重ねたキズナと巡る世界   作:唯の厨二好き

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第66話 原作遵守派

 轟ゥッ!! と、大気を唸らせ、ビルの窓ガラスを風圧で粉砕しながら、竜巻が水平に(・・・)爆進する。その自然現象としては有り得ない風の暴虐が目指すのは、宙に浮く一人の少女。

 

「なのはっ。避けなさい!」

「えっ、きゃぁっ!?」

 

 別の場所から少女の怒声が響き、ハッとした様子で振り返った宙に浮く少女――高町なのはは、しかし、目前に迫った竜巻を回避すること敵わず、そのまま凄まじい勢いで吹き飛ばされた。

 

 竜巻が直撃する寸前で、なのはの前に桃色の障壁が展開されたことから、風圧に押されて吹き飛んだだけで大事はないだろう。

 

 が、ビルの谷間に消えていくその姿に、先程、警告の声を上げた少女が、再び「なのはっ」と声を張り上げた。

 

 そんな彼女へ、別の声がかかる。

 

「あら、あの子の心配をしている余裕があるのかしら、スグハさん?」

 

 幼いながらも、どこか妖艶さを含む少女の声音。それが、栗毛をポニーテールにした少女――なのはの双子の姉――高町スグハの真後ろから響いた。

 

「っ」

 

 直後、スグハの姿が消えると同時に、今の今までいた場所を強烈な閃光が通り過ぎた。

 

「疾ッ!!」

 

 残像すら残さない速度で背後からの奇襲を回避し、同時に敵の側面に出現したスグハは、腰に佩いた納刀状態の小太刀二本を、これまた抜く手も見えないほどの速度で抜刀する。

 

――御神流 奥義之六 【薙旋】

 

 小太刀二刀の抜刀術による高速四連撃。あまりの速度に刀身は見えず、描かれる剣線の軌跡のみが宙に描かれる。その瞳に宿るのは確かな戦意。とても、見た目九歳程度の女の子とは思えない練度と覇気だ。

 

 だが、その戦意の風は、虚しく空を切り裂いただけだった。スグハの視線の先には、豊かな金髪をふわりとなびかせながら、ギョロギョロと不気味に蠢く無数の瞳に装飾された空間の亀裂に消えていく少女の姿がある。

 

(チッ。相変わらず、厄介な能力ね。――境界を操る程度の能力、だったかしら。反則すぎるわよ)

 

 そう、スグハと相対する金髪の少女――転生者“サーシャ・ロコノフ”は、東方projectの大賢者“八雲紫”の能力【境界を操る程度の能力】を与えられた存在なのだ。

 

 奥義が空振りに終わったスグハは、内心で悪態を吐きつつも直ぐさま追撃に移ろうとした。が、直後、その体がビシリと硬直する。

 

「お前こそが世界の歪み。今日こそ、排除させてもらうぞ!」

 

 今度は男の声音で怒声が響く。

 

 硬直した体のまま、スグハが視線のみを向ければ、そこには機械的な強化外骨格を纏った青年の姿があった。

 

 スグハ自身は知らなかったが、青年が身に纏うそれはインフィニット・ストラトスと呼ばれる強化外骨格で、その中でも某黒ウサギの専用機体として登場したシュヴァルツェア・レーゲンと呼ばれたものだった。

 

 そして、シュヴァルツェア・レーゲンの搭載能力【慣性停止結界(AIC)】こそが、スグハを拘束しているものの正体だった。

 

 もっとも、搭乗している青年――観測者より、【IS世界の全ての専用機を使える】という特典を貰い受けた転生者“上垣刹那”のセリフは、意識的にか、それとも無意識的にか、別の物語の刹那的な人そのものだったが。

 

 青年の自分に酔ったようなセリフと同時に、夜空の星がそのまま落ちてきたのかと錯覚するほどの光弾が降り注いだ。幻想郷特有の“弾幕”だ。しかも、おまけと言わんばかりに、シュヴァルツェア・レーゲンの両肩に装備された大型レールカノンがガコンと不吉な音を響かせてスグハへと向けられる。

 

 人を一人殺すには、あきらかに過剰な攻撃。しかし、二人の転生者が相対する少女は、そうするだけの、否、それでも足りないかもしれないと思わせるだけの実績があるのだ。

 

「――【ディスアポーレション(姿くらまし)】」

「っ、――がぁっ!?」

 

 全方位からの過剰攻撃にも焦った表情を微塵も見せず、冷徹な表情のまま、スグハがボソリと呟けば、刹那、慣性停止結界に捕われていたはずの彼女の姿は、まるで宙に発生した渦に吸い込まれるかのように消えてしまった。

 

 そして、次の瞬間、ISを纏う上垣の背後へと出現し、その無防備な背に向かって再び御神流【薙旋】が振るわれる。

 

