瞬間に起動させたのか壁や周囲に設置された機械から赤いランプが光っていた。

 

「ISが展開できない・・・・特殊なフィールド形成装置か?」

 

「始、どうするの」

 

「ここを逆に制圧するか、さてさて・・どうするかなぁ・・・・って、また厄介なもんが出てきやがった」

 

階下から現れたのは人の形をしたロボット。

 

完成度が低いのか動きがぎこちない。

 

「はぁ・・・・・・厄介なことが連続して続くってなんだよ。と同時に変なこともあるんだな」

 

ドアが壊れてブルースペイダー、レッドランパス、グリングローバーが現れた。

 

「じゃあ、シャルロット、ちょっくら暴れてくるわ」

 

「始、無茶はしないでね」

 

「わかってるって・・」

 

始はプライムベスタを取り出す。

 

腹部にカリスラウザーが姿を現しプライムベスタを読み取る。

 

「変身」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

23日

 

 

 

「なんで、俺がそんなことしないといけないんだよ」

 

騒動から次の日、とある喫茶店で四人のライダーは集っていた。

 

一夏から持ちかけられた話を始は拒否する。

 

「あの姿を見て、喜ぶ子どもがいるわけないだろ?寝言は寝てから言え」

 

「だから、お前の人気が高いから来てくれないと困るって言ってるだろ!

 

「俺や簪よりも人気あるよなぁ」

 

「妬ましい・・・・」

 

「そこ!大事な話しているんだから負のオーラだすな!」

 

一夏は始と向き合う。

 

「なぁ、俺達の姿を見て、子ども達が元気になるんだ。やって損はないと思わないか?」

 

「・・・・子どもに元気ねぇ」

 

「やろーぜ!始」

 

「・・・・はぁ、わかった」

 

 

 

 

 

 

24日

 

 

虎太郎扮したサンタクロースが子ども達にプレゼントを配っている。

 

山田真耶や橘朔也、剣崎一真、上城睦月、織斑千冬も子ども達にプレゼントを渡している中で子ども達は嬉しそうにしているが、どこか不満があるように見えた。

 

「ねぇ、一夏お兄ちゃん、どうしたの?」

 

「仮面ライダーにあわせてくれるっていっていたのに」

 

「そうだよ!仮面ライダーに会いたいよ!」

 

「いやー、一夏君達も」

 

虎太郎は困った表情を浮かべながら言葉を選ぼうとしていた。

 

そのとき、子どもの一人が外を指差す。

 

「あ、外見て!」

 

「・・・・雪ですね」

 

「それだけではないな」

 

山田真耶が呟き、千冬が小さく笑う。

 

「約束・・・・守ったな」

 

剣崎が小さく呟いた。

 

入口に四台のバイクが停車して小さな袋を背負ったブレイド、ギャレン、カリス、レンゲルが入ってくる。

 

 

「「「「メリークリスマス!」」」」

 

 

四人は子ども達にプレゼントを配っていく。

 

 

子ども達は本物の仮面ライダーに会えたことに心から喜んで駆け寄る。

 

レンゲルやギャレンにも子ども達は集ったが、一番集ったのはブレイドとカリス。

 

「わー、慌てずに慌てずにプレゼント配るから」

 

「・・・・全員分あるからな」

 

プレゼントを全員分配り終えると仮面ライダー達は外に出て行く。

 

「それじゃあ、みんな」

 

「来年もいい子にしていろよ」

 

「喧嘩せず、仲良くな」

 

「元気でね」

 

そういってそれぞれの愛機に乗って仮面ライダー達は去っていく。

 

入れ替わるようにして一夏達がやってくる。

 

但し、始の姿はない。

 

「一夏君達、申し訳ないね~」

 

「いいですよ。これぐらい。それに戦う事以外でも役に立てるなら、いいですよね?」

 

 

「そうだな」

 

 

一夏の言葉に剣崎が頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「め、メリークリスマス!始!」

 

「・・・・・・・・・・部屋、間違えました」

 

「ま、間違えていないから!間違えていないから帰ろうとしないで!」

 

部屋を出て行こうとした始をシャルロットが止める。

 

「いや・・・・つい、条件反射で・・・・どうしたんだ?その格好・・」

 

「変かな?」

 

「いや、全然、似合ってるぞ」

 

目の前にいるシャルロットは赤いサンタクロースの衣装、ただしミニスカでへそが見えている。

 

健康的な素足などがみえていて、始の心拍数が上昇して行く。

 

「だったら、なんで・・・・そうか」

 

「何だよ・・」

 

「見惚れちゃった?」

 

彼女の指摘は的を射ており始は黙り込む。

 

「う・・・・」

 

「嬉しいな、選んだ甲斐があるよ」

 

シャルロットは嬉しそうな顔をして始を抱きしめる。

 

始は柄にもなく恥ずかしがりながらも彼女を抱きしめ返す。

 

 

 

 

聖夜はまだまだ始まったばかりである。

 

 

みんながそれぞれ楽しむ。

 

 

人の為に戦い続けるヒーロー達にも少しの安らぎを。

 




次回の番外編が終わると本編に突入する予定。

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