 ガガガガッと衝撃音が響き渡り、上垣が前方へとつんのめるように吹き飛んだ。そう、光弾の降り注ぐ死のポイントへ。

 

 思わず、「ひっ」と小さな悲鳴を上げて目を瞑るが……直撃寸前で、上垣の頭上に空間の亀裂が広がり、光弾を余さず呑み込んだ。

 

 スグハの周囲にも、ほぼ同時に亀裂が作られ、上空から降り注いでいた弾幕は、全方位掃射へと一瞬で変化する。

 

 しかし、その時には、既にフッと姿を消したスグハは包囲の外へ出ており、弾幕は虚しく互いを相殺するに終わった。

 

「私達二人を同時に相手して、かすり傷一つ負わせられないなんて……本当に、厄介な人ですわね。あなたの転生特典“ハリー・ポッターの魔法”も、実戦では隙が多くて余り役に立たない部類かと思っていましたのに……」

 

 空間の亀裂から、まるで小窓から外を覗くお嬢様のように姿を見せるサーシャ。口元を扇子で隠しているが、不快げに歪む目元が隠せていないので、内心の苛立ちがまる分かりだ。

 

 そんな彼女の言葉通り、高町なのはの双子の姉として転生したスグハの手札は、御神流とファンタジー小説“ハリー・ポッター”の魔法だ。確かに、一見すると、ハリー・ポッター世界の魔法戦闘は、ファンタジー色が色濃いため、リリカルなのは世界のデバイスを用いた速攻に比べると、どうにも隙が多いように思える。

 

 転生特典としてもらうなら、リリカルなのは世界の魔法技術を上回る利点のある能力が望ましいのだ。そうでなければ、優秀なデバイスと強大な魔力をもらった方が、遥かに優れた戦闘能力を発揮できる。

 

 もっとも、それは、あくまで“与えられたもの”の上にあぐらをかいている者、あるいは、熟練するには圧倒的に鍛錬も経験も少なすぎる者の場合だ。どんな力でも、極めれば、そして工夫すれば、その効果は何倍にも膨れ上がる。

 

 そう、たとえば、生まれてからこの時まで、数多の転生者達から家族を守り通してきた高町スグハのように。

 

「私は、転生特典なんてもらったことないわよ?」

「……なにを言っているのかしら?」

 

 心底、理解できないとでもいうように、小首を傾げるサーシャ。そんな彼女へ、小太刀を構えながら、スグハが静かな声音を響かせる。

 

「私は、この世界に生まれる前から(・・・・・・・)御神の剣士だったし、魔法の力は、役に立ちそうだったから、前世で(・・・)きちんと学んで覚えたのよ。半世紀をかけてね」

「……意味が、わからないわ」

 

 眉を潜めるサーシャに、スグハは「分かる必要はないわ」と切り捨てつつ、凪いだ水面のように静謐な、それでいて燃え盛る業火のように熱い決意を乗せて、ただ、己の在り方のみを宣言した。

 

「永全不動八門一派・御神魔刀流(・・・)小太刀二刀術“高町スグハ”。覚えておきなさい。誰かを背に戦うとき、御神の剣士は不敗となるのよ」

 

 自覚なく、サーシャと、ようやく立ち上がった上垣の二人は息を呑んだ。高町スグハの宣言に、転生者“サーシャ・ロコノフ”と“上垣刹那”は気圧されたように絶句する。

 

 まるで、言霊を叩きつけらたかのような、重く、強い言葉。それは、僅か数十年を生きただけの少年少女――前世と合わせれば二十歳を越えていても、子供時代しか過ごしたことのない者達では、到底宿せないもの。

 

「宣戦布告したのはあなた達よ。覚悟は……出来ているわね?」

「「っ」」

 

 凄まじいまでの殺気が暴風となって二人に叩きつけられる。咄嗟に、サーシャは空間の亀裂を閉じて退避し、上垣はISそのものの高速換装(ラピッド・スイッチ)を行い、手数に優れる蒼穹の機体――“ブルー・ティアーズ”を展開した。

 

 と、その瞬間、スグハの姿が煙のようにフッと消える。

 

「またっ」

 

 ガガガッと機体に響く斬撃音と凄まじい衝撃。

 

(どうなんてんだっ。空間転移しているわけでもないのに、ハイパーセンサーで捉えきれない速度なんて、有り得ないだろっ)

 

 戦慄を表情に浮かべ、内心で絶叫しつつ、ブルー・ティアーズの名前の由来にもなったオールレンジビット兵器“ブルー・ティアーズ”を展開する。そして、瞬時加速を用いて前方へと離脱しつつ、総計六つのビットで背後のスグハを乱れ撃つ。

 

 しかし、ブルー・ティアーズのビットレーザーが、スグハを穿つことはなかった。スグハが、逃げる上垣を斬撃の踏み込みそのままに追撃していたからだ。まるで、磁石が引き合うようにピッタリと張り付き、必殺の間合いから離れない。

 

 距離を取れば、ISによる数多の兵器と、今もどこかの空間の狭間で虎視眈々と隙を伺っているはずのサーシャに狙い撃ちにされると理解しているのだ。

 

 そうして放たれる小太刀の二刀の連撃。しかも……

 

「――【セクタムセンブラ】」

 

 そっと囁くように放たれた言霊と同時に、宙に描かれる殺意の銀線が一気に膨れ上がる。

 

「このっ」

 

 上垣が表情を盛大に引き攣らせつつ、瞬時加速の連続使用でどうにか引き離そうとする。バイザーに映るエネルギー残量が冗談のような速度で減少していくことに、焦燥を隠すことができない。

 

 通常の小太刀二刀の連撃くらいなら、ISのシールドバリアが完全に防いでくれるし、攻撃を防ぐ度にエネルギーを消費するシールドとはいえ、生身で放つ物理攻撃などISにとっては蚊に刺された程度のダメージ量のはずだ。

 

 にもかかわらず、まるで大規模な砲撃による集中砲火でも受けたかのように、猛烈な勢いでシールドエネルギーが喰われていく。

 

(斬撃の数と、喰らった攻撃回数が合ってないっ。何かの魔法なんだろうが、それにしたって、このダメージ量は異常だろうっ!!)

 

 霞のように消えては有り得ない数の斬撃と、その斬撃数とすら噛み合わないダメージを与えていくスグハ。

 

 その原因は、確かに上垣の推測通り、相手を引き裂く魔法――【セクタムセンブラ】だ。これにより、小太刀二刀の連撃が数倍の手数に膨れ上がる。単なる魔法の行使ではない。御神の技と完璧に調和した不可視の斬撃。

 

 そして、もう一つ。高火力兵器並みのダメージを与えているのが御神流基本――【徹】だ。魔法の斬撃である【セクタムセンブラ】にすら込められた数多の浸透衝撃が、ISのシールドバリアを貫通して、最後の砦――【絶対防御】の発動を強いているのである。

 

(くそっ、【絶対防御】の消費量は、シールドバリアの三倍だぞっ。このままじゃ、剥ぎ取られる(・・・・・・)っ)

 

 上垣の表情に浮かぶ焦燥が、いよいよその色を深める。

 

 と、そのとき、不意に上垣の視界が一瞬暗闇に途切れ、刹那、遥か上空から地上を見下ろすような場所へと移り変わっていた。

 

「空間転移……サーシャかっ。助かった!」

「彼女相手に接近戦を許すなんて……死にたいのですか? あの化け物相手には、遠方から圧倒的物量で押し切るしかないと、そう結論づけたでしょうに」

「分かってるっ。だからブルー・ティアーズに変えたんだ。くそっ、今まで相対したときより更に速くなってやがる」

「……あるいは、今までが本気でなかった……ということも有り得ますけど」

「冗談キツいぜ」

 

 ギョロ目が蠢く空間の亀裂から、扇子で口元を隠しつつ眼下を見下ろすサーシャ。扇子の向こう側の口元は、あわや、あの僅かな戦闘で仲間が墜されかけたことへの戦慄に引き攣っている。

 

 隣では、上垣が、真下の道路上から自分達を真っ直ぐに見上げるスグハに対し、同じような引き攣り顔を見せていた。

 

 と、次の瞬間、その引き攣り顔は、更に酷くなることになった。

 

「なっ、あいつ空中戦をっ!?」

「っ、ハリポの空中戦といえば箒でしょうに。宙を走ってくるなんて(・・・・・・・・)……」

 

 その言葉通り、彼の視線の先で、スグハは二刀を従えたまま、空中を踏みしめてロケットのように宙を駆け上がってきた。理屈は簡単。防御系統の魔法――【プロテゴ】により、空中に足場を作っているのだ。

 

 今まで、サーシャ達がスグハと刃を交えたのは二度や三度ではないが、過去一度足りとて、箒を使わずに空中戦を仕掛けられたことはない。それはつまり、上垣がスグハの速さを見誤ったことと同じく、今までただの一度も、スグハは本気でなかったということ。

 

 思わず、二人が動揺してしまうのも無理からぬことだった。そして、その動揺は、スグハの狙い通り、決定的な隙だ。

 

「――【ディスアポーレション】」

 

 小さく、風の音に紛れてしまいそうな呟きが溢れるように放たれた瞬間、スグハの姿が空間に呑まれたかのように消え失せる。

 

 そして、

 

「しまっ」

「っ」

 

 ひゅるりと、サーシャと上垣の間に姿を現した。同時に、冷え冷えとした眼差しが、小太刀二刀とともに二人を切り裂かんと乱舞した。空中で、独楽のように回りながら振るわれた二刀から、おびただしい数の斬撃が飛ぶ。

 

 その斬撃をまともに受けた上垣が悲鳴をあげながら落下し、直ぐに空間の亀裂を閉じて退避しようとしたサーシャは、しかし、完全には間に合わず咄嗟にかざした腕を裂かれて血を噴き出した。

 

「何の躊躇いもなく、殺しにかかるなんてっ。やはり、あなたはこの物語には相応しくない!」

「最初に殺し合いを望んだのは、そちらでしょう? 何を今更」

 

 冷めたスグハの言葉と視線に、別の空間の亀裂から凄まじい数の魔弾を放ちながら、サーシャは憤りもあらわに言葉を放つ。

 

「それは、あなたがこの世界の歴史を歪めたからでしょう! テロから御神を救い、高町士郎を無傷で健在させ、高町なのはから孤独な幼少期を取り上げた!」

「家族を守って何が悪いのかしら? 理解に苦しむわ」

 

 数多の光弾を切り裂き、盾の魔法をいくつも空中に展開して、それらを足場に空を賭けるスグハ。幻想郷の弾幕ごっこがそのまま再現されたかのような魔弾の嵐の中を、まるでダンスでも踊るかのようにいとも容易くくぐり抜けていく。

 

「そのせいで、どれだけ未来が歪むかわからないのか! 確かに、御神が滅ぶことも、なのはの孤独も辛いことかもしれない。だが、原作通りなら、確実にハッピーエンドが待っているんだぞ! 確かな未来の為に、今を耐えることの重要性が、何故分からないっ」

 

 上垣が、ラファール・リヴァイブ・カスタムに機体を換装し、無数の銃火器によって実弾の弾幕を張りながら叫んだ。その言葉から、彼等の思想が“原作の遵守”であることが分かる。

 

 そして、どうやら、スグハがテロによって御神家が滅ぶという悲劇を回避し、なのはの父である士郎が、護衛の仕事中に深手を負って昏睡状態となり、その看病と翠屋の経営のために、なのはが孤独な幼少時代を過ごすという本来の歴史を変えたらしく、彼等はそれが許せないようだった。

 

 つまり、今夜の闘争は、原作の開始時期が迫り、今まで小競り合いをしつつもスグハの説得をしていた“原作遵守派”が、遂にしびれを切らして強攻策――高町スグハの抹殺を決断したというわけだったのだ。

 

 だが、サーシャや上垣の言葉は、スグハの心には何の波も立てはしなかった。

 

 故に、スグハは、この期に及んでスグハの在り方を批判する言葉を止められない二人に対し、酷く冷めた眼差しと言葉を返した。

 

「原作だの、確かな未来だの……くだらない」

「なんですって」

「なんだとっ」

 

 自分達の主義主張を、“くだらない”の一言で切って捨てられた二人が気色ばむ。そんな二人へ、スグハの言葉が矢のように放たれた。

 

「家族の死を“仕方ない”で済ませられる……あなた達にとって、この世界は紛れもなく“物語”なのでしょうね。この世界に生まれても、結局、画面越しにアニメを見ているのと変わらない。――私は、この世界で生きてすらいない(・・・・・・・・)者の言葉に、価値を認めないわ」

 

 冷めた声音なのに、火傷しそうなほど熱い激情の込められた言葉。夜天に輝く月光に照らされて、二刀の小太刀が妖しく輝き、妹と同じ栗色のポニーテールが、夜風に弄ばれてゆるりと流れる中、言葉はこれで最後だと、そう言わんばかりにスッと目を細めた。

 

「どんな理由があろうと、どんな形であろうと、私の大切な人達を、私を大切に想ってくれる人達を、害そうというのなら、御神の名にかけて全て切り捨てる!」

 

 声音に乗った裂帛の気合とは裏腹に、静かな気配のまま一瞬で納刀したスグハ。

 

 刹那、

 

「がぁっ!?」

「上垣っ」

 

 サーシャが悲鳴じみた声音で上垣の名を叫ぶ。その視線の先で、上垣の周囲から光の粒子が飛び散り、纏っていたISの外装が消えていった。転生者故に有していた膨大なエネルギーが、一瞬で吹き飛ばされるほどの絶大な攻撃を受けて、強制的にISが解除されたのだ。

 

――御神流 斬式奥義之極 【閃】

 

 間合いや剣速といったものを無視して、斬撃を認識させることもなく対象を斬る、斬撃の極地。御神流の使い手の中でも、この領域にたどり着ける者は多くないというほどの奥義中の奥義だ。

 

 シールドバリアを紙くずのように切り裂いて、絶対防御ですら消しきれない衝撃とダメージを刻まれた上垣は、為す術もなくISを剥がされ地に落ちていく。

 

 それを、空間を渡って出現したサーシャが拾い上げ、近くのビルの屋上に出現する。

 

「がっ、がはっ」

「上垣っ、しっかりなさい!」

「ぢ、ぢくしょうっ。なん、だよ、あれはっ。あれが、御神だって、のかよっ」

 

 辛うじて意識を保っているらしい上垣が、恐怖と苦痛に引き攣った表情で悪態を吐く。

 

 そんな二人の耳にスタッと屋上に降り立つ足音が響いた。

 

 終わってみれば、破格の能力を有した転生者二人を相手に、無傷で圧倒した高町スグハ。確かに、ハリー・ポッターの魔法という要素はあったものの、それはあくまで武技の補助としてしか使っていなかった。

 

 すなわち、転生者二人は、御神の剣士――それも、未だ修練を初めて数年程度にしかならないはずの少女に、敗北したということになる。

 

「化け物、ね」

「……」

 

 サーシャが引き攣り顔を隠すこともなく呟くが、スグハの表情をピクリとも動かない。無表情を貫いたまま、僅かにも躊躇う様子を見せずサーシャの様子に注意しながら歩みを進めてくる。

 

 油断も隙もない。確実に仕留める為に、もう、サーシャの転移を許すつもりはないようだった。サーシャが転移に意識を移した瞬間にも、再び冗談のような斬撃を以て首を跳ばすつもりだ。

 

 その精神性もまた、サーシャには酷く恐ろしい。確かに、自分達とてスグハを殺すつもりではあった。だが、それは、確かな未来のため(・・・・・・・・)という大義名分があるからこそ。正義のための(・・・・・・)、苦渋の選択だったのだ。

 

 なのは達に対しても、スグハを切り離した後は、仲間の転生特典によってスグハに関する記憶を消し、元の高町家に戻すつもりで、それ以上、手を出すつもりはなかった。

 

 自分達こそ正しいのに。全て、高町なのはと、約束されたハッピーエンドの為にやっていることなのに。今まで、何度も、高町家から(・・・・・)離れるべきだと、同じ転生者として(・・・・・・・・)忠告して上げたのに。何故、自分達の主張の正しさが分からないのかっ。

 

 サーシャは気がつかない。己の正義以外、何も見えてはいないから。スグハは、転生者として生きているのではなく、高町スグハとして生きているのだということも、高町家の記憶を消すということが、人殺しと同じくらい罪深いということも、気がつかない。

 

「残念ね。それだけの力があれば、この世界の正しい歴史を、他の転生者達から守ることも出来たでしょうに。本当に、高町家のことを想うなら、彼等の前から消えて、影から守れば良かったのに」

「……あなた達の薄っぺらい正義感も、安っぽいヒーローごっこも、もう十分よ」

 

 上垣を抱えたまま、スグハの間合いに入ったサーシャ。しかし、何故か、スグハに対する戦慄の感情は見えても、これから命を散らす悲愴さはまるで伺えない。

 

 そのことに、違和感を覚えて僅かに眉を顰めたスグハに、直後、切羽詰った、悲鳴じみた念話が届いた。

 

『お姉ちゃんっ、逃げてぇっ!』

「っ、なのは!?」

 

 刹那、スグハの足元、ビルの屋上に、雨など降っていないのに何故か付着していた大量の水滴が、ふるりと震えた。

 

「チェックメイトよ」

「ざまぁみやがれ」

 

 なのはの警告と、足元から急激に膨れ上がった死の気配に気を逸らされたスグハの隙を突いて、サーシャと上垣が足元に空けた空間の亀裂へ、落下するように消える。

 

 スグハは、そんな失態に歯噛みする間も惜しんで、即、その場を離脱しようとしたが……【姿くらまし】が瞬時に発動しない。まるで、スグハの周囲の空間のみ、境界でも引かれたように固定されている。

 

 それでも、スグハの優れた魔法力は、強引に境界を越えようとして――

 

一歩、遅かった。

 

「ッッッ!?」

 

 悲鳴が掻き消える。

 

 凄絶なまでの、まるで太陽の如き白熱の閃光と、尋常ならざるエネルギーを伴った衝撃により、一瞬で周囲一体の建物が消滅した。封時結界が余りのエネルギー量に悲鳴を上げ、仮初の町並みは、原子爆弾の直撃を受けたかのように外へ向かって放射状に薙ぎ払われていく。

 

 夜天に浮かぶのは、灼熱の白き太陽。それがあらゆる存在を粉砕し、消滅させていく。海鳴の町そのものを更地へと変えていく。

 

 スグハを中心に、海鳴の町の中心部は、ただ一撃によって消滅したのである。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 時は少し戻る。

 

 スグハが、サーシャと上垣のペア相手に戦いを始めた頃、引き離されたなのはもまた、別の転生者の襲撃を受けていた。

 

「もう止めてっ。どうしてこんな酷いことをするの!? 私が、私達家族が、何をしたっていうの!? どうして放っておいてくれないの!?」

 

 なのはは、空中から自分を睥睨する相手へ悲鳴じみた怒声を上げた。その手には頑丈そうな木で出来た棍が握られている。

 

 いずれ、物語通りに進んだ場合、なのはは、レイジングハートという杖形のデバイスを得ることになる――可能性が高いということを転生者との争いの中で知った士郎達は、それを見越して、少しでも、なのはが自分の思いを通せるようにと教えているのだ。

 

 もちろん、御神流は小太刀二刀術であるから、長物の扱いを十全に教えられるわけではないが、それでも経験豊かな御神の剣士達が戦いのイロハを教えていることもあって、九歳の女の子にしては中々様になっている。

 

 慣れた手つきで腰だめに構えながら、普段ののほほんとした雰囲気とはかけ離れた、怒りを帯びた眼差しを真っ直ぐに向けているなのはに、相対する者――膝上まであるダークブーツを纏い、袖口が大きく広がった独特の衣装と、ブーツと同じ黒髪を靡かせる十四、五歳くらいの少女が溜息を吐きながら答える。

 

「それはね、なのはちゃん。放っておいたら、大変なことになるからだよ。あるべきものを、あるべき姿に戻す。これはただ、それだけのことなの。なのはちゃんには、まだ難しいかもしれないけれど、いずれ、私達が正しかったのだと分かる時がくるよ」

 

 まるで、聞き分けのない子供に言い聞かせるような雰囲気と言葉。あるいは、自分は憎まれ役をして上げているのだという、恩着せがましい言動に、なのはのボルテージが上がっていく。

 

 うつむいた表情は、彼女の艶やかな栗毛に隠れて見えない。しかし、小刻みに震える肩が、彼女の深い怒りを如実にあらわしていた。

 

「……あなた達は、いつもそうだよ。いつも、いつも、どこか遠いところから私達を見てる。“高町なのははこうだ”って決め付けて、思い通りにならなかったら暴れて、私の言葉なんかなんにも聞いてなくて……」

「私達を他の馬鹿な転生者達と一緒にしないで欲しいな。私達は、この世界の為に命をかけてるんだよ? 約束された未来の為に泥をかぶる覚悟でね」

「一緒だよっ。あなた達が戦うのは、世界の為でも、未来の為でもない。ただ、自己満足に浸りたいから! そうじゃないっていうなら、どうして一緒に頑張ろうとしてくれないの!? 約束されていなくても、良いことが起きますようにって、一緒に頑張っていけばいいのに! どうして、私の家族を傷つけようとするの!」

「……ふぅ、だからさ、何度も言っているじゃない。高町スグハなんて存在は、いちゃいけないんだよ。既に、起きるべき沢山の過去が歪めれちゃった。その結果、何が起きるか分からないんだ。なのはちゃん。いくら君が“主人公”でも、解決できない何かが起きるかもしれないんだよ?」

「私をっ、“主人公”なんて呼ばないでっ!!」

 

 激昂するなのはに、ダークブーツの少女――ディーグレイマンのイノセンスである【“ダークブーツ”“鉄槌”“クラウン・クラウン”を使える】という能力を持つ転生者“日野芽亜子”は、やれやれと肩を竦めた。

 

「君がいないこの世界がどうなるか……それに、私達は世界を守ると同時に、正史からはずれたなのはちゃんが傷つかないよう守っているんだけど……言っても分からないよね。ま、理解されない道だというのは覚悟の上だよ」

 

 なのはに話すというより、独り言に近いそんなことを言った日野芽は、そのままビルの屋上を蹴って、なのはに向かって一気に落下した。

 

「これもなのはちゃんの為だから。今は眠ってね? 起きた時には、きっと正しい世界が待っているから」

 

 内心で盛大に「ふざけるなっ」と怒声を上げたなのはだが、それを表に出すことはない。日野芽が落下してきた瞬間には、気炎を上げる心をグッと鎮めて臨戦態勢を取る。これもまた家族から教わった戦うための心構え。

 

 原作では、なのはは運動神経が切れていると言われるほどの運動音痴だ。だから、膨大な魔力という己の特性を生かして、強固な防御と遠距離砲撃という特化型の魔道師への道を選んだ。

 

 だが、果たして、この世界のなのははどうだろうか。

 

「はっ」

「ふぅ――」

 

 日野芽が落下の勢いそのままに空中で回転すると、なのは目掛けて踵落としのような蹴りを放った。それに対し、短く息を吐いたなのはは、棍を盾にするように掲げると、ダークブーツが接触した瞬間を狙って片腕から力を抜いた。

 

 蹴りの圧力に負けて棍が回転するのに合わせて、ダークブーツも棍の表面を滑るように逸れていく。

 

 直後、

 

「フラッシュムーブ!」

 

 なのはの足元に桃色の光る羽が生え、刹那、その姿が霞んだかと思うと、日野芽の背後に出現する。

 

「やぁっ!」

 

 そして、可愛らしくも気合の入った声とともに、棍による突きを放った。しかも、ご丁寧に、突く側とは反対の先端にも、高速移動魔法【フラッシュムーブ】発動の証であるピンク色の羽が付いており、それが棍による突きのレベルを九歳の女の子が放ったとは思えないレベルへと昇華させていた。

 

「っ、お、恐ろしいね」

 

 咄嗟に、棍の突きをリンボーダンスのように上体を逸らして回避しつつ、バク転をして距離をとった日野芽が頬を引き攣らせながら呟く。

 

 デバイスもなく既にいくつかの魔法が使えることは、これまで説得を兼ねた幾度かの衝突の際にも確認していることだ。

 

 自分こそオリジナル主人公と言ってはばからない転生者を打倒した御神の剣士が、尋問の果てにあれこれ聞き出し、ついでに魔法の基礎も盗んだのである。相手がインテリジェントデバイスを所持していたことから、専用故に奪うことはできなかったものの、なのはが魔法を習得するための基礎は得ることができた。

 

 もっとも、デバイスがないことに変わりはなく、当初は大した魔法も使えなかったのだが――その練度が凄まじい勢いで上がっている。成長率の高さに、圧倒的なスペック差があるにもかかわらず、日野芽は戦慄を禁じえない。

 

「アクセルシューター!!」

「円舞――【霧風】」

 

 なのはの周囲に浮き上がった八個もの魔弾が、それぞれ不規則な軌道を描きながら迫る。日野芽は、最初になのはを吹き飛ばしたのと同じダークブーツによって発生させた竜巻をもって、まとめて吹き飛ばす。あわよくば、このまま竜巻に呑まれて、なのはも気絶してくれることを祈りながら。

 

 しかし、その願望は甘かったらしい。背後から聞こえた「たぁっ!!」という掛け声にハッとしつつ、日野芽は空中へ跳び上がった。その下を、鮮やかな桃色の光をなびかせた棍の一撃が通過する。

 

「ふぅ、中々やる――」

「リングバインド!」

 

 フラッシュムーブの発動速度は半端なく上がっているし、以前は四発が限界だった魔弾の数は倍になっているし、戦い方もずっとよくなっていることから、思わず称賛の言葉を贈ろうとした日野芽に、容赦のないなのはの声が響く。

 

 空中に飛び出していた日野芽は、自分が転生者であるという事実を以て、なのはに対し油断が、否、正しく言えば慢心があった。故に、あっさりと、なのはが発動したリングバインドに四肢を絡め取られる。

 

 もっとも、日野芽の能力にはイノセンス“クラウン・クラウン”もあるので、それを発動すれば自然と発現する爪であっさりと破壊できる程度の拘束だ。足の拘束だけなら、ダークブーツの蹴りのみで直ぐに破壊できる。

 

 だが、それを実行する前に、日野芽は視線の先で起きている余りの出来事に呆然としてしまった。

 

「ディバイ~~~~ン」

「ちょっとぉおおおっ。いくらなんでも、砲撃魔法はないでしょう!? デバイス無しなのよ!? っていうか、ひ、非殺傷設定とか出来ているんでしょうね!?」

 

 なのはは、少し首を傾げた。ツインテールが「非殺傷設定って何かしらん?」と言うかのようにくにっと揺れる。その間も、なのはが腰だめに構えた棍の先には膨大な桃色の光の塊が膨れ上がっていく。

 

 流石に、ちょっと焦った様子の日野芽が、道化師の外套を発現してリングバインドを破壊しようと……

 

「バスタぁああああああああっーー!!」

「ちょっ、まっ――」

 

 白い魔王の片鱗、ここに見たり。桃色の“壁”が、先ほどの竜巻のお返しだとでもいうかのように日野芽を余さず呑み込んだ。轟ゥ!!と光の奔流が仮初の世界を染め上げて、背後のビルを貫通していく。

 

 轟音と共に、ビルが激震し、大量の窓ガラスが粉砕されて豪雨の如く降り注ぐ。

 

「はぁはぁ。もう、私だって、守られるだけじゃないんだからっ」

 

 肩を激しく上下させ、荒い呼吸を繰り返すなのは。デバイス無しの砲撃魔法は、演算が出来ただけでも一般の魔道師から見れば驚愕の余り気絶するレベルであり、当然、魔力効率は著しく悪い。原作では十八番(おはこ)のバスターも、今のなのはにとっては正真正銘の切り札だった。

 

 それでも、苦しそうな表情の中に輝くような強い意思を滲ませて声を張り上げたのは、今までの守られるだけだった自分との決別。

 

 今まで、なのはを己の思い通りにしようとする者達や、決めつけた未来を歩ませようとする者達、あるいは下心満載で擦り寄る者達から、双子の姉や士郎達家族を含め、スグハが救った御神の剣士達が守ってきてくれた。守られることしか出来なかった。

 

 だからこそ、転生者達からの、吐き気すら覚える価値観や下心、何より、人形を見るかのような眼差しに耐えて、“高町なのはが使う魔法”の習得に心血を注いだ。苦手な運動に苦心しながら、必死に武術を学んできた。

 

 全ては、守られるだけの自分から脱却するため。友達を守るため。闘う家族に、並び立つため!

 

(絶対、大丈夫。私は、戦える。“原作”なんてものが始まっても、そのせいで転生者の人達が何かしてきても、お姉ちゃん達も、アリサちゃん達も、みんな守って、ずっと一緒にいるの!)

 

 内心で決意を新たにするなのは。強大な力を持つ転生者を、本領を発揮させる前だったとはいえ打倒したのだ。未熟を感じることはあっても、自信には繋がった。

 

 そうして、なのはが大好きな姉の援護に向かおうと、ふらつく体で踏ん張って歩き出そうとした、そのとき、

 

「全く、油断しすぎだ。転生者ではないとはいえ、彼女は紛れもない“主人公”だぞ。ご都合主義の権化相手に気を抜くな」

「うぅ~、面目ない。まさか、デバイス無しであそこまで魔法を使いこなすとは思わなくて……」

 

 青年と日野芽の会話する声に、なのははハッとして振り返った。その視線の先には、襟首を掴まれた状態で猫のように抱えられる日野芽と、バイザーをつけた全身白服で固めた青年がいた。

 

 バッと棍を構え直し、臨戦態勢になるなのは。だが、そのこめかみには冷たい汗が流れている。既に疲弊はかなりのもの。その上で、転生者が二人。今度は日野芽も、なのはを戦闘不能状態にすべく本気でかかってくるだろう。

 

 だが、緊迫するなのはを余所に、バイザーの青年はやれやれと肩を竦めるだけでなのはと戦う意思を見せず口を開いた。

 

「まぁいい。目的は達した。時間稼ぎは十分だ」

「お、以外に早かったね。もう少しかかるかと思ったけど」

「まぁな。これでも相当練習して、少しずつ処理速度は上がっているんだ。まぁ、それでも酷く扱いづらい能力であることに変わりはないが」

「そりゃあねぇ。世界を滅ぼしうる魔法だよ。七詩(ななし)さんは、“司波達也”じゃないんだから、そう簡単にはいかないでしょ。私だって、未だに臨界突破は出来ないし」

 

 二人の何気ない会話に、なのはの中の嫌な予感が膨れ上がっていく。そして、アクセルシューターを浮かべながら口を開こうとして、

 

「高町なのは。目を閉じて、耳を塞いでおくといい。どうせ消す記憶とは言え、身内が消し飛ぶ光景が深層心理にでも残っては事だからな」

「な、何を言って――」

 

 疑問を口にするなのはには答えず、バイザーの青年――魔法科高校の劣等生主人公、司波達也の【再生と分解の魔法を使える能力】を持つ転生者――七詩七雄は、銀色に輝く銃型デバイスを取り出し、真っ直ぐ、なのはとは別の方向(・・・・・・・・・)に向けた。

 

 その方角は、未だ激しい戦闘音が響いてくる方。そう、双子の姉であるスグハがいる方角。

 

 七詩の念話が響く。

 

「サーシャ、上垣、準備が完了した。カウントスリーだ」

「っ」

 

 何をする気なのかは分からない。だが、なのはは総毛立つほどの悪寒に襲われた。それは死の恐怖。自分の、ではない。大切な誰かが永遠の彼方へ去ってしまう、そういう恐怖だ。

 

 故に、自分でも意識しないまま、必死に念話を飛ばした。

 

『お姉ちゃんっ、逃げてぇっ!』

 

 次の瞬間、

 

「発動――マテリアルバースト」

 

 七詩の言葉と同時に、仮初の海鳴が灼熱の太陽に包まれた。

 




いかがでしたか?

なのはちゃんが魔改造というほどではないければ、原作前から強い系です。

ただし、それなりなので、複数転生者から身を守れていた理由として双子の姉を入れました。

こいつが滅法強い系です。実は、御神の剣士がハリーポッター世界に行ったらという二次を考えていたときの主人公だったりします。ちょびっと書いていたので、そのうち流そうかと思っていたり。

さて、今回の相手は〝原作通りが一番!〟派の転生者達。
一見、信念があるようにも見えますが……なのはちゃん激おこモードです。

次回は、ピンチのところへ……

来週辺り、投稿できればいいんですどね。

